月例経済報告(平成20年1月)

―景気は、一部に弱さがみられるものの、回復している。―

先行きについては、企業部門が底堅く推移し、景気回復が続くと期待される。
一方、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の下振れリスクや金融資本市場の変動、原油価格の動向が内外経済に与える影響等には留意する必要がある。

平成20年1月18日

内閣府

総論

(我が国経済の基調判断)

景気は、一部に弱さがみられるものの、回復している。

  • 企業収益は、改善に足踏みがみられる。設備投資は、緩やかに増加している。
  • 雇用情勢は、厳しさが残るなかで、このところ改善に足踏みがみられる。
  • 個人消費は、おおむね横ばいとなっている。
  • 住宅建設は、持ち直しの動きがみられるものの、依然として低い水準にある。
  • 輸出は、増加している。生産は、緩やかに増加している。

先行きについては、企業部門が底堅く推移し、景気回復が続くと期待される。一方、サブプライム住宅ローン問題を背景とするアメリカ経済の下振れリスクや金融資本市場の変動、原油価格の動向が内外経済に与える影響等には留意する必要がある。

(政策の基本的態度)

政府は、12月19日、「平成20年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」を閣議了解した。同月24日、平成20年度予算政府案(概算)を閣議決定した。また、1月18日、経済財政に関する政府の新しい中期方針と展望を示した「日本経済の進路と戦略-開かれた国、全員参加の成長、環境との共生-」及び「平成20年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」を閣議決定し、平成20年度予算を国会に提出した。政府は、「日本経済の進路と戦略」と「経済財政改革の基本方針2007」を一体として、改革を推進する。
原油価格の高騰にかんがみ、政府は、12月25日に「原油価格の高騰に伴う中小企業、各業種、国民生活等への緊急対策の具体化について(取りまとめ)」を取りまとめた。また、財政規律を緩めないとの方針の下で、国民生活の安全・安心、地域活性化、原油価格高騰対応等にも配慮した補正予算を同月20日に閣議決定した。
民間需要主導の持続的な成長を図るとともに、これと両立する安定的な物価上昇率を定着させるため、政府と日本銀行は、上記基本方針に示されたマクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、政策運営を行う。

各論

1.消費・投資などの需要動向

個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

個人消費は、おおむね横ばいとなっている。消費者マインドは悪化しており、所得はおおむね横ばいで推移している。需要側統計(「家計調査」等)と供給側統計(鉱工業出荷指数等)を合成した消費総合指数は、11月は前月に比べ増加し、おおむね横ばいとなっている。
個別の指標について、11月の動きをみると、「家計調査」では、実質消費支出は前月から減少した。販売側の統計をみると、小売業販売額は前月に比べて増加した。新車販売台数は、11月増加した後、12月は減少した。旅行は、海外旅行は前年を下回ったものの、国内旅行は前年を上回った。外食は、前年を上回った。
先行きについては、雇用情勢の改善に足踏みがみられ、所得がおおむね横ばいで推移していることから、当面、横ばい圏内の動きが続くと見込まれる。

設備投資は、緩やかに増加している。

設備投資は、緩やかに増加している。これを需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、2007年7-9月期は製造業は減少したものの、非製造業は増加している。機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、おおむね横ばいとなっている。ソフトウェア投資は、おおむね横ばいとなっている。
「日銀短観」によれば、2007年度設備投資計画は全規模全産業、全規模製造業、全規模非製造業でともに5年連続の増加が見込まれている。また、設備投資の動きに先行性がみられる設備過剰感は横ばいとなっている。先行指標をみると、機械受注は、おおむね横ばいとなっている。建築工事費予定額は、持ち直しの動きがみられる。先行きについては、当面、緩やかな増加傾向で推移すると見込まれるものの、企業収益の改善に足踏みがみられることもあり、注視が必要である。

