月例経済報告(平成14年11月)

―景気は、引き続き持ち直しに向けた動きがみられるものの、そのテンポはさらに緩やかになっている。―

先行きについては、景気は持ち直しに向かうことが期待されるが、アメリカ経済等への先行き懸念や我が国の株価の低迷など、環境は厳しさを増しており、我が国の最終需要が下押しされる懸念が強まっている。

平成14年11月12日

内閣府

総論

(我が国経済の基調判断)

景気は、引き続き持ち直しに向けた動きがみられるものの、そのテンポはさらに緩やかになっている。

  • 企業収益は改善の兆しがみられ、設備投資は下げ止まりつつある。
  • 雇用情勢は、一部に改善への動きがみられるものの、失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
  • 個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。
  • 輸出は弱含んでおり、生産は持ち直しの動きがさらに緩やかになっている。

先行きについては、景気は持ち直しに向かうことが期待されるが、アメリカ経済等への先行き懸念や我が国の株価の低迷など、環境は厳しさを増しており、我が国の最終需要が下押しされる懸念が強まっている。

(政策の基本的態度)

政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」を早期に具体化する中で、10月30日に、不良債権処理の加速等を通じた金融・産業の再生、経済活性化に向けた構造改革加速策、セーフティ・ネットの拡充を柱とする「改革加速のための総合対応策」をとりまとめた。雇用・中小企業のセーフティ・ネットの一層の活用・強化を図るため、今後の税収動向を踏まえて、引き続き必要な措置について検討することとしている。

日本銀行においては、同日、日本銀行当座預金残高目標を15~20兆円程度とするとともに、長期国債の買い入れを月1兆2千億円ペースに増額すること等を決定した。デフレ克服及び金融システム安定化に向け、政府・日本銀行は引き続き一体となって強力かつ総合的な取組を行う。

各論

1.消費・投資などの需要動向

個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。

個人消費は、需要側と販売側の動向を総合してみると、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。所得面で弱い動きが続いていること等から全体的な基調の改善には至らないものの、一部の業種や支出項目において増加の動きがみられる。
需要側の動向をみると、昨秋以降底固さがみられる。消費総合指数は3ヶ月前と比べ増加している。支出項目ごとの動向について家計調査をみると、実質消費支出は、引き続き基礎的な支出項目が底固く推移していることや、一時的な要因等から前月と比べて大きく増加した。
販売側の動向をみると、全体的に弱い動きとなっている。小売業販売額は弱い動きが続いている。チェーンストア販売額は、食料品は引き続き前年を上回ったものの、全体では前年を下回った。百貨店販売額は、残暑の影響や前年の反動もあって衣料品が前年を下回り、全体でも前年を下回った。なお、プロ野球優勝記念セールについては、一部に押し上げ効果がみられたものの、全体を底上げするほどには至らなかった。新車販売台数は、軽乗用車が前年割れしたものの、小型乗用車が大幅に増加し引き続き好調に推移したことから、前年を上回った。家電販売金額は、テレビ等が引き続き増加し、パソコンもこのところ減少幅を縮小してきているものの、全体では前年を下回った。旅行は、国内旅行は前年を下回り、海外旅行は米国における同時多発テロ事件の影響もあって昨年大きく減少した反動から、前年を大きく上回った。
消費者マインドは、持ち直しの動きがみられるものの、上昇幅は小さくなっている。

設備投資は、下げ止まりつつある。

設備投資は、平成13年に入って以降減少が続いてきたが、生産の持ち直し及び企業収益の下げ止まりを受けてこのところ下げ止まりつつある。需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、平成13年1-3月期以降減少が続いてきたが、平成14年に入ってから減少幅が縮小している。規模別にみると大中堅企業に比べ中小企業の減少幅の方が大きい。「法人企業動向調査」(資本金1億円以上)で平成14年7-9月期(実績見込)の設備投資をみると、下げ止まりつつある。また、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、横ばいとなっている。なお、これまで堅調に推移してきたソフトウェア投資は、弱含んでいる。
設備投資の今後の動向については、機械設備投資の先行指標である機械受注が平成13年1-3月期以降減少基調で推移してきたが、底入れから反転に向かいつつあるとみられることから、次第に底入れから反転に向かうものとみられる。ただし、日銀短観の平成14年度設備投資計画において減少が見込まれていること等を考慮すれば、底入れした後も低調に推移することが見込まれる。

