月例経済報告(平成11年7月)

平成11年7月13日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、収入が低迷しているため力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている。住宅建設は、持ち直してきている。設備投資は、1~3月期は中小企業などで動きがみられたものの、基調としては大幅な減少が続いている。公共投資は、堅調に推移している。

11年1~3月期(速報)の実質国内総生産は、前期比1.9%増(年率7.9%増)となり、うち内需寄与度はプラス2.2%となった。

産業面をみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。こうした中、生産は、最終需要の動きを反映して、低い水準にあるものの、おおむね横ばいで推移している。企業収益は、持ち直しの兆しがみられる。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善傾向にある。企業倒産件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果等から前年の水準を大幅に下回っている。

雇用情勢は、依然として厳しい。勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率は高水準で推移している。

輸出は、おおむね横ばい状態となっている。輸入は、緩やかな増加の動きがみられる。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、6月は月初の121円台から118円台に上昇したが、その後下落し下旬にかけて121円台から122円台で推移した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、このところ下げ止まりの動きがみられる。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、6月は横ばいで推移した。長期金利は、6月は上昇した。株式相場は、6月は大幅に上昇した。マネーサプライ(M+CD)は、5月は前年同月比4.1%増となった。また、民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年10~12月期前期比年率6.0%増の後、1~3月期は同4.3%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は総じて安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。連邦市場公開委員会(FOMC)は、6月30日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%引き上げ5.00%とし、金融政策姿勢を「引締め」から「中立」へ変更した。6月の長期金利(30年物国債)は、総じて上昇した。株価(ダウ平均)は、上下したが、月末を月初と比べるとやや上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。イギリスでは、景気は減速しているものの、先行きに明るさがみられる。鉱工業生産は、ドイツでは減少傾向にあるがそのテンポは緩やかになってきている。フランスでは伸びが鈍化しており、イギリスでは減少している。失業率は、ドイツ、フランスでは、高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している。物価は、安定している。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大しているが、消費の伸びは鈍化しており、輸出は減少している。韓国では、景気は回復しつつある。

国際金融市場の6月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した

国際商品市況の6月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬に強含んだ後、総じて下落基調で推移したが、月末にはやや値を戻した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬に急上昇し、その後は16ドル前後のレンジ内で上下したが、月末には再び上昇し、16ドル台後半の水準まで回復した。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、収入が低迷しているため力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている。住宅建設は、持ち直してきている。設備投資は、1~3月期は中小企業などで動きがみられたものの、基調としては大幅な減少が続いている。公共投資は、堅調に推移している。輸出は、おおむね横ばい状態となっている。

在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。こうした中、生産は、最終需要の動きを反映して、低い水準にあるものの、おおむね横ばいで推移している。

雇用情勢は、依然として厳しい。勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率は高水準で推移している。

民間金融機関の貸出は依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。また、企業の景況感は、厳しい状態にあるが改善傾向にある。

以上のように、景気は、民間需要の回復力が弱く厳しい状況にあるが、各種の政策効果が浸透し、このところやや改善している。

このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進する。また、6月11日に緊急雇用対策及び産業競争力強化対策を決定し、これを受けて、雇用対策について11年度補正予算案を国会に提出した。

1.国内需要:個人消費は、力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている

実質国内総生産(平成2年基準、速報)の動向をみると、10年10~12月期前期比0.8%減(年率3.3%減)の後、11年1~3月期は同1.9%増(同7.9%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度はプラス2.2%となり、財貨・サービスの純輸出の寄与度はマイナス0.2%となった。需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比1.2%増、民間企業設備投資は同2.5%増、民間住宅は同1.2%増となった。また、財貨・サービスの輸出は前期比0.3%減、財貨・サービスの輸入は同1.8%増となった。

