月例経済報告(平成11年2月)

平成11年2月16日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、全体としては低調である。消費者マインドには下げ止まりの兆しもみられるものの、ボーナスをはじめとして収入が減少しているからである。住宅建設は、低水準が続いている。ただし、販売や受注が一部で回復してきたことを背景に、持ち直しの兆しがみられる。設備投資は、大幅に減少している。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、着工の動きはこのところやや鈍くなっているが、上半期への前倒しが過去最高のペースで行われたこともあり、事業の実施が進んでいる。

産業面をみると、鉱工業生産は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、下げ止まりの兆しがみられるものの厳しい状態が続いている。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数は下げ止まりの兆しがあるものの、完全失業率は高水準で推移している。

輸出は、このところやや減少している。輸入は、おおむね横ばい状態である。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、1月月初の113円台から一時110円台まで上昇したが、その後116円台まで下落した後、月末から上昇し、2月上旬は112円台から115円台で推移した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、1月から2月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。長期金利は、1月月初にやや低下した後、月末から2月上旬にかけてやや上昇した。株式相場は、1月は上昇した後、2月上旬はやや下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、12月は前年同月比3.9%増となった。また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気の拡大テンポはこのところ高まっている。実質GDPは、98年7~9月期前期比年率3.7%増の後、10~12月期は同5.6%増(暫定値)となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準にある。1月の長期金利(30年物国債)は、総じてほぼ横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、月上旬は最高値を記録する場面があったが、総じてほぼ横ばいで推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は拡大しているものの、そのテンポに鈍化懸念がみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきており、イギリスでは、景気は減速しつつある。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになってきており、イギリスでは製造業を中心に減少傾向にある。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している。物価は、安定している。なお、イングランド銀行は、2月4日に政策金利(レポ金利)を0.5%引き下げ、5.5%とした(金利引下げは5ヶ月連続)。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気後退のテンポはやや鈍化している。失業率はこのところほぼ横ばいで推移している。物価の騰勢は大幅に鈍化している。貿易収支は、輸入減少により大幅な黒字が続いていたが、1月には輸入の増加により黒字は減少した。

国際金融市場の1月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、上旬はやや減価基調で推移したものの、中旬以降は増価した。なお、ブラジル中央銀行は、1月18日に変動相場制への移行を発表した。

国際商品市況の1月の動きをみると、上旬は強含んだものの、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬は強含んだものの、その後はほぼ横ばいで推移した。


我が国経済の最近の動向をみると、個人消費は、全体としては低調である。消費者マインドには下げ止まりの兆しもみられるものの、ボーナスをはじめとして収入が減少しているからである。住宅建設は、低水準が続いている。ただし、販売や受注が一部で回復してきたことを背景に、持ち直しの兆しがみられる。設備投資は、大幅に減少している。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。公共投資は、着工の動きはこのところやや鈍くなっているが、上半期への前倒しが過去最高のペースで行われたこともあり、事業の実施が進んでいる。

輸出は、このところやや減少している。

生産は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数は下げ止まりの兆しがあるものの、完全失業率は高水準で推移している。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。こうした中、国債需給の悪化懸念を背景に、長期金利が上昇した。

以上のように、景気は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況にあるものの、一層の悪化を示す動きと幾分かの改善を示す動きとが入り混じり、変化の胎動も感じられる。

このような厳しい経済状況の下、政府は、緊急経済対策を始めとする諸施策を強力に推進する。

1.国内需要:個人消費は、全体としては低調

個人消費は、全体としては低調である。消費者マインドには下げ止まりの兆しもみられるものの、ボーナスをはじめとして収入が減少しているからである。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で11月1.3%増の後、12月は0.6%減(前月比5.7%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比 0.1%減、勤労者以外の世帯では同1.3%減となった。形態別にみると、耐久財は増加、サービス等は減少となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比0.2%減、勤労者世帯では同0.1%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で11月4.1%減となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で11月2.6%減の後、12月は4.7%減(前月比3.0%減)となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で11月2.4%減の後、12月6.2%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で11月0.5%増の後、12月2.2%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で1月は11.4%増となった。また、家電小売金額(日本電気大型店協会)は、前年同月比で12月は7.3%増となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、12月は前年同月比で国内旅行が3.8%減、海外旅行は14.9%減となった。

