月例経済報告(平成12年10月)

平成12年10月17日

経済企画庁

概観

景気は、厳しい状況をなお脱していないが、緩やかな改善が続いている。各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響はやや薄らいでいるものの、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが続いている。

需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきたが、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、このところ堅調であったマンションの着工が減少したが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが続いており、製造業では投資意欲の強まりがみられる。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。輸出は、欧米向けに減速がみられるものの、アジア向けを中心に緩やかに増加している。

生産は、堅調に増加している。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。一方、倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

政府は、経済を自律的な回復軌道に乗せるため引き続き景気回復に軸足を置きつつ、我が国経済を21世紀にふさわしい構造に改革する。このため、日本新生プランの具体化策等を中心とした新たな経済対策の策定を行い、それを踏まえ平成12年度補正予算の編成を行う。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきたが、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、このところ堅調であったマンションの着工が減少したが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが続いており、製造業では投資意欲の強まりがみられる。公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。

産業面をみると、生産は、堅調に増加している。企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。一方、企業倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

輸出は、欧米向けに減速がみられるものの、アジア向けを中心に緩やかに増加している。輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、9月は上旬に106円台から105円台に上昇した後、10月上旬にかけて109円台まで下落した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、9月はおおむね横ばいで推移した後、月末から10月上旬にかけて上昇した。長期金利は、9月は上旬に上昇した後低下し、以後おおむね横ばいで推移して、月末から10月上旬にかけてやや低下した。株式相場は、9月は下旬にかけて下落した後、月末から10月上旬にかけてやや上昇した。マネーサプライ(M+CD)は、9月は前年同月比1.9%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和傾向にあるが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、年初に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、2000年1~3月期前期比年率4.8%増の後、2000年4~6月期は同5.6%増となった。個人消費は増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。連邦準備制度は、10月3日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準と公定歩合の据置を決定した(それぞれ6.50%、6.00%)。なお、今後の物価及び景気動向に対するリスクの見通しはインフレ方向とした。9月の長期金利(10年物国債)は、ほぼ横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、大きく下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ横ばいで推移している。イギリスでは増加している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している。欧州中央銀行(ECB)は、10月5日、物価の上昇圧力を抑制するため、政策金利(短期オペの最低応札金利)を0.25%ポイント引き上げ、4.75%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、危機後の急回復に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の9月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移した。

国際商品市況の9月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬は強含んだものの、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬に37ドル台まで上昇したが、その後は下落し、下旬には30ドルを下回って推移した。

1.国内需要:設備投資は、持ち直しの動きが続いており、製造業では投資意欲の強まりがみられる。

個人消費は、収入が下げ止まってきたが、おおむね横ばいの状態が続いている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で7月2.6%減の後、8月(速報値)は4.1%減(季節調整済前月比2.3%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比2.9%減、勤労者以外の世帯では同5.4%減となった。形態別にみると、財、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比3.2%減、勤労者世帯では同2.2%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で7月3.8%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で7月0.6%減の後、8月(速報値)は1.3%減(季節調整済前月比0.3%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で7月5.0%減の後、8月(速報値)4.5%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で7月4.3%減の後、8月5.7%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で9月(速報値)は0.8%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で8月は1.4%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、8月は前年同月比で国内旅行が0.7%減、海外旅行は5.1%増となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で7月0.4%減の後、8月(速報)は0.3%減(事業所規模30人以上では同0.7%減)となり、うち所定外給与は、8月(速報)は同4.7%増(事業所規模30人以上では同5.4%増)となった。実質賃金は、前年同月比で7月0.2%増の後、8月(速報)は0.6%増(事業所規模30人以上では同0.1%増)となった。なお、6~8月合算の特別給与(速報)は、前年同期比0.4%減(前年は同6.6%減)となった。

住宅建設は、このところ堅調であったマンションの着工が減少したが、全体ではおおむね横ばいとなっている。新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で7月は8.0%減(前年同月比0.8%減)となった後、8月は4.7%増(前年同月比3.8%減)の10万2千戸(年率121.9万戸)となった。8月の着工床面積(季節調整値)は、前月比7.2%増(前年同月比2.3%減)となった。8月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比9.6%増(前年同月比4.3%減)、貸家は同5.1%増(同8.1%減)、分譲住宅は同12.3%減(同2.7%増)となっている。

設備投資は、持ち直しの動きが続いており、製造業では投資意欲の強まりがみられる。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の12年度設備投資計画は、製造業で前年度比13.8%増(6月調査比2.3%上方修正)、非製造業で同1.4%増(同0.7%上方修正)となっており、全産業では同6.0%増(同1.3%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比10.1%増(6月調査比5.2%上方修正)、非製造業で同1.4%減(同1.6%上方修正)となり、中小企業では製造業で同5.2%増(同7.1%上方修正)、非製造業で10.3%減(同1.0%下方修正)となっている。

