月例経済報告(平成13年7月)

―景気は、悪化している。―

平成13年7月11日

内閣府

総論

(我が国経済の基調判断)

景気は、悪化している。

  • 個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。失業率は高水準で推移している。
  • 輸出、生産が引き続き減少している。
  • 企業収益、設備投資は頭打ちとなっている。

先行きについては、在庫の増加や設備投資の弱含みの兆しなど、懸念すべき点がみられる。

(政策の基本的態度)

政府は、経済財政諮問会議答申を受けて「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」を6月26日に閣議決定した。この基本方針に従い、不良債権問題を抜本的に解決するとともに、構造改革のための7つのプログラムをパッケージとして実施するなど、日本経済の再生のための構造改革を断行する。

各論

1.消費・投資などの需要動向

個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。

消費総合指数をみると、足元で弱い動きがみられる。
また、需要側統計である家計調査でみると、実質消費支出は、2ヶ月連続で前月を下回った後、平成13年5月は増加した。
販売側統計をみると、小売業販売額は、2ヶ月連続で前月を下回った後、5月はほぼ横ばいとなっており、依然として弱い動きが続いている。チェーンストア販売額も、依然として前年を下回っており、弱い動きが続いている。一方、百貨店販売額は、営業時間の延長などの影響もあり、前年比減少幅が縮小している。
耐久消費財についてみると、新車販売台数は、伸び悩みが続いている。家電販売金額は、パソコンの大幅な減少が続いていることなどから引き続き前年を下回った。
旅行は、国内旅行は前年をやや上回ったものの、先月減少に転じた海外旅行は前年比減少幅がさらに拡大しており、総じてみると引き続き減速感がみられる。
こうした需要側と販売側の動向を総合してみると、個人消費は、おおむね横ばいの状態が続いているものの、足元で弱い動きがみられる。
個人消費の動向を左右する家計収入の動きをみると、定期給与が5ヶ月連続で前年を下回るなど弱い動きが続いている。また、現金給与総額は2ヶ月ぶりに前年を下回った。

設備投資は、頭打ちとなっている。産業別にみると、製造業は堅調に増加しているものの、非製造業では弱含んでいる。

設備投資は、平成11年末に持ち直しに転じて以降増加基調が続き、これまで景気を支える要素であった。しかしながら、「法人企業統計季報」でみると、1-3月期の設備投資は、製造業は堅調に増加しているものの、非製造業で前年比減少となり、全体として頭打ちとなっている。また、機械設備投資の参考指標である資本財出荷は、このところ弱含んでいる。
設備投資の今後の動向については、日銀短観の平成13年度設備投資計画において非製造業を中心に減少が見込まれていること、機械設備投資の先行指標である機械受注が1-3月期は前期比マイナスとなっており4-6月期もほぼ横ばいの見通しとなっていることなど、弱含みの兆しがみられる。

住宅建設は、弱含みとなっている。

住宅建設は、平成11年以降おおむね年率120万戸前後で推移してきたが、平成13年2月以降弱含んでいる。これは、昨年堅調であったマンションの着工が落ち着いてきたことに加え、年明け以降公庫持家の着工が大きく水準を下げて推移していることが主因である。5月は年率120.0万戸となり単月では水準を戻したが、これは民間資金貸家の着工が前月と比べ大幅に増加したことによる。
先行きについてみると、住宅金融公庫融資の申し込み戸数が減少していることなど、住宅着工を減少させる要因が引き続きみられる。

公共投資は、総じて低調に推移している。

公共投資は、総じて低調に推移している。平成12年度の公共事業関連予算は、国の補正後予算が比較的高水準であった前年度を下回り、地方も厳しい財政状況から投資的経費を抑制する動きが続いた。このような状況を反映して、工事の前払金保証契約実績に基づく公共工事請負金額は、昨年6月以降3月まで継続して前年を下回っていた。また、年度末にかけて発注が集中する1-3月期の受注には、前年を大きく下回る指標がみられた。
新年度に入り、4月には大手50社受注額、請負金額が前年を上回ったが、5月にはいずれも再び大きく前年を下回っている。これらには前年度当初の発注が5月以降にずれ込んだために、前年4月の水準が大きく落ち込んでいたことなどの影響が考えられる。また、年度当初は発注額が比較的小さく、前年比が振れやすいことにも留意する必要がある。
4-6月期の公共投資については、平成13年度当初予算における国の公共事業関係費については前年度とほぼ同額を確保していること、地方の投資的経費の削減幅が前年度に比べて縮小していることなどから、1-3月期のように前年を大きく下回ることはないものと考えられる。