当庁「消費動向調査」(12月調査)によると、消費者態度指数は、9月に前期差1.2ポイント低下の後、12月には同1.8ポイントの上昇となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で11月0.1%増の後、12月は4.2%減(事業所規模30人以上では同4.0%減)となり、うち所定外給与は、12月は同7.0%減(事業所規模30人以上では同7.8%減)となった。実質賃金は、前年同月比で11月0.7%減の後、12月は4.7%減(事業所規模30人以上では同4.5%減)となった。

住宅建設は、低水準が続いている。ただし、販売や受注が一部で回復してきたことを背景に持ち直しの兆しがみられる。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で11月5.2%減(前年同月比16.0%減)となった後、12月は5.6%増(前年同月比10.8%減)の9万6千戸(年率115万戸)となった。12月の着工床面積(季節調整値)は、前月比5.4%増(前年同月比8.1%減)となった。12月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比3.0%増(前年同月比2.4%減)、貸家は同3.8%増(同15.3%減)、分譲住宅は同12.4%増(同12.5%減)となっている。

設備投資は、大幅に減少している。中小企業の減少が著しく、大企業も製造業を中心に減少傾向にある。

当庁「法人企業動向調査」(10年12月調査)により設備投資の動向をみると、全産業の設備投資は、前期比で10年7~9月期(実績)2.5%減(うち製造業1.2%増、非製業4.0%減)の後、10年10~12月期(実績見込み)は6.5%減(同8.1%減、同5.4%減)となっている。また、11年1~3月期(計画)は、前年同期比で12.9%減(うち製造業16.3%減、非製造業10.9%減)と見込まれている。

なお、年間計画では、前年度比で9年度(実績)0.6%増(うち製造業7.6%増、非製造業2.8%減)の後、10年度(計画)は6.3%減(同7.0%減、同5.8%減)となっている。

先行指標の動きをみると、当庁「機械受注統計調査」によれば、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で11月は10.8%増(前年同期比12.2%減)の後、12月は3.1%減(同14.3%減)となり、基調は減少傾向となっている。

なお、1~3月期(見通し)の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前期比で6.4%減(前年同期比24.8%減)と見込まれている。

民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、12月は前月比0.6%増(前年同月比13.8%減)となったが、このところ弱い動きとなっている。内訳をみると、製造業は前月比7.2%増(前年同月比47.4%減)、非製造業は同0.5%増(同2.0%減)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資は、着工の動きはこのところやや鈍くなっているが、上半期への前倒しが過去最高のペースで行われたこともあり、事業の実施が進んでいる。

公共工事着工総工事費は、前年同月比で11月7.2%減の後、12月は16.7%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で12月4.3%増の後、1月は0.0%増となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で11月14.7%減の後、12月は7.7%減となった。

2.生産雇用:依然として厳しい雇用情勢

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、減少傾向が緩やかになってきたが、最終需要が低調なために、低い水準にある。在庫は前年を下回る水準にまで減少してきた。しかし、在庫率が依然高水準であり過剰感は強い。

鉱工業生産は、前月比で11月2.1%減の後、12月(速報)は、電気機械、精密機械等が減少したものの、金属製品、一般機械等が増加したことから、1.3%増となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で1月は機械、非鉄金属等により1.0%増の後、2月は機械、非鉄金属等により0.9%減となっている。鉱工業出荷は、前月比で11月2.1%減の後、12月(速報)は、非耐久消費財が減少したものの、生産財、資本財等が増加したことから、1.4%増となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で11月1.4%減の後、12月(速報)は、化学、石油・石炭製品等が増加したものの、輸送機械、電気機械等が減少したことから、1.7%減となった。また、12月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は107.8と前月を3.4ポイント下回った。

主な業種について最近の動きをみると、一般機械では、生産は12月は増加し、在庫は6か月連続で減少した。輸送機械では、生産は12月は増加し、在庫は2か月連続で減少した。化学では、生産は3か月連続で増加し、在庫は2か月連続で増加した。

雇用情勢は、依然として厳しい。雇用者数は下げ止まりの兆しがあるものの、完全失業率は高水準で推移している。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、11月0.47倍の後、12月0.48倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、11月0.85倍の後、12月0.94倍となった。雇用者数は、下げ止まりつつある。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、12月は前年同月比0.8%減(前年同月差46万人減)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、11月前年同月比0.6%減(季節調整済前月比0.2%増)の後、12月は同0.4%減(同0.0%)となり(事業所規模30人以上では前年同月比0.7%減)、産業別には製造業では同2.4%減となった。12月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差8万人減の294万人、完全失業率(同)は、11月4.4%の後、12月4.3%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では11月前年同月比15.9%減(季節調整済前月比2.7%減)の後、12月は同14.0%減(同0.5%増) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比14.5%減)。

