月例経済報告(平成14年10月)

―景気は、引き続き一部に緩やかな持ち直しの動きがみられるものの、環境は厳しさを増している。―

先行きについては、景気は持ち直しに向かうことが期待されるが、アメリカ経済等への先行き懸念や我が国の株価の下落など、環境は厳しさを増しており、我が国の最終需要が下押しされる懸念が強まりつつある。

平成14年10月9日

内閣府

総論

(我が国経済の基調判断)

景気は、引き続き一部に緩やかな持ち直しの動きがみられるものの、環境は厳しさを増している。

  • 雇用情勢は、一部に改善への動きがみられるものの、失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
  • 個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。
  • 企業収益は改善の兆しがみられ、設備投資は下げ止まりの兆しがみられる。
  • 輸出は増加テンポが緩やかになっており、生産は緩やかな持ち直しが続いている。業況判断は、改善がみられるものの、そのテンポが緩やかになっている。

先行きについては、景気は持ち直しに向かうことが期待されるが、アメリカ経済等への先行き懸念や我が国の株価の下落など、環境は厳しさを増しており、我が国の最終需要が下押しされる懸念が強まりつつある。

(政策の基本的態度)

政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」を早期に具体化する中で、「金融システム改革」、「税制改革」をはじめとした構造改革を加速するための政策強化を行い、デフレ克服を進める。このため、10月末を目途に対応策をとりまとめる。

また、デフレ克服及び金融システム安定化に向け、政府・日本銀行は引き続き一体となって強力かつ総合的な取組を行う。

各論

1.消費・投資などの需要動向

個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。

個人消費は、需要側と販売側の動向を総合してみると、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。所得面で弱い動きが続いていることなどから全体的な基調の改善には至らないものの、一部の業種や支出項目において増加の動きがみられる。
需要側の動向をみると、昨秋以降底固さがみられる。消費総合指数は3ヶ月前と比べやや増加している。支出項目ごとの動向について家計調査をみると、実質消費支出は、一時的な要因による増減がみられるものの、このところの基礎的な支出項目にみられる底固さには変化がない。
販売側の動向をみると、前月の一時的な要因から大幅に減少した状態からは回復したものの、全体的に弱い動きとなっている。小売業販売額は弱い動きが続いている。チェーンストア販売額は、食料品が前年を上回ったことなどから、全体でも減少幅を縮小した。百貨店販売額は、昨夏以降一進一退を続けているものの、足元で弱含んできている。新車販売台数は、軽乗用車と小型乗用車が引き続き好調に推移したことから、前年を大きく上回った。家電販売金額は、テレビ等が引き続き増加しているほか、エアコンが前年を大きく上回り、パソコンも減少幅を大幅に縮小したことなどから、全体で前年を上回った。旅行は、国内旅行が前年を上回り、海外旅行が前月と比べて前年比減少幅をやや拡大させた。
消費者マインドは、依然として水準は低いものの、持ち直しの動きがみられる。

設備投資は、下げ止まりの兆しがみられる。

設備投資は、平成13年に入って以降減少が続いてきたが、生産の持ち直し及び企業収益の下げ止まりを受けてこのところ下げ止まりの兆しがみられる。需要側統計である「法人企業統計季報」でみると、平成13年1-3月期以降減少が続いてきたが、このところ減少幅が縮小している。規模別にみると大中堅企業に比べ中小企業の減少幅の方が大きい。また、機械設備投資の供給側統計である資本財出荷は、下げ止まっている。なお、これまで堅調に推移してきたソフトウェア投資は、弱含んでいる。
設備投資の今後の動向については、機械設備投資の先行指標である機械受注が平成13年1-3月期以降減少基調で推移してきたが、底入れから反転に向かいつつあるとみられることから、次第に底入れから反転に向かうものとみられる。ただし、日銀短観の平成14年度設備投資計画において減少が見込まれていることなどを考慮すれば、底入れした後も低調に推移することが見込まれる。

住宅建設は、緩やかに減少している。

平成13年度の住宅建設は、貸家は増加したものの、これまで堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移したこと等から、前年度比3.3%減の117.3万戸と平成10年度以来3年ぶりに120万戸を下回る低い水準となった。平成14年4-6月期についても、年率118.0万戸と120万戸を下回った。
8月は、分譲住宅は増加したものの、持家、貸家が減少したことから、年率112.5万戸となった。先行きについては、雇用・所得環境が厳しいこと、不動産価格の長期的下落傾向により買い換えが困難となっていることなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、こうしたことが引き続き住宅着工を減少させる要因になるものと見込まれる。