輸出、輸入は、ともに減少している。貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

輸出は、アメリカやアジアの景気減速を背景として、半導体等電子部品などの電気機器を中心に減少している。地域別にみると、アジア、アメリカ、EUのいずれの地域向けも減少している。
輸入は、IT関連需要の鈍化を背景に、半導体等電子部品などIT関連財を中心とした機械機器が減少傾向にあり、全体としても減少している。地域別にみると、アジアからの輸入はアジアNIEsからの輸入が機械機器を中心に減少するなどやや弱含んでおり、アメリカ・EUからの輸入は減少している。
国際収支をみると、昨年秋以降、輸出数量の減少などから減少してきた貿易・サービス収支の黒字は、輸入数量の減少などから、おおむね横ばいの範囲内の動きとなっている。

2.企業活動と雇用情勢

生産は、引き続き減少する中で、在庫が増加している。

鉱工業生産は、今年に入ってから減少が続いている。輸出の減少等により、IT関連品目の生産が減少していることが主因である。
生産の先行きについては、6月は増加、7月は減少が見込まれているが、6月がこの見込みどおりに推移した場合、4-6月期も前期比減少となることには留意しておく必要がある。また、電子部品や化学、鉄鋼等の生産財を中心に在庫が増加していることも、生産の先行きに関して懸念すべき点である。
一方、第3次産業活動の動向をみると、サービス業を中心に、緩やかに増加している。

企業収益は、頭打ちとなっている。また、企業の業況判断は、製造業を中心に引き続き悪化している。倒産件数は、やや高い水準となっている。

企業収益は、平成11年以降改善しており、特に平成12年半ば以降は大幅な改善が続いていた。今回の改善の背景としては、企業のリストラ努力が挙げられるが、製造業において売上高が伸びていることや、非製造業において平成12年初までは変動費を削減してきたことも大きく寄与していた。しかし、日銀短観によると平成13年度上期は減益に転じる見込みとなっており、「法人企業統計季報」によると平成13年1-3月期における経常利益は前年同月比横ばいとなった。
企業の業況判断について日銀短観をみると、大企業非製造業では横ばいとなったが、電気機械を中心に製造業で引き続き大幅に悪化するなど、厳しさがみられる。

また、5月の倒産件数は、東京商工リサーチ調べで1,664件となるなど、やや高い水準となっている。

雇用情勢は、完全失業率がこれまでの最高水準にあるなど、依然として厳しい。一部で底固さがみられるものの、製造業では弱い動きがみられる。

完全失業率は、5月は前月比0.1%上昇し、これまでの最高水準の4.9%となった。
また、生産の減少を反映した動きが製造業を中心にみられる。新規求人数は、前月比でみると5月は4月に続き増加となった(5月前月比3.0%増)が、製造業では弱い動きがみられる。製造業の残業時間は、7ヶ月連続で前月比減となっている。雇用者数のここ2ヶ月の動きをみると、前月比で製造業では減少したものの、非製造業では増加したため、全体としては増加となっている。企業の雇用過剰感は引き続き強まっており、中堅、中小製造業で悪化幅が大きくなっている。

3.物価と金融情勢

国内卸売物価、消費者物価は、ともに弱含んでいる。

輸入物価は、このところ、契約通貨ベースでは下落しているが、円ベースでは円安の影響を受けて上昇している。国内卸売物価は、平成13年入り後弱含んでいる。最近の動きをみると、石油・石炭製品などは値上がりしているものの、電気機器や輸送機器などが値下がりしていることから、下落している。また、企業向けサービス価格は、前年同月比で下落が続いている。
消費者物価は、平成12年秋以降弱含んでいる。最近の動きをみると、外食の下落の効果が一巡したことなどにより一般サービスは前年と比べやや上昇しているものの、繊維製品の下落幅拡大や石油製品の上昇幅縮小などにより一般商品は下落幅を拡大していることから、全体としては下落幅を拡大している。
こうした動向を総合してみると、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレにある。