個人消費は、収入が低迷しているため力強さはみられないものの、緩やかに回復してきている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で4月0.7%減の後、5月は2.4%増(前月比3.6%増)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 1.5%増、勤労者以外の世帯では同4.0%増となった。形態別にみると、財・サービスともに増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比2.8%増、勤労者世帯では同1.5%増となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で4月2.7%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で4月2.0%減の後、5月は3.5%減(前月比0.7%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で4月3.4%減の後、5月2.4%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で4月5.3%減の後、5月5.0%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で6月は3.9%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で5月は5.3%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、5月は前年同月比で国内旅行が4.3%減、海外旅行は5.7%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で4月0.0%の後、5月(速報)は0.4%減(事業所規模30人以上では同0.1%増)となり、うち所定外給与は、5月(速報)は同0.5%増(事業所規模30人以上では同0.3%減)となった。実質賃金は、前年同月比で4月0.1%増の後、5月(速報)は0.1%増(事業所規模30人以上では同0.5%増)となった。

住宅建設は、持ち直してきている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で4月3.5%減(前年同月比1.1%増)となった後、5月は2.2%減(前年同月比0.9%減)の10万2千戸(年率123万戸)となった。5月の着工床面積(季節調整値)は、前月比1.6%増(前年同月比4.1%増)となった。5月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比8.2%増(前年同月比17.9%増)、貸家は同8.6%減(同10.3%減)、分譲住宅は同9.7%減(同16.3%減)となっている。

設備投資は、1~3月期は中小企業などで動きがみられたものの、基調としては大幅な減少が続いている。

日本銀行「全国短期経済観測調査」(6月調査)により設備投資の動向をみると、大企業の11年度設備投資計画は、製造業で前年度比11.0%減(3月調査比1.5%上方修正)、非製造業で同6.1%減(同1.0%上方修正)となっており、全産業では同7.9%減(同1.2%上方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比19.2%減(3月調査比3.1%上方修正)、非製造業で同7.2%減(同5.6%上方修正)となり、中小企業では製造業で同32.9%減(同4.8%上方修正)、非製造業で23.1%減(同6.0%上方修正)となっている。

なお、11年1~3月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で10.5%減(うち製造業19.1%減、非製造業5.8%減、資本金1億円以上の大中堅企業11.2%減、資本金1千万円以上1億円未満の中小企業7.4%減)となった。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で4月は13.8%減(前年同月比14.5%減)の後、5月は3.8%増 (同7.5%減)となり、基調は減少傾向となっている。

なお、4~6月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前期比で11.3%減(前年同期比14.2%減)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、4月は前月比41.3%減と大きく水準を落としたが、5月は同21.6%増(前年同月比12.0%減)となった。内訳をみると、製造業は前月比11.2%減(前年同月比43.4%減)、非製造業は同34.9%増(同1.8%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、堅調に推移している。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で4月31.9%増の後、5月は2.6%増となった。公共工事請負金額は、前年同月比で4月12.2%減の後、5月は6.7%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で4月58.8%増の後、5月は4.1%増となった。実質公的固定資本形成は、10年10~12月期に前期比10.6%増の後、11年1~3月期は同10.3%増となった。また、実質政府最終消費支出は、10年10~12月期に前期比0.6%減の後、11年1~3月期は同0.8%増となった。

2.生産雇用:依然として厳しい雇用情勢

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、在庫は、調整が進み、在庫率は前年を下回る水準にまで低下してきた。こうした中、生産・出荷は、最終需要の動きを反映して、低い水準にあるものの、おおむね横ばいで推移している。

鉱工業生産は、前月比で4月3.4%減の後、5月(速報)は、輸送機械、電気機械等が増加したものの、化学、一般機械等が減少したことから、0.7%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で6月は輸送機械、金属製品等により1.7%増の後、7月は化学、輸送機械等により0.3%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で4月5.0%減の後、5月(速報)は、資本財、耐久消費財等が増加したことから、1.0%増となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で4月0.2%減の後、5月(速報)は、電気機械、鉄鋼等が増加したものの、輸送機械、石油・石炭製品等が減少したことから、0.5%減となった。また、5月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は106.9と前月を0.8ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、輸送機械では、生産は5月は増加し、在庫は2か月連続で減少した。電気機械では、生産は5月は増加し、在庫は2か月連続で増加した。化学では、生産は5月は減少し、在庫は3か月連続で減少した。