公共投資は、総じて低調に推移している。

公共投資は、総じて低調に推移している。平成14年度当初における公共事業関連予算をみると、国、地方とも歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行っていることから、国の施設費を含む公共投資関係費は、前年度比10.7%減、地方の投資的経費のうち単独事業費は、地方財政計画では、前年度比10.0%減となっている。
このような状況の中で、公共工事請負金額、大手50社受注額は、5月に前年度を上回るなど今年度に繰り越された平成13年度第2次補正予算の下支え効果がみられたが、4-6月期では、引き続き前年を下回った。
7-9月期の公共投資については、7月、8月の公共工事請負金額なども前年を下回っており、国、地方の予算状況を踏まえると、引き続き前年を下回るものと考えられる。

輸出は、増加テンポが緩やかになっている。輸入は、緩やかに増加している。貿易・サービス収支の黒字は、やや縮小している。

輸出は、IT関連などの最終需要の伸びが世界的に鈍化する中で、半導体等電子部品などの電気機器や一般機械を中心に増加テンポが緩やかになっている。地域別にみると、アジア向け輸出は、電気機器、一般機械、輸送用機器を中心に増加している。アメリカ向け輸出は、電気機器、一般機械を中心に緩やかに増加している。EU向け輸出は、横ばいとなっている。今後については、世界景気の回復が緩やかになっていることや、アメリカ経済等への先行き懸念が高まりつつあることなどに留意する必要がある。
輸入は、生産の持ち直しの動きを背景に、全体として緩やかに増加している。地域別にみると、アジアからの輸入は、IT関連など機械機器の伸びが鈍化しているものの、化学製品、金属・同製品などが堅調に推移しており、全体として増加している。EUからの輸入は横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、航空機などの機械機器が増加していることを背景に、増加している。
国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、輸入数量が緩やかに増加するなか、輸出数量の増加テンポが緩やかになっていることから、やや縮小している。

2.企業活動と雇用情勢

生産は、緩やかな持ち直しが続いている。

鉱工業生産は、在庫調整が終了していること等を背景に2四半期連続で増加してきた。しかし、このところ輸出の増加テンポは緩やかになっていること等を反映し、生産の増加の勢いも緩やかになっている。
また、世界経済の先行き懸念の高まり等、留意すべき点もある。なお、製造工業生産予測調査によると9月、10月共に増加が見込まれている。
一方、第3次産業活動の動向をみると、おおむね横ばいで推移している。
また、農業生産の動向をみると、米の作況は「平年並み」となっている。

企業収益は、改善の兆しがみられる。また、企業の業況判断は、改善がみられるものの、そのテンポが緩やかになっている。倒産件数は、高い水準となっている。

「法人企業統計季報」によると、平成13年7-9月期以降、電気機械などの製造業を中心に大幅な減益となっていた企業収益は、平成14年1-3月期に減益幅が縮小し、4-6月期の減益幅は概ね横ばいとなった。また、日銀短観によると、平成14年度については、上期は若干の減益、下期は大幅な増益を見込んでいる。
企業の業況判断について、日銀短観をみると、平成14年3月調査を底に改善しているが、9月調査では若干の改善にとどまり、そのテンポが緩やかになっている。また、中小企業では低い水準にあり、依然厳しさがみられる。先行きについては、全体として若干の改善を見込んでいる。
また、8月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで1,578件となるなど、高い水準となっている。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数に緩やかに持ち直す動きがみられるなど、一部に改善への動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移し、賃金も弱い動きが続いている。

8月の完全失業率は、前月比同水準の5.4%となった。完全失業者数について求職理由別にみると、最も多い非自発的な離職による者は、横ばいで推移している。雇用者数については、8月は前月比で減少したものの、臨時雇等パートを中心に緩やかに持ち直す動きがみられる。
新規求人数は、基調としては増加傾向にあるものの、8月は前月比で減少した。新規求人倍率は前月比上昇し、有効求人倍率は前月比同水準となっている。製造業の残業時間については、引き続き増加傾向にある。企業の雇用過剰感は、低下したものの、依然として高い水準にある。
賃金の動きをみると、定期給与は前年同月比で減少が続いており、ボーナスを含む特別給与も前年を大きく下回っており、弱い動きが続いている。ただし、直近では定期給与が2ヶ月連続で前月比増加となっている。