企業の動向をみると、企業収益は、全体として減少している。また、企業の業況判断は、下げ止まりの兆しがみられるものの厳しい状態が続いている。

大企業の動向を前記「法人企業動向調査」(12月調査、季節調整値)でみると、10年10~12月期の売上高、経常利益の判断(ともに「増加」-「減少」)は、それぞれ ▲29 、▲31と、いずれも「減少」が「増加」を上回った。また、10年10~12月期の企業経営者の景気判断(業界景気の判断、「上昇」-「下降」)は▲38と「下降」が「上昇」を上回った。

また、中小企業の動向を中小企業金融公庫「中小企業動向調査」(12月調査、季節調整 値)でみると、売上げD.I.(「増加」-「減少」)は、10年10~12月期は「減少」超幅が拡大し、純益率D.I.(「上昇」-「低下」)は、「低下」超幅が拡大した。業況判断D.I.(「好転」-「悪化」)は、10年10~12月期は「悪化」超幅が縮小した。

企業倒産の状況をみると、件数は、信用保証制度の拡充の効果等から大幅に減少してきた。

銀行取引停止処分者件数は、12月は769件で前年同月比37.4%減となった。業種別に件数の前年同月比をみると、卸売業で54.3%、建設業で46.4%の減少となった。

3.国際収支:輸出は、このところやや減少

輸出は、このところやや減少している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で11月8.8%減の後、12月(速報)は2.3%増(前年同月比5.5%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、輸送用機器、一般機械等が減少した。同じく地域別にみると、アメリカ、アジア等が減少した。

輸入は、おおむね横ばい状態となっている。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で11月4.8%増の後、12月(速報)1.9%減(前年同月比7.5%減)となった。この動きを品目別(金額ベース)にみると、鉱物性燃料、原料品等が減少した。同じく地域別にみると、アメリカ、EU等が減少した。

通関収支差(季節調整値)は、11月に8,886億円の黒字の後、12月は1兆369億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、おおむね横ばいとなっている。

12月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大したものの、サービス収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、6,762億円となった。また、経常収支(季節調整値) は、貿易・サービス収支の黒字幅が縮小し、所得収支の黒字幅が縮小し、経常移転収支の赤字幅が拡大したため、その黒字幅は縮小し、1兆1,647億円となった。投資収支(原数値)は、837億円の黒字となり、資本収支(原数値)は、433億円の黒字となった。

1月末の外貨準備高は、前月比63億ドル増加して2,222億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、1月月初の113円台から一時110円台まで上昇したが、その後116円台まで下落した後、月末から上昇し、2月上旬は112円台から115円台で推移した。一方、対ユーロ円相場(インターバンク17時時点) は、1月月初の134円台から一時127円台まで上昇したが、その後下落し129円台から132円台で推移した後、月末から上昇し、2月上旬は127円台から131円台で推移した。

4.物価:国内卸売物価は、弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、弱含みで推移している。

1月の国内卸売物価は、製材・木製品(普通合板)等が上昇したものの、食料用農畜水産物(鶏卵)等が下落したことから、前月比0.3%の下落(前年同月比2.3%の下落)となった。輸出物価は、契約通貨ベースで上昇したものの、円高から円ベースでは前月比2.3%の下落(前年同月比11.3%の下落)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで下落したことに加え、円高から円ベースでは前月比3.3%の下落(前年同月比16.4%の下落)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比0.9%の下落(前年同月比4.9%の下落)となった。

企業向けサービス価格は、12月は前年同月比0.9%の下落(前月比0.3%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は木材等は上昇したものの、非鉄等の下落により1月は下落した。1月の動きを品目別にみると、合板等は上昇したものの、鉛地金等が下落した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で11月0.3%の下落の後、12月は繊維製品の下落幅の拡大、持家の帰属家賃の上昇幅の縮小等の一方、公共料金(広義)の下落幅の縮小等により0.3%の下落(前月比0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で11月0.8%の上昇の後、12月は0.6%の上昇(前月比0.4%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で12月0.1%の下落の後、1月(中旬速報値)は個人サービスの上昇幅の縮小等の一方、公共料金(広義)の下落幅の縮小等により0.1%の下落(前月比0.5%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で12月0.8%の上昇の後、1月(中旬速報値)は0.1%の上昇(前月比0.6%の下落)となった。

