月例経済報告(平成10年1月)

平成10年1月13日

経済企画庁調査局

概観

我が国経済:需要面をみると、個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、足踏み状態となっている。住宅建設は、下げ止まりの兆しはみられるものの、依然弱い動きが続いている。設備投資は、製造業を中心に緩やかに増加している。

産業面をみると、鉱工業生産は、弱含んでいる。企業収益は、中小企業では減益が見込まれるなど全体として伸びが低下している。また、企業の業況判断は、厳しさが増している。

雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。

輸出は、強含みに推移している。輸入は、おおむね横ばいで推移している。国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、12月は、月央にかけて 131円台まで下落した後、一時 127円台まで上昇したが、その後 129円台から 130円台で推移した。

物価の動向をみると、国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、やや弱含みで推移している。また、消費者物価は、安定している。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、12月はやや上昇した。長期金利は、12月は一進一退で推移した。株式相場は、12月は大幅に下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、11月は前年同月比 3.2%増となった。

海外経済:主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、4~6月期前期比年率 3.3%増の後、7~9月期は同 3.1%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。物価は安定している。財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、前月から縮小した。12月の長期金利(30年物国債)は、上旬に上昇したが、その後は総じて低下した。12月の株価(ダウ平均)は、下旬にかけ下落したが、月末持ち直した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は回復している。イギリスでは、景気は拡大している。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは回復しているが、イギリスでは回復テンポは緩慢である。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは安定しているものの上昇率がやや高まっている。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大している。物価上昇率は、低下している。貿易収支は、大幅な黒字が続いている。韓国では、景気は減速している。失業率は、横ばいとなっている。物価上昇率は、高まっている。貿易収支は、改善している。なお、韓国ウォンは、12月に完全変動相場制に移行した後、一時1ドル 2,000ウォン台に減価した。

国際金融市場の12月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価した。アジアの通貨は、総じて減価した。

国際商品市況の12月の動きをみると、全体では上旬横ばいで推移した後、中旬から下旬にかけて弱含みで推移した。12月の原油スポット価格(北海ブレント)は、初旬横ばいで推移した後、中旬から下旬にかけては弱含み、おおむね16ドル台後半から17ドル台前半での推移となった。


我が国経済の最近の動向をみると、設備投資は製造業を中心に緩やかに増加しており、純輸出は増加傾向にある。他方、個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、足踏み状態となっている。住宅建設は、下げ止まりの兆しはみられるものの、依然弱い動きが続いている。こうした需要動向を背景に、生産は弱含んでいる。雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。また、民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。以上のように、景気はこのところ足踏み状態が続いており、家計や企業の景況感は厳しさを増し、個人消費や設備投資にも影響を及ぼしている。

政府としては、家計や企業の経済の先行きに対する不透明感を払拭し、我が国経済を民間需要中心の自律的な安定成長軌道に乗せていくため、平成9年11月18日に決定した「21世紀を切りひらく緊急経済対策」を確実に実行に移すとともに、2兆円規模の所得税、個人住民税の特別減税を行うこととし、さらに法人課税、有価証券取引税等の金融・証券関係税制、地価税・土地譲渡益課税等の土地税制等の見直しを行うこととした。また、我が国の金融システムの安定性確保と預金者保護のための諸施策を講じることとした。

なお、12月20日に平成10年度の実質経済成長率を 1.9%程度と見込んだ「平成10年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」を閣議了解し、さらに12月25日には77兆 6,700億円(前年度当初比 0.4%増)の平成10年度一般会計予算(概算)を閣議決定した。また、平成9年12月24日に「経済構造の変革と創造のための行動計画」のフォローアップを閣議決定した。