3.物価と金融情勢

国内卸売物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、弱含んでいる。

輸入物価は、このところ、契約通貨ベースでは上昇している。円ベースでは円高・ドル安により下落していたが、足元では上昇している。国内卸売物価は、横ばいとなっている。最近の動きをみると、電気機器、非鉄金属が下落している一方、在庫調整の進展により鉄鋼が上昇しているほか、足元では石油・石炭製品などが上昇している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
消費者物価は、平成12年秋以降弱含んでいる。最近の動きをみると、一般サービスはほぼ横ばいとなっているものの、耐久消費財の下落などにより一般商品が下落していること、公共料金が下落していることから、全体としては下落している。
こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

金融情勢をみると、株式相場は、9月上旬にかけて下落した後、概ね横ばいで推移した。為替相場は、下落した。

短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、日本銀行による金融緩和措置を反映して、0.001~0.002%で推移したが、9月末越えの資金取引から月末に上昇した。2、3ヶ月物は、概ね横ばいで推移した。長期金利は、株価の下落などを背景に、8月下旬以降、低下傾向が強まり、9月中旬には1.0%台まで下落したが、その後、日本銀行が銀行保有株式買取りを検討すると表明したことなどを受け1.2%台半ばまで上昇した後、1.0~1.1%台で推移した。
株式相場は、8月下旬から9月上旬にかけて、日米経済の先行き不透明感の高まりなどを背景に下落した後、概ね横ばいで推移し、10月3日には、日経平均株価8,936円、TOPIX883ポイント(89年以降の最安値を更新)となった。
対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、8月中旬から9月上旬にかけて117円台から120円台で推移した後、9月中旬に122円台まで下落し、その後121円台から123円台で推移した。対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、8月下旬から9月上旬にかけて115円台から117円台で推移した後、9月中旬に121円台まで下落し、その後119円台から121円台で推移した。
マネタリーベース(月中平均残高)は、日本銀行の潤沢な資金供給など(9月日銀当座預金平均残高15.2兆円)を背景に、2割台の高い伸びとなっているが、伸び率は鈍化している(9月:前年同月比21.4%)。M2+CD(月中平均残高)は、このところ、3%台半ばで推移している(8月速報:前年同月比3.5%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、96年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷等を背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、金融緩和等を背景に、昨年初来低下傾向で推移して来たが、このところ横ばい圏で推移している。企業の資金繰り状況を見ると若干改善しており、民間債と国債との流通利回りスプレッドはやや拡大した。

4.海外経済

世界の景気は回復が緩やかになっており、アメリカ経済等への先行き懸念が高まりつつある。

世界の景気は回復が緩やかになっており、アメリカ経済等への先行き懸念が高まりつつある。
アメリカでは、景気の回復は一層緩やかになっており、マインド悪化の影響が懸念される。個人消費の伸びは鈍化している。また、消費者信頼感の低下が続いている。住宅建設は高い水準にある。設備投資は機械設備等を中心に下げ止まっている。生産は伸びが鈍化しており、製造業では企業景況感が悪化している。失業率は低下したものの、雇用は、製造業での減少が続くなど、回復は緩やかになっている。物価は安定している。
アジアをみると、景気は回復している。中国では、景気の拡大テンポは高まっている。韓国では、景気は拡大しているが、内需の伸びに鈍化の動きがみられる。タイでは、景気は拡大している。シンガポール、マレイシアでは、景気は回復している。台湾では、景気は緩やかに回復している。
ヨーロッパをみると、(1)ユーロ圏では、景気は持ち直しの動きが弱まっている。ドイツでは、景気は減速している。フランスでは、景気は持ち直しの動きが弱まっている。(2)イギリスでは、景気は回復の動きが続いている。
金融情勢をみると、アメリカの株価は、9月を通じて、雇用・生産の回復見通しの弱さや企業業績への懸念等から下落し、10月初には5年ぶりの安値となった。イラクを巡る情勢の緊迫等から米国債への資金シフトがみられる中、アメリカの長期金利は低下し、10年物国債金利は63年1月以来の低水準となった。また、ドルは、増価基調で推移した。
国際商品市況をみると、原油価格は、イラク情勢の緊迫やOPEC総会での生産枠据置き合意等から上昇基調で推移した。

