月例経済報告(平成12年6月)

平成12年6月20日

経済企画庁

概観

景気は、厳しい状況をなお脱していないが、緩やかな改善が続いている。各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加え、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが徐々に強まってきている。

需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきた中で、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている。公共投資は、第二次補正予算の効果もみられるが、高水準であった前年に比べれば低調な動きとなっている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

在庫は、調整を終了し、生産は、緩やかな増加が続いている。

雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

企業収益は、大幅に改善しており、3月決算では含み損などを処理する動きが広がった。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

公需により下支えされてきた我が国経済は、自律的回復に向けた動きが徐々に強まっているが、政府は、これを本格的な回復軌道に着実につなげていくとともに、21世紀の新たな発展基盤を築くため、大胆に日本経済の新生と構造改革に取り組む。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が下げ止まってきた中で、おおむね横ばいの状態が続いている。住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている。公共投資は、第二次補正予算の効果もみられるが、高水準であった前年に比べれば低調な動きとなっている。

12年1~3月期(速報)の実質国内総生産は、前期比2.4%増(年率10.0%増)となり、うち内需寄与度は1.5%となった。

産業面をみると、在庫は、調整を終了し、生産は、緩やかな増加が続いている。企業収益は、大幅に改善しており、3月決算では、含み損などを処理する動きが広がった。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、このところ増加している。

雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

輸出入は、対アジア輸出入を中心に、増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としてはおおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、5月は上旬に109円台まで下落したが、下旬は106円台まで上昇した。5月末から6月上旬にかけては108円台まで下落した後、105円台まで上昇した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、5月から6月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。長期金利は、5月から6月上旬にかけて横ばいで推移した。株式相場は、5月は下旬にかけて大幅に下落した後、6月上旬にかけてやや戻したが、月央には再度下落した。マネーサプライ(M+CD)は、5月は前年同月比2.2%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、一部に減速の兆しともとれる動きがあるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年10~12月期前期比年率7.3%増の後、2000年1~3月期は同5.4%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。連邦準備制度は、5月16日に、公定歩合とフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.5%ポイントずつ引き上げ、それぞれ6.00%、6.50%とし、今後の物価及び景気動向に対するリスク見通しをインフレ方向とした。5月の長期金利(10年物国債)は、上旬は上昇し、中旬にやや上下した後、低下した。月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、月前半に上下し、後半は下落した。月初と月末を比較すると、下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している。なお、欧州中央銀行は、6月8日、中期的な物価の安定に対する上振れリスクを抑制するために、政策金利(主要オペレート)を0.50%ポイント引き上げ、4.25%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっている。物価は、下落している。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の5月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月前半はほぼ横ばいで推移したが、後半になって減価した。

国際商品市況の5月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬から上昇基調で推移し、下旬にはほぼ2年ぶりとなる225ポイント台を記録した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、中旬に一時弱含む場面がみられたものの、月末にかけてはほぼ2か月半ぶりに30ドル台を記録した。

1.国内需要:設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている

実質国内総生産(平成2年基準、速報)の動向をみると、11年10~12月期前期比1.6%減(年率6.4%減)の後、12年1~3月期は同2.4%増(同10.0%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は1.5%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.9%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比1.8%増、民間企業設備投資は同4.2%増、民間住宅は同6.6%増となった。公的固定資本形成は前期比7.5%減、政府最終消費支出は同0.8%増となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比5.4%増、財貨・サービスの輸入は同0.6%減となった。

個人消費は、収入が下げ止まってきた中で、おおむね横ばいの状態が続いている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で3月4.3%減の後、4月(速報値)は1.3%増(季節調整済前月比5.9%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比3.6%増、勤労者以外の世帯では同2.7%減となった。形態別にみると、財、サービスとも増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比1.6%増、勤労者世帯では同3.8%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で3月3.9%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で3月3.3%減の後、4月(速報値)は3.4%減(季節調整済前月比0.0%)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で3月2.8%減の後、4月(速報値)1.7%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で3月2.8%減の後、4月5.2%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で5月(速報値)は3.6%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で4月は9.7%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、4月は前年同月比で国内旅行が1.7%減、海外旅行は5.1%増となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で3月0.6%減の後、4月(速報)は1.0%増(事業所規模30人以上では同1.5%増)となり、うち所定外給与は、4月(速報)は同4.1%増(事業所規模30人以上では同4.9%増)となった。実質賃金は、前年同月比で3月0.1%増の後、4月(速報)は1.9%増(事業所規模30人以上では同2.4%増)となった。

住宅建設は、マンションなどは堅調であるが、全体ではおおむね横ばいとなっている。新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で3月は2.3%増(前年同月比3.6%減)となった後、4月は0.4%減(前年同月比0.1%増)の10万3千戸(年率124万戸)となった。4月の着工床面積(季節調整値)は、前月比2.1%減(前年同月比0.6%減)となった。4月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比7.5%減(前年同月比10.3%減)、貸家は同8.1%増(同0.9%減)、分譲住宅は同13.4%増(同23.8%増)となっている。