1.国内需要:個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、足踏み状態

個人消費は、家計の経済の先行きに対する不透明感もあって、足踏み状態となっている。

家計調査でみると、実質消費支出(全世帯)は前年同月比で9月 2.6%増の後、10月は1.1%増(前月比 1.1%減)となった。世帯別の動きをみると、勤労者世帯で前年同月比0.1%減、勤労者以外の世帯では同 3.9%増となった。形態別にみると、耐久財等は減少し、サービスは増加となった。なお、消費水準指数は全世帯で前年同月比 1.1%増、勤労者世帯では同 0.1%減となった。また、農家世帯(農業経営統計調査)の実質現金消費支出は前年同月比で7月 4.5%増となった。小売売上面からみると、小売業販売額は前年同月比で10月 1.1%減の後、11月は 4.7%減となった。全国百貨店販売額(店舗調整済)は前年同月比で10月 2.3%減の後、11月 2.1%減となった。チェーンストア売上高(店舗調整後)は、前年同月比で10月 3.6%減の後、11月 4.5%減となった。一方、耐久消費財の販売をみると、乗用車(軽を含む)新車新規登録・届出台数は、前年同月比で12月は 3.8%減となった。また、家電小売金額は、前年同月比で11月は 1.6%減となった。レジャー面を大手旅行業者13社取扱金額でみると、11月は前年同月比で国内旅行が 1.3%減、海外旅行は 3.0%減となった。

賃金の動向を毎月勤労統計でみると、現金給与総額は、事業所規模5人以上では前年同月比で10月 1.4%増の後、11月(速報)は 1.0%減(事業所規模30人以上では同 1.2%減)となり、うち所定外給与は、11月(速報)は同 0.0%(事業所規模30人以上では同 0.6 %増)となった。実質賃金は、前年同月比で10月 1.3%減の後、11月(速報)は 3.1%減(事業所規模30人以上では同 3.4%減)となった。なお、平成9年の民間主要企業の年末一時金妥結額(労働省調べ)は前年比 2.8%増(前年は同 2.8%増)となった。

住宅建設は、下げ止まりの兆しはみられるものの、依然弱い動きが続いている。

新設住宅着工をみると、総戸数(季節調整値)は、前月比で10月 2.6%増(前年同月比25.2%減)となった後、11月は 5.4%減(前年同月比23.5%減)の10万7千戸(年率 129万戸)となった。11月の着工床面積(季節調整値)は、前月比 3.4%減(前年同月比27.9%減)となった。11月の戸数の動きを利用関係別にみると、持家は前月比 0.7%増(前年同月比39.2%減)、貸家は同 7.0%減(同22.8%減)、分譲住宅は同 4.1%減(同 3.6%増)となっている。

設備投資は、製造業を中心に緩やかに増加している。

日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)により設備投資の動向をみると、主要企業の9年度設備投資計画は、製造業で前年度比 9.9%増(9月調査比 0.9%上方修正)非製造業で同 1.3%増(同 1.2%下方修正)となっており、全産業では同 4.1%増(同 0.4%下方修正)となった。また、中堅企業では、製造業で前年度比 2.9%増(9月調査比 1.0%上方修正)、非製造業で同 5.4%減(同 0.2%下方修正)となり、中小企業では製造業で同 3.4%増(同 1.0%上方修正)、非製造業で同11.0%減(同 2.9%上方修正)となっている。

なお、9年7~9月期の設備投資を、大蔵省「法人企業統計季報」(全産業)でみると前年同期比で 5.9%増(うち製造業10.4%増、非製造業 3.7%増)となった。

先行指標の動きをみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、前月比で9月は12.3%減(前年同月比 1.3%増)の後、10月は16.3%増(同14.3%減)となり、製造業は底堅く推移しているものの、全体としては弱含みで推移している。民間からの建設工事受注額(50社、非住宅)をみると、一進一退で推移しており、前月比で10月12.0%減の後、11月は 5.1%増(前年同月比11.9%増)となった。内訳をみると、製造業は前月比 2.3%減(前年同月比16.3%増)、非製造業は同15.6%増(同10.4%増)となった。

公的需要関連指標をみると、公共投資については、着工総工事費は、前年同月比で9月24.0%減の後、10月は 6.5%減となった。公共工事請負金額は、前年同月比で10月17.7%減の後、11月は 6.7%減となった。官公庁からの建設工事受注額(50社)は、前年同月比で10月21.1%減の後、11月は 7.6%減となった。

2.生産雇用:雇用情勢は、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況

鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産・出荷は、弱含んでいる。在庫は11月は増加した。

鉱工業生産は、前月比で10月 0.1%増の後、11月(速報)は、電気機械、輸送機械等が減少したことから、 4.1%減となった。また製造工業生産予測指数は、前月比で12月は機械、化学等により 1.4%増の後、1月は機械、化学等により 4.2%増となっている。鉱工業出荷は、前月比で10月 0.2%減の後、11月(速報)は生産財、資本財等が減少したことから、 5.3%減となった。鉱工業生産者製品在庫は、前月比で10月 0.5%減の後、11月(速報)は、輸送機械、電気機械等が減少したものの、化学、鉄鋼等が増加したことから、1.4%増となった。また、11月(速報)の鉱工業生産者製品在庫率指数は 123.8と前月を7.5ポイント上回った。