住宅建設は、緩やかに減少している。

平成13年度の住宅建設は、前年度比3.3%減の117.3万戸となり、平成10年度以来3年ぶりに120万戸を下回る低い水準となった。平成14年度に入って、マンションの着工が減少したこと等から、4-6月期は年率118.0万戸、7-9月期は年率113.0万戸となり、このところ緩やかに減少している。
9月は、持家は増加したものの、貸家、分譲住宅が減少したことから、年率111.5万戸となった。先行きについては、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていること等から、消費者の住宅取得マインドが低下しており、こうしたことが引き続き住宅着工を減少させる要因になるものと見込まれる。

公共投資は、総じて低調に推移している。

平成14年度当初における公共事業関連予算をみると、国、地方とも歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行っていることから、国の施設費を含む公共投資関係費は、前年度比10.7%減、地方の投資的経費のうち単独事業費は、地方財政計画では、前年度比10.0%減となっている。
このような状況を反映して、公共投資は、総じて低調に推移している。平成14年度に入って、今年度に繰り越された平成13年度第2次補正予算の下支え効果がみられたものの、4-6月期は引き続き前年を下回り、7-9月期も前年を下回った。なお、このところの動きをみると、公共工事出来高が6月以降3ヶ月連続で前月比増加となっている。

輸出は、弱含んでいる。輸入は、増加している。貿易・サービス収支の黒字は、やや縮小している。

輸出は、IT関連等の最終需要の伸びが世界的に鈍化するなかで、年初来の在庫積み増しの動きに一服感がみられており、半導体等電子部品を中心とした電気機器が減少に転じるなど、このところ弱含んでいる。地域別にみると、アジア向け輸出、アメリカ向け輸出は、電気機器がやや減少しており、全体としておおむね横ばいとなっている。EU向け輸出は、EUにおける景気持ち直しの動きが弱まっていること等を背景に、減少している。今後については、アメリカ経済等への先行き懸念が高まっていること等に留意する必要がある。
輸入は、生産の緩やかな持ち直しの動きを背景に、全体として増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、金属・同製品等を中心に増加している。EUからの輸入は横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、航空機等の機械機器が増加していることを背景に、増加している。また、品目別にみると、IT関連等機械機器の伸びが鈍化しているものの、鉱物性燃料や化学製品、金属・同製品等が堅調に推移している。
国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、輸入数量が増加するなか、輸出数量が弱含んでいることから、やや縮小している。

2.企業活動と雇用情勢

生産は、持ち直しの動きがさらに緩やかになっている。

鉱工業生産は、在庫調整が終了していること等を背景に3四半期連続で増加してきた。しかし、このところ輸出が弱含んでいること等を反映し、足元では生産は持ち直しの動きがさらに緩やかになっている。
また、世界経済の先行き懸念の高まり等、留意すべき点もある。なお、製造工業生産予測調査によると10月は増加、11月は減少が見込まれている。
一方、第3次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。
また、農業生産の動向をみると、米の作況は「平年並み」となっている。

企業収益は、改善の兆しがみられる。また、企業の業況判断は、改善がみられるものの、そのテンポが緩やかになっている。倒産件数は、高い水準となっている。

「法人企業統計季報」によると、平成13年7-9月期以降、電気機械等の製造業を中心に大幅な減益となっていた企業収益は、平成14年1-3月期に減益幅が縮小し、4-6月期の減益幅は概ね横ばいとなった。また、日銀短観によると、平成14年度については、上期は若干の減益、下期は大幅な増益を見込んでいる。
企業の業況判断について、日銀短観をみると、平成14年3月調査を底に改善しているが、9月調査では若干の改善にとどまり、そのテンポが緩やかになっている。また、中小企業では低い水準にあり、依然厳しさがみられる。先行きについては、全体として若干の改善を見込んでいる。また、「法人企業動向調査」で大中堅企業の業界景気の判断(前期比「上昇」-「下降」)を見ると、「下降」超幅は横ばいとなっている。
また、倒産件数は、東京商工リサーチ調べで9月は1,467件、7-9月期では4,763件となるなど、高い水準となっている。

雇用情勢は、依然として厳しい。一部に改善への動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移し、賃金も弱い動きが続いている。

