月例経済報告(平成12年4月)

平成12年4月14日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済は、全体として需要の回復が弱く、厳しい状況をなお脱していない。しかし、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響から、景気は、緩やかな改善が続いている。企業の活動に積極性もみられるようになるなど、自律的回復に向けた動きが徐々に現れている。

需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、改善傾向の定着には至っていないが、年末に比べれば持ち直した状態が続いている。住宅建設は、前年を上回っているが、年初の高い水準から、持家を中心に減少している。設備投資は、総じて下げ止まりつつある。製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がっている。公共投資は、第二次補正予算などの効果が現れているものの、全体としては高水準であった前年に比べればかなり下回っている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

在庫は、ほぼ調整を終了し、生産は、緩やかに増加している。

雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでにない高さに上昇するなど、依然として厳しい。

企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

政府は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、21世紀の新たな発展基盤を築くため、経済新生対策を始めとする諸施策を推進する。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、改善傾向の定着には至っていないが、年末に比べれば持ち直した状態が続いている。住宅建設は、前年を上回っているが、年初の高い水準から、持家を中心に減少している。設備投資は、総じて下げ止まりつつある。製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がっている。公共投資は、第二次補正予算などの効果が現れているものの、全体としては高水準であった前年に比べればかなり下回っている。

産業面をみると、在庫は、ほぼ調整を終了し、生産は、緩やかに増加している。企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。

雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでにない高さに上昇するなど、依然として厳しい。

輸出入は、対アジア輸出入を中心に、増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、年末に減少した後増加がみられるが、基調としてはおおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、3月は中旬にかけて105円台まで上昇した後、107円台まで下落したが、月末には105円台まで上昇した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、3月は月央にかけておおむね横ばいで推移し、その後上昇したが、月末には低下した。長期金利は、3月は上旬にやや低下した後、上昇し、月末には再びやや低下した。株式相場は、3月は月央にかけて下落した後、上昇した。マネーサプライ(M+CD)は、2月は前年同月比2.1%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年7~9月期前期比年率5.7%増の後、10~12月期は同7.3%増となった。個人消費は増加している。設備投資は7~9月期の大幅増の反動もあり伸びが鈍化している。住宅投資はこのところ伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。連邦準備制度は、3月21日に、公定歩合を0.25%ポイント引き上げ5.50%、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%ポイント引き上げ6.00%とした。3月の長期金利(30年物国債)は、低下基調で推移した。株価(ダウ平均)は、月前半は下落したものの、月後半に入り大きく上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに拡大している。フランス、イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している。失業率は、ドイツでは高水準ながらもやや低下している。フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低下している。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している。なお、欧州中央銀行は、3月16日、中期的な物価の安定に対するリスクを抑制するため、政策金利(主要オペレート)を0.25%ポイント引き上げ3.50%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、消費者物価が上昇に転じた。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の3月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。

国際商品市況の3月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬に98年5月以来となる217ポイント台まで上昇した後、下旬にかけては弱含んだ。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から急上昇し、湾岸危機以来となる31ドル台を記録した後、月末にかけては23ドル台まで下落した。

1.国内需要:個人消費は、改善傾向の定着には至っていないが、年末に比べれば持ち直した状態が続いている

個人消費は、収入が低迷していることから、改善傾向の定着には至っていないが、年末に比べれば持ち直した状態が続いている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で1月3.2%減の後、2月(速報値)は4.2%増(季節調整済前月比2.3%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比3.8%増、勤労者以外の世帯では同5.4%増となった。形態別にみると、 財、サービスともに増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比1.0%増、勤労者世帯では同0.5%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で1月2.6%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で1月2.0%減の後、2月(速報値)は0.2%減(季節調整済前月比1.1%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で1月0.5%減の後、2月(速報値)1.3%増となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で1月5.8%減の後、2月0.9%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で3月(速報値)は0.6%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で2月は13.3%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、2月は前年同月比で国内旅行が4.7%増、海外旅行は7.2%増となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で1月1.4%増の後、2月(速報)は1.5%増(事業所規模30人以上では同1.8%増)となり、うち所定外給与は、2月(速報)は同3.9%増(事業所規模30人以上では同4.4%増)となった。実質賃金は、前年同月比で1月2.5%増の後、2月(速報)は2.4%増(事業所規模30人以上では同2.7%増)となった。なお、平成11年年末賞与は、前年比3.1%減(前年は2.9%減)となった。

