海外経済報告(平成11年7月四半期報)

参考図表

概観

1.主要国の経済動向をみると((図1、図2))、アメリカの景気は、先行きにやや不透明感がみられるものの拡大を続けている。ヨーロッパの景気は緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる。アジアでは、景気は総じて底入れしたとみられる。

アメリカでは、実質GDP(前期比年率)は、98年10~12月期6.0%増の後、99年1~3月期は4.3%増となり、個人消費や民間住宅投資などを中心に景気は拡大を続けている。中南米の景気は、メキシコでは景気拡大テンポが鈍化し、ブラジルでは後退している。

ヨーロッパでは、ドイツの景気は緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる。 (1~3月期実質GDP前期比年率1.8%増)。フランスでは景気拡大のテンポは緩やかになっており(同1.3%増(速報値))、イギリスでは景気は減速しているものの、先行きに明るさがみられる(同0.2%増)。イタリアでは景気は一進一退で推移している (同0.7%増)。中・東ヨーロッパでは、ポーランド、ハンガリーでは景気の拡大テンポは鈍化している。チェッコでは景気は後退している。ロシアでは景気は後退している。

アジアでは、中国の景気は拡大しているが、消費の伸びは鈍化しており、輸出は減少している。アジアNIEsでは、香港を除き、景気は回復している。アセアンをみると、景気は総じて底入れしつつある。

2.国際金融・商品の動向をみると、99年4~6月期の米ドルは、4月から5月上旬にかけてやや減価基調で推移したが、その後増価に転じ、6月半ばに減価する場面があったものの総じてやや増価基調で推移した (図3)。アジア通貨は対ドルでほぼ横ばいで推移したが、インドネシア・ルピアは総選挙が大きな混乱なく実施されたため、6月以降増価した。国際商品市況は、4月以降190ポイントを挟んで小幅に上下していたものの、5月下旬には大きく下落した。その後、6月上旬に急上昇し、193ポイント台まで回復した後は、総じて安定的に推移した。原油価格(北海ブレント・スポット価格)は、4月から5月上旬までほぼ一本調子で上昇し、97年12月以来となる16ドル/バレル台後半を記録した。その後、一時弱含む場面がみられたが、6月末には再び16ドル/バレル台を回復している。

図3

図3イメージ イメージ

(備考)

本報告では、北米、西ヨーロッパ諸国、オーストラリアの指標の変化率は、特に断りのない限り四半期データは季節調整値前期比年率、月次データは同前月比である。また、中南米、中・東ヨーロッパ、ロシア、アジア諸国の指標は、前年同期(月)比である。

1 南北アメリカ アメリカ、利上げ

アメリカ:先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。雇用は

拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価

は総じて安定した動きとなっている。

アメリカでは、実質GDPは、98年10~12月期前期比年率6.0%増(前年同期比4.3%増)の後、99年1~3月期は同4.3%増(同4.0%増)となった。引続き内需が堅調に推移した(99年1~3月期増加率寄与度6.6%)。外需は再びマイナスの寄与に戻った(同▲2.2%)。個人消費は、耐久財消費を中心に1~3月期前期比年率6.7%増となった後、4月は前月比年率0.7%減、5月は同7.3%増となった。小売売上は、自動車関連など耐久財が好調だったため、5月前月比1.0%増となった。消費者信頼感指数は、6月138.4と過去最長の8か月連続の上昇となった。設備投資は、1~3月期前期比年率8.5%増と増加している。設備投資の先行的な指標である非軍需資本財受注(航空機・同部品を除く)は、5月前月比2.2%減となった。住宅投資は、低金利や高水準の消費者信頼感、堅調な所得の伸びなどを背景に1~3月期前期比年率15.4%増と増加している。住宅着工件数は4月前月比9.7%減の後、5月は同6.3%増となった。在庫投資は、1~3月期増加率寄与度▲0.3%となっている。

鉱工業生産は、3月前月比0.7%増、4月同0.4%増の後、5月は同0.2%増と増加している。また、設備稼働率は3月80.5、4月80.5、5月も80.5と横ばいで推移している。

雇用は、非農業事業所雇用者数が4月前月差32.1万人増、5月同0.5万人減の後、6月は同26.8万人増と拡大しているものの、製造業で6月同3.5万人減となるなど、輸出減の影響もあり減少している産業もみられる。他方、サービス部門は6月同28.0万人増と、引続き増加している。失業率は5月4.2%の後、6月は4.3%となった。民間非農業事業所の時間当たり賃金は、6月前年同月比3.6%増となった。物価は、消費者物価(総合)が5月前年同月比2.1%の上昇(消費者物価コアは同2.0%の上昇)、生産者物価(完成財総合)が5月同1.4%の上昇(生産者物価コアは同1.7%の上昇)と、総じて安定している。

経常収支赤字は、1~3月期686億ドル(GDP比▲3.1%)と前期から拡大した。この背景としては、財の貿易収支赤字が輸出減、輸入増により拡大したことが挙げられる。4月の財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は前月から2億ドル縮小し255億ドルとなったが、依然として高水準である。

金融面の動向をみると、連邦市場公開委員会(FOMC)は、6月30日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%引き上げ5.00%とし、金融政策姿勢を「引締め」から「中立」へ変更した。6月の短期金利(TB3か月物)は、総じて上昇している。長期金利(30年物国債)は、総じて上昇している(TB3か月物利回り6月平均4.70%(5月平均4.62%)、30年物国債利回り6月平均6.04%(5月平均5.80%))。6月の株価(ダウ平均)は、上下したが、月末を月初と比べるとやや上昇した(NYダウ工業株30種平均の6月平均10,704.02ドル(5月平均比1.25%下落))。マネーサプライ増加率(98年10~12月期対比年率)をみると、M2は5月6.6%となっている。

