月例経済報告(平成12年8月)

平成12年8月8日

経済企画庁

概観

景気は、厳しい状況をなお脱していないが、緩やかな改善が続いている。各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加え、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが続いている。

需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきたが、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている。公共投資は、堅調であった前年に比べれば低調な動きとなっている。輸出は、基調としてはアジア向けを中心に緩やかに増加している。

生産は、堅調に増加している。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きもみられる。

企業収益は、大幅に改善している。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。一方、倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

政府は、引き続き、景気回復に軸足を置いた経済・財政運営を行い、景気を自律的回復軌道に乗せていくよう全力を挙げつつ我が国経済の動向等を注意深く見ながら適切に対応する。また、経済構造改革に迅速かつ大胆に取り組む。今後、日本新生プランの具体化のための新たな経済政策を取りまとめることとしている。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきたが、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている。公共投資は、堅調であった前年に比べれば低調な動きとなっている。

産業面をみると、生産は、堅調に増加している。企業収益は、大幅に改善している。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。企業倒産件数は、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きもみられる。

輸出は、基調としてはアジア向けを中心に緩やかに増加している。輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としてはおおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、7月は月初の105円台から下落し、月末には109円台となった。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、7月は月央にかけて上昇した後低下し、下旬は横ばいで推移した。長期金利は、7月は横ばいで推移した。株式相場は、7月は上旬に一進一退で推移した後、下旬にかけて大幅に下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、6月は前年同月比1.9%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、個人消費などに減速がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、2000年1~3月期前期比年率4.8%増の後、2000年4~6月期は同5.2%増(暫定値)となった。個人消費は、耐久財消費支出が減少したこともあり伸びが鈍化している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加しているが、住宅着工件数はこのところ減少している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。7月の長期金利(10年物国債)は、上旬はほぼ横ばいで推移したが、その後上昇し、下旬には低下した。月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、月前半は上昇基調で推移したが、後半になって上下した。月初と月末を比較すると下落した。

ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスでは緩やかに増加している。イギリスでは伸びが緩やかになっている。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇がみられるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の7月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移した。

国際商品市況の7月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬に下落し、中旬にかけ上昇した後、下旬には下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から下落基調で推移し、中旬に一時強含む場面がみられたものの、月末にかけては25ドル台まで下落した。

1.国内需要:設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている

個人消費は、収入が下げ止まってきたが、おおむね横ばいの状態が続いている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で5月1.9%減の後、6月(速報値)は1.8%減(季節調整済前月比1.8%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比2.6%減、勤労者以外の世帯では同0.4%増となった。形態別にみると、 財、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比0.9%減、勤労者世帯では同1.7%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で5月1.4%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で5月2.6%減の後、6月(速報値)は1.1%減(季節調整済前月比1.5%増)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で5月4.0%減の後、6月(速報値)3.1%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で5月6.0%減の後、6月5.0%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で7月(速報値)は0.7%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で6月は10.5%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、5月は前年同月比で国内旅行が0.2%増、海外旅行は7.3%増となった。

当庁「消費動向調査」(6月調査)によると、消費者態度指数(季節調整値)は、3月に前期差0.7ポイント上昇の後、6月には同0.9ポイントの上昇となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で5月0.7%増の後、6月(速報)は1.0%増(事業所規模30人以上では同0.8%増)となり、うち所定外給与は、6月(速報)は同5.2%増(事業所規模30人以上では同5.4%増)となった。実質賃金は、前年同月比で5月1.6%増の後、6月(速報)は1.9%増(事業所規模30人以上では同1.7%増)となった。なお、民間主要企業の春季賃上げ率(労働省調べ)は、2.06%となり、昨年(2.21%)を下回った。

住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で5月は2.3%減(前年同月比1.1%減)となった後、6月は4.9%増(同1.2%減)の10万5千戸(年率126.6万戸)となった。6月の着工床面積(季節調整値)は、前月比4.9%増(前年同月比6.2%減)となった。6月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比0.3%増(前年同月比22.6%減)、貸家は同4.4%増(同8.3%増)、分譲住宅は同25.4%増(同30.9%増)となっている。

設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の12年度設備投資計画は、製造業で前年度比11.3%増(3月調査比2.1%上方修正)、非製造業で同0.7%増(同1.8%上方修正)となっており、全産業では同4.6%増(同1.9%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比4.6%増(3月調査比4.3%上方修正)、非製造業で同3.0%減(同1.1%上方修正)となり、中小企業では製造業で同1.7%減(同13.9%上方修正)、非製造業で9.4%減(同7.7%上方修正)となっている。