設備投資は、持ち直しの動きが明確になっている。

当庁「法人企業動向調査」(12年3月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で11年10~12月期(実績)5.7%増(うち製造業3.2%増、非製造業5.9%増)の後、12年1~3月期(実績見込み)は3.0%減(同1.3%減、同4.2%減)となっている。年度計画では、前年度比で11年度(実績見込み)5.1%減(うち製造業9.4%減、非製造業2.8%減)の後、12年度(計画)は4.7%減(同2.6%増、同8.3%減)となっている。

なお、12年1~3月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で3.3%増(うち製造業6.1%減、非製造業7.7%増)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で3月は4.9%減(前年同月比6.7%増)の後、4月は1.1%減(同13.4%増)となり、基調は持ち直しの動きが続いている。

なお、4~6月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で1.0%減(前年同期比15.2%増)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、一進一退で推移しており、3月は季節調整済前月比36.8%増の後、4月は季節調整済前月比37.6%減(前年同月比11.7%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比22.3%減(前年同月比39.5%増)、非製造業は同37.6%減(同5.9%増)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、第二次補正予算の効果もみられるが、高水準であった前年に比べれば低調な動きとなっている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で2月は15.0%減の後、3月は3.6%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で4月28.5%減の後、5月は8.6%増となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で3月は17.0%減の後、4月は39.3%減となった。

2.生産雇用:雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整を終了し、生産・出荷は、緩やかな増加が続いている。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で3月2.4%増の後、4月は、輸送機械、一般機械等が増加したものの、電気機械、化学等が減少したことから、0.6%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で5月は電気機械、化学等により0.4%増の後、6月は輸送機械、一般機械等により、0.5%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で3月1.8%増の後、4月は、資本財、非耐久消費財等が減少したことから、0.6%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で3月1.3%増の後、4月は、輸送機械、化学等が減少したものの、食料品・たばこ、石油・石炭製品等が増加したことから、0.4%増となった。また、4月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は101.5と前月を1.5ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産は4月は増加し、在庫は4月は減少した。一般機械では、生産は4月は増加し、在庫も4月は増加した。化学では、生産は4月は減少し、在庫も4月は減少した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(3月調査、季節調整値)でみると、前月比で2月1.6%減の後、3月(速報)は、サービス業、運輸・通信業等が増加した結果、同1.5%増となった。

雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるなど改善の動きがみられるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、3月0.53倍の後、4月0.56倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、3月0.97倍の後、4月1.02倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、3月は前年同月比0.4%減(前年同月差21万人減)の後、4月は同0.4%減(同23万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、3月前年同月比0.1%減(季節調整済前月比0.1%減)の後、4月(速報)は同0.4%減(同0.4%減)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.4%減)、産業別には製造業では同1.9%減となった。4月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差5万人減の327万人、完全失業率(同)は、3月4.9%の後、4月4.8%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では3月前年同月比14.5%増(季節調整済前月比3.8%増)の後、4月(速報)は同13.1%増(同2.8%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比14.9%増)。また、労働省「労働経済動向調査」(5月調査)によると、「残業規制」などの雇用調整を実施した事業所割合は、引き続き高い水準となっており、1~3月期は前期の26%から25%になった。

企業の動向をみると、企業収益は、大幅に改善しており、3月決算では含み損などを処理する動きが広がった。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

12年1~3月期の企業収益の動向を前記「法人企業統計季報」(全産業)でみると、売上高は前年同期比で2.6%増、経常利益は同38.7%増となった。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(3月調査)でみると12年1~3月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、売上高は「増加」超に転じ、経常利益は「減少」超幅が縮小した。また、12年1~3月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は「下降」超幅が若干拡大した。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(3月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は12年1~3月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は12年1~3月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、このところ増加している。

銀行取引停止処分者件数は、4月は1,017件で前年同月比26.8%増となった。件数の業種別構成比を見ると、建設業(33.6%)が最大のウエイトを占め、次いで製造業(18.5%)、小売業(16.9%)の順となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けを中心に、増加

輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で3月0.9%減の後、4月は2.4%減(前年同月比12.0%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で3月3.8%増の後、4月は7.0%減(前年同月比4.7%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、中東、アジア等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、3月に9,367億円の黒字の後、4月は1兆1,353億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、基調としてはおおむね横ばいとなっている。

4月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、9,055億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が拡大したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、1兆2,754億円となった。投資収支(原数値)は、4,767億円の黒字となり、資本収支(原数値)は、4,464億円の黒字となった。

5月末の外貨準備高は、前月比26億ドル増加して3,411億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、5月は上旬に109円台まで下落したが、下旬は106円台まで上昇した。5月末から6月上旬にかけては108円台まで下落した後、105円台まで上昇した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、5月は中旬にかけて一進一退で推移し、中旬は96円台まで上昇した。5月下旬から6月上旬にかけては101円台まで下落した。