行政管理予算局(OMB)は、6月28日、年央の改定財政見通しを発表した。同見通しによると、99会計年度の財政収支見通しは、前回見通し(99年2月予算教書)の790億ドルの黒字を上方改訂し、990億ドルの黒字(GDP比 1.1%)を見込んでいる。また、実質GDP成長率も、99年前年比3.9%、2000年同2.4%と上方改訂された。

カナダ:景気は拡大している。

カナダでは、実質GDP(前期比年率)は、98年10~12月期4.8%増の後、99年1~3月期は4.2%増となり、景気は拡大を続けている。個人消費は、1~3月期5.1%増と増加している。民間投資では、設備投資は、1~3月期5.2%増、住宅投資は、同16.6%増と増加している。在庫投資は、GDP成長率への寄与度は▲1.1%となっている。なお、98暦年の実質GDP成長率は3.1%となり、97年(同4.0%)より鈍化したものの比較的高い伸びとなった。生産は3月前月比0.3%増の後、4月同0.1%増となった。失業率はこのところやや高まっており、1~3月期7.8%の後、4月は8.3%、5月は8.1%となった。物価は安定しており、消費者物価上昇率は、4月前年同月比1.7%、5月同1.6%となっている。経常収支赤字は、1~3月期13.6億加ドルと減少した。財の貿易収支黒字(国際収支ベース)は、1~3月期79.4億加ドルと大幅に拡大した。これは、輸出が米国景気の好調を反映して1.7%増加した一方で、輸入が1.6%減少したことによる。金融面の動向をみると、カナダ銀行は5月4日、景気拡大の持続を支え、物価上昇率をターゲット・レンジ内に収めるため、公定歩合を0.25%引き下げ、4.75%とした。98年9月以来5度目の利下げとなった。

中南米:メキシコの景気は拡大テンポが鈍化している。物価は高水準で推移している。

ブラジルの景気は後退している。物価は安定している。

メキシコでは、実質GDP(前年同期比)は、98年10~12月期2.6%増、99年1~3月期1.9%増となり、景気の拡大テンポは鈍化している。需要項目別にみると、個人消費の伸び率低下が続いている。鉱工業生産は1~3月期前年同期比1.8%増の後、4月は前年同月比4.3%増となった。

失業率は低水準で推移しており、5月2.4%となった。物価上昇率は高水準で推移しており、消費者物価上昇率は、5月前年同月比18.0%となった。経常収支赤字は、10~12月期は46.4億ドルであった。貿易収支赤字は、輸出が輸入を上回る伸びを示したため、5月2.5億ドルと縮小した。

金融面の動向をみると、対ドルレートは、変動相場制への移行などブラジル情勢の不透明感を反映して、年初には減価した。その後は増価傾向に転じ、4月下旬以降はほぼ安定して推移したものの、5月中旬から下旬にかけて、アルゼンチン・ペソの切り下げ懸念から乱高下した。99年6月30日現在9.335ペソ/ドルと、3月末比で2.4%の増価となった。一方、株価(IPC指数)は5月中旬から下旬にかけてはアルゼンチン・ペソの切り下げ懸念とアメリカの利上げ観測から下げに転じる局面もあったが、99年6月30日現在では3月末比で18.2%の上昇となった。

ブラジルでは、景気は後退している。実質GDP(前年同期比)は、98年10~12月期1.9%減の後、99年1~3月期は工業部門が4.6%のマイナスとなったものの、第一次産業部門が9.2%のプラスとなり、GDPは1.0%減となった。鉱工業生産は1~3月期前年同期比3.7%減の後、4月も前年同月比2.6%減と減少している。

失業率は高水準で推移しており、1~3月は7.8%、4月は8.0%、5月は7.7%となった。消費者物価上昇率は、4月前年同月比3.9%、5月同3.2%と落ち着いている。経常収支赤字は4月25.3億ドル、5月16.4億ドルとなった。貿易収支は、5月3億ドルの黒字となり、2月以来4か月連続の黒字となった。

金融面の動向をみると、1月の変動相場制への移行期に急速に減価したが、IMFとの新たな合意の成立等により、3月中旬以降増価に転じたものの、アルゼンチン・ペソの切り下げ懸念等から5月中旬以降は減価傾向にある。99年6月30日現在1.753レアル/ドルと、3月末比で2.0%の減価となった。株価(BOVESPA指数)は、1月の通貨危機以降は上昇傾向を続けていたが、5月中旬にアルゼンチン・ペソの切り下げ懸念とアメリカの利上げ観測から下げに転じた。99年6月30日現在、3月末比で8.7%とやや上昇した。

ブラジル中央銀行金融政策委員会はインフレ懸念の沈静化に伴い金利の引下げバイアスを維持しており、6月9日以降適用の翌日物の指標的金利であるSELIC金利を23.5%から22%に引き下げた。これは3月25日の45%から42%への引下げ以来、8回目の引下げとなる。

トピック:株高と家計金融資産

2 ヨーロッパ 景気は緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる

ヨーロッパの景気の現状をみると、ユーロ圏(EMU第3段階移行11か国)では、景気は緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる。実質GDPは、98年10~12月期前期比年率0.8%増、1~3月期同1.6%増となった。輸出は減少が続いているものの、個人消費は増加を続け、固定投資の伸びは大きくなっている。これまで低下していた製造業コンフィデンスもやや改善している。しかし、98年後半に積み上がった「意図せざる在庫」の調整がみられ、これが景気の再加速にとっての足かせとなっている。失業率の低下は緩やかになっている。物価は安定している。イギリスでは、景気は減速しているものの先行きに明るさがみられる。

