月例経済報告(平成12年5月)

平成12年5月12日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済は、全体として需要の回復が弱く、厳しい状況をなお脱していない。しかし、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加え、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きも徐々に現れており、景気は、緩やかな改善が続いている。

需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、おおむね横ばい状態となっている。住宅建設は、年初の高い水準から減少しているが、マンションなどは比較的堅調である。設備投資は、総じて下げ止まりつつある。製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がっている。公共投資は、第二次補正予算などの効果が現れているものの、全体としては高水準であった前年に比べればかなり下回っている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

在庫は、調整を終了し、生産は、緩やかな増加が続いている。

雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでの最高水準で推移するなど、依然として厳しい。

企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

政府は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、21世紀の新たな発展基盤を築くため、日本経済の新生と大胆な構造改革に取り組む。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、おおむね横ばい状態となっている。住宅建設は、年初の高い水準から減少しているが、マンションなどは比較的堅調である。設備投資は、総じて下げ止まりつつある。製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がっている。公共投資は、第二次補正予算などの効果が現れているものの、全体としては高水準であった前年に比べればかなり下回っている。

産業面をみると、在庫は、調整を終了し、生産は、緩やかな増加が続いている。企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、このところ増加している。

雇用情勢は、0残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでの最高水準で推移するなど、依然として厳しい。

輸出入は、対アジア輸出入を中心に、増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、年末に減少した後増加がみられるが、基調としてはおおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、4月は104円台から106円台で推移した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、4月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、4月は横ばいで推移した。株式相場は、4月は月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落したが、その後持ち直しの動きもみられる。マネーサプライ(M+CD)は、3月は前年同月比1.9%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年10~12月期前期比年率7.3%増の後、2000年1~3月期は同5.4%増(暫定値)となった。個人消費は大幅に増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。4月の長期金利(30年物国債)は、上旬は低下したが、中旬以降は2度下落する局面があったものの上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、中旬(14日)に史上最大の下げ幅を記録したが、その後反発した。月末と月初を比べると、やや下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに拡大している。フランス、イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している。失業率は、ドイツでは高水準ながらもやや低下している。フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している。なお、欧州中央銀行は、4月27日、中期的な物価の安定に対する上振れリスクを抑制するために、政策金利(主要オペレート)を0.25%ポイント引き上げ、3.75%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっている。物価は、下落している。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の4月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した。

国際商品市況の4月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬は下落基調で推移し、中旬にかけ急上昇したものの、下旬には下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から下落基調で推移し、一時21ドル割れを記録したが、中旬からは反発した。

1.国内需要:個人消費は、収入が低迷していることから、おおむね横ばい状態

個人消費は、収入が低迷していることから、おおむね横ばい状態となっている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で2月4.2%増の後、3月(速報値)は4.3%減(季節調整済前月比4.5%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比1.3%減、勤労者以外の世帯では同9.5%減となった。形態別にみると、 財、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比3.8%減、勤労者世帯では同0.9%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で2月1.9%増となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で2月0.1%減の後、3月(速報値)は3.5%減(季節調整済前月比0.3%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で2月1.3%増の後、3月(速報値)2.7%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で2月0.9%減の後、3月2.8%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で4月(速報値)は1.4%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で3月は13.7%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、3月は前年同月比で国内旅行が0.5%増、海外旅行は1.9%増となった。

当庁「消費動向調査」(3月調査)によると、消費者態度指数(季節調整値)は、12月に前期差1.3ポイント上昇の後、3月には同0.7ポイントの上昇となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で2月1.1%増の後、3月(速報)は0.9%減(事業所規模30人以上では同0.9%減)となり、うち所定外給与は、3月(速報)は同4.0%増(事業所規模30人以上では同4.6%増)となった。実質賃金は、前年同月比で2月2.0%増の後、3月(速報)は0.2%減(事業所規模30人以上では同0.4%減)となった。

住宅建設は、年初の高い水準から減少しているが、マンションなどは比較的堅調である。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で2月は10.3%減(前年同月比2.4%増)となった後、3月は2.3%増(前年同月比3.6%減)の10万3千戸(年率124万戸)となった。3月の着工床面積(季節調整値)は、前月比2.8%増(前年同月比4.7%減)となった。3月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比6.0%増(前年同月比11.6%減)、貸家は同0.7%減(同2.6%減)、分譲住宅は同1.0%減(同7.9%増)となっている。