金融情勢については、長期金利は、景気の先行きを懸念する市場の見方などもあって、昨年秋より低下基調で推移し、6月は、一段と低下した。

短期金利についてみると、オーバーナイトレートは、6月は、中旬にかけて0.01%で推移したが、下旬から上昇し、月末には0.06%となった。2、3ヶ月物は、年明け以降、低下傾向で推移しているが、6月は、横ばいで推移した。長期金利は、景気の先行きを懸念する市場の見方などもあって、昨年秋より低下基調で推移し、3月下旬には1.0%まで低下した。その後は一旦上昇したものの再び低下傾向となり、6月は、一段と低下した。
株式相場は、昨年春より下落基調で推移してきたが、3月中旬以降反転し、4月末から5月上旬にかけて構造改革期待の高まりや堅調な米国株価の動向等を背景に上昇した後、6月末にかけて下落傾向で推移した。
対米ドル円相場は、昨年末から円安が進み、4月に126円台となった後、ユーロ安につられる形で一時119円台まで上昇したが、6月は、円安基調で推移し、124円台まで下落した。対ユーロ相場は、3月以降110円を挟んで一進一退の動きが続いていたが、5月下旬から6月初めにかけて100円台まで大きく上昇した後、下旬にかけて107円台まで下落した。
M2+CD(月中平均残高)は、昨年後半以降、おおむね前年同月比2.0%増程度で推移してきたが、年明け以降、郵便貯金からの資金シフト等を受けて、やや伸び率を高めている(6月速報:前年同月比3.2%増)。民間金融機関の貸出(総貸出平残前年比)は、96年秋以来マイナスが続いており、企業の資金需要の低迷などを背景に、依然低調に推移している。貸出金利は、ゼロ金利政策解除後緩やかに上昇してきたが、年明け以降低下している。

4.海外経済

アメリカの景気は、弱い状態となっている。アジアでは景気は減速している。

世界経済をみると、全体として成長に減速がみられる。
アメリカでは、個人消費や住宅投資などに底堅い動きがみられ、消費者心理に下げ止まりもみられる。一方で、企業収益の悪化から設備投資が抑制されているなど、内需は緩やかな伸びにとどまっている。在庫調整が進むなかで、生産活動が停滞し、稼働率が低下している。雇用は製造業等を中心に減少しており、失業率は上昇傾向にある。景気は、弱い状態となっている。先行きに対する懸念材料としては、企業収益の悪化、稼働率の低下などがある。
ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気の拡大テンポは鈍化している。フランスでは、景気は安定した拡大を続けているものの、企業の先行き見通しは悪化している。イギリスでは、景気は緩やかに拡大している。
アジアをみると、中国では、輸出の伸びに鈍化がみられるものの、個人消費や固定資産投資が堅調に推移しており、景気の拡大テンポはやや高まっている。韓国では、生産や個人消費の伸びの鈍化に加えて、輸出の伸びが鈍化したことから、景気は減速している。
金融情勢をみると、アメリカでは、6月26、27日のFOMCで短期金利の誘導目標水準が0.25%ポイント引き下げられ、3.75%とされた。
国際商品市況をみると、在庫増加によりガソリンの供給不足懸念が後退したことから、原油価格は下落した。

(注)

<個人消費>

消費総合指数(需要側、内閣府試算値、後方3ヶ月移動平均)は、平成13年4月(速報値)季節調整済3ヶ月前比0.5%増の後、5月(速報値)は同0.9%減となった。
消費総合指数の作成方法:総務省「家計調査」から、GDPの個人消費には含まれない「仕送り金」、「修繕費」や、振れが大きい高額消費である「自動車等購入」などを除外した後、世帯数を乗ずるなどしてマクロの消費ベースにする。これに、自動車、家賃、医療費について別途供給側の統計を用いて計算したものを加える。詳細は、ディスカッションペーパー(https://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/menu.html)を参照。
家計調査の全世帯実質消費支出は、4月季節調整済前月比0.9%減の後、5月(速報値)は同1.4%増(前年同月比2.3%減)となった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、5月(速報値)は季節調整済前月比0.9%増(前年同月比2.3%減)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、5月(速報値)は季節調整済前月比0.1%増(前年同月比1.6%減)となった。また、百貨店販売額は、5月(速報値)は、前年同月比0.2%減(店舗調整後)(季節調整済前月比0.3%増(店舗調整前))となった。
チェーンストア販売額(日本チェーンストア協会調べ)は、5月は、前年同月比4.9%減(店舗調整後)(季節調整済前月比0.6%増(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、5月は前年同月比2.1%増の後、6月(速報値)は同0.9%増となった(なお、今年の6月は稼働日数が昨年より1日少ない)。
家電販売額(日本電気大型店協会調べ)は、4月前年同月比1.6%減の後、5月は同4.4%減となった。
大手旅行業者13社取扱金額の5月は、前年同月比で国内旅行が0.7%増、海外旅行が同2.9%減となった。
厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では、4月前年同月比0.0%の後、5月(速報値)は同0.4%減(事業所規模30人以上では同0.5%増)となり、うちきまって支給する給与は、5月(速報値)同0.2%減(事業所規模30人以上では同0.5%増)となった。実質賃金は、事業所規模5人以上では、4月前年同月比0.6%増の後、5月(速報値)は同0.2%増(事業所規模30人以上では同1.1%増)となった。