なお、12年1~3月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で3.3%増(製造業6.1%減、非製造業7.7%増)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で4月は1.1%減(前年同月比13.4%増)の後、5月は4.5%増(同17.7%増)となり、基調は持ち直しの動きが続いている。

なお、4~6月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で1.0%減(前年同期比15.2%増)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、おおむね横ばいで推移しており、6月は季節調整済前月比1.5%増(前年同月比1.8%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比11.1%減(前年同月比47.0%増)、非製造業は同20.2%増(同6.6%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、堅調であった前年に比べれば低調な動きとなっている。

公共機関からの建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年の公共工事着工統計調査と比較して、4月は38.5%減(参考値)の後、5月は35.3%増(同)となった。同じく大手50社の受注額は、前年同月比で5月は12.3%増の後、6月は2.5%増となった。また、公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で5月は8.6%増の後、6月は7.3%減となった。

2.生産雇用:生産は、堅調に増加

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、堅調に増加している。在庫は、2か月連続で減少した。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で5月0.3%増の後、6月(速報)は、プラスチック製品、繊維等が減少したものの、輸送機械、一般機械等が増加したことから、1.7%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で7月は鉄鋼、輸送機械等により0.2%減の後、8月は電気機械、輸送機械等により2.8%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で5月0.7%増の後、6月(速報)は、資本財、生産財等が増加したことから、2.5%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で5月0.5%減の後、6月(速報)は、輸送機械、化学等が増加したものの、窯業・土石製品、電気機械等が減少したことから、0.1%減となった。また、6月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は98.4と前月を2.1ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産は6月は増加し、在庫は6月は増加した。一般機械では、生産は6月は増加し、在庫は2か月連続で減少した。鉄鋼では、生産は6月は減少し、在庫は4か月連続で増加した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(5月調査、季節調整値)でみると、前月比で4月0.6%減の後、5月(速報)は、サービス業、金融・保険業が減少したものの、運輸・通信業、卸売・小売業,飲食店等が増加した結果、0.6%増となった。

雇用情勢は、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しいものの、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きもみられる。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、5月0.56倍の後、6月0.59倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、5月0.97倍の後、6月1.10倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、5月は前年同月比0.6%増(前年同月差32万人増)の後、6月は同1.1%増(同58万人増)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、5月前年同月比0.3%減(季節調整済前月比0.0%)の後、6月(速報)は同0.2%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.2%減)、産業別には製造業では同1.6%減となった。6月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差8万人増の316万人、完全失業率(同)は、5月4.6%の後、6月4.7%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では5月前年同月比12.4%増(季節調整済前月比0.7%増)の後、6月(速報)は同14.5%増(同0.3%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比15.4%増)。

企業の動向をみると、企業収益は、大幅に改善している。また、企業の業況判断は、業種や規模によってはなお厳しいが、全体としては改善が進んでいる。

前記「企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は12年度上期には前年同期比9.0%の増益の後、12年度下期には同12.7%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では12年度上期に前年同期比10.9%の増益の後、12年度下期には同28.7%の増益が見込まれている。また、非製造業では12年度上期に前年同期比7.4%の増益の後、12年度下期には同1.2%の減益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では12年度上期に3.52%になった後、12年度下期は4.95%と見込まれている。また、非製造業では12年度上期に2.54%となった後、12年度下期は2.64%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断(6月時点)をみると、製造業は「良い」超に転化し、非製造業は「悪い」超幅が縮小した。

また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は12年度上期には前年同期比46.7%の増益の後、12年度下期には同15.1%の増益が見込まれている。また、非製造業では、12年度上期に前年同期比8.5%の増益の後、12年度下期には同1.9%の増益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断(6月時点)をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、やや高い水準となっており、負債金額の増加がみられる。

銀行取引停止処分者件数は、6月は1,026件で前年同月比17.0%増となった。件数の業種別構成比を見ると、建設業(33.8%)が最大のウエイトを占め、次いで製造業(17.9%)、小売業(16.5%)の順となった。

3.国際収支:輸出は、基調としてはアジア向けを中心に緩やかに増加

輸出は、基調としてはアジア向けを中心に緩やかに増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で5月2.0%減の後、6月は8.2%増(前年同月比14.9%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、輸送用機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で5月11.2%増の後、6月は3.2%減(前年同月比14.0%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、機械機器、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、5月に7,508億円の黒字の後、6月は1兆1,076億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としてはおおむね横ばいとなっている。