(注)

<個人消費>

消費総合指数(需要側、内閣府試算値、後方3ヶ月移動平均)は、平成14年7月(速報値)季節調整済3ヶ月前比0.1%増の後、8月(速報値)は同0.6%増となった。
消費総合指数の作成方法:総務省「家計調査」から、GDPの個人消費には含まれない「仕送り金」、「修繕費」や、振れが大きい高額消費である「自動車等購入」などを除外した後、世帯数を乗ずるなどしてマクロの消費ベースにする。これに、自動車、家賃、医療費について別途供給側の統計を用いて計算したものを加える。詳細は、ディスカッションペーパー (https://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/menu.html)を参照。
家計調査の全世帯実質消費支出は、7月季節調整済前月比0.3%減の後、8月(速報値)は同1.7%減(前年同月比0.1%増)となった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、8月(速報値)は季節調整済前月比1.3%減(前年同月比0.2%増)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、8月(速報値)は季節調整済前月比2.7%増(前年同月比2.0%減)となった。また、百貨店販売額は、8月(速報値)は、前年同月比0.4%増(店舗調整後)(季節調整済前月比7.4%増(店舗調整前))となった。
チェーンストア販売額(日本チェーンストア協会調べ)は、8月は、前年同月比0.9%減(店舗調整後)(季節調整済前月比3.8%増(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、8月前年同月比5.3%増の後、9月(速報値)は同13.6%増となった。
家電販売額(日本電気大型店協会調べ)は、7月前年同月比12.3%減の後、8月は同1.1%増となった。
大手旅行業者13社取扱金額の8月は、前年同月比で国内旅行が0.9%増、海外旅行が同12.8%減となった。
内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(季節調整済)は、3月前期差1.5ポイント改善の後、6月同0.9ポイント改善となった。

<設備投資>

平成14年4-6月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業、ソフトウェアを除く)でみると、季節調整済前期比で2.6%減(前年同期比15.5%減)となっており、うち製造業では同3.9%減(同23.7%減)、非製造業では同2.0%減(同10.9%減)となっている。
経済産業省「鉱工業指数」により資本財出荷(除く輸送機械)をみると、季節調整済前月比で7月は1.1%減(前年同期比7.6%減)の後、8月は同8.8%増(同1.2%減)となっている。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)により設備投資の動向(ソフトウェアを除く)をみると、大企業の平成14年度設備投資計画は、製造業で前年度比9.2%減、非製造業で同4.2%減となっており、全産業では同6.2%減となっている。また、中小企業では製造業で同11.6%減、非製造業で同5.0%減となっており、全産業では同6.6%減となっている。
経済産業省「特定サービス産業動態統計」でみると、受注ソフトウェア売上高は、6月は前年同月比0.5%増の後、7月は7.7%減となっている。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前月比で6月は2.9%増(前年同月比7.6%減)の後、7月は同1.9%増(同5.8%減)となっている。なお、平成14年7-9月期(見通し、6月調査時点)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比で3.9%減(前年同期比11.4%減)と見込まれている。
民間からの建設工事受注(50社、非住宅)は、季節調整済前月比で7月は10.2%増(前年同月比18.8%減)の後、8月は同1.4%減(同14.6%減)となっている。

<住宅建設>

国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前期比)は、平成13年4-6月期は0.9%減、7-9月期は4.0%増、10-12月は3.4%減、平成14年1-3月期は0.0%減、4-6月期は1.4%増、7月は3.1%増、8月は1.0%減となった。内訳をみると、公庫持家の着工(同)は、平成13年4-6月期は20.9%減、7-9月期は4.6%減、10-12月は16.4%減、平成14年1-3月期は25.4%減、4-6月期は12.6%減、7月は11.0%減、8月は16.8%減となり、共同建分譲住宅の着工(同)は、平成13年4-6月期は4.5%増、7-9月期は12.0%増、10-12月は12.3%減、平成14年1-3月期は12.1%増、4-6月期は6.9%減、7月は26.3%減、8月は23.3%増となった。また、新設住宅着工床面積(同)は、平成13年4-6月期は3.3%減、7-9月期は5.8%増、10-12月は3.0%減、平成14年1-3月期は3.6%減、4-6月期は0.6%増、7月は2.3%増、8月は1.4%減となった。
消費者の住宅取得マインドを示す指標のひとつである(社)日本リサーチ総合研究所「不動産購買態度指数」をみると、平成12年は、2月128、4月128、6月124、8月118、10月122、12月117、平成13年は、2月118、4月119、6月117、8月110、10月109、12月104、平成14年は、2月104、4月114、6月117、8月114となった。

