月例経済報告(平成12年1月)

平成12年1月21日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、足踏み状態となっている。住宅建設は、年度前半に比べやや水準を下げているものの、マンションが好調であることや持家の動きを反映して、直近は増加している。設備投資は、一部に持ち直しの動きがみられるものの、減少基調が続いている。公共投資は、着工は低調に推移しており、事業の実施も前年を下回っている。輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

在庫は、在庫率が前年水準を大幅に下回るなど、調整はおおむね終了しつつある。こうした中、生産は、持ち直しの動きが続いている。

雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

企業収益は、持ち直しの動きが続いている。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く、厳しい状況をなお脱していないが、各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響で、緩やかな改善が続いている。

政府は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に乗せていくとともに、21世紀の新たな発展基盤を築くため、経済新生対策を始めとする諸施策を推進する。

なお、12月19日に平成12年度の実質経済成長率を1.0%程度と見込んだ「平成12年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」を閣議了解し、また、12月24日には84兆9,900億円(前年度当初比3.8%増)の平成12年度一般会計予算(概算)を閣議決定した。


我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が低迷していることから、足踏み状態となっている。住宅建設は、年度前半に比べやや水準を下げているものの、マンションが好調であることや持家の動きを反映して、直近は増加している。設備投資は、一部に持ち直しの動きがみられるものの、減少基調が続いている。公共投資は、着工は低調に推移しており、事業の実施も前年を下回っている。

産業面をみると、在庫は、在庫率が前年水準を大幅に下回るなど、調整はおおむね終了しつつある。こうした中、鉱工業生産は、持ち直しの動きが続いている。企業収益は、持ち直しの動きが続いている。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。企業倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。

雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

輸出は、アジア向けを中心に、増加している。輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、12月は102円台から103円台で推移したが、1月月央には106円台まで下落した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、12月は月央にかけて低下し、その後上昇したが、年末から1月月央にかけて再び低下した。長期金利は、12月はやや低下した後、1月は月央にかけておおむね横ばいで推移した。株式相場は、12月から1月月央にかけて一進一退で推移した。マネーサプライ(M+CD)は、12月は前年同月比2.6%増となった。また、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年4~6月期前期比年率1.9%増の後、7~9月期は同5.7%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、過去最高水準となった。12月の長期金利(30年物国債)は、月前半はやや低下したもののその後は大きく上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、上昇基調で推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は改善している。フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気は改善している。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している。失業率は、ドイツでは高水準ながらもこのところやや低下している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。なお、イングランド銀行は1月13日、政策金利(レポ金利)を0.25%ポイント引き上げ、5.75%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。失業率は低下している。

国際金融市場の12月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。

国際商品市況の12月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬にかけ202ポイント割れしたものの、その後は205ポイント前後のレンジ内で上下した。原油スポット価格(北海ブレント)は、24~27ドルの間で乱高下しながら推移した。

1.国内需要:足踏み状態にある個人消費

個人消費は、収入が低迷していることから、足踏み状態となっている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で10月2.3%減の後、11月(速報値)は2.9%減(季節調整済前月比0.0%)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比2.4%減、勤労者以外の世帯では同3.5%減となった。形態別にみると、 財、サービスともに減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比2.7%減、勤労者世帯では同2.9%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で10月1.4%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で10月0.3%減の後、11月(速報値)は2.8%減(季節調整済前月比2.4%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で10月1.3%減の後、11月(速報値)4.5%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で10月0.3%減の後、11月8.2%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で12月(速報値)は1.8%減となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で11月は0.8%減となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、11月は前年同月比で国内旅行が3.5%減、海外旅行は0.4%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で10月0.0%の後、11月は0.1%増(事業所規模30人以上では同0.4%増)となり、うち所定外給与は、11月は同6.8%増(事業所規模30人以上では同6.1%増)となった。実質賃金は、前年同月比で10月0.8%増の後、11月は1.5%増(事業所規模30人以上では同1.7%増)となった。