設備投資は、総じて下げ止まりつつある。製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がっている。

当庁「法人企業動向調査」(12年3月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、季節調整済前期比で11年10~12月期(実績)5.7%増(うち製造業3.2%増、非製造業5.9%増)の後、12年1~3月期(実績見込み)は3.0%減(同1.3%減、同4.2%減)となっている。年度計画では、前年度比で11年度(実績見込み)5.1%減(うち製造業9.4%減、非製造業2.8%減)の後、12年度(計画)は4.7%減(同2.6%増、同8.3%減)となっている。

なお、11年10~12月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で0.7%減(うち製造業8.2%減、非製造業2.9%増)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で1月は0.8%増(前年同月比21.2%増)の後、2月は2.5%減(同12.8%増)となり、基調は持ち直しの動きがみられる。

なお、1~3月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で1.6%減(前年同期比1.9%増)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、2月は季節調整済前月比25.2%減であったが、3月は再び増加し、季節調整済前月比36.8%増(前年同月比12.8%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比18.8%増(前年同月比22.1%増)、非製造業は同34.5%増(同11.2%増)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、第二次補正予算などの効果が現われているものの、全体としては高水準であった前年に比べればかなり下回っている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で1月は12.6%減の後、2月は15.0%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で2月は1.4%減の後、3月は10.2%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で2月12.6%減の後、3月は17.0%減となった。

2.生産雇用:在庫は、調整を終了し、生産は緩やかな増加が続く

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整を終了し、生産・出荷は、緩やかな増加が続いている。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で2月3.3%増の後、3月(速報)は、電気機械、精密機械等が増加したものの、輸送機械、一般機械等が減少したことから、1.0%減となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で4月は化学、輸送機械等により1.0%減の後、5月は電気機械、化学等により、1.3%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で2月1.0%増の後、3月(速報)は、耐久消費財、生産財等が減少したことから、0.7%減となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で2月0.3%増の後、3月(速報)は、一般機械、金属製品等が減少したものの、電気機械、輸送機械等が増加したことから、0.7%増となった。また、3月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は98.6と前月を0.4ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は3か月連続で増加し、在庫も3か月連続で増加した。輸送機械では、生産は3月は減少し、在庫は3か月連続で増加した。鉄鋼では、生産は3月は減少し、在庫は3月は増加した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(2月調査、季節調整値)でみると、前月比で1月0.5%増の後、2月(速報)は、サービス業、運輸・通信業等が減少したものの、金融・保険業、不動産業が増加した結果、同0.1%増となった。

雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでの最高水準で推移するなど、依然として厳しい。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、2月0.52倍の後、3月0.53倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、2月0.93倍の後、3月0.97倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、2月は前年同月比0.1%減(前年同月差6万人減)の後、3月は同0.4%減(同21万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、2月前年同月比0.2%減(季節調整済前月比0.1%増)の後、3月(速報)は同0.2%減(同0.2%減)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.2%減)、産業別には製造業では同1.9%減となった。3月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差3万人増の332万人、完全失業率(同)は、2月4.9%の後、3月4.9%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では2月前年同月比11.6%増(季節調整済前月比0.6%減)の後、3月(速報)は同14.5%増(同3.8%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比14.5%増)。

企業の動向をみると、企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(3月調査)でみると12年1~3月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、売上高は「増加」超に転じ、経常利益は「減少」超幅が縮小した。また、12年1~3月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は「下降」超幅が若干拡大した。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(3月調査、季節調整値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は12年1~3月期は「減少」超幅が縮小し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は「低下」超幅が縮小した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は12年1~3月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、このところ増加している。

銀行取引停止処分者件数は、3月は1,188件で前年同月比51.9%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、製造業で82.9%の増加、建設業で73.4%の増加となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けを中心に、増加

輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で2月5.5%増の後、3月は0.9%減(前年同月比14.1%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械、電気機器等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で2月5.8%増の後、3月は3.8%増(前年同月比15.1%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、2月に1兆2,326億円の黒字の後、3月は9,367億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、年末に減少した後増加がみられるが、基調としてはおおむね横ばいとなっている。

2月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、9,358億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小するとともに、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、1兆5,266億円となった。投資収支(原数値)は、1兆5,372億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、1兆5,998億円の赤字となった。

4月末の外貨準備高は、前月比331億ドル増加して3,386億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、4月は104円台から106円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、4月は月初の99円台から102円台まで下落したが、月末にかけて96円台に上昇した。

