月例経済報告(平成20年2月)

―景気は、このところ回復が緩やかになっている。―

先行きについては、設備投資や輸出が増加基調で推移し、緩やかな景気回復が続くと期待される。
ただし、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の減速や金融資本市場の変動、原油価格の動向等から、景気の下振れリスクが高まっていることに留意する必要がある。

平成20年2月22日

内閣府

総論

(我が国経済の基調判断)

景気は、このところ回復が緩やかになっている。

  • 企業収益は、改善に足踏みがみられる。設備投資は、緩やかに増加している。
  • 雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる。
  • 個人消費は、おおむね横ばいとなっている。
  • 住宅建設は、持ち直しの動きがみられるものの、依然として低い水準にある。
  • 輸出は、緩やかに増加している。生産は、増勢が鈍化している。

先行きについては、設備投資や輸出が増加基調で推移し、緩やかな景気回復が続くと期待される。ただし、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の減速や金融資本市場の変動、原油価格の動向等から、景気の下振れリスクが高まっていることに留意する必要がある。

(政策の基本的態度)

政府は、「日本経済の進路と戦略」と「経済財政改革の基本方針2007」を一体として、改革を推進する。平成19年度補正予算等の着実な実施を図る。
中小企業を巡る経営環境が厳しくなっていることにかんがみ、政府は、2月20日に「年度末に向けた中小企業対策について」を取りまとめた。
民間需要主導の持続的な成長を図るとともに、これと両立する安定的な物価上昇率を定着させるため、政府と日本銀行は、上記基本方針に示されたマクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、政策運営を行う。

各論

1.消費・投資などの需要動向

2007年10-12月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、民間住宅がマイナスに寄与したものの、民間企業設備、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)がプラスに寄与したことなどから、前期比で0.9%増(年率3.7%増)となった(2四半期連続のプラス)。また、名目GDP成長率は前期比で0.3%増となった(2四半期連続のプラス)。

個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

個人消費は、おおむね横ばいとなっている。消費者マインドは悪化しており、所得はおおむね横ばいで推移している。需要側統計(「家計調査」等)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、12月は前月に比べ減少し、おおむね横ばいとなっている。
個別の指標について、12月の動きをみると、「家計調査」では、実質消費支出は前月から増加した。販売側の統計をみると、小売業販売額は前月に比べて減少した。新車販売台数は、12月減少した後、1月は増加した。旅行は、国内旅行、海外旅行ともに前年を上回った。外食は、前年を上回った。
先行きについては、雇用情勢の改善に足踏みがみられ、所得がおおむね横ばいで推移していることから、当面、横ばい圏内の動きが続くと見込まれる。

設備投資は、緩やかに増加している。

設備投資は、緩やかに増加している。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、2007年7-9月期は製造業は減少したものの、非製造業は増加している。機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、おおむね横ばいとなっている。ソフトウェア投資は、おおむね横ばいとなっている。
「日銀短観」によれば、2007年度設備投資計画は全規模全産業、全規模製造業、全規模非製造業でともに5年連続の増加が見込まれている。また、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感は横ばいとなっている。先行指標をみると、機械受注は、おおむね横ばいとなっている。建築工事費予定額は、持ち直している。先行きについては、当面、緩やかな増加傾向で推移すると見込まれるものの、企業収益の改善に足踏みがみられることもあり、注視が必要である。

住宅建設は、持ち直しの動きがみられるものの、依然として低い水準にある。

住宅建設は、持ち直しの動きがみられるものの、依然として低い水準にある。持家の着工は持ち直した後おおむね横ばいとなっている。貸家、分譲住宅の着工は持ち直しの動きがみられるものの依然として低い水準にある。総戸数は、12月は前月比9.9%増の年率105.0万戸となった。総床面積も、おおむね総戸数と同様の動きをしている。なお、2007年の住宅建設は、持家、貸家、分譲住宅がともに減少したことから、前年比17.8%減の106.1万戸となり、5年振りの減少となった。先行きについては、改正建築基準法施行の影響が当面続くと見込まれる。