住宅建設は、年度前半に比べやや水準を下げているものの、マンションが好調であることや持家の動きを反映して、直近は増加している。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で10月は9.6%減(前年同月比0.6%減)となった後、11月は3.4%増(前年同月比8.1%増)の9万8千戸(年率118万戸)となった。11月の着工床面積(季節調整値)は、前月比6.8%増(前年同月比11.7%増)となった。11月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比7.2%増(前年同月比3.4%増)、貸家は同2.2%減(同4.3%減)、分譲住宅は同9.8%増(同41.3%増)となっている。

設備投資は、一部に持ち直しの動きがみられるものの、減少基調が続いている。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の11年度設備投資計画は、製造業で前年度比10.9%減(9月調査比1.2%下方修正)、非製造業で同10.8%減(同1.8%下方修正)となっており、全産業では同10.8%減(同1.6%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比15.5%減(9月調査比1.0%上方修正)、非製造業で同4.0%減(同1.3%上方修正)となり、中小企業では製造業で同25.4%減(同5.2%上方修正)、非製造業で13.3%減(同9.0%上方修正)となっている。

なお、11年7~9月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で9.6%減(うち製造業20.2%減、非製造業3.4%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で10月は1.9%増(前年同月比5.5%増)の後、11月は2.2%減(同1.8%減)となり、基調としてはおおむね下げ止まりの動きが見られる。

なお、10~12月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前期比で2.8%減(前年同期比4.7%減)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、前年を下回る水準が続いていたが、11月は季節調整済前月比27.1%増(前年同月比2.6%増)となった。内訳をみると、製造業は季節調整済前月比64.6%増(前年同月比39.3%増)、非製造業は同21.2%増(同3.7%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、着工は低調に推移しており、事業の実施も前年を下回っている。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で10月は23.2%減の後、11月は19.0%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で11月は2.5%減の後、12月は12.7%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で10月34.8%減の後、11月は14.9%減となった。

2.生産雇用:持ち直しの動きが続く生産

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、在庫率が前年水準を大幅に下回るなど、調整はおおむね終了しつつある。こうした中、生産・出荷は、持ち直しの動きが続いている。

鉱工業生産(季節調整値)は、前月比で10月2.7%減の後、11月(速報)は、電気機械、金属製品等が増加したことから、3.8%増となった。また製造工業生産予測指数(季節調整値)は、前月比で12月は輸送機械、電気機械等により1.7%減の後、1月は電気機械、一般機械等により3.1%増となっている。鉱工業出荷(季節調整値)は、前月比で10月2.1%減の後、11月(速報)は、生産財、資本財等が増加したことから、3.3%増となった。鉱工業生産者製品在庫(季節調整値)は、前月比で10月1.6%減の後、11月(速報)は、金属製品、鉄鋼等が減少したものの、電気機械、輸送機械等が増加したことから、0.6%増となった。また、11月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値)は97.9と前月を2.3ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は11月は増加し、在庫は11月は増加した。輸送機械では、生産は11月は増加し、在庫は11月は増加した。化学では、生産は2か月連続で増加し、在庫は11月は減少した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(10月調査、季節調整値)でみると、前月比で9月0.7%減の後、10月(速報)は、不動産業、金融・保険業が増加したものの、運輸・通信業、電気・ガス・熱供給・水道業等が減少した結果、同0.7%減となった。

雇用情勢は、残業時間や求人の増加といった動きがあるものの、完全失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、10月0.48倍の後、11月0.49倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、10月0.91倍の後、11月0.88倍となった。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、10月は前年同月比0.1%減(前年同月差7万人減)の後、11月は0.4%減(同19万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、10月前年同月比0.2%減(季節調整済前月比0.1%減)の後、11月は同0.2%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.5%減)、産業別には製造業では同2.0%減となった。11月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差6万人減の307万人、完全失業率(同)は、10月4.6%の後、11月4.5%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では10月前年同月比5.7%増(季節調整済前月比0.7%減)の後、11月は同8.9%増(同0.4%増)となっている(事業所規模30人以上では前年同月比8.1%増)。