住宅建設は、持ち直しの動きがみられるものの、依然として低い水準にある。

住宅建設は、持ち直しの動きがみられるものの、依然として低い水準にある。持家の着工は持ち直している。貸家、分譲住宅の着工は持ち直しの動きがみられるものの依然として低い水準にある。総戸数は、11月は前月比14.1%増の年率97.1万戸となった。総床面積も、おおむね総戸数と同様の動きをしている。先行きについては、改正建築基準法施行の影響が当面続くと見込まれる。

公共投資は、総じて低調に推移している。

公共投資は、総じて低調に推移している。
公共投資の関連予算をみると、平成19年度予算では、公共事業関係費について、前年度比3.5%減としつつ、地域の自立・活性化、成長力強化などへ重点化している。また、平成19年度地方財政計画では、投資的経費のうち地方単独事業費について、中期的に計画的な抑制を図る中で前年度比3.0%減(かい離是正後は、14.9%減)としつつ、重点的な配分を行うとしている。
2007年10-12月期の公共工事請負金額は前年を下回った。
先行きについては、国、地方の予算状況などを踏まえると、総じて低調に推移していくものと見込まれる。
なお、平成20年度一般会計予算案では、公共事業関係費について、前年度比3.1%減としつつ、地域の自立・活性化、安全・安心の確保等の課題に重点化している。また、平成20年度地方財政対策では、投資的経費のうち地方単独事業費について、中期的に計画的な抑制を図る中で前年度比3.0%程度減としつつ、重点的な配分を行うとしている。

輸出は、増加している。輸入は、横ばいとなっている。貿易・サービス収支の黒字は、増加している。

輸出は、増加している。地域別にみると、アジア向け輸出は、輸送用機器が増加し、全体として増加している。アメリカ向け輸出は、緩やかに増加している。EU向け輸出は、緩やかに増加している。先行きについては、アメリカ経済の今後の動向等に留意する必要がある。
輸入は、横ばいとなっている。地域別にみると、アジアからの輸入は、機械機器が底堅く推移し、全体として横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、機械機器が増加し、全体として緩やかに増加している。EUからの輸入は、緩やかに減少している。
国際収支をみると、輸出金額が増加し、輸入金額が横ばいとなっており、貿易収支の黒字幅は増加している。また、サービス収支の赤字幅は縮小している。そのため、貿易・サービス収支の黒字は増加している。

2.企業活動と雇用情勢

生産は、緩やかに増加している。

鉱工業生産は、輸出の増加などを受けて、緩やかに増加している。
先行きについては、在庫面からの生産下押し圧力は小さいと考えられることから、輸出が増加を続ければ、生産は緩やかに増加していくものと見込まれる。なお、製造工業生産予測調査においては、12月は増加、1月は横ばいが見込まれている。
また、第3次産業活動は、横ばいとなっている。

企業収益は、改善に足踏みがみられる。また、企業の業況判断は、慎重さがみられる。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。

企業収益の動向を「法人企業統計季報」でみると、2007年7-9月期の経常利益は、売上高が増加したものの、前年同期比0.7%減となり、21四半期ぶりの減益となった。業種別にみると、製造業が3.6%の減益、非製造業が1.5%の増益となっている。「日銀短観」によると、2007年度の売上高は5年連続の増収、経常利益は6年連続の増益を見込んでいる。
企業の業況判断について、「日銀短観」をみると、慎重さがみられる。大企業製造業の業況判断は3四半期ぶりの悪化、大企業非製造業の業況判断は2四半期連続の悪化となった。中小企業製造業の業況判断は4四半期ぶりの改善、中小企業非製造業の業況判断は3四半期連続の悪化となった。
また、企業倒産は、緩やかな増加傾向にある。倒産件数は、10月1,260件の後、11月は1,213件となった。負債総額は、10月4,612億円の後、11月は4,925億円となった。