9月の完全失業率は、前月比同水準の5.4%となった。完全失業者について求職理由別にみると、最も多い非自発的な離職による者は、増加している。雇用者数については、臨時雇等パートを中心に緩やかに持ち直す動きがみられていたが、直近では2ヶ月連続の減少となっている。
新規求人数は、引き続き増加傾向にある。新規求職件数が同時に大幅に増加したため、新規求人倍率は前月比低下したが、有効求人倍率については、前月比で上昇している。製造業の残業時間については、9月は前月比で微減となったが、基調としては引き続き増加傾向にある。
賃金の動きをみると、定期給与が前月比減少、前年同月比でも減少が続いており、弱い動きが続いている。

3.物価と金融情勢

国内卸売物価、消費者物価は、ともに弱含んでいる。

輸入物価は、このところ契約通貨ベースで上昇していることに加え、足元では、円安の影響もあり、円ベースでも上昇している。国内卸売物価は、弱含んでいる。最近の動きを類別にみると、在庫調整の進展により鉄鋼が上昇しているものの、電気機器、非鉄金属が下落しているほか、足元では電力・都市ガス・水道等が下落している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
消費者物価は、平成12年秋以降弱含んでいる。最近の動きを類別にみると、一般サービスは横ばいとなっているものの、一般食料工業製品の下落幅拡大や耐久消費財の下落等により一般商品が下落しているほか、公共料金の下落幅が拡大している。
こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

金融情勢をみると、株式相場は、10月上旬にかけて下落した後、足元、8,000円台後半(日経平均株価)で推移している。長期金利は、低下している。

短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、日本銀行による金融緩和措置を反映して、0.001~0.002%で推移した。2、3ヶ月物は、ほぼ横ばいで推移した。長期金利は、9月下旬に1.2%台まで上昇した後、10月上旬は1.0%台後半から1.1%台後半で推移し、その後10月中旬より国債増発懸念の後退等を受け、1.0%台近傍まで低下してきている。
株式相場は、9月下旬以降、89年以降の最安値を更新しながら下落したが、米国株価の上昇等から、10月中旬以降やや上昇し、10月下旬以降は、8,000円台後半(日経平均株価)で推移している。
対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、9月上旬から10月中旬にかけて、117円台から125円台まで下落した後、124円台~121円台で推移している。対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、9月上旬から10月中旬にかけて、115円台から122円台まで下落した後、121円近傍で推移している。
マネタリーベース(月中平均残高)は、日本銀行の潤沢な資金供給等(10月日銀当座預金平均残高15.2兆円)を背景に、約2割と高い伸びになっているが、伸び率は鈍化している(10月:前年同月比19.8%)。M2+CD(月中平均残高)は、このところ、3%台半ばで推移している(9月速報:前年同月比3.3%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、96年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷等を背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和等を背景に、昨年初来低下傾向で推移して来たが、このところ横ばい圏で推移している。企業の資金繰り状況を見ると若干改善しており、民間債と国債との流通利回りスプレッドはほぼ横ばいで推移している。

4.海外経済

欧米では景気回復に弱い動きがみられ、アジアでは一部で景気回復が緩やかになっている。

世界経済をみると、欧米では景気回復に弱い動きがみられ、アジアでは一部で景気回復が緩やかになっている。
アメリカでは、景気の回復力が弱まっている。個人消費の伸びは鈍化している。また、消費者信頼感が大幅に悪化している。住宅建設は高い水準にある。設備投資は機械設備等を中心に持ち直しに向けた動きもみられるが、非軍需資本財受注は減少している。生産は減少している。雇用はほぼ横ばいとなっている。物価は安定している。
アジアをみると、景気は回復しているものの、一部で回復が緩やかになっている。中国では、景気の拡大テンポは高まっている。韓国では、景気は拡大しているが、内需の伸びに鈍化の動きがみられる。タイでは、景気は拡大している。マレイシアでは、景気は回復している。台湾、シンガポールでは、景気は緩やかに回復している。
ヨーロッパをみると、(1)ユーロ圏では、景気は持ち直しの動きが弱まっている。ドイツでは、景気は減速している。フランスでは、景気は持ち直しの動きが弱まっている。(2)イギリスでは、景気は回復の動きが続いている。
金融情勢をみると、アメリカの株価は、10月上旬には5年ぶりの安値をつけたが、一部企業の決算や業績見通しが市場予想を上回ったことから中旬以降上昇した。株価の上昇等からアメリカの長期金利、ドルとも10月中旬に強含んだが、その後景気先行き懸念等からともに弱含んだ。
アメリカでは、11月6日のFOMCで昨年12月以来11ヶ月ぶりにフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準が0.50%ポイント引き下げられ、1.25%とされた。
国際商品市況をみると、原油価格は、イラク情勢が緊迫する中で、今後の行方を見定める動きからやや下落した。