<公共投資>

平成14年度の国の一般会計予算(当初)をみると、施設費を含む公共投資関係費について、前年度比10.7%減と規模を縮減しつつ、「予算編成の基本方針」の重点7分野に重点化している。
地方の予算をみると、平成14年度地方財政計画では、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比10.0%減としつつ、国の歳出予算と歩を一にして歳出の徹底した見直しと重点的な配分を行うこととしている。総務省がまとめた都道府県、政令指定都市の当初予算額(普通会計)では、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同13.4%減、両者を合わせると同10.3%減となっている。また、時事通信社調査によれば、普通建設事業費は、都道府県で前年度比9.8%減、政令指定都市で同12.9%減、中核市で同7.8%減、その他の県庁所在市で同12.6%減となっており、これらを単純合計すると、前年度比10.1%減となっている(骨格予算を編成した地方公共団体などを除く)。
公共機関からの1件500万円以上の建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年同月比で6月20.2%減の後、7月は15.2%増となった。同じく大手50社の建設工事受注額は、前年同月比で7月11.8%増の後、8月は24.5%減となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で7月4.2%減の後、8月は13.0%減となった。

<輸出・輸入・国際収支>

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で7月2.2%増の後、8月は0.4%減(前年同月比11.9%増)となった。また、前期比で1-3月期6.4%増の後、4-6月期は7.3%増(前年同期比10.0%増)となっている。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で7月14.6%増の後、8月7.2%減(前年同月比2.8%増)となった。また、前期比で1-3月期1.1%減の後、4-6月期は2.1%増(前年同期比0.8%減)となっている。
貿易・サービス収支(季節調整値)の黒字は、6月7,672億円の後、7月は6,023億円となり、通関収支差(季節調整値)は、7月6,720億円の後、8月は9,230億円となった。

<生産・出荷・在庫>

8月の鉱工業生産指数(季節調整値、速報)は、電気機械や一般機械等が増加したことから、前月比1.6%増となった。
製造工業生産予測調査によると、前月比で9月は電気機械や一般機械等により0.4%増の後、10月も電気機械や金属製品等により0.2%増になると見込まれている。
8月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、速報)は、前月比0.9%減となった。また、8月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値、速報)は97.7となっている。
7月の第3次産業活動指数(季節調整値、速報)は、サービス業、不動産業、電気・ガス・熱供給・水道業が増加した結果、前月比0.3%増となった。
平成14年産水稲の全国作況指数(9月15日現在)は、101の「平年並み」となっている。

<企業>

財務省「法人企業統計季報」によると、4-6月期の経常利益は全産業で前年同期比16.8%減、製造業は12.6%減、非製造業は18.8%減となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、平成14年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比2.7%の減益、下期は同26.8%の増益、通期では前年比12.9%の増益を見込んでいる。
一方、業況判断について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査、業況水準について「良い」-「悪い」)をみると、大企業は4%ポイント改善して△13%ポイント、中小企業は1%ポイント改善して△38%ポイント、全規模合計では2%ポイント改善して△30%ポイントとなった。

<倒産>

企業の倒産については、東京商工リサーチ「倒産月報」によると、8月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,578件(前年同月比2.2%増)、負債総額は10,946億円(同53.6%増)となっており、帝国データバンク「全国企業倒産集計」によると、企業倒産件数は1,562件(同3.1%減)、負債総額は10,592億円(同44.0%増)となっている。また、大型倒産(負債額10億円以上)は、上場企業1件を含む89件(同13.5%減)となっており、主な大型倒産としては、東証1部上場の工作機械メーカーの日立精機(負債504億円)など(東京商工リサーチ調べ)。