金融面の動向をみると、ユーロは対ドルでは、コソヴォ情勢に左右されたものの、主にアメリカとユーロ圏との景況格差を反映し、総じて減価した。また4月8日にレポ(公開市場操作)金利を0.5%ポイント引下げ2.50%としたことも、ユーロ減価の一因となった。広義のマネーサプライ(M3)は、4月前年同月比4.9%増となった(3か月移動平均では前年同月比5.0%増となり、ECBの参照値である同4.5%増をやや上回っている)。イギリスでは、4月に続け6月にも、ポンド高とこれによる物価下落への懸念等から、政策金利(レポ金利)を5.00%に引き下げた。政策金利の引下げは、98年10月から合計して7回に及んだ。

中・東ヨーロッパでは、ポーランド、ハンガリーでは景気の拡大テンポは鈍化している。チェッコでは景気は後退している。ロシアでは、景気は後退している。

ドイツ:景気は緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる。消費の増加が続き、固定投資も大幅に増加し、輸出の減少テンポも弱まっているが、在庫投資の大幅な調整が景気の再加速の足かせとなっている。

ドイツでは、実質GDPは、98年10~12月期前期比年率0.6%減の後、1~3月期同1.8%増となった。消費は増加を続け、機械設備投資、建設投資とも大きくプラスに寄与し、またマイナスの寄与を続けていた外需も、ほぼ寄与度ゼロになっている。しかし、高水準に積み上がった在庫投資の大幅な調整の動きがみられ(前期比年率寄与度▲7.6%)、これが景気の再加速における足かせとなっている。景気は、緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる。個人消費は、10~12月期前期比年率2.2%増の後、1~3月期同6.2%増と増加を続けているが、消費者コンフィデンス(欧州委員会発表)は3か月連続で悪化した。固定投資は、暖冬等の影響もあり大幅に増加している。機械設備投資は10~12月期前期比年率1.1%増ののち、1~3月期には前期比年率17.0%増と大幅に増加した。建設投資は10~12月期前期比年率7.1%減ののち1~3月期同11.0%増、新規建設受注数量は1~3月期前期比3.3%増、4月前月比6.7%増となった。

鉱工業生産は、1~3月期前期比0.2%減、4月同0.7%増と、減少傾向にあるがそのテンポが緩やかになってきている。製造業新規受注は、1~3月前期比0.5%増、4月前月比3.1%増(5月速報値同0.1%増)と大幅な伸びとなった。5月のifo製造業景況感は、現況判断はやや低下している一方、業況見通しは大幅に改善している。

失業率は、高水準ながらもやや低下している(6月10.5%)。物価は、消費者物価上昇率が5月前年同月比0.4%(6月速報値では0.5%)、工業品生産者価格上昇率が5月同▲1.7%と安定している。

経常収支は1~3月期18億ユーロの赤字となった。輸出は4月前月比2.5%増、輸入は同3.0%増となり、貿易収支黒字は1~3月期174億ユーロから、4月60億ユーロとなった。

フランス:景気拡大のテンポは緩やかになっている。個人消費、設備投資の増加傾向が続いており内需は拡大しているが、外需が減少している。

フランスでは、実質GDPは、98年10~12月期前期比年率3.0%増の後、99年1~3月期前期比年率1.3%増(速報値)となった。個人消費、設備投資を中心とした内需主導の景気拡大が続いているが、輸出の減少により外需がマイナスに寄与するなど、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。個人消費は、雇用情勢の改善が消費者信頼感の向上につながっていることから、増加(実質個人消費は1~3月期前期比年率1.0%増)している。設備投資は、引続き増加している (実質法人固定投資は98年7~9月期前期比年率8.9%増から10~12月期は同3.2%増、99年1~3月期は同8.3%増)。外需は、輸出減少が輸入減少に相殺されたものの、1~3月期には純輸出の寄与度が年率マイナス0.2%となった。

鉱工業生産は、2月前年同月比0.5%増、3月同0.2%増、4月同0.0%と、伸びが鈍化している。INSEE(国立統計経済研究所)が6月に行った経営者アンケート調査によると、今後生産は改善すると見ている経営者が増加している。

失業率は、高水準ながらもやや低下しており、5月11.4%となった。物価は、消費者物価上昇率が、5月前年同月比0.4%、工業品生産者価格上昇率が、4月前年同期比▲2.6%と安定している。

経常収支は1~3月期506億2700万フランの黒字、貿易収支は4月85億7200万フランの黒字と、黒字幅は縮小傾向にある。輸出は4月前月比2.8%減、輸入は同1.4%減と、このところ輸出の減少が目立っている。

イギリス:外需や住宅投資の減少などにより、景気は減速している。ただし、個人消費や設備投資の伸びに支えられ、先行きに明るさがみられる。

イギリスでは、実質GDPが、98年10~12月期前期比年率0.3%増の後、99年1~3月期同0.2%増となった。1~3月期の需要項目別の寄与度(市場価格ベース)を見ると、外需や住宅投資が低下しているものの、個人消費や設備投資等の内需が成長に寄与している。

個人消費は、増加している。実質個人消費は1~3月期前期比年率5.5%増となり、小売売上数量指数は5月前月比1.0%増となった。設備投資は、増加している。実質非住宅投資は1~3月期前期比年率6.8%増となった。住宅投資は1~3月期前期比年率7.2%減となった。生産は、減少している。鉱工業生産は98年10~12月期前期比0.8%減の後、99年1~3月期前期比0.9%減(製造業生産は同0.3%減)と減少している。失業率は、4月4.5%、5月4.5%と低水準で推移している。物価は、消費者物価上昇率が、4月前年同期比1.6%、5月同1.3%(住宅ローン利払費を除いた消費者物価上昇率は、4月前年同期比2.4%、5月同2.1%)と安定している。