<設備投資>

1-3月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業)でみると、前年同期比で2.5%増(うち製造業22.6%増、非製造業5.8%減)となっている。
経済産業省「経済産業統計」により資本財出荷(除く輸送機械)をみると、季節調整済前月比で4月は8.4%減(前年同期比0.9%増)の後、5月は4.0%増(前年同期比4.1%増)となっている。
日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)により設備投資の動向(ソフトウェアを除く)をみると、大企業の平成13年度設備投資計画は、製造業で前年度比7.7%増、非製造業で同7.1%減となっており、全産業では同1.3%減となった。また、中小企業では製造業で同20.4%減、非製造業で同18.4%減となっており、全産業では同18.9%減となった。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前月比で4月は6.3%増(前年同月比10.5%増)の後、5月は2.1%減(同4.3%増)となり、このところ弱含み傾向にある。なお、4-6月期(見通し)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比で0.4%増(前年同期比0.6%増)と見込まれている。
民間からの建設工事受注(50社、非住宅)は、4月は季節調整済前月比7.1%減(前年同月比13.7%減)の後、5月は同7.6%増(同10.1%減)となっている。

<住宅建設>

国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前期比)は、4月は5.8%減、5月は5.6%増となった。内訳をみると、公庫持家の着工(同)は、4月は18.9%減、5月は2.9%減となり、民間資金貸家の着工(同)は、4月は4.3%減、5月は23.8%増となった。また、新設住宅着工床面積(同)は、4月は6.3%減、5月は2.1%増となった。
住宅金融公庫を利用した持家の着工(全体の新設住宅着工の約15%)の先行指標である公庫への融資申込み戸数(個人向けマイホーム新築資金)は、平成12年度第2回募集(受付期間:8月7日~9月22日)に51,192戸(前年同回比42.1%減)となった後、第3回募集(受付期間:10月30日~12月22日)は35,486戸(同4.5%減)、第4回募集(受付期間:1月22日~3月23日)は33,375戸(同11.5%減)となり、低水準にとどまっている。また、平成13年度第1回募集(受付期間:4月23日~5月28日)は、28,432戸となっている(平成13年度から受付回数が年4回から年6回になったため、単純に比較できない)。

<公共投資>

平成12年度の国の一般会計予算(補正後)をみると公共事業関係費は前年度比6.2%減となっている。同じく都道府県及び市町村の普通会計予算(9月補正後、単純合計)をみると、普通建設事業費は前年度比7.1%減となっている。
また、平成13年度の国の一般会計予算(当初)をみると、公共事業関係費は前年度当初予算とほぼ同額を確保している。地方の一般会計予算(当初)についてみると、「日経地域情報」調査によれば、普通建設事業費は、都道府県で前年度比2.4%減、全市で同3.1%減、特別区で同6.8%減となっており、これらを単純合計すると前年度比2.7%減となる(骨格予算を編成した地方公共団体などを除く)。
公共機関からの1件500万円以上の建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年同月比で4月は7.2%減となった。同じく大手50社の建設工事受注額は、前年同月比で4月11.7%増の後、5月は30.8%減となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で4月4.7%増の後、5月は23.5%減となった。

<輸出・輸入・国際収支>

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、1-3月期前期比3.1%減(前年同期比4.4%減)の後、4月前月比8.1%減、5月0.9%減(前年同月比9.7%減)となった。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、1-3月期前期比2.0%減(前年同期比6.3%増)の後、4月前月比6.8%減、5月11.1%増(前年同月比3.6%増)となった。なお、今年の5月は平日数が例年より1.5日程度多いことから実勢よりも強い数字になっている可能性がある。
貿易・サービス収支(季節調整値)の黒字は、4月は3,365億円、通関収支差(季節調整値)は、4月6,108億円の後、5月2,854億円となった。

<生産・出荷・在庫>

5月の鉱工業生産指数(季節調整値、速報)は、一般機械や輸送機械等が減少したことから、前月比1.2%減となった。
製造工業生産予測調査によると、前月比で6月は一般機械や電気機械等により0.3%増の後、7月は電気機械や化学等により0.1%減になると見込まれている。6月がこの見込み伸び率どおりに推移した場合、4-6月期の生産は前期比3.7%減(速報値による試算)となる見込みである。
5月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、速報)は、前月比0.8%増となった。また生産財の在庫指数は、昨年10月以降8か月連続で増加している。
4月の第3次産業活動指数(季節調整値・速報)は、運輸・通信業やサービス業等が減少した結果、前月比3.6%減となった。