5月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が縮小したものの、貿易収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、5,722億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、所得収支の黒字幅が拡大し、経常移転収支の赤字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、1兆1,162億円となった。投資収支(原数値)は、1兆8,660億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、1兆8,890億円の赤字となった。

6月末の外貨準備高は、前月比37億ドル増加して3,448億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、7月は月初の105円台から下落し、月末には109円台となった。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、7月は上旬に102円台に下落し、中旬にかけて99円台まで上昇した後、下旬には103円台に下落したが、再度101円台まで上昇した。

4.物価:国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

6月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電気機器(電子計算機本体)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比0.3%の上昇)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比1.0%の下落(前年同月比7.8%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比0.6%の下落(前年同月比0.2%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.1%の下落(前年同月比0.6%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、6月は前年同月比0.6%の下落(前月比保合い)となった。

商品市況(月末対比)は木材等は下落したものの、非鉄等の上昇により7月は上昇した。7月の動きを品目別にみると、米つが正角等は下落したものの、銅地金等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で5月0.2%の下落の後、6月は個人サービスが上昇から下落に転じたこと等により0.3%の下落(前月比0.2%の下落、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で5月0.7%の下落の後、6月は0.7%の下落(前月比0.3%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で6月0.9%の下落の後、7月(中旬速報値)は、公共料金(広義)が下落から上昇に転じたこと等により0.7%の下落(前月比0.2%の下落、季節調整済前月比0.2%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で6月1.2%の下落の後、7月(中旬速報値)は0.9%の下落(前月比0.2%の下落、季節調整済前月比0.4%の上昇)となった。

5.金融財政:株式相場は、上旬に一進一退で推移した後、下旬にかけて大幅に下落

最近の金融情勢をみると、短期金利は、7月は月央にかけて上昇した後低下し、下旬は横ばいで推移した。長期金利は、7月は横ばいで推移した。株式相場は、7月は上旬に一進一退で推移した後、下旬にかけて大幅に下落した。M+CDは、6月は前年同月比1.9%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、7月は横ばいで推移した。2、3ヶ月物は、7月は月央にかけて上昇した後低下し、下旬は横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債利回りは、7月は横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、6月は前月比で短期は0.026%ポイント低下し、長期は0.065%ポイント上昇したことから、総合では0.001%ポイント上昇し1.739%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、6月(速報)は前年同月比1.9%増となった。また、広義流動性は、6月(速報)は同2.9%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、6月(速報)は前年同月比4.6%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.1%減)となった。7月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が250億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は5,931億円(うち銀行起債分2,800億円)となった。

前記「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、6月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いているものの、引き続き改善の動きがみられる。金融機関の貸出態度は、引き続き改善の動きがみられ、「緩い」超に転じている。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、東証株価指数(TOPIX)は、7月は上旬に一進一退で推移した後、下旬にかけて大幅に下落した。日経平均株価もほぼ同様の動きとなった。

6.海外経済:アメリカ、個人消費の伸び鈍化

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、個人消費などに減速がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、2000年1~3月期前期比年率4.8%増の後、2000年4~6月期は同5.2%増(暫定値)となった。個人消費は、耐久財消費支出が減少したこともあり伸びが鈍化している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加しているが、住宅着工件数はこのところ減少している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は5月前月差17.1万人増の後、6月は同1.1万人増と拡大している。失業率は6月4.0%となった。物価は総じて安定している。6月の消費者物価は前年同月比3.7%の上昇、6月の生産者物価(完成財総合)は同4.3%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。7月の長期金利(10年物国債)は、上旬はほぼ横ばいで推移したが、その後上昇し、下旬には低下した。月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、月前半は上昇基調で推移したが、後半になって上下した。月初と月末を比較すると下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。実質GDPは、ドイツ1~3月期前期比年率2.7%増、フランス同2.9%増、イギリス4~6月期同3.6%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスでは緩やかに増加している。イギリスでは伸びが緩やかになっている(鉱工業生産は、ドイツ5月前月比2.8%増、フランス5月同0.7%増、イギリス5月同0.1%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ6月9.6%、フランス6月9.6%、イギリス6月3.8%)。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇がみられるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ7月前年同月比1.8%、フランス6月同1.7%、イギリス6月同3.3%)。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはやや高まっている。物価は安定している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の7月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、増価基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、7月31日現在112.8、6月末比2.2%の増価となっている。内訳をみると、7月31日現在、対円では6月末比3.2%増価、対ユーロでは同3.4%増価した。

国際商品市況の7月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬に下落し、中旬にかけ上昇した後、下旬には下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から下落基調で推移し、中旬に一時強含む場面がみられたものの、月末にかけては25ドル台まで下落した。