経常収支は、98年10~12月期9.5億ポンドの黒字の後、99年1~3月期は18.3億ポンドの赤字と、2四半期ぶりに赤字に転落した。貿易収支は、4月21.8億ポンドの赤字となり、ポンドの増価を受けて、赤字幅は拡大傾向にある。

金融面の動向を見ると、短期金利は、度重なる利下げの影響で利回りは低下している。長期金利は、上昇している。マネーサプライ(M4)増加率は、4月前年同月比7.3%増、5月同7.0%増となった。

なお、中央銀行であるイングランド銀行は、ポンド高とこれによる物価下落への懸念等から、6月10日に政策金利を年5.00%に引き下げた。

イタリア:景気は一進一退で推移している。個人消費、投資が増加しているが、外需は減少している。失業率は高水準で推移している。物価は安定している。

イタリアでは、実質GDPは、98年10~12月期前期比年率1.0%減の後、99年1~3月期は同0.7%増となり、景気は一進一退で推移している。

個人消費は、実質個人消費が98年10~12月期前期比年率0.5%減となった後、99年1~3月期同2.5%増となった。固定投資は、実質固定投資が98年10~12期前期比年率1.6%減、99年1~3月期同5.5%増となった。輸出は1~3月期前期比年率5.2%増と約1年ぶりに増加したが、輸入も同11.8%増となったことから、純輸出の寄与度は▲1.5%となった。

鉱工業生産は、4月前月比1.4%減、前年同月比2.2%減と減少している。ISCO(国立経済研究所)のアンケート調査によると、生産見通しはこのところ改善している。

失業率は、高水準で推移しており、4月12.1%となった。物価は、生計費上昇率が5月前年同月比1.6%増、工業品生産者価格上昇率が5月同▲1.4%と安定している。

経常収支は12月3兆1410億リラの黒字となった。輸出は4月前年同期比6.0%減、輸入は同1.4%減となり貿易収支は4月1兆2310億リラの黒字となった。

中東ヨーロッパ:ポーランドでは景気の拡大テンポは鈍化している。ハンガリーでは景 気の拡大テンポは鈍化している。チェッコでは景気は後退している。

ポーランドでは、実質GDPが98年10~12月期前年同期比2.9%増、99年1~3月期同1.5%増(速報値)となり、景気の拡大テンポは鈍化している。鉱工業生産は、99年1~3月期前年同期比3.1%減、4月前年同月比0.3%増、5月同2.3%増と増加してきている。失業率は、1~3月期11.8%、4月11.8%、5月11.6%となっている。物価上昇率は、消費者物価上昇率で1~3月期前年同期比6.2%、4月前年同月比6.3%、5月同6.4%と安定している。経常収支赤字は、98年10~12月期29.6億ドル、99年1~3月期22.2億ドルと若干縮小した。

ハンガリーでは、実質GDPが、98年10~12月期前年同期比5.2%増、99年1~3月期同3.3%増となり、景気の拡大テンポは鈍化している。鉱工業生産は、99年1~3月期前年同期比7.3%増、4月前年同月比7.2%増、5月同3.9%増となった。失業率は、1~3月期10.4%、4~6月期9.6%と低下してきている。物価上昇率は、消費者物価上昇率で1~3月期前年同期比9.5%、4月前年同月比9.4%、5月同8.9%と高水準ながら低下してきている。経常収支は、98年10~12月期9.6億ドル、99年1~3月期6.0億ドルの赤字となり、赤字幅は縮小した。

チェッコでは、実質GDPが、98年10~12月期前年同期比3.9%減、99年1~3月期同4.5%減となり、景気は後退している。鉱工業生産は、99年1~3月期前年同期比9.1%減、4月前年同月比 6.5%減と減少幅が縮小している。失業率は、1~3月期8.3%、4月8.2%、5月8.1%と低下傾向にある。物価上昇率は、消費者物価上昇率で1~3月期前年同期比2.9%、4月前年同月比2.5%、5月同2.4%と低下している。経常収支は、98年10~12月期6.0億ドル、99年1~3月期3.2億ドルの赤字となり、赤字幅は縮小した。

ロシア:景気は後退している。

ロシアでは、実質GDPは、98年10~12月期前年同期比7.8%減、99年1~3月期同3.0%減となり、景気は後退している。鉱工業生産は、ルーブル安を背景に輸入代替が進んだこと等により、1~3月期前年同期比2.4%減の後、4月前年同月比1.5%増、5月同6.1%増と増加傾向にある。個人消費は、1~3月期前年同期比20.8%減、4月前年同月比20.0%減と大幅に減少している。固定投資は、実質総固定投資(政府・民間)で1~3月期前年同期比3.1%減、4月前年同月比1.1%減と減少幅が縮小している。

失業率(ILO基準)は、1~3月期14.0%、4月14.2%、5月14.2%と高水準で推移している。物価は、ルーブル安等により、消費者物価上昇率で1~3月期前年同期比107.6%(前期比16.0%)、4~6月期同111.7%(同3.0%)と物価は高騰を続けている。

貿易収支(個人業者による「シャトル貿易」を含まない)は、98年10~12月期120.8億ドル、99年1~3月期80.5億ドルとなっている。輸出は、98年10~12月期前年同期比20.8%減の後、99年1~3月期同15.4%減となった。輸入は、98年10~12月期同57.4%減、99年1~3月期同48.2%減と大幅な減少が続いている。