<企業>

企業収益は、平成11年以降改善している。今回の収益改善の特徴をみると、企業の人件費抑制等のリストラ努力が挙げられる。業種別にみると、製造業では、変動費は収益の圧迫要因であるが、売上高が増加したことの寄与が大きく、特に平成12年4-6月期以降は人件費抑制も増益に寄与している。一方、非製造業では、平成12年1-3月期までは主に変動費を減少させることで収益を増加させてきていたが、4-6月期以降は人件費抑制の寄与が大きくなっている。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、全規模・全産業では、平成13年度上期の経常利益は前年同期比7.5%の減益の後、平成13年度下期には同8.7%の増益が見込まれている。
一方、業況判断について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査、業況水準について「良い」-「悪い」)をみると、全規模で製造業は11%ポイント悪化して△30%ポイント、非製造業は1%ポイント悪化して△25%ポイント、全産業では5%ポイント悪化して△27%ポイントとなった。

<倒産>

企業の倒産については、東京商工リサーチ「倒産月報」によると、5月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,664件(前年同月比9.4%増)、負債総額は10,049億円(同39.1%減)となっており、帝国データバンク「全国企業倒産集計」によると、企業倒産件数は1,724件(同12.8%増)、負債総額は10,215億円(同39.1%減)となっている。

<雇用情勢>

総務省「労働力調査」の5月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差6万人増の329万人となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の新規求人数は、季節調整済前月比で4月4.9%増の後、5月は3.0%増となった(5月前年同月比10.4%増)。製造業では、4月前年同月比2.7%減の後、5月は同7.1%減となった。有効求人倍率(季節調整値)は、4月0.62倍の後、5月0.61倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は4月1.05倍の後、5月1.08倍となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では4月季節調整済前月比1.5%減(前年同月比3.5%減)の後、5月は同0.8%減(同4.7%減)(速報値)となった。
労働力調査によると、雇用者数は、季節調整済前月比で4月0.1%増の後、5月は0.2%増となった。
労働力調査により内閣府が行った試算では、製造業の雇用者数は、季節調整済前月比で4月1.2%減の後、5月は0.5%減となり、非製造業の雇用者数は4月0.5%増の後、5月は0.4%増となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」によると、企業の雇用人員判断D.I.は、3月調査の11%ポイントから、6月調査では15%ポイントとなった。

<物価>

日本銀行「卸売物価指数」の輸出物価(円ベース)は、6月は前月比0.5%の下落(前年同月比4.1%上昇)、4-6月平均の3ヶ月前比(1-3月平均対比、以下同じ)は0.7%の上昇となった。輸入物価(円ベース)は、6月は前月比0.2%の上昇(前年同月比10.7%上昇)、4-6月平均の3ヶ月前比は2.2%の上昇となった。また、国内卸売物価は、6月は前月比0.1%の下落(前年同月比0.7%下落)、3ヶ月前比は0.2%の下落となった。
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の5月の企業向けサービス価格指数は前年同月比1.0%の下落(前月比0.5%下落)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の生鮮食品を除く総合は、5月は前年同月比0.7%の下落(季節調整済前月比0.1%下落)、3-5月平均の前年同期比は0.6%の下落となった。一般サービスは、5月は前年同月比0.1%の下落、3-5月平均の前年同期比は0.1%の上昇となった。一般商品は、5月は前年同月比1.3%の下落、3-5月平均の前年同期比は1.3%の下落となった。また、「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の生鮮食品を除く総合は、6月は前年同月比0.7%の下落(季節調整済前月比0.2%下落)、4-6月平均の前年同期比は0.9%の下落となった。

<金融>

無担保コールオーバーナイトレートは、6月は0.01%で推移した後、0.06%まで上昇した。3ヶ月物ユーロ円TIBORは、6月は0.07%台~0.08%台で推移した。10年物国債流通利回りは、6月は1.2%台から1.1%台へ低下した。
東証株価指数(TOPIX)は、4月末の1,366ポイントから、5月上旬には一時1,440ポイントまで上昇した後、6月末には1,300ポイントとなった。日経平均株価は、4月末の13,934円から、5月上旬には一時14,529円まで上昇した後、6月末には12,969円となった。
対米ドル円相場はインターバンク直物中心相場、対ユーロ円相場はインターバンク17時時点の相場。
広義流動性は、6月(速報)は前年同月比2.5%増となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、6月(速報)は前年同月比3.8%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後1.5%減)となった。6月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債の発行は無かった。また、国内公募事業債の起債実績は、1兆1,370億円(うち銀行起債分550億円)となった。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、5月は前月比で短期は0.084%ポイント低下し、長期は0.140%ポイント低下したことから、総合では0.098%ポイント低下し1.602%となった。