5.金融財政:民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている

最近の金融情勢をみると、短期金利は、1月から2月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。長期金利は、1月月初にやや低下した後、月末から2月上旬にかけてやや上昇した。株式相場は、1月は上昇した後、2月上旬はやや下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、12月は前年同月比 3.9%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレート、2、3か月物ともに、1月から2月上旬にかけておおむね横ばいで推移した。なお、2月12日に日本銀行が金融市場調節方針を一段と緩和した。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、1月月初にやや低下した後、月末から2月上旬にかけてやや上昇した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、12月は短期は 0.017%ポイント上昇し、長期は 0.035%ポイント上昇したことから、総合では前月比で 0.019%ポイント上昇し 1.889%となった。

マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、12月(速報)は  3.9%増となった。また、広義流動性でみると、12月(速報)は3.2%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、1月(速報)は前年同月比 4.6%減となった。1月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債が 250億円となった。また、1月の国内公募事業債の起債実績は2,750億円となった。

また、民間金融機関の貸出が低調なことから、企業は貸出態度に対する懸念を持っている。

株式市場をみると、日経平均株価は、1月は上昇した後、2月上旬はやや下落した。

6.海外経済:ブラジル、変動相場制へ移行

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、先行きにやや不透明感がみられるものの、景気の拡大テンポはこのところ高まっている。実質GDPは、98年7~9月期前期比年率3.7%増の後、10~12月期は同5.6%増(暫定値)となった。個人消費、住宅投資、設備投資は増加している。鉱工業生産(総合)の伸びは鈍化している。雇用は拡大しているものの、製造業等では輸出減の影響もあり減少している。雇用者数(非農業事業所)は12月前月差29.8万人増の後、1月は同24.5万人増となった。失業率は1月4.3%となった。物価は安定している。12月の消費者物価は前年同月比1.6%の上昇、生産者物価(完成財総合)は同0.1%の低下となった。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、依然として高水準にある。1月の長期金利(30年物国債)は、総じてほぼ横ばいで推移した。株価(ダウ平均)は、月上旬は最高値を記録する場面があったが、総じてほぼ横ばいで推移した。

西ヨーロッパをみると、ドイツでは、景気は拡大しているものの、そのテンポに鈍化懸念がみられる。フランスでは、景気拡大のテンポは緩やかになってきており、イギリスでは、景気は減速しつつある。実質GDPは、ドイツ98年7~9月前期比年率3.5%増(なお、98年平均では前年比2.8%増(速報値))、フランス同2.1%増、イギリス10~12月期同0.7%増(速報値)となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは拡大テンポが緩やかになってきており、イギリスでは製造業を中心に減少傾向にある(鉱工業生産は、ドイツ12月前月比横ばい、フランス11月同1.0%増、イギリス12月同0.8%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準ながらもやや低下しており、イギリスでは横ばいで推移している(失業率は、ドイツ1月10.6%、フランス12月11.5%、イギリス12月4.6%)。物価は、安定している(12月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比0.5%、フランス同0.3%、イギリス同2.8%)。なお、イングランド銀行は、2月4日に政策金利(レポ金利)を0.5%引き下げ、5.5%とした(金利引下げは5ヶ月連続)。

東アジアをみると、中国では、景気の拡大テンポはこのところやや高まっているが、輸出は減少傾向にある。物価は下落している。韓国では、景気後退のテンポはやや鈍化している。失業率はこのところほぼ横ばいで推移している。物価の騰勢は大幅に鈍化している。貿易収支は、輸入減少により大幅な黒字が続いていたが、1月には輸入の増加により黒字は減少した。

国際金融市場の1月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、上旬はやや減価基調で推移したものの、中旬以降は増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)1月29日現在106.8、98年12月末比0.8%の増価)。内訳をみると、1月29日現在、対円では12月末比2.6%増価、対ユーロでは同3.2%増価した。なお、ブラジル中央銀行は、1月18日に変動相場制への移行を発表した。

国際商品市況の1月の動きをみると、上旬は強含んだものの、その後は下落基調で推移した。原油スポット価格(北海ブレント)は、上旬は強含んだものの、その後はほぼ横ばいで推移した。