金融面の動向を見ると、マネーサプライ(M2)は2月前年同月比27.8%増、3月同31.5%増と増加している。また、中央銀行は6月10日に、昨年の7月以降初めて公定歩合を60%から55%へ引き下げ、即日実施した。

トピック:イタリアの財政4ヵ年計画

3 アジア等 東アジアの景気は総じて底入れ

東アジアでは、多くの国で金融部門をはじめとする経済構造改革を更に進める必要があるが、景気は総じて底入れしたとみられる。実質GDP成長率は、韓国、シンガポール、タイ、フィリピンで99年1~3月期に、インドネシアで4~6月期に前年同期比でプラス成長に転じ、マレイシア、香港でも1~3月期にマイナス幅が縮小した。また、中国では8.3%と比較的高い成長を維持し、台湾でも成長率が高まった。

鉱工業生産は、韓国、シンガポール、タイなどで回復がみられる。雇用情勢は、依然として厳しい。物価上昇率は、総じて低下しており、中国、香港では下落幅が拡大している。

輸出は、ドルベースでは総じて減少が続いていたが、一部の国を除き増加に転じている。一方、輸入も多くの国で増加に転じている。貿易収支の黒字幅は縮小している国が多い。

各国の通貨は、経常収支の改善や外貨準備高の増加等を背景に、総じて落ち着きをみせている。また、通貨の安定がみられることから、短期金利は多くの国で通貨危機前の水準まで低下している。

インドでは、生産がやや持ち直している。また、オーストラリアでは景気の拡大が続き、物価も安定している。

中国:景気は固定資産投資の増勢等により拡大しているが、消費の伸びは鈍化しており、輸出は減少している。物価の下落幅は拡大している。

香港:景気は後退している。物価の下落幅は拡大している。失業率は上昇している。

中国では、実質GDPは、98年前年比7.8%増の後、99年1~3月期前年同期比8.3%増となった。鉱工業生産(実質)は、98年9月以降回復しており、99年4月前年同月比9.1%増の後、5月同8.9%増となった。消費は、社会商品小売総額(消費財、実質(一部「名目値-小売物価上昇率」より求めた試算値))をみると、4月前年同月比9.2%増の後、5月同8.8%増と堅調なものの、このところ伸びが鈍化している。固定資産投資(国有部門、名目)は、98年後半以降政府によるインフラ投資を中心に増勢を強め、99年1~4月期前年同期比18.1%増の後、1~5月期同17.6%増となり、高水準で推移している。物価の下落幅は拡大している。消費者物価上昇率をみると、1~3月期前年同期比▲1.4%の後、4月、5月ともに前年同月比▲2.2%となっており、98年4月以降14か月連続で下落している。

貿易収支をみると、輸出の減少に加え輸入もこのところ増加していることから、黒字幅が大幅に縮小している。貿易収支黒字は、1~3月期42.8億ドルの後、4月9.6億ドル、5月18.2億ドルとなった。輸出は、香港向け輸出の減少等から98年8月頃より減少傾向にあるが、4月前年同月比7.3%減の後、5月同4.2%増となり、99年に入り初めてプラスの伸びとなった。一方、輸入は、4月前年同月比18.7%増の後、5月は同21.5%増となり、伸びが高まっている。

金融面の動向をみると、マネーサプライ増加率(M2、期末残)は4月前年同月比17.9%の後、5月は同17.2%と、やや低下した(99年目標圏:14~15%)。人民元レートは、ドルに対してほぼ横ばいで推移している。外貨準備高は、4月1,467億ドル(暫定値)となった。98年の経常収支黒字幅は、293億ドル(GDP比3.0%)となっている。なお人民銀行(中央銀行)は、6月10日、預金金利、貸出金利の引下げ(それぞれ平均1%、0.75%の引下げ)を行った。

香港では、実質GDPは98年前年比5.1%減の後、個人消費の冷え込みや固定資本形成の一層の減少等から99年1~3月期前年同期比は3.4%減となり、5四半期連続のマイナス成長となった。個人消費は、98年10~12月期前年同期比9.1%減の後、99年1~3月期同4.8%減と減少幅が縮小した。小売売上高をみると、99年1~3月期前年同期比13.8%減の後、自動車、耐久消費財等の減少から4月前年同月比10%減と減少が続いている。固定資本形成は、98年10~12月期前年同期比20.5%減の後、99年1~3月期は機械設備投資の不振等から同24.4%減と減少幅が更に拡大した。物価の下落幅は拡大している。消費者物価上昇率は、98年10月以降前年同月比マイナスが続いており、99年1~3月期前年同期比▲1.5%の後、住宅、衣料・靴等の下落から4月前年同月比▲3.3%、5月同▲3.5%となった。失業率は上昇しており、99年1月~3月6.2%の後、99年2月~4月6.3%となり、最悪の記録を更新した。貿易動向をみると、輸出、輸入ともに減少しているが、貿易収支赤字は99年1~3月期16.7億ドルの後、4月8.7億ドル、5月0.4億ドルとなった。輸出は、99年1~3月期前年同期比9.0%減の後、4月前年同月比8.2%減、5月同4.2%減となった。一方、輸入は、99年1~3月期前年同期比13.9%減の後、4月前年同月比15.0%減、5月同12.5%減と大幅な減少が続いている。

韓国:景気は回復しつつある。失業率は高水準ながらも、やや低下している。

韓国では、実質GDPは、98年10~12月期前年同期比5.3%減の後、99年1~3月期同4.6%増となり、5四半期ぶりにプラス成長に転じた。なお、99年1~3月期の成長率を内外需別にみると、内需寄与度の7.2%増に対して外需寄与度は1.9%減となった。民間最終消費は、98年10~12月期前年同期比6.9%減の後、99年1~3月期同6.3%増と増加に転じている。投資は、建設投資が99年1~3月期前年同期比13.7%減となったものの、設備投資が1~3月期同12.9%増、在庫投資が1~3月期同5.2%増とプラスを記録した。