住宅建設は、前年を上回っているが、年初の高い水準から、持家を中心に減少している。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で1月は16.4%増(前年同月比16.8%増)となった後、2月は10.3%減(前年同月比2.4%増)の10万1千戸(年率121万戸)となった。2月の着工床面積(季節調整値)は、前月比12.3%減(前年同月比4.1%増)となった。2月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比11.4%減(前年同月比4.4%減)、貸家は同8.3%減(同3.3%増)、分譲住宅は同9.9%減(同12.7%増)となっている。

設備投資は、総じて下げ止まりつつある。製造業を中心に投資意欲に改善がみられ、持ち直しの動きが広がっている。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(3月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の12年度設備投資計画は、製造業で前年度比4.9%増、非製造業で同3.8%減となっており、全産業では同0.6%減となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比2.7%増、非製造業で同0.2%増となり、中小企業では製造業で同9.4%減、非製造業で6.0%減となっている。

なお、11年10~12月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で0.7%減(うち製造業8.2%減、非製造業2.9%増)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で1月は0.8%増(前年同月比21.2%増)の後、2月は2.5%減(同12.8%増)となり、基調は持ち直しの動きがみられる。

なお、1~3月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で1.6%減(前年同期比1.9%増)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、このところ増加していたが、2月は季節調整済前月比25.2%減(前年同月比6.6%減)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比10.5%減(前年同月比32.8%増)、非製造業は同27.6%減(同13.1%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、第二次補正予算などの効果が現れているものの、全体としては高水準であった前年に比べればかなり下回っている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で1月は12.6%減の後、2月は15.0%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で1月は6.1%減の後、2月は1.4%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で1月2.1%増の後、2月は12.6%減となった。このように、二度にわたる補正予算の効果により高水準であった10年度に比べればかなり減少しているが、公共工事着工総工事費(国の機関)は、前年同月比で2月0.4%減になるなど、第二次補正予算などの効果が現れている。

2.生産雇用:依然として厳しい雇用情勢

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、ほぼ調整を終了し、生産・出荷は、緩やかに増加している。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で1月0.2%増の後、2月(速報)は、精密機械、繊維等が減少したものの、輸送機械、一般機械等が増加したことから、3.0%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で3月は一般機械、化学等により2.3%減の後、4月は横ばいとなっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で1月1.9%増の後、2月(速報)は、生産財、耐久消費財等が増加したことから、0.5%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で1月0.8%増の後、2月(速報)は、石油・石炭製品、化学等が減少したものの、輸送機械、一般機械等が増加したことから、0.2%増となった。また、2月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は99.1と前月を0.3ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産は2月は増加し、在庫は2か月連続で増加した。一般機械では、生産は4か月連続で増加し、在庫は2か月連続で増加した。化学では、生産は2月は増加し、在庫は2月は減少した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(1月調査、季節調整値)でみると、前月比で12月0.8%増の後、1月(速報)は、不動産業、卸売・小売業,飲食店が減少したものの、サービス業、運輸・通信業等が増加した結果、同0.5%増となった。

雇用情勢は、残業時間や求人が増加傾向にあるものの、完全失業率がこれまでにない高さに上昇するなど、依然として厳しい。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、1月0.52倍の後、2月0.52倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、1月0.96倍の後、2月0.93倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、1月は前年同月比0.7%減(前年同月差40万人減)の後、2月は同0.1%減(同6万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、1月前年同月比0.2%減(季節調整済前月比0.0%)の後、2月(速報)は同0.2%減(同0.1%増)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.3%減)、産業別には製造業では同2.0%減となった。2月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差12万人増の329万人、完全失業率(同)は、1月4.7%の後、2月4.9%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では1月前年同月比12.2%増(季節調整済前月比2.8%増)の後、2月(速報)は同11.6%増(同0.6%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比12.8%増)。