<雇用情勢>

総務省「労働力調査」によると、8月の完全失業率(季節調整値)は、男女計で前月比同水準の5.4%となった。完全失業者数(季節調整値)は、男女計で前月差5万人増の365万人となった。
労働力調査により内閣府にて季節調整を実施した結果によると、求職理由別完全失業者数(季節調整値)は、非自発的な離職による者は、前月差4万人増の148万人となった。自発的離職による者は、前月差1万人減の125万人となった。
労働力調査によると、8月の雇用者数(季節調整値)は、男女計で前月比0.4%減の5,360万人となった。非農林雇用者数(原数値)のうち、常雇は、7月前年同月差46万人減の後、8月は同42万人減となった。臨時日雇は、7月同31万人増の後、8月は同36万人増となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の新規求人数は、7月季節調整済前月比8.3%増の後、8月は同6.7%減(前年同月比1.0%増)となった。有効求人数は、7月同4.0%増の後、8月は同3.0%減(同1.8%減)となった。新規求職件数は、7月同16.6%増の後、8月は同15.3%減(同1.6%増)となった。有効求職者数は、7月同1.6%増の後、8月は同2.9%減(同5.5%増)となった。新規求人倍率(季節調整値)は7月0.89倍の後、8月0.98倍となった。有効求人倍率(季節調整値)は、7月0.54倍の後、8月0.54倍となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では7月季節調整済前月比3.4%増(前年同月比8.1%増)の後、8月は同1.2%増(同11.0%増)(速報値)となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」によると、企業の雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では、6月調査の18%ポイントから、9月調査では15%ポイントとなった。製造業では、6月調査の25%ポイントから、9月調査では22%ポイントとなった。非製造業では、6月調査の13%ポイントから、9月調査では11%ポイントとなった。
毎月勤労統計調査によると、きまって支給する給与は、事業所規模5人以上では7月季節調整済前月比0.2%増(前年同月比1.4%減)の後、8月は同0.6%増(同0.7%減)(速報値)となった。特別に支払われた給与は、事業所規模5人以上では6月前年同月比5.4%減、7月同12.9%減の後、8月は同30.6%減(速報値)となり、6~8月合計では同10.3%減となった。

<物価>

日本銀行「卸売物価指数」の輸出物価(円ベース)は、8月は前月比0.4%の上昇(前年同月比2.7%下落)、6-8月平均の3ヶ月前比(3-5月平均対比、以下同じ)は5.0%の下落となった。輸入物価(円ベース)は、8月は前月比1.2%の上昇(前年同月比2.5%下落)、6-8月平均の3ヶ月前比は3.7%の下落となった。また、国内卸売物価は、8月は、前月比保合い(前年同月比0.9%下落)、3ヶ月前比は保合いとなった(なお、7月から9月まで夏季電力料金適用の影響を考慮する必要がある)。
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の8月の企業向けサービス価格は前年同月比1.0%の下落(前月比0.4%下落)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の生鮮食品を除く総合は、8月は前年同月比0.9%の下落(季節調整済前月比保合い)、6-8月平均の前年同期比は0.8%の下落となった。一般サービスは、8月は前年同月比保合い、6-8月平均の前年同期比は保合いとなった。一般商品は、8月は前年同月比1.9%の下落、6-8月平均の前年同期比は1.8%の下落となった。また、「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の生鮮食品を除く総合は、9月は前年同月比0.9%の下落(季節調整済前月比0.4%下落)、7-9月平均の前年同期比は0.9%の下落となった。

<金融>

無担保コールオーバーナイトレートは、9月は、月中、0.001~0.002%で推移し、月末は0.067%となった。3ヶ月物ユーロ円TIBORは、9月は、0.07~0.08%台で推移した。10年物国債流通利回りは、9月は、1.0%台前半から1.2%台半ばで推移した。
東証株価指数(TOPIX)は、9月末には921ポイントとなった。日経平均株価は、9月末には9,383円となった。
広義流動性は、8月(速報)は前年同月比1.5%増となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、8月(速報)は前年同月比4.5%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.4%減)となった。9月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が100億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は、7,324億円(銀行起債の普通社債は122億円)となった。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、8月は前月比で短期は0.347%ポイント低下し、長期は0.270%ポイント低下したことから、総合では0.318%ポイント低下し1.416%となった。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、資金繰り判断は若干改善し、金融機関の貸出態度はやや悪化している。

<景気ウォッチャー調査>

内閣府「景気ウォッチャー調査」の8月の現状判断DIは、前月を1.2ポイント上回り、43.6となった。先行き判断DIは、前月を1.2ポイント上回り、46.1となった。