鉱工業生産(原数値)は、99年1~3月期前年同期比12.3%増の後、99年4月前年同月比17.1%増、5月は同21.8%増となり、このところ2桁の増加が続いている。鉱工業生産指数(季節調整値)の水準をみると、99年3月121.4の後、4月119.1と、通貨・金融危機前の水準を上回っている。製造業稼働率は、99年1~3月71.3%の後、99年4月74.2%、5月76.5%と改善している。失業率(季調値)は、依然として高水準ながら、99年4月6.7%の後、5月は6.4%とやや低下している。失業者数は、99年2月に178.5万人と過去最大を記録した後徐々に減少し、99年5月には140.6万人となった。物価をみると、消費者物価は安定しており、生産者物価は下落に転じている。消費者物価上昇率は99年5月前年同月比0.8%、6月同0.6%となった。生産者物価上昇率は99年5月前年同月比▲2.6%、6月同▲3.2%となった。

国際収支をみると、輸出は、99年5月前年同月比1.9%増の後、6月は同12.8%増となった。輸入は、5月前年同月比24.5%増の後、6月同31.8%増となり、4ヵ月連続の増加となった。貿易収支は、5月20.7億ドルの後、6月27.7億ドルと安定した黒字基調が続いている。経常収支は4月20.2億ドルの黒字の後、5月20.4億ドルの黒字となった。

金融面の動向をみると、会社債収益率(期中平均)は、景気回復に重点を置いた政策が反映され、5月に8.3%と通貨・金融危機以前より低水準となっている。通貨供給量(M2)の期中平均残高は、5月前年同月比31.0%増となっている。為替レートは、このところ1ドル=1,100ウオン台で安定的に推移している。外貨準備高は、5月614億ドルの後、6月620億ドルと増加している。

台湾:景気の拡大テンポはやや高まっている。

シンガポール:景気は回復の兆しがみられる。

台湾では、実質GDPは、98年10~12月期前年同期比3.7%増の後、1~3月期同4.3%増となった。投資は減少に転じたものの、個人消費は引き続き堅調で、輸出が高い伸びを示した。個人消費は、98年10~12月期前年同期比7.1%増、1~3月期同5.0%増となった。一方、固定資本形成は、民間投資の落ち込みにより、98年10~12月期同0.1%増から1~3月期同5.9%減となった。純輸出の増加寄与度は98年10~12月期の▲1.5%から1~3月期は3.7%となった。

鉱工業生産は、98年10~12月期前年同期比0.7%増の後、1~3月期は同5.7%増と回復がみられる。失業率は、1~3月期2.8%、4月、5月ともに2.8%と横ばいで推移している。物価をみると、消費者物価上昇率は、食料品価格の落ち着きに伴い、1~3月期前年同期比0.7%、4~6月期同▲0.1%となった。卸売物価上昇率は、1~3月期前年同期比▲8.0%の後、4~6月期は同▲6.0%と下落幅がやや縮小した。

経常収支は、黒字幅が拡大し、1~3月期約21億ドルの黒字となった。輸出は98年中、アジア向けを中心に低迷したが、1~3月期には前年同期比3.5%増、4月前年同月比0.7%増、5月同13.7%増と増加に転じている。一方、輸入は、1~3月期前年同期比6.8%減、4月前年同月比7.4%減の後、5月は同0.2%増と増加に転じた。貿易収支は1~3月期26.7億ドルと黒字幅が拡大した。

金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)は、1~3月期前年同期比7.9%増、4月前年同月比9.1%増、5月同9.3%増となり、目標圏内で推移している(99年目標圏:6~11%)。

シンガポールでは、実質GDPは、98年10~12月期前年同期比0.8%減の後、1~3月期には製造業が力強い伸びを示したことから、同1.2%増と増加に転じた。政府は、99年の実質GDP成長率の見通しを▲1.0~1.0%から0~2%へと上方修正している。製造業生産は、98年10~12月期前年同期比2.6%減の後、エレクトロニクスや化学の増加により1~3月期同6.5%増と増加に転じ、4月前年同月比4.8%増、5月同16.4%増となった。個人消費は、98年10~12月期前年同期比2.2%減の後、1~3月期同1.1%減となった。小売販売額(名目)をみると、1~3月期には前年同期比0.7%増、4月前年同月比0.5%減となっている。固定資本形成は、98年10~12月期前年同期比18.0%減の後、1~3月期同15.9%減と減少が続いている。物価をみると、消費者物価上昇率は、1~3月期前年同期比▲0.6%、4月前年同月比▲0.3%と下落が続いていたが、5月には同0.1%となった。失業率(季節調整値)は12月4.4%の後、3月は3.9%とやや低下している。

貿易収支は、黒字が続いている。貿易収支黒字は減少傾向にあり、1~3月期10.8億ドルの後、4月4.1億ドル、5月2.6億ドルとなった。輸出は、1~3月期前年同期比10.7%減、4月前年同月比1.8%減の後、5月同3.4%増となった。一方輸入も、1~3月期前年同期比11.6%減の後、4月前年同月比1.9%増、2月同10.8%増と増加に転じている。経常収支黒字は、98年10~12月期の51.2億ドルから1~3月期は40.7億ドルへとやや黒字幅が縮小した。

金融面の動向をみると、マネーサプライ(M2)増加率は、11月以降郵便貯蓄銀行の預金がM2に計上されたことから上昇率が大幅に高まっており、4月末前年同月比29.4%となっている(ただし、郵便貯蓄銀行の預金を含まないで試算すると、3月同8.2%、4月同9.2%となっている)。