前記「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、企業の雇用人員判断は、過剰感が若干低下したものの、依然として高い水準にある。

企業の動向をみると、企業収益は、持ち直しの動きが続いている。また、企業の業況判断は、なお厳しいが改善が進んでいる。

前記「企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は11年度上期には前年同期比4.1%の増益の後、11年度下期には同19.8%の増益が見込まれている。産業別にみると、製造業では11年度上期に前年同期比5.5%の減益の後、11年度下期には同49.7%の増益が見込まれている。また、非製造業では11年度上期に前年同期比13.6%の増益の後、11年度下期には同0.0%で横ばいが見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では11年度上期に3.34%になった後、11年度下期は3.94%と見込まれている。また、非製造業では11年度上期に2.34%となった後、11年度下期は2.29%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は11年度上期には前年同期比98.5%の増益の後、11年度下期には同42.5%の増益が見込まれている。また、非製造業では、11年度上期に前年同期比14.6%の増益の後、11年度下期には同12.1%の増益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、おおむね横ばいとなっている。

銀行取引停止処分者件数は、12月は1,074件で前年同月比39.7%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、卸売業で65.6%の増加、農林・漁業・水産業で16.7%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、アジア向けを中心に、増加

輸出は、アジア向けを中心に、増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で9月3.5%増、10月0.9%減の後、11月は0.2%減(前年同月比11.0%増)となった。11月の動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械等が減少した。同じく地域別にみると、EU等が減少した。

輸入は、アジアからの輸入が増加基調にあり、緩やかに増加している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で10月4.5%減の後、鉱物性燃料輸入等の一時的な増加もあって11月15.0%増(前年同月比19.8%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料等が増加した。同じく地域別にみると、中東等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、10月に1兆1,424億円の黒字の後、11月は6,056億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

11月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、サービス収支の赤字幅が縮小したものの、一時的な要因もあって輸入が大幅に増加したことから貿易収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、5,128億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅は縮小したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、9,827億円となった。投資収支(原数値)は、1兆4,041億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、1兆4,273億円の赤字となった。

12月末の外貨準備高は、前月比161億ドル増加して2,881億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、12月は102円台から103円台で推移したが、1月月央には106円台まで下落した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、12月は102円台から105円台で推移したが、1月月央には109円台まで下落した。

4.物価:国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移

国内卸売物価は、おおむね横ばいで推移している。

12月の国内卸売物価は、電気機器(集積回路)等が下落したものの、食料用農畜水産物(鶏卵)等が上昇したことから、前月比保合い(前年同月比0.6%の下落)となった。また、前記「全国企業短期経済観測調査」(大企業、12月調査)によると、製商品需給バランスは、依然緩んだ状態にあるものの、引き続き改善がみられる。輸出物価は、契約通貨ベースで保合いだったものの、円高から円ベースでは前月比1.5%の下落(前年同月比7.7%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比0.6%の下落(前年同月比1.0%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.2%の下落(前年同月比1.5%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、11月は前年同月比1.0%の下落(前月比保合い)となった。

商品市況(月末対比)は「その他」等は下落したものの、繊維等の上昇により12月は上昇した。12月の動きを品目別にみると、天然ゴム等は下落したものの、生糸等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で10月0.1%の下落の後、11月は一般生鮮商品の下落幅の拡大等により0.2%の下落(前月比0.1%の下落、季節調整済前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で10月0.7%の下落の後、11月は昨年の生鮮食品の上昇の影響等により1.2%の下落(前月比0.6%の下落、季節調整済前月比0.1%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で11月0.3%の下落の後、12月(中旬速報値)は、一般食料工業製品が保合いから下落となったこと等により0.4%の下落(前月比0.1%の下落、季節調整済前月比0.1%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で11月1.3%の下落の後、12月(中旬速報値)は昨年の生鮮食品の上昇の影響等により1.5%の下落(前月比0.5%の下落、季節調整済前月比0.3%の下落)となった。