主な業種について最近の動きをみると、電気機械では、生産は3か月連続で減少し、在庫は2か月連続で減少した。輸送機械では、生産、在庫ともに11月は減少した。化学では、生産は11月は減少し、在庫は4か月連続で増加した。

雇用情勢をみると、雇用者数の伸びが鈍化し、完全失業率が高い水準で推移するなど厳しい状況にある。

労働力需給をみると、有効求人倍率(季節調整値)は、10月0.70倍の後、11月0.69倍となった。新規求人倍率(季節調整値)は、10月1.17倍の後、11月1.17倍となった。雇用者数は、伸びが鈍化している。総務庁「労働力調査」による雇用者数は、11月は前年同月比0.9%増(前年同月差46万人増)となった。常用雇用(事業所規模5人以上)は、10月前年同月比 0.8%増(季節調整済前月比 0.1%増)の後、11月(速報)は同 1.1%増(同0.5 %増)となり(事業所規模30人以上では前年同月比 0.1%増)、産業別には製造業では同 0.4%減となった。11月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差1万人増の 236万人、完全失業率(同)は、10月 3.5%の後、11月 3.5%となった。所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では10月前年同月比 0.7%増(季節調整済前月比 2.2%減)の後、11月(速報)は同 0.8%減(同 0.4%減) となっている(事業所規模30人以上では前年同月比 0.6%減)。

前記「企業短期経済観測調査」(全国企業、12月調査)をみると、企業の雇用人員判断は、製造業、非製造業ともに過剰感にやや高まりがみられる。

企業の動向をみると、企業収益は、中小企業では減益が見込まれるなど全体として伸びが低下している。また、企業の業況判断は、厳しさが増している。

前記「企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、主要企業(全産業)では、9年度上期の経常利益は前年同期比 8.4%の増益(除く電力・ガスでは同 5.7%の増益)の後、9年度下期には同 1.0%の減益(除く電力・ガスでは同 1.5%の減益)が見込まれている。

産業別にみると、製造業では9年度上期に前年同期比12.4%の増益の後、9年度下期には同 3.4%の減益が見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では9年度上期に前年同期比 6.3%の減益の後、9年度下期には同 3.1%の増益が見込まれている。売上高経常利益率は、製造業では9年度上期に4.07%となった後、9年度下期は4.20%と見込まれている。また、非製造業(除く電力・ガス)では9年度上期に1.62%となった後、9年度下期は1.54%と見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業では「悪い」超に転じ、非製造業では「悪い」超幅が拡大した。

また、中小企業の動向を同調査(全国企業)でみると、製造業では、経常利益は9年度上期には前年同期比 2.3%の減益の後、9年度下期には同 9.5%の減益が見込まれている。また非製造業では、9年度上期に前年同期比18.8%の減益の後、9年度下期には同 4.4%の減益が見込まれている。こうしたなかで、企業の業況判断をみると、製造業、非製造業とも「悪い」超幅が拡大した。

企業倒産の状況をみると、件数は、前年の水準を上回る傾向にある。

銀行取引停止処分者件数は、11月は 1,029件で前年同月比 7.2%増となった。業種別に件数の前年同月比をみると、小売業で 2.3%の減少となる一方、建設業で27.5%、卸売業で 8.2%の増加となった。

3.国際収支:貿易・サービス収支の黒字は増加傾向

輸出は、強含みに推移している。

通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で10月11.5%増の後、11月は 7.8%減(前年同月比 3.9%増)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、電気機器、一般機械等が増加した。同じく地域別にみると、アメリカ、アジア等が増加した。ただし、ASEANは減少した。

輸入は、おおむね横ばいで推移している。

通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で10月 1.9%減の後、11月は 9.2%減(前年同月比 2.6%減)となった。最近数か月の動きを品目別(金額ベース)にみると、製品類(機械機器)等は減少したが、鉱物性燃料等は増加した。同じく地域別にみると、アジア等が減少したが、中近東等は増加した。