前記「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、企業の雇用人員判断は過剰感が低下したものの、依然として高い水準にある。

企業の動向をみると、企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

前記「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、大企業(全産業)では、11年度下期の経常利益は前年同期比17.0%の増益の後、12年度上期には同7.2%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では11年度下期に前年同期比39.9%の増益の後、12年度上期には同14.4%の増益が見込まれている。また、非製造業では、11年度下期に前年同期比1.9%の増益の後、12年度上期には同1.6%の増益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では11年度下期に3.71%になった後、12年度上期は3.48%と見込まれている。また、非製造業では11年度下期に2.38%になった後、12年度上期は2.35%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

また、中小企業の動向を同調査でみると、全産業では、11年度下期の経常利益は前年同期比19.4%の増益の後、12年度上期には同24.4%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では11年度下期に前年同期比37.6%の増益の後、12年度上期には同50.0%の増益が見込まれている。また、非製造業では、11年度下期に前年同期比12.2%の増益の後、12年度上期には同14.3%の増益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、おおむね横ばいとなっている。

銀行取引停止処分者件数は、12月1,074件、1月935件、2月905件とおおむね横ばいで推移している。前年同月比でみると、信用保証制度の拡充の効果などから前年同月の件数が大幅に減少しているため、12月39.7%増、1月56.1%増、2月59.3%増となった。業種別に2月の件数の前年同月比をみると、卸売業で84.7%の増加、小売業で76.1%の増加となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けを中心に、増加

輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で1月1.4%増の後、2月は5.5%増(前年同月比19.9%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、一般機械等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、アメリカ等が増加した。

輸入は、アジアからの輸入を中心に、増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で1月7.3%減の後、2月は5.8%増(前年同月比7.3%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料、食料品等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、1 月に1 兆460億円の黒字の後、2月は1兆2,326億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、年末に減少した後増加がみられるが、基調としてはおおむね横ばいとなっている。

2月の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大し、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、9,358億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小するとともに、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、1兆5,266億円となった。投資収支(原数値)は、1兆5,372億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、1兆5,998億円の赤字となった。

3月末の外貨準備高は、前月比110億ドル増加して3,055億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、3月は中旬にかけて105円台まで上昇した後、107円台まで下落したが、月末には105円台まで上昇した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、3月は中旬にかけて101円台まで上昇した後、104円台まで下落したが、月末には100円台まで上昇した。

4.物価:国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

3月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電気機器(集積回路)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比0.1%の上昇)となった。また、前記「全国企業短期経済観測調査」(大企業、3月調査)によると、製商品需給バランスは、引き続き改善がみられる。輸出物価は、契約通貨ベースで保合いだったものの、円高から円ベースでは前月比2.2%の下落(前年同月比6.9%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比1.6%の下落(前年同月比4.1%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.4%の下落(前年同月比0.4%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、2月は前年同月比0.6%の下落(前月比0.3%の上昇)となった。

商品市況(月末対比)は石油等は上昇したものの、繊維等の下落により3月は下落した。3月の動きを品目別にみると、灯油等は上昇したものの、生糸等が下落した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で1月0.3%の下落の後、2月は持家の帰属家賃の上昇幅の拡大等により0.1%の下落(前月比0.1%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で1月0.9%の下落の後、2月は0.6%の下落(前月比0.1%の下落、季節調整済前月比0.1%の上昇)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で2月0.4%の下落の後、3月(中旬速報値)は、その他工業製品の下落幅の縮小等の一方、外食が上昇から下落に転じたこと等により0.4%の下落(前月比0.1%の上昇、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で2月0.8%の下落の後、3月(中旬速報値)は0.7%の下落(前月比0.2%の上昇、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。