なお、12年4~6月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で2.2%増(うち製造業3.4%増、非製造業1.6%増)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で7月は11.7%減(前年同月比17.9%増)の後、8月は26.6%増(同45.8%増)となり、基調は回復への動きがみられる。

なお、7~9月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で10.7%増(前年同期比30.0%増)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、一進一退で推移しており、7月は季節調整済前月比16.1%減の後、8月は季節調整済前月比24.7%増(前年同月比2.0%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比20.7%増(前年同月比58.9%増)、非製造業は同26.4%増(同7.5%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、前年に比べて低調な動きとなっている。

公共機関からの建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年の公共工事着工統計調査と比較して、7月は7.8%減(参考値)の後、8月は12.4%減(同)となった。同じく大手50社の受注額は、前年同月比で7月は10.3%減の後、8月は19.3%減となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で7月は16.7%減の後、8月は7.1%減となった。

2.生産雇用:雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、堅調に増加している。在庫は、8月は増加した。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で7月0.9%減の後、8月(速報)は、石油・石炭製品、繊維が減少したものの、一般機械、電気機械等が増加したことから、3.3%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で9月は輸送機械、一般機械等により2.5%減の後、10月は電気機械、一般機械等により、1.7%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で7月1.8%減の後、8月(速報)は、生産財、資本財等が増加したことから、3.7%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で7月0.1%減の後、8月(速報)は、化学、窯業・土石製品等が減少したものの、一般機械、電気機械等が増加したことから、0.1%増となった。また、8月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は95.6と前月を6.0ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、一般機械では、生産は8月は増加し、在庫も8月は増加した。電気機械では、生産は4か月連続で増加し、在庫は8月は増加した。鉄鋼では、生産は2か月連続で増加し、在庫は8月は減少した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(7月調査、季節調整値)でみると、前月比で6月1.5%増の後、7月(速報)は、運輸・通信業、電気・ガス・熱供給・水道業が増加したものの、サービス業、卸売・小売業,飲食店等が減少した結果、1.1%減となった。

農業生産の動向をみると、平成12年産水稲の全国作況指数(9月15日現在)は、103の「やや良」となっている。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きが続いている。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、7月0.60倍の後、8月0.62倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、7月1.08倍の後、8月1.08倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、7月は前年同月比1.0%増(前年同月差53万人増)の後、8月は同0.2%増(同11万人増)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、7月前年同月比0.1%減(季節調整済前月比0.2%増)の後、8月(速報)は同0.2%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.1%減)、産業別には製造業では同1.6%減となった。8月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差7万人減の307万人、完全失業率(同)は、7月4.7%の後、8月4.6%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では7月前年同月比13.2%増(季節調整済前月比0.5%増)の後、8月(速報)は同12.8%増(同1.4%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比14.6%増)。

前記「企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、企業の雇用人員判断は、過剰感が低下傾向にあるものの、非製造業では依然として高い水準にある。

企業の動向をみると、企業収益は、大幅な改善が続いている。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。

前記「企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は12年度上期には前年同期比15.8%の増益の後、12年度下期には同10.9%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では12年度上期に前年同期比21.6%の増益の後、12年度下期には同27.2%の増益が見込まれている。また、非製造業では12年度上期に前年同期比11.1%の増益の後、12年度下期には同3.1%の減益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では12年度上期に3.81%になった後、12年度下期は4.82%と見込まれている。また、非製造業では12年度上期に2.62%となった後、12年度下期は2.56%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業は「良い」超幅が拡大し、非製造業は「悪い」超幅が縮小した。

また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は12年度上期には前年同期比41.5%の増益の後、12年度下期には同16.4%の増益が見込まれている。また、非製造業では、12年度上期に前年同期比1.7%の増益の後、12年度下期には同1.5%の増益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

銀行取引停止処分者件数は、8月は1,064件で前年同月比20.6%増となった。件数の業種別構成比を見ると、建設業(34.7%)が最大のウエイトを占め、次いで製造業(19.1%)、小売業(16.1%)の順となった。

3.国際収支:輸出は、欧米向けに減速がみられるものの、アジア向けを中心に緩やかに増加

輸出は、欧米向けに減速がみられるものの、アジア向けを中心に緩やかに増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で7月8.1%減の後、8月は7.5%増(前年同月比12.2%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、一般機械等が増加した。同じく地域別にみると、アジア等が増加した。

輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で7月5.8%減の後、8月は10.3%増(前年同月比13.1%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、機械機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、7月に9,273億円の黒字の後、8月は8,967億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

8月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が縮小したものの、貿易収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、5,601億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅が拡大したものの、所得収支の黒字幅が拡大したことから、その黒字幅は拡大し、1兆1,081億円となった。投資収支(原数値)は、6,416億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、6,709億円の赤字となった。

9月末の外貨準備高は、前月比41億ドル増加して、3,489億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、9月は上旬に106円台から105円台に上昇した後、10月上旬にかけて109円台まで下落した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、9月は中旬にかけて月初の94円台から90円台に上昇した後、10月上旬にかけて95円台まで下落した。