第3次産業の動向を通商産業省「第3次産業活動指数」(4月調査、季節調整値)でみると、3月前月比0.1%減の後、4月は、運輸・通信業、卸売・小売業、飲食店が増加したものの、不動産業、サービス業等が減少した結果、同1.0%減となった。

雇用情勢は、依然として厳しい。勤め先や事業の都合による失業者が増加して、完全失業率は高水準で推移している。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、4月0.48倍の後、5月0.46倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、4月0.90倍の後、5月0.79倍となった。雇用者数は、減少している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、5月は前年同月比0.6%減(前年同月差30万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、4月前年同月比0.3%減(季節調整済前月比0.2%減)の後、5月(速報)は同0.3%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比1.3%減)、産業別には製造業では同2.4%減となった。5月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差12万人減の314万人、完全失業率(同)は、4月4.8%の後、5月4.6%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では4月前年同月比4.0%減(季節調整済前月比1.4%減)の後、5月(速報)は同0.8%減(同2.0%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比2.3%減)。

前記「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)をみると、企業の雇用人員判断は、製造業で若干低下したものの、依然として高い水準にある。

企業の動向をみると、企業収益は、持ち直しの兆しがみられる。また、企業の業況判断は、厳しい状態にあるが改善傾向にある。

前記「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、大企業(全産業)では、経常利益は10年度下期には前年同期比13.4%の減益の後、11年度上期には同7.2%の減益が見込まれている。産業別にみると、製造業では10年度下期に前年同期比33.0%の減益の後、11年度上期には同19.4%の減益が見込まれている。また、非製造業では10年度下期に前年同期比7.2%の増益の後、11年度上期には同4.9%の増益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では10年度下期に2.71%になった後、11年度上期は2.85%と見込まれている。また、非製造業では10年度下期に2.27%となった後、11年度上期は2.10%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

また、中小企業の動向を同調査でみると、製造業では、経常利益は10年度下期には前年同期比19.5%の減益の後、11年度上期には同86.5%の増益が見込まれている。また、非製造業では、10年度下期に前年同期比6.3%の減益の後、11年度上期には同9.6%の増益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業ともに「悪い」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、春先からやや増加しているものの、信用保証制度の拡充の効果などから前年の水準を大幅に下回っている。

銀行取引停止処分者件数は、5月は919件で前年同月比32.2%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、建設業で33.5%、製造業で32.8%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、おおむね横ばい状態

輸出は、おおむね横ばい状態となっている。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で4月0.4%増の後、5月は4.0%減(前年同月比4.7%減)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、一般機械等が減少した。同じく地域別にみると、EU等が減少した。

輸入は、緩やかな増加の動きがみられる。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で4月2.4%増の後、5月7.1%減(前年同月比8.8%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料、製品類(繊維製品)等が増加した。同じく地域別にみると、アジア、中東等が増加した。

通関収支差(季節調整値)は、4月に1兆522億円の黒字の後、5月は1兆549億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

4月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が縮小し、サービス収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、6,540億円となった。また、経常収支(季節調整値)は、経常移転収支の赤字幅が縮小したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が縮小したため、その黒字幅は縮小し、8,281億円となった。投資収支(原数値)は、1,888億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、2,122億円の赤字となった。

6月末の外貨準備高は、前月比227億ドル増加して2,464億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、6月は月初の121円台から118円台に上昇したが、その後下落し下旬にかけて121円台から122円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、6月は月初の126円台から122円台に上昇した後,127円台まで下落し、月末には124円台に上昇した。