5.金融財政:12年度予算(概算)を閣議決定

政府は平成11年12月24日、84兆9,900億円(前年度当初比3.8%増)の平成12年度一般会計予算(概算)を閣議決定した。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、12月は月央にかけて低下し、その後上昇したが、年末から1月月央にかけて再び低下した。長期金利は、12月はやや低下した後、1月は月央にかけておおむね横ばいで推移した。株式相場は、12月から1月月央にかけて一進一退で推移した。M+CD(速報)は、12月は前年同月比2.6%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、12月から1月月央にかけておおむね横ばいで推移した。2、3か月物は、12月は月央にかけて低下し、その後上昇したが、年末から1月月央にかけて再び低下した。

公社債市場をみると、国債利回りは、12月はやや低下した後、1月は月央にかけておおむね横ばいで推移した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、11月は短期は0.031%ポイント上昇し、長期は0.131%ポイント低下したことから、総合では前月比で0.019%ポイント低下し1.792%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、12月(速報)は前年同月比2.6%増となった。また、広義流動性は、12月(速報)は同2.3%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、12月(速報)は前年同月比5.9%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.2%減)となった。12月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が1,000億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は4,760億円(うち銀行起債分ゼロ)となった。

前記「全国企業短期経済観測調査」(全国企業、12月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いており、金融機関の貸出態度も「厳しい」超が続いているが、特に大企業において改善の動きがみられる。

以上のように、企業金融のひっ迫感は緩和しているが、民間金融機関の貸出は依然低調である。

株式市場をみると、日経平均株価は、12月から1月月央にかけて一進一退で推移した。

6.海外経済:欧州の景気は改善

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きには不透明感もみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、99年4~6月期前期比年率1.9%増の後、7~9月期は同5.7%増となった。個人消費、設備投資は増加している。住宅投資は減少した。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は11月前月差22.2万人増の後、12月は同31.5万人増となった。失業率は12月4.1%となった。物価は総じて安定している。12月の消費者物価は前年同月比2.7%の上昇、12月の生産者物価(完成財総合)は同3.0%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、過去最高水準となった。12月の長期金利(30年物国債)は、月前半はやや低下したもののその後は大きく上昇し、月初と月末を比較すると上昇した。株価(ダウ平均)は、上昇基調で推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は改善している。フランスでは、景気は拡大している。イギリスでは、景気は改善している。99年7~9月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率2.9%増、フランス同3.9%増(確報値)、イギリス同3.1%増(確定値)となった。鉱工業生産は、ドイツではほぼ横ばいで推移している。フランス、イギリスでは増加している(鉱工業生産は、ドイツ11月前月比0.5%減、フランス10月同0.8%増、イギリス10月同0.2%増)。失業率は、ドイツでは高水準ながらもこのところやや低下している。フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ12月10.2%、フランス11月10.8%、イギリス11月4.1%)。物価は、安定している(消費者物価上昇率は、ドイツ12月前年同月比1.2%、フランス12月同1.2%、イギリス11月同1.4%)。なお、イングランド銀行は1月13日、政策金利(レポ金利)を0.25%ポイント引き上げ、5.75%とした。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポは鈍化している。物価は下落している。輸出は大幅に増加している。韓国では、景気は拡大している。失業率は低下している。

国際金融市場の12月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した。モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)をみると、12月31日現在105.9、11月末比0.6%の減価となっている。内訳をみると、12月31日現在、対円では11月末比横ばい、対ユーロでは同0.2%増価した。

国際商品市況の12月の動きをみると、CRB商品先物指数は、中旬にかけ202ポイント割れしたものの、その後は205ポイント前後のレンジ内で上下した。原油スポット価格(北海ブレント)は、24~27ドルの間で乱高下しながら推移した。