4.物価:国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

5月の国内卸売物価は、非鉄金属(銅地金)等が上昇したものの、石油・石炭製品(燃料油)等が下落したことから、前月比0.1%の下落(前年同月比0.3%の上昇)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比1.3%の上昇(前年同月比7.6%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比1.0%の上昇(前年同月比0.8%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.1%の上昇(前年同月比0.6%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、4月は前年同月比0.7%の下落(前月比0.2%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は石油等は下落したものの、鋼材等の上昇により5月は上昇した。5月の動きを品目別にみると、灯油等は下落したものの、棒鋼等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で3月0.3%の下落の後、4月は家賃の上昇幅の縮小等により0.4%の下落(前月比0.2%の上昇、季節調整済前月比0.2%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で3月0.5%の下落の後、4月は0.8%の下落(前月比0.2%の上昇、季節調整済前月比0.3%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で4月0.5%の下落の後、5月(中旬速報値)は、個人サービスが保合いから上昇に転じたこと等により0.4%の下落(前月比0.2%の上昇、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で4月0.9%の下落の後、5月(中旬速報値)は0.9%の下落(前月比保合い、季節調整済前月比0.2%の下落)となった。

5.金融財政:株式相場は、5月は下旬にかけて大幅に下落した後、6月上旬にかけてやや戻したが、月央には再度下落

最近の金融情勢をみると、短期金利は、5月から6月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。長期金利は、5月から6月上旬にかけて横ばいで推移した。株式相場は、5月は下旬にかけて大幅に下落した後、6月上旬にかけてやや戻したが、月央には再度下落した。M+CDは、5月は前年同月比2.2%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、5月から6月上旬にかけて横ばいで推移した。2、3ヶ月物は、5月から6月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債利回りは、5月から6月上旬にかけて横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、4月は前月比で短期は0.090%ポイント上昇し、長期は0.130%ポイント上昇したことから、総合では0.075%ポイント上昇し1.748%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、5月(速報)は前年同月比2.2%増となった。また、広義流動性は、5月(速報)は同3.1%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、5月(速報)は前年同月比4.7%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.2%減)となった。5月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、国内公募事業債の起債実績は5,900億円(うち銀行起債分2,550億円)となった。

「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、3月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いているものの、金融機関の貸出態度は「厳しい」超幅が縮小しゼロとなった。特に、大企業だけでなく、中堅企業においても改善の動きがみられる。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、東証株価指数(TOPIX)は、5月は下旬にかけて大幅に下落した後、6月上旬にかけてやや戻したが、月央には再度下落した。日経平均株価も同様の動きとなった。

6.海外経済:アメリカ、ユーロ圏、利上げ

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、一部に減速の兆しともとれる動きがあるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年10~12月期前期比年率7.3%増の後、2000年1~3月期は同5.4%増(速報値)となった。個人消費は増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は4月前月差41.4万人増の後、5月は同23.1万人増と拡大しているものの、政府部門を除く民間非農業雇用者数は減少した(11.6万人減)。失業率は5月4.1%となった。物価は総じて安定している。5月の消費者物価は前年同月比3.1%の上昇、5月の生産者物価(完成財総合)は同3.9%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。連邦準備制度は、5月16日に、公定歩合とフェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.5%ポイントずつ引き上げ、それぞれ6.00%、6.50%とし、今後の物価及び景気動向に対するリスク見通しをインフレ方向とした。5月の長期金利(10年物国債)は、上旬は上昇し、中旬にやや上下した後、低下した。月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、月前半に上下し、後半は下落した。月初と月末を比較すると、下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきている。1~3月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率2.7%増、フランス同2.6%増(速報値)、イギリスは同2.2%増(改訂値)となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ4月前月比1.5%増、フランス3月同0.5%増、イギリス4月同0.8%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ5月9.6%、フランス4月9.8%、イギリス5月3.9%)。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ5月前年同月比1.4%、フランス5月同1.5%、イギリス5月同3.1%)。なお、欧州中央銀行は、6月8日、中期的な物価の安定に対する上振れリスクを抑制するために、政策金利(主要オペレート)を0.50%ポイント引き上げ、4.25%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっている。物価は、下落している。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の5月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、月前半はほぼ横ばいで推移したが、後半になって減価した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、5月31日現在112.2、4月末比0.3%の減価となっている。内訳をみると、5月31日現在、対円では4月末比0.4%減価、対ユーロでは同2.8%減価した。

国際商品市況の5月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬から上昇基調で推移し、下旬にはほぼ2年ぶりとなる225ポイント台を記録した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から上昇基調で推移し、中旬に一時弱含む場面がみられたものの、月末にかけてはほぼ2か月半ぶりに30ドル台を記録した。