昭和42年

年次経済報告

能率と福祉の向上

経済企画庁


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第1部 昭和41年度の日本経済

2. 上昇の主導力と主役の交替

(2) 景気対策・減税の需要効果

上期の生産上昇を支えた需要の第2は,国債発行による財政支出の増大であつた。

39年後半から40年へかけて進行した景気後退は,これまでのように金融を緩和しただけではなかなか回復しなかつた。そこで,40年6,7月には第二弾の金融緩和措置が打ち出されるとともに,財政面からも公共事業費の支出促進などの景気刺激策がとられるに至つた。さらに,41年度予算編成にあたつては,大型予算の編成,大幅減税の実施,本格的な国債発行政策への転換が行なわれ,公共事業の施行促進がはかられることとなつた。

こうした景気対策や減税はどのような需要効果をもたらしたであろうか。

第3図 公共事業関係支出額の推移

まず1つは,公共事業費の支出増である。

公共事業関係支出額の前年同期比をみると,40年11月から増加に転じ,年度はじめの41年5~7月には急増をみた。その後は次第に鈍化に転じている( 第3図 )。

2つは,後述するように,金融の大幅緩和を通じて中小企業などの投資を刺激したことである。

3つには,41年度から実施されることとなつた減税の効果がある。減税の内容は,個人税を主体に法人税,間接税あわせて初年度2,400億円(ただし地方税を含む)であつた。

4つは,こうした公共事業促進や中小企業などの投資,減税による追加需要が,企業や個人の所得をふやし,それが呼び水となつて企業の投資や個人の消費をつぎつぎに誘い出していく,いわゆる乗数効果をもたらしたことである( 第4図 )。上期から下期へかけて,民間需要が急増をとげた背景には,このような景気対策の乗数効果があつた。

もちろん,砂のうえにかけた水はたまらない道理だが,今回の景気後退期には名目8%は伸びつづける安定需要という岩盤があつた。つまり,輸出の増大,非製造業投資,農村消費が,こうした安定需要となつていたのである。その意味で,日本経済は,在庫投資や設備投資の減少をやがてくいとめるだけの力を内部にもつていたといえる。そこへ公共投資が集中し,後でのべるように企業金融の緩和がすすみ,金利が低下して中小企業などの投資が刺激され,減税の効果が加わつた。

以上のような景気対策や減税の実施が呼び水となつて,日本経済の成長力はすみやかによみがえり,41年中の名目成長率は16%強と高まつた。


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