(注)

<個人消費>

消費総合指数(需要側、内閣府試算値、後方3ヶ月移動平均)は、平成14年8月(速報値)季節調整済3ヶ月前比0.6%増の後、9月(速報値)は同1.0%増となった。
消費総合指数の作成方法:総務省「家計調査」から、GDPの個人消費には含まれない「仕送り金」、「修繕費」や、振れが大きい高額消費である「自動車等購入」等を除外した後、世帯数を乗ずるなどしてマクロの消費ベースにする。これに、自動車、家賃、医療費について別途供給側の統計を用いて計算したものを加える。詳細は、ディスカッションペーパー (https://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/menu.html)を参照。
家計調査の全世帯実質消費支出は、8月季節調整済前月比1.7%減の後、9月(速報値)は同5.1%増(前年同月比5.4%増)となった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、9月(速報値)は季節調整済前月比5.2%増(前年同月比5.2%増)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、8月季調済前月比2.7%増の後、9月(速報値)は同0.1%減(前年同月比3.0%減)となった。また、百貨店販売額は、9月(速報値)は同0.9%減(店舗調整後)(季節調整済前月比2.2%増(店舗調整前))となった。
チェーンストア販売額(日本チェーンストア協会調べ)は、8月前年同月比0.9%減(店舗調整後)の後、9月は同1.3%減(店舗調整後)(季節調整済前月比0.3%増(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、9月前年同月比13.6%増の後、10月(速報値)は同6.7%増となった。
家電販売額(日本電気大型店協会調べ)は、8月前年同月比1.1%増の後、9月は同1.9%減となった。
大手旅行業者13社取扱金額は、8月国内旅行が前年同月比0.9%増、海外旅行が同12.8%減の後、9月国内旅行が同1.8%減、海外旅行が同22.1%増となった。
内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(季節調整済)は、6月前期差0.9ポイント改善の後、9月同0.3ポイント改善となった。

<設備投資>

平成14年4-6月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業、ソフトウェアを除く)でみると、季節調整済前期比で2.6%減(前年同期比15.5%減)となっており、うち製造業では同3.9%減(同23.7%減)、非製造業では同2.0%減(同10.9%減)となっている。
平成14年7-9月期の大中堅企業の設備投資を内閣府「法人企業動向調査」(実績見込)でみると、季節調整済前期比で1.5%増(前年同期比3.9%減)となっており、うち製造業では同0.4%減(同10.0%減)、非製造業では同2.2%増(同0.9%減)となっている。
経済産業省「鉱工業指数」により資本財出荷(除く輸送機械)をみると、季節調整済前月比で8月は8.7%増(前年同期比1.3%減)の後、9月(速報値)は同4.8%減(同1.8%減)となっている。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)により設備投資の動向(ソフトウェアを除く)をみると、大企業の平成14年度設備投資計画は、製造業で前年度比9.2%減、非製造業で同4.2%減となっており、全産業では同6.2%減となっている。また、中小企業では製造業で同11.6%減、非製造業で同5.0%減となっており、全産業では同6.6%減となっている。
経済産業省「特定サービス産業動態統計」でみると、受注ソフトウェア売上高は、7月は前年同月比7.7%減の後、8月は0.2%減となっている。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前月比で7月は1.9%増(前年同月比5.8%減)の後、8月は同13.6%減(同20.3%減)となっている。なお、平成14年7-9月期(見通し、6月調査時点)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比で3.9%減(前年同期比11.4%減)と見込まれている。
民間からの建設工事受注(50社、非住宅)は、季節調整済前月比で8月は1.4%減(前年同月比14.6%減)の後、9月は同0.4%増(同8.9%減)となっている。