公共投資は、総じて低調に推移している。

公共投資は、総じて低調に推移している。
公共投資の関連予算をみると、2008年2月6日に成立した国の平成19年度補正予算において、約0.4兆円の災害対策費等の予算措置を講じることとしたが、補正後の公共事業関係費は前年度を下回った。また、平成19年度地方財政計画では、投資的経費のうち地方単独事業費について、中期的に計画的な抑制を図る中で前年度比3.0%減(かい離是正後は、14.9%減)としつつ、重点的な配分を行うとしている。
2007年10-12月期の公共工事受注額は前年を上回ったが、公共工事請負金額は前年を下回った。2008年1月の公共工事請負金額は前年を下回った。
先行きについては、国、地方の予算状況などを踏まえると、総じて低調に推移していくものと見込まれる。

輸出は、緩やかに増加している。輸入は、横ばいとなっている。貿易・サービス収支の黒字は、減少している。

輸出は、緩やかに増加している。地域別にみると、アジア向け輸出は、輸送用機器が増加し、全体として増加している。アメリカ向け輸出は、輸送用機器は堅調なものの、電気機器が弱含み、全体として横ばいとなっている。EU向け輸出は、横ばいとなっている。先行きについては、アメリカ経済の減速等に留意する必要がある。
輸入は、横ばいとなっている。地域別にみると、アジアからの輸入は、機械機器が底堅く推移し、全体として横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、機械機器が増加し、全体として緩やかに増加している。EUからの輸入は、緩やかに減少している。
国際収支をみると、輸出金額が緩やかに増加し、輸入金額が増加しており、貿易収支の黒字幅は減少している。また、サービス収支の赤字幅は横ばいとなっている。そのため、貿易・サービス収支の黒字は減少している。

2.企業活動と雇用情勢

生産は、増勢が鈍化している。

鉱工業生産は、情報化関連生産財などを中心に、増勢が鈍化している。
先行きについては、在庫面からの生産下押し圧力は小さいと考えられるものの、今後の輸出の動向等には留意する必要がある。なお、製造工業生産予測調査においては、1月、2月ともに減少が見込まれている。
また、第3次産業活動は、横ばいとなっている。

企業収益は、改善に足踏みがみられる。また、企業の業況判断は、慎重さがみられる。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。

企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、2007年7-9月期の経常利益は、売上高が増加したものの、前年同期比0.7%減となり、21四半期ぶりの減益となった。業種別にみると、製造業が3.6%の減益、非製造業が1.5%の増益となっている。「日銀短観」によると、2007年度の売上高は5年連続の増収、経常利益は6年連続の増益を見込んでいる。
企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、慎重さがみられる。大企業製造業の業況判断は3四半期ぶりの悪化、大企業非製造業の業況判断は2四半期連続の悪化となった。中小企業製造業の業況判断は4四半期ぶりの改善、中小企業非製造業の業況判断は3四半期連続の悪化となった。
また、企業倒産は、緩やかな増加傾向にある。倒産件数は、12月1,097件の後、1月は1,174件となった。負債総額は、12月4,413億円の後、1月は5,812億円となった。

雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる。

雇用情勢は、厳しさが残るなかで、改善に足踏みがみられる。
完全失業率は、低下傾向で推移してきたが、足踏みがみられ、12月は前月同水準の3.8%となった。完全失業者数は増加し、就業者数は減少した。15~24歳層の完全失業率は高水準ながら低下傾向で推移している。
新規求人数は減少している。有効求人倍率は低下している。雇用者数は弱含みで推移している。製造業の残業時間は増加している。
賃金の動きをみると、定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱含みで推移している。なお、11-12月計でみたボーナスを含む特別給与は前年を下回っている。

3.物価と金融情勢

国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、このところ石油製品を中心に上昇しているが、基調としてはわずかな上昇にとどまっている。