雇用情勢は、厳しさが残るなかで、このところ改善に足踏みがみられる。

雇用情勢は、厳しさが残るなかで、このところ改善に足踏みがみられる。
完全失業率は、低下傾向で推移してきたが、このところ足踏みがみられる。ただし、11月は前月比0.2%ポイント低下し3.8%となった。完全失業者数は減少し、就業者数は増加した。15~24歳層の完全失業率は高水準ながら低下傾向で推移している。
新規求人数は減少している。有効求人倍率は低下している。雇用者数は弱含みで推移してきたが、11月は増加した。製造業の残業時間は増加している。
賃金の動きをみると、定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱含みで推移している。

3.物価と金融情勢

国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、このところ石油製品を中心に上昇しているが、基調としては横ばいとなっている。

国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。12月の国内企業物価は、石油製品の上昇などにより、前月比で0.4%上昇した。輸入物価(円ベース)は、上昇している。
企業向けサービス価格の基調を「海外要因を除くベース」でみると、弱含んでいる。
消費者物価の基調を「生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合」(いわゆる「コアコア」)でみると、横ばいとなっている。11月は、季節調整済前月比で0.1%となった。一方、石油製品の上昇などにより、「生鮮食品を除く総合」(いわゆるコア)は、上昇している。11月は、季節調整済前月比で0.4%上昇した。先行きについては、消費者物価(コアコア)は、当面、横ばい圏内で推移すると見込まれる。
ただし、海外経済や原油価格の動向などが今後の物価動向に与える影響については注視していく必要がある。

株価(日経平均株価)は、15,000円台から15,600円台まで上昇した後、13,500円台まで下落している。対米ドル円レートは、113円台から114円台まで円安方向で推移した後、106円台まで円高方向で推移している。

株価は、アメリカ株価の動向等を背景に、15,000円台から15,600円台まで上昇した後、13,500円台まで下落している。対米ドル円レートは、113円台から114円台まで円安方向で推移した後、106円台まで円高方向で推移している。
短期金利についてみると、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.5%付近で推移している。ユーロ円金利(3ヶ月物)は、0.8%台で推移している。長期金利は、アメリカの長期金利の動向等を背景に、1.4%台後半から1.5%台後半まで上昇した後、1.3%台後半まで低下している。企業金融については、企業の資金繰り状況におおむね変化はみられず、民間債と国債との流通利回りスプレッドは総じて横ばいとなっている。
マネタリーベースは、前年比0.4%の伸びとなっている。M2+CDは、前年比2.1%の伸びとなっている。

4.海外経済

世界の景気は回復している。

アメリカでは、住宅建設の減少等により、引き続き景気回復は緩やかなものとなっている。先行きについては、サブプライム住宅ローン問題を背景とした景気の下振れリスクに留意が必要である。

2007年7-9月期は、住宅建設が減少しているものの、消費や外需の増加などからGDP成長率は前期比年率4.9%増となった。
消費は緩やかに増加している。設備投資は増加している。住宅建設は減少している。
生産はこのところ弱含んでいる。雇用面では、雇用者数の増加は緩やかであり、失業率はやや上昇している。物価面では、エネルギー価格等が上昇しており、コア物価上昇率が緩やかに上昇する動きもみられる。
12月11日に開催されたFOMCでは、フェデラル・ファンド・レート(FF金利)の誘導目標水準を0.25%引き下げ、4.25%とすることが決定された。

アジアでは、中国等で景気は拡大が続いている。

中国では、景気は拡大が続いている。固定資産投資は高い伸びが続いている。台湾、シンガポール、マレーシアでは、景気は拡大している。韓国では、景気は緩やかに拡大している。タイでは、景気は持ち直しの動きがみられる。

ユーロ圏及び英国では、景気は回復している。

ユーロ圏では景気は回復している。ドイツでは、企業部門を中心に回復している。フランスでは、消費が増加するなど、回復している。
英国では、景気は回復している。

国際金融情勢等

金融情勢をみると、世界の主要な株価は上昇した後、下落した。主要国の長期金利は、下落した。ドルは、名目実効レートで減価した。原油価格は1月初めに過去最高水準の100ドル近くまで上昇後、下落した。