<住宅建設>

国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前期比)は、平成14年4-6月期は1.4%増、7-9月期は4.2%減、7月は3.1%増、8月は1.0%減、9月は0.9%減となっており、うち共同建分譲住宅の着工(同)は、平成14年4-6月期は6.9%減、7-9月期は14.6%減、7月は26.3%減、8月は23.3%増、9月は12.7%減となった。また、新設住宅着工床面積(同)は、平成14年4-6月期は0.6%増、7-9月期は3.8%減、7月は2.3%増、8月は1.4%減、9月は0.0%減となった。
消費者の住宅取得マインドを示す指標のひとつである(社)日本リサーチ総合研究所「不動産購買態度指数」をみると、平成12年は、2月128、4月128、6月124、8月118、10月122、12月117、平成13年は、2月118、4月119、6月117、8月110、10月109、12月104、平成14年は、2月104、4月114、6月117、8月114となった。

<公共投資>

平成14年度の国の一般会計予算(当初)をみると、施設費を含む公共投資関係費について、前年度比10.7%減と規模を縮減しつつ、「予算編成の基本方針」の重点7分野に重点化している。
地方の予算をみると、平成14年度地方財政計画では、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比10.0%減としつつ、国の歳出予算と歩を一にして歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行うこととしている。総務省がまとめた都道府県、政令指定都市の当初予算額(普通会計)では、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同13.4%減、両者を合わせると同10.3%減となっている。また、時事通信社調査によれば、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同12.9%減、中核市で同7.8%減、その他の県庁所在市で同12.6%減となっており、これらを単純合計すると、前年度比10.1%減となっている(骨格予算を編成した地方公共団体等を除く)。
公共機関からの1件500万円以上の建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年同月比で8月18.7%減の後、9月は6.2%減となった。同じく大手50社の建設工事受注額は、前年同月比で8月24.5%減の後、9月は4.0%減となった。公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で8月13.0%減の後、9月は8.3%減となった。公共工事出来高(建設総合統計)は、前年同月比で7月4.8%減の後、8月は5.3%減となり、内閣府にて季節調整を実施した結果によると、前月比で7月1.3%増の後、8月は1.2%増となった。

<輸出・輸入・国際収支>

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で8月0.4%減の後、9月は5.0%減(前年同月比9.2%増)となった。また、前期比で4-6月期7.3%増の後、7-9月期は1.5%減(前年同期比11.9%増)となっている。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で8月7.2%減の後、9月3.6%増(前年同月比13.1%増)となった。また、前期比で4-6月期2.1%増の後、7-9月期は5.4%増(前年同期比7.8%増)となっている。
貿易・サービス収支(季節調整値)の黒字は、7月6,023億円の後、8月は5,325億円となり、通関収支差(季節調整値)は、8月9,225億円の後、9月は6,089億円となった。

<生産・出荷・在庫>

9月の鉱工業生産指数(季節調整値、速報)は、輸送機械や電気機械等が減少したことから、前月比0.3%減となった。
製造工業生産予測調査によると、前月比で10月は電気機械やその他等の増加により1.2%増の後、11月はその他や電気機械等の減少により1.4%減になると見込まれている。
9月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、速報)は、前月比0.6%増となった。また、9月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値、速報)は101.4となっている。
8月の第3次産業活動指数(季節調整値、速報)は、卸売・小売業、飲食店、サービス業等が増加した結果、前月比0.5%増となった。
平成14年産水稲の全国作況指数(10月15日現在)は、101の「平年並み」となっている。

<企業>

財務省「法人企業統計季報」によると、4-6月期の経常利益は全産業で前年同期比16.8%減、製造業は12.6%減、非製造業は18.8%減となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、平成14年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比2.7%の減益、下期は同26.8%の増益、通期では前年比12.9%の増益を見込んでいる。
一方、業況判断について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査、業況水準について「良い」-「悪い」)をみると、大企業は4%ポイント改善して△13%ポイント、中小企業は1%ポイント改善して△38%ポイント、全規模合計では2%ポイント改善して△30%ポイントとなった。また、内閣府「法人企業動向調査」(9月調査)で企業の業界景気の判断(前期比「上昇」-「下降」)をみると、全産業で前期から横ばいの△21%ポイントとなった。

<倒産>

企業の倒産については、東京商工リサーチ「倒産月報」によると、9月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,467件(前年同月比7.8%減)、負債総額は7,052億円(同78.5%減)となっており、帝国データバンク「全国企業倒産集計」によると、企業倒産件数は1,514件(同3.4%減)、負債総額は8,179億円(同72.7%減)となっている。また、大型倒産(負債額10億円以上)は、106件(同22.6%減)となっており、主な大型倒産としては、兵庫福祉生活協同組合(負債701億円)など(東京商工リサーチ調べ)。