国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。1月の国内企業物価は、前月比で0.2%上昇した。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇しているものの、為替の影響により円ベースでは下落している。
企業向けサービス価格の基調を「海外要因を除くベース」でみると、弱含んでいる。
消費者物価の基調を「生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合」(いわゆる「コアコア」)でみると、わずかな上昇にとどまっている。12月は、季節調整済前月比で0.1%となった。一方、石油製品の上昇などにより、「生鮮食品を除く総合」(いわゆる「コア」)は、上昇している。12月は、季節調整済前月比で0.4%上昇した。先行きについては、消費者物価(コアコア)は、当面、わずかながらも上昇傾向で推移すると見込まれる。
ただし、海外経済や原油価格の動向などが今後の物価動向に与える影響については注視していく必要がある。

株価(日経平均株価)は、12,500円台まで下落した後、13,800円台まで上昇し、その後13,300円台で推移している。長期金利は、1.3%台前半まで低下した後、1.4%台後半まで上昇し、その後1.4%台前半で推移している。

株価は、アメリカ株価の動向等を背景に、12,500円台まで下落した後、13,800円台まで上昇し、その後13,300円台で推移している。対米ドル円レートは、105円台まで円高方向で推移した後、108円台まで円安方向で推移し、その後107円台で推移している。
短期金利についてみると、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.5%付近で推移している。ユーロ円金利(3ヶ月物)は、0.8%台で推移している。長期金利は、アメリカの長期金利の動向等を背景に、1.3%台前半まで低下した後、1.4%台後半まで上昇し、その後1.4%台前半で推移している。企業金融については、企業の資金繰り状況におおむね変化はみられず、民間債と国債との流通利回りスプレッドは総じて横ばいとなっている。
マネタリーベースは、前年比0.1%減となっている。M2+CDは、前年比2.1%の伸びとなっている。

4.海外経済

世界の景気は、減速の動きに広がりがみられるものの、回復を続けている。

アメリカでは、景気回復は弱いものとなっている。先行きについては、サブプライム住宅ローン問題を背景に、一段の下振れリスクがある。

2007年10-12月期は、内外需ともに寄与が縮小したことから、GDP成長率は前期比年率0.6%増に減速した。
消費の伸びは緩やかになっている。設備投資は増加している。住宅建設は減少している。
生産はおおむね横ばいとなっている。雇用面では、雇用者数の増加は緩やかであり、失業率はやや上昇している。物価面では、エネルギー価格等が上昇しており、コア物価上昇率が緩やかに上昇する動きもみられる。
1月22日には、前日に緊急に開催されたFOMCの声明文が公表され、フェデラル・ファンド・レート(FF金利)の誘導目標水準は0.75%引き下げられ、3.50%とされた。さらに、1月29・30日に開催された定例会合においても、FF金利の誘導目標水準を0.50%引き下げ、3.00%とすることが決定された。
また、2月13日に個人や企業への減税等を柱とした1,680億ドル規模の緊急経済対策法が成立した。

アジアでは、中国等で景気は拡大が続いている。

中国では、景気は拡大が続いている。固定資産投資は高い伸びが続いている。台湾、シンガポール、マレーシアでは、景気は拡大している。韓国では、景気は緩やかに拡大している。タイでは、景気は持ち直しの動きがみられる。

ユーロ圏では、景気回復は緩やかになっている。英国では、景気は回復している。

ユーロ圏では、景気回復は緩やかになっている。ドイツでは、景気回復は緩やかになっている。フランスでは、景気は回復している。
英国では、景気は回復している。イングランド銀行(BOE)は、2月7日の金融政策委員会で、政策金利(バンクレート)を0.25%ポイント引き下げ、5.25%とすることを決定した。

国際金融情勢等

金融情勢をみると、世界の主要な株価は、アメリカでは2月初めにかけて上昇した後下落し、ヨーロッパでは1月下旬にかけて下落した後おおむね横ばいで推移した。主要国の長期金利は、アメリカと英国では振れはあるものの上昇し、ドイツではおおむね横ばいで推移した。ドルは名目実効レートで1月下旬に減価した後、おおむね横ばいで推移した。原油価格は、おおむね90ドル前後で推移した後、過去最高水準となる100ドル超まで上昇した。