アセアン:景気は総じて底入れしつつある。

アセアン各国の動向をみると、インドネシアでは、景気底入れの兆しがみられる。実質GDPは、99年1~3月期前年同期比10.3%減の後、99年4~6月期同1.8%増となり、6四半期ぶりのプラス成長を記録した。製造業生産は、98年10~12月期前年同期比12.2%減の後、99年1~3月期は同0.1%増と5四半期ぶりにプラスに転じた。物価は、消費者物価上昇率が、99年4月前年同月比38.0%の後、5月同30.7%、6月同24.5%と騰勢は大幅に鈍化している。貿易収支(通関ベース)は、98年10~12月期44.2億ドルの黒字、99年1~3月期46.0億ドルと大幅な黒字が続いている。輸出は、99年1~3月期同19.0%減の後、4月は前年同月比3.4%とほぼ1年ぶりのプラスとなった。輸入は、99年1~3月期前年同期比23.2%減の後、4月は前年同月比6.5%減となり、減少傾向に歯止めがかかりつつある。金融面の動向をみると、短期金利は98年末頃から低下し始め、99年5月には29.8%となった。

タイでは、景気は底入れしたとみられる。実質GDPは、98年10~12月期5.0%減の後、1~3月期には0.9%増と8四半期ぶりにプラスに転じた。製造業生産は、98年10~12月期前年同期比3.6%減の後、1~3月期には同4.6%増、4月8.9%増と増加に転じた。物価をみると、消費者物価上昇率は低下しており、1~3月期前年同期比2.7%、4~6月期同▲0.4%となっている。経常収支は大幅な黒字が続いており、1~3月期34.6億ドルの黒字となった。輸出は、98年10~12月期前年同期比9.9%減、1~3月期同4.0%減の後、4月には前年同月比1.7%増と増加に転じた。輸入は、98年10~12月期前年同期比18.9%減、1~3月期同1.0%減と減少幅が大きく縮小した後、4月は前年同月比3.9%増となった。貿易収支はやや黒字幅が縮小し、98年10~12月期33.6億ドル、1~3月期27.0億ドル、4月6.5億ドルの黒字となっている。金融面の動向をみると、金利は低下している。なお、タイ中央銀行は、6月25日より公定歩合を7.0%から5.5%へと引き下げた。

マレイシアでは、景気底入れの兆しがみられる。実質GDPは、98年10~12月期前年同期比10.3%減の後、1~3月期同1.3%減となった。鉱工業生産は、98年10~12月前年同期比10.9%減と大幅な減少となっていたが、99年2月以降増加に転じており、1~3月期同2.5%減、4月前年同月比2.6%増となっている。物価をみると、消費者物価上昇率は低下しており、1~3月期前年同期比4.0%、4月前年同月比2.9%、5月同2.9%となった。貿易収支は黒字幅がやや縮小しており、98年10~12月期52.1億ドルの黒字の後、1~3月期41.2億ドルの黒字、4月16.4億ドルの黒字となった。輸出は98年10~12月期前月同期比5.2%増の後、1~3月期同4.6%増、4月前年同月比14.2%増となった。輸入は98年10~12月期前年同期比20.5%減の後、1~3月期同6.6%減と減少幅が縮小し、4月には前年同月比2.4%増と増加に転じている。金融面の動向をみると、金利は低下している。また、マネーサプライ(M2)の伸びはやや増加しており、1~3月期前年同期比4.6%、4月前年同月比8.1%、5月同10.8%となっている。

フィリピンでは、景気回復の兆しがみられる。実質GDPは、98年10~12月期前年同期比2.0%減の後、99年1~3月期同1.2%増と、4四半期ぶりにプラスとなった。製造業生産は、98年10~12月期前年同期比11.9%減、99年1~3月期同4.5%減とマイナス幅は縮小している。物価は、消費者物価上昇率が低下しつつあり、99年1~3月期前年同期比10.1%の後、4月前年同月比8.0%、5月同6.7%となった。貿易収支(通関ベース)は、99年1~3月期5.5億ドルと黒字基調が続いていたが、4月は▲2.5億ドルとほぼ1年ぶりの赤字となった。輸出は、99年1~3月期前年同期比15.2%増となった後、4月は前年同月比2.7%増と増加率は低下している。これに対して輸入は、99年1~3月期前年同期比9.1%減と減少テンポが鈍化した後、4月は前年同月比5.7%増とプラスに転じている。金融面の動向をみると、このところ短期金利は緩やかに低下している。

インド:鉱工業生産は鈍化が続いていたが、やや持ちなおしている。物価の騰勢は弱まっている。輸入の減少により、貿易収支の赤字幅は縮小している。

インドでは、実質GDPは、97年度(4~3月)前年度比5.0%増の後、98年度は農業生産の回復から6.0%増(改訂値)とやや回復した。

鉱工業生産は、98年7~9月期前年同期比3.6%増、10~12月期同3.0%増と伸びが鈍化していたが、99年1月前年同月比5.3%増、2月同4.9%増とやや持ちなおした。物価は、食料品価格の高騰を主因に98年後半に大幅に上昇したが、99年に入り騰勢は弱まっている。卸売物価上昇率は10~12月期前年同期比7.6%、1~3月期同5.0%の後、4月前年同月比4.2%、5月同3.7%となった。消費者物価上昇率(工業労働者対象)は、10~12月期前年同期比17.7%、1~3月期同8.9%の後、4月前年同月比8.4%となった。