4.物価:国内卸売物価は、このところ下げ止まりの動き

国内卸売物価は、このところ下げ止まりの動きがみられる。

6月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電気機器(集積回路)等が下落したことから、前月比保合い(前年同月比1.7%の下落)となった。また、前記「全国企業短期経済観測調査」(大企業、6月調査)によると、製商品需給バランスは、引き続き改善がみられるものの、依然緩んだ状態にある。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比0.8%の下落(前年同月比11.6%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比保合い(前年同月比10.9%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.1%の下落(前年同月比4.0%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、5月は前年同月比1.1%の下落(前月比0.1%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は「その他」は下落したものの、化学等の上昇により6月は上昇した。6月の動きを品目別にみると、天然ゴム等は下落したものの、純ベンゼン等が上昇した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で4月0.1%の下落の後、5月はその他工業製品の下落幅が縮小したこと等により保合い(前月比0.1%の上昇)となった。なお、総合は、前年同月比で4月0.1%の下落の後、5月は0.4%の下落(前月比保合い)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で5月0.2%の下落の後、6月(中旬速報値)は、持家の帰属家賃の上昇幅の拡大等により0.1%の下落(前月比保合い)となった。なお、総合は、前年同月比で5月0.6%の下落の後、6月(中旬速報値)は0.4%の下落(前月比0.2%の下落)となった。

5.金融財政:長期金利は、上昇

最近の金融情勢をみると、短期金利は、6月は横ばいで推移した。長期金利は、6月は上昇した。株式相場は、6月は大幅に上昇した。M+CDは、5月は前年同月比4.1%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3か月物はともに、6月は横ばいで推移した。

公社債市場をみると、国債利回りは、6月は上昇した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、前月比でみると5月は短期は0.001%ポイント上昇し、長期は0.135%ポイント低下したことから、総合では0.027%ポイント低下し1.718%となった。

マネーサプライをみると、M+CD(月中平均残高)は、5月(速報)は前年同月比 4.1%増となった。また、広義流動性は、5月(速報)は同 4.3%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、6月(速報)は前年同月比5.7%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後 1.2%減)となった。6月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が360億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は1兆245億円となった。

前記「企業短期経済観測調査」(全国企業、6月調査)によると、資金繰り判断は「苦しい」超が続いており、金融機関の貸出態度も「厳しい」超が続いているが、改善の動きがみられる。

以上のように、民間金融機関の貸出が依然低調であるが、企業金融のひっ迫感はやや緩和している。

株式市場をみると、日経平均株価は、6月は大幅に上昇した。

6.海外経済:アメリカ、利上げ

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気は拡大を続けている。実質GDPは、98年10~12月期前期比年率6.0%増の後、1~3月期は同4.3%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は5月前月差0.5万人減の後、6月は同26.8万人増となった。失業率は6月4.3%となった。物価は総じて安定している。5月の消費者物価は前年同月比2.1%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同1.4%の上昇となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準である。連邦市場公開委員会(FOMC)は、6月30日に、フェデラル・ファンド・レートの誘導目標水準を0.25%引き上げ5.00%とし、金融政策姿勢を「引締め」から「中立」へ変更した。6月の長期金利(30年物国債)は、総じて上昇した。株価(ダウ平均)は、上下したが、月末を月初と比べるとやや上昇した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は緩やかに減速しつつあるが、回復の動きもみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになっている。イギリスでは、景気は減速しているものの、先行きに明るさがみられる。99年1~3月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率1.8%増、フランス同1.3%増(速報値)、イギリス同0.2%増となった。鉱工業生産は、ドイツでは減少傾向にあるがそのテンポが緩やかになってきている。フランスでは伸びが鈍化しており、イギリスでは減少している(4月の鉱工業生産は、ドイツ前月比0.7%増、フランス同0.6%減、イギリス同0.1%増)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは低水準で推移している(失業率は、ドイツ6月10.5%、フランス5月11.4%、イギリス5月4.5%)。物価は、安定している(5月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比0.4%、フランス同0.4%、イギリス同1.3%)。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大しているが、消費の伸びは鈍化しており、輸出は減少している。物価の下落幅は拡大している。韓国では、景気は回復しつつある。失業率は高水準ながらもやや低下している。

国際金融市場の6月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、ほぼ横ばいで推移した (モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)6月30日現在111.0、5月末比0.4%の増価)。内訳をみると、6月30日現在、対円では5月末比0.2%減価、対ユーロでは同0.8%増価した。

国際商品市況の6月の動きをみると、CRB商品先物指数は、上旬に強含んだ後、総じて下落基調で推移したが、月末にはやや値を戻した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬に急上昇し、その後は16ドル前後のレンジ内で上下したが、月末には再び上昇し、16ドル台後半の水準まで回復した。