<雇用情勢>

総務省「労働力調査」によると、9月の完全失業率(季節調整値)は、男女計で前月比同水準の5.4%となった。完全失業者数(季節調整値)は、男女計で前月差2万人減の363万人となった。
労働力調査により内閣府にて季節調整を実施した結果によると、求職理由別完全失業者数(季節調整値)は、非自発的な離職による者は、前月差16万人増の164万人となった。自発的離職による者は、前月差15万人減の110万人となった。
労働力調査によると、9月の雇用者数(季節調整値)は、男女計で8月前月比0.4%減の後、9月は同0.5%減の5,332万人となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の新規求人数は、8月季節調整済前月比6.7%減の後、9月は同3.7%増(前年同月比5.9%増)となった。有効求人数は、8月同3.0%減の後、9月は同1.9%増(同1.8%増)となった。新規求職件数は、8月同15.3%減の後、9月は同9.7%増(同9.6%増)となった。有効求職者数は、8月同2.9%減の後、9月は同0.3%増(同5.5%増)となった。新規求人倍率(季節調整値)は8月0.98倍の後、9月0.93倍となった。有効求人倍率(季節調整値)は、8月0.54倍の後、9月0.55倍となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では8月季節調整済前月比0.5%増(前年同月比10.2%増)の後、9月は同0.1%減(同12.7%増)(速報値)となった。
毎月勤労統計調査によると、きまって支給する給与は、事業所規模5人以上では8月季節調整済前月比0.4%増(前年同月比0.9%減)の後、9月は同0.1%減(同0.8%減)(速報値)となった。

<物価>

日本銀行「卸売物価指数」の輸出物価(円ベース)は、9月は前月比1.0%の上昇(前年同月比0.2%上昇)、7-9月平均の3ヶ月前比(4-6月平均対比、以下同じ)は4.4%の下落となった。輸入物価(円ベース)は、9月は前月比2.1%の上昇(前年同月比2.3%上昇)、7-9月平均の3ヶ月前比は3.4%の下落となった。また、国内卸売物価は、9月は、前月比保合い(前年同月比0.9%下落)、3ヶ月前比は0.1%の下落となった(なお、7月から9月まで夏季電力料金適用の影響を考慮する必要がある)。
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の9月の企業向けサービス価格は前年同月比1.0%の下落(前月比保合い)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の生鮮食品を除く総合は、9月は前年同月比0.9%の下落(季節調整済前月比0.2%下落)、7-9月平均の前年同期比は0.9%の下落となった。一般サービスは、9月は前年同月比保合い、7-9月平均の前年同期比は保合いとなった。一般商品は、9月は前年同月比1.8%の下落、7-9月平均の前年同期比は1.8%の下落となった。公共料金は、9月は前年同月比0.7%の下落、7-9月平均の前年同期比は0.6%の下落となった。また、「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の生鮮食品を除く総合は、10月は前年同月比0.8%の下落(季節調整済前月比保合い)、8-10月平均の前年同期比は0.9%の下落となった。

<金融>

無担保コールオーバーナイトレートは、10月は、0.001~0.002%で推移した。3ヶ月物ユーロ円TIBORは、10月は、0.08%台で推移した。10年物国債流通利回りは、10月は、1.0%台から1.1%台で推移した。
東証株価指数(TOPIX)は、10月末には862ポイントとなった。日経平均株価は、10月末には8,640円となった。
広義流動性は、9月(速報)は前年同月比1.4%増となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、9月(速報)は前年同月比4.8%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.6%減)となった。10月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が600億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は、6,500億円(銀行起債の普通社債は3,400億円)となった。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、8月は前月比で短期は0.347%ポイント低下し、長期は0.270%ポイント低下したことから、総合では0.318%ポイント低下し1.416%となった。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、資金繰り判断は若干改善し、金融機関の貸出態度はやや悪化している。

<景気ウォッチャー調査>

内閣府「景気ウォッチャー調査」の9月の現状判断DIは、前月を1.2ポイント下回り、42.4となった。先行き判断DIは、前月を1.1ポイント下回り、45.0となった。