4.物価:国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

3月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電気機器(集積回路)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比0.1%の上昇)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで保合いだったものの、円高から円ベースでは前月比2.2%の下落(前年同月比6.9%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比1.6%の下落(前年同月比4.1%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.4%の下落(前年同月比0.4%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、3月は前年同月比0.6%の下落(前月比0.4%の上昇)となった。

商品市況(月末対比)は非鉄等は下落したものの、紙・板紙等の上昇により4月は上昇した。4月の動きを品目別にみると、アルミニウム地金等は下落したものの、上質紙等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で2月0.1%の下落の後、3月は外食が上昇から下落に転じたこと等により0.3%の下落(前月比0.1%の上昇、季節調整済前月比0.2%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で2月0.6%の下落の後、3月は0.5%の下落(前月比0.2%の上昇、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で3月0.4%の下落の後、4月(中旬速報値)は、家賃の上昇幅の縮小等により0.5%の下落(前月比0.2%の上昇、季節調整済前月比0.2%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で3月0.7%の下落の後、4月(中旬速報値)は0.9%の下落(前月比0.2%の上昇、季節調整済前月比0.3%の下落)となった。

5.金融財政:株式相場は、月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落したがその後持ち直しの動きもみられる

最近の金融情勢をみると、短期金利は、4月はおおむね横ばいで推移した。長期金利は、4月は横ばいで推移した。株式相場は、4月は月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落したが、その後持ち直しの動きもみられる。M+CDは、3月は前年同月比1.9%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、4月は横ばいで推移した。2、3ヶ月物は、4月はおおむね横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債利回りは、4月は横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、2月は前月比で短期は0.008%ポイント低下し、長期は0.103%ポイント低下したことから、総合では0.025%ポイント低下し1.739%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、3月(速報)は前年同月比1.9%増となった。また、広義流動性は、3月(速報)は同1.9%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、3月(速報)は前年同月比6.0%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.1%減)となった。4月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が100億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は6,720億円(うち銀行起債分2,600億円)となった。

「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、3月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いているものの、金融機関の貸出態度は「厳しい」超幅が縮小しゼロとなった。特に、大企業だけでなく、中堅企業においても改善の動きがみられる。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、日経平均株価は、4月は月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落した。東証株価指数(TOPIX)は、4月は月央にかけて一進一退で推移した後、大幅に下落したが、その後持ち直した。

6.海外経済:アメリカ、個人消費、設備投資が大幅に増加

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年10~12月期前期比年率7.3%増の後、2000年1~3月期は同5.4%増(暫定値)となった。個人消費は大幅に増加している。設備投資は大幅に増加している。住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は3月前月差45.8万人増の後、4月は同34.0万人増となった。失業率は4月3.9%と70年1月以来の低水準となった。物価は総じて安定している。3月の消費者物価は前年同月比3.7%の上昇、3月の生産者物価(完成財総合)は同4.5%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。4月の長期金利(30年物国債)は、上旬は低下したが、中旬以降は2度下落する局面があったものの上昇基調で推移した。株価(ダウ平均)は、中旬(14日)に史上最大の下げ幅を記録したが、その後反発した。月末と月初を比べると、やや下落した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに拡大している。フランス、イギリスでは、景気は拡大している。実質GDPは、ドイツ10~12月期前期比年率2.7%増、フランス同3.0%増、イギリスは2000年1~3月期同1.8%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ3月前月比2.5%減、フランス2月同1.1%増、イギリス2月同0.6%減)。失業率は、ドイツでは高水準ながらもやや低下している。フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ3月10.0%、フランス3月10.0%、イギリス3月4.0%)。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ4月前年同月比1.5%、フランス3月同1.5%、イギリス3月同2.6%)。なお、欧州中央銀行は、4月27日、中期的な物価の安定に対する上振れリスクを抑制するために、政策金利(主要オペレート)を0.25%ポイント引き上げ、3.75%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっている。物価は、下落している。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の4月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価基調で推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、4月28日現在112.5、3月末比4.0%の増価となっている。内訳をみると、4月28日現在、対円では3月末比4.9%増価、対ユーロでは同4.9%増価した。

国際商品市況の4月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬は下落基調で推移し、中旬にかけ急上昇したものの、下旬には下落した。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から下落基調で推移し、一時21ドル割れを記録したが、中旬からは反発した。