国際収支をみると、輸出(通関、ドルベース)は、アジア向けを中心に減少が続き、10~12月期前年同期比5.6%減となった後、1~3月期は同0.1%減と減少幅が縮小した。輸入は、10~12月期に前年同期比2.8%減と減少に転じ、1~3月期は金輸入の減少などから同7.9%減となった。貿易収支赤字は、7~9月期22.2億ドル、10~12月期22.6億ドルと高水準の赤字が続いた後、1~3月期は10.0億ドルと赤字幅が縮小している。

金融面の動向をみると、インド準備銀行(中央銀行)は3月に公定歩合を1%引下げ8%に、現金預金準備率を0.5%引下げ10.5%とした。現金預金準備率は5月に再度引下げられ、10%となった。金利(TB91日物、期中平均)は、1~3月期9.35%の後、4月8.62%、5月8.77%となった。通貨供給量(M3、期末残高)は、98年末から20%近い増加が続いていたが、99年3月前年同月比17.8%増、4月同18.0%増と、増加率はやや低下した。

オーストラリア:景気は拡大している。経常収支の赤字幅は拡大している。

オーストラリアでは、実質GDP成長率は、98年10~12月期前期比年率6.3%増の後、99年1~3月期は同4.3%増となり、景気は拡大している。

消費は、実質家計最終消費支出が10~12月期前期比1.5%増のあと1.7%増と堅調に推移している。小売売上高は4月前月比1.8%減の後、5月0.1%増となった。投資は、実質民間機械設備投資が、10~12月期前期比15.5%減の後、1~3月期同21.6%増となった。民間住宅投資は、10~12月期前期比2.1%減の後、1~3月期同1.4%増となった。住宅建設許可件数は、4月前月比2.5%減の後、5月同3.5%増となった。民間非住宅建設投資は10~12月期に0.9%減の後、1~3月期同9.2%減となった。

失業率は、4月7.5%の後、5月は7.5%となり、このところ横ばいで推移している。

消費者物価上昇率は、10~12月期前年同期比1.6%の後、1~3月期同1.2%と安定している。

経常収支は、1~3月期88.5億豪ドルの赤字となり、前期に比べ赤字幅が拡大している。財の輸出は1~3月期前期比5.0%減、財の輸入は同0.1%増となった。この結果、財の貿易収支は1~3月期36.2億豪ドルと赤字幅は拡大した。

金融面の動向をみると、長期金利(10年物国債)は、このところ上昇している。総合株価指数は4月27日に3145.2と過去最高値を記録した後、5月末まで下落傾向にあったが、このところ上昇傾向にある。オーストラリア・ドルは、6月末日現在、対米ドルで3月末比4.6%増価となった。

オーストラリア政府は、5月11日に99年度(99年7月~2000年6月)の経済・財政見通しを発表した。98年度のGDP成長率を4.25%と見込んでおり、99年度見通しを3.0%としている。

また、消費税(Goods and Services Tax)の導入と所得税減税を核とする税制改革案は6月29日に下院で可決され、2000年7月1日より導入されることとなった。

トピック:アジアの地域別輸出

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4 国際金融・商品 ユーロ、コソボ紛争長期化により減価

国際金融:ユーロは、コソボ紛争が長引いたことなどから総じて減価。

国際商品:原油価格は、6月末に、16ドル後半の水準まで回復。

【国際金融】

99年4~6月期の米ドル(実効相場)は、4月から5月上旬にかけてやや減価基調で推移したが、その後増価に転じ、6月半ばに減価する場面があったものの総じてやや増価基調で推移した(P2、図3)。対円では、4月から5月上旬にかけては総じてほぼ横ばいで推移したが、5月半ばに連邦準備制度が金融政策姿勢を「中立」から「引締め」方向へと転換することを発表したことから増価した。その後は米株価の下落や予想を上回る日本の1~3月期実質GDP成長率が発表されたことなどから減価した後、やや増価した。一方、対ユーロでは、コソボ紛争が長引いたことなどから増価基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル実効相場指数(1990=100)をみると、99年6月30日現在111.0、99年3月末比1.56%の増価となっている。内訳をみると、99年6月30日現在、対円では99年3月末比2.00%増価、対ユーロで同4.14%増価、対ポンドで同2.19%増価した。

なお、アジア通貨は、総じて対ドルでほぼ横ばいで推移したが、・2]D^H<1%YK_1・は総選挙が大きな混乱なく実施されたため、6月以降増価した。

【国際商品市況】

国際商品価格全体では、CRB商品先物指数は、3月からの原油価格の高騰を主因とした上昇基調に歯止めがかかり、4月以降は190ポイントを挟んで小幅に上下していたものの、5月下旬には、ほぼ2ヵ月ぶりとなる186ポイント割れ寸前まで下落した。その後6月上旬に急上昇し、193ポイント台まで回復した後は、総じて安定的に推移した。

商品別では、穀物は、米国中西部の天候要因に応じて上下する展開となり、総じてやや弱含んだ。貴金属では、金が、5月7日の英国政府の保有金売却発表を契機に急落し、その後もほぼ一方的に下落した。非鉄では、銅が、5月に米国の住宅着工件数の減少や在庫増加等から急落したが、6月以降は鉱山会社の生産調整の影響などもあり、上昇基調に転じた。

【石油情勢】

原油価格(北海ブレント・スポット価格)の4月以降の動きをみると、4月初めは14ドル台半ばから始まり、追加減産履行観測の高まりから一気に騰勢を強め、5月上旬には97年12月以来となる16ドル台後半を記録した。その後は、利食い売りの動きが活発化したことなどから弱含んだが、6月になると産油国の5月の減産遵守率が改善したとの情報が入ったため、再び上昇基調に転じ、月末には16ドル台後半の水準まで回復した。