4.物価:国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

9月の国内卸売物価は、非鉄金属(銅地金)等が上昇したものの、電気機器(電子計算機本体)等が下落したことから、前月比0.1%の下落(前年同月比0.1%の上昇)となった。また、前記「企業短期経済観測調査」(9月調査)によると製商品需給バランスは、引き続き改善がみられる。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比1.5%の下落(前年同月比2.2%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比1.1%の下落(前年同月比5.3%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.4%の下落(前年同月比0.3%の上昇)となった。

企業向けサービス価格は、8月は前年同月比0.5%の下落(前月比0.3%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は繊維等は下落したものの、化学等の上昇により9月は上昇した。9月の動きを品目別にみると、綿糸等は下落したものの、塩化ビニール樹脂等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で7月0.3%の下落の後、8月は家賃の上昇幅が縮小した一方、外食の下落幅が縮小したこと等により0.3%の下落(前月比0.1%の下落、季節調整済前月比0.1%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で7月0.5%の下落の後、8月は0.8%の下落(前月比保合い、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で8月0.8%の下落の後、9月(中旬速報値)は、公共料金(広義)の上昇幅が縮小したこと等により1.0%の下落(前月比0.3%の上昇、季節調整済前月比0.2%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で8月1.3%の下落の後、9月(中旬速報値)は1.4%の下落(前月比0.3%の上昇、季節調整済前月比0.2%の下落)となった。

5.金融財政:長期金利は、9月は上旬に上昇した後低下し、以後おおむね横ばいで推移して、月末から10月上旬にかけてやや低下

最近の金融情勢をみると、短期金利は、9月はおおむね横ばいで推移した後、月末から10月上旬にかけて上昇した。長期金利は、9月は上旬に上昇した後低下し、以後おおむね横ばいで推移して、月末から10月上旬にかけてやや低下した。株式相場は、9月は下旬にかけて下落した後、月末から10月上旬にかけてやや上昇した。M+CDは、9月は前年同月比1.9%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、9月から10月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。3ヶ月物は、9月はおおむね横ばいで推移した後、月末から10月上旬にかけて上昇した。

公社債市場をみると、国債利回りは、9月は上旬に上昇した後低下し、以後おおむね横ばいで推移して、月末から10月上旬にかけてやや低下した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、8月は前月比で短期は0.082%ポイント上昇し、長期は0.111%ポイント低下したことから、総合では0.031%ポイント上昇し1.788%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、9月(速報)は前年同月比1.9%増となった。また、広義流動性は、9月(速報)は同3.1%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、9月(速報)は前年同月比4.0%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後1.8%減)となった。9月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が80億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は7,415億円(うち銀行起債分1,900億円)となった。

前記「企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、資金繰り判断は、おおむね横ばいとなっているものの、金融機関の貸出態度は、引き続き改善傾向にあり、「緩い」超が続いている。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和傾向にあるが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、東証株価指数(TOPIX)は、9月は下旬にかけて下落した後、月末から10月上旬にかけてやや上昇した。日経平均株価もほぼ同様の動きとなった。

6.海外経済:ユーロ圏、利上げ

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、年初に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、2000年1~3月期前期比年率4.8%増の後、2000年4~6月期は同5.6%増となった。個人消費は増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は8月前月差9.1万人減の後、9月は同25.2万人増と拡大している。失業率は9月3.9%となった。物価は総じて安定している。8月の消費者物価は前年同月比3.4%の上昇、8月の生産者物価(完成財総合)は同3.3%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然高水準である。連邦準備制度は、10月3日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準と公定歩合の据置を決定した(それぞれ6.50%、6.00%)。なお、今後の物価及び景気動向に対するリスクの見通しはインフレ方向とした。9月の長期金利(10年物国債)は、ほぼ横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、大きく下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランス、イギリスでは、景気は拡大している。4~6月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率4.7%増、フランス同2.9%増、イギリス同3.8%増となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ横ばいで推移している。イギリスでは増加している(鉱工業生産は、ドイツ8月前月比1.1%増、フランス6月同0.6%減、イギリス8月同0.6%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ9月9.4%、フランス8月9.6%、イギリス8月3.6%)。物価は、ドイツでは、エネルギー価格の上昇から消費者物価上昇率がやや高まっている。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ9月前年同月比2.5%、フランス8月同1.8%、イギリス9月同2.2%)。欧州中央銀行(ECB)は、10月5日、物価の上昇圧力を抑制するため、政策金利(短期オペの最低応札金利)を0.25%ポイント引き上げ、4.75%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、危機後の急回復に比べれば減速しているものの、景気は拡大を続けている。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の9月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、9月29日現在114.7、8月末比1.1%の増価となっている。内訳をみると、9月29日現在、対円では8月末比1.3%増価、対ユーロでは同0.3%増価した。

国際商品市況の9月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬は強含んだものの、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬に37ドル台まで上昇したが、その後は下落し、下旬には30ドルを下回って推移した。