5.金融財政:株式相場は、月央にかけて下落した後、上昇

最近の金融情勢をみると、短期金利は、3月は月央にかけておおむね横ばいで推移し、その後上昇したが、月末には低下した。長期金利は、3月は上旬にやや低下した後、上昇し、月末には再びやや低下した。株式相場は、3月は月央にかけて下落した後、上昇した。M+CDは、2月は前年同月比2.1%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、3月はおおむね横ばいで推移した。2、3か月物は、3月は月央にかけておおむね横ばいで推移し、その後上昇したが、月末には低下した。

公社債市場をみると、国債利回りは、3月は上旬にやや低下した後、上昇し、月末には再びやや低下した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、2月は前月比で短期は0.008%ポイント低下し、長期は0.103%ポイント低下したことから、総合では0.025%ポイント低下し1.739%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、2月(速報)は前年同月比2.1%増となった。また、広義流動性は、2月(速報)は同2.3%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、3月(速報)は前年同月比6.0%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.1%減)となった。3月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が270億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は5,938億円(うち銀行起債分600億円)となった。

前記「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、3月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いているものの、金融機関の貸出態度は「厳しい」超幅が縮小しゼロとなった。特に、大企業だけでなく、中堅企業においても改善の動きがみられる。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、日経平均株価は、3月は月央にかけて下落した後、上昇した。

6.海外経済:アメリカ、ユーロ圏、利上げ

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年7~9月期前期比年率5.7%増の後、10~12月期は同7.3%増となった。個人消費は増加している。設備投資は7~9月期の大幅増の反動もあり伸びが鈍化している。住宅投資はこのところ伸びが鈍化している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は2月前月差0.7万人増の後、3月は同41.6万人増となった。失業率は3月4.1%となった。物価は総じて安定している。2月の消費者物価は前年同月比3.2%の上昇、2月の生産者物価(完成財総合)は同4.0%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は拡大している。連邦準備制度は、3月21日に、公定歩合を0.25%ポイント引き上げ5.50%、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%ポイント引き上げ6.00%とした。3月の長期金利(30年物国債)は、低下基調で推移した。株価(ダウ平均)は、月前半は下落したものの、月後半に入り大きく上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに拡大している。フランス、イギリスでは、景気は拡大している。10~12月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率2.7%増、フランス同3.6%増(速報値)、イギリスは同3.1%増となった。鉱工業生産は、ドイツでは増加している。フランスではこのところ伸びが鈍化している。イギリスでは伸びが鈍化している(鉱工業生産は、ドイツ2月前月比3.4%増、フランス1月同0.4%減、イギリス2月同0.6%減)。失業率は、ドイツでは高水準ながらもやや低下している。フランスでは高水準ながらも低下している。イギリスでは低下している(失業率は、ドイツ3月10.0%、フランス2月10.2%、イギリス2月4.0%)。物価は、ドイツでは輸入物価の上昇が見られるものの総じて安定している。フランスでは総じて安定している。イギリスでは安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ3月前年同月比1.9%、フランス2月同1.4%、イギリス2月同2.3%)。なお、欧州中央銀行は、3月16日、中期的な物価の安定に対するリスクを抑制するため、政策金利(主要オペレート)を0.25%ポイント引き上げ3.50%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は、消費者物価が上昇に転じた。貿易は、輸出入ともに大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。貿易は、輸出入ともに大幅な増加が続いている。

国際金融市場の3月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、3月31日現在108.2、2月末比1.7%の減価となっている。内訳をみると、3月31日現在、対円では2月末比6.6%減価、対ユーロでは同1.0%増価した。

国際商品市況の3月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬に98年5月以来となる217ポイント台まで上昇した後、下旬にかけては弱含んだ。原油スポット価格(北海ブレント)は、月初から急上昇し、湾岸危機以来となる31ドル台を記録した後、月末にかけては23ドル台まで下落した。