通関収支差(季節調整値)は、10月に12,379億円の黒字の後、11月は11,432億円の黒字となった。

国際収支をみると、貿易・サービス収支の黒字は、増加傾向にある。

10月(速報)の貿易・サービス収支(季節調整値)は、前月に比べ、貿易収支の黒字幅が拡大するとともに、サービス収支の赤字幅が縮小したため、その黒字幅は拡大し、 8,783 億円となった。また、経常収支(季節調整値) は、経常移転収支の赤字幅が拡大したものの、貿易・サービス収支及び所得収支の黒字幅が拡大したため、その黒字幅は拡大し、13,486億円となった。投資収支(原数値)は、 8,823億円の赤字となり、資本収支(原数値)は、 9,015億円の赤字となった。

12月末の外貨準備高は、前月比75.9億ドル減少して 2,207.9億ドルとなった。

外国為替市場における対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、12月は、月央にかけて 131円台まで下落した後、一時 127円台まで上昇したが、その後 129円台から130円台で推移した。一方、対マルク相場(インターバンク17時時点) は、12月は、月初の72円台から、一時71円台まで上昇したが、その後は概ね73円台で推移した。

4.物価:国内卸売物価はやや弱含みで推移

国内卸売物価は、内外の需給の緩み等から、やや弱含みで推移している。

11月の国内卸売物価は、石油・石炭製品(燃料油)等が上昇したものの、電気機器(電子レンジ)等が下落したことから、前月比 0.1%の下落(前年同月比 0.9%の上昇)となった。また、前記「企業短期経済観測調査」(主要企業、12月調査)によると、製品需給バランスは、引き続き引緩み方向の動きとなっている。輸出物価は、契約通貨ベースで下落したものの、円安から円ベースでは前月比 1.9%の上昇(前年同月比 3.7%の上昇)となった。輸入物価は、契約通貨ベースで上昇したことに加え、円安から円ベースでは前月比 2.1%の上昇(前年同月比 2.8%の上昇)となった。この結果、総合卸売物価は、前月比 0.3%の上昇(前年同月比 1.4%の上昇)となった。

12月上中旬の動きを前旬比でみると、国内卸売物価は上旬が 0.1%の上昇、中旬が保合い、輸出物価は上旬が 1.0%の上昇、中旬が 0.4%の上昇、輸入物価は上旬が 0.8%の上昇、中旬が 0.2%の上昇、総合卸売物価は上旬が 0.3%の上昇、中旬が 0.1%の上昇となっている。

企業向けサービス価格は、11月は前年同月比 1.7%の上昇(前月比 0.1%の下落)となった。

商品市況(月末対比)は、非鉄等の下落により12月は下落した。12月の動きを品目別にみると、すず地金等が下落した。

消費者物価は、安定している。

全国の生鮮食品を除く総合は、前年同月比で10月 2.4%の上昇の後、11月は個人サービスの上昇幅の縮小等により 2.2%の上昇(前月比 0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で10月 2.5%の上昇の後、11月は 2.1%の上昇(前月比 0.7%の下落)となった。

東京都区部の動きでみると、生鮮食品を除く総合は、前年同月比で11月 2.2%の上昇の後、12月(中旬速報値)は持家の帰属家賃の上昇幅の拡大等の一方、一般生鮮商品の上昇幅の縮小等があり 2.2%の上昇(前月比 0.1%の下落)となった。なお、総合は、前年同月比で11月 2.0%の上昇の後、12月(中旬速報値)は 1.7%の上昇(前月比 0.2%の下落)となった。

5.金融財政:10年度予算(概算)を閣議決定

政府は平成9年12月25日、77兆 6,700億円(前年度当初比 0.4%増)の平成10年度一般会計予算(概算)を閣議決定した。

最近の金融情勢をみると、短期金利は、12月はやや上昇した。長期金利は、12月は一進一退で推移した。株式相場は、12月は大幅に下落した。マネーサプライ(M2+CD)は、11月は前年同月比 3.2%増となった。

短期金融市場をみると、オーバーナイトレートは、12月は一時低下したものの、おおむね横ばいで推移した。2、3か月物は、12月はやや上昇した。なお、日銀は市場安定のため、潤沢な資金供給を行った。

公社債市場をみると、国債流通利回りは、12月は一進一退で推移した。なお、国債指標銘柄流通利回り(東証終値)は12月8日に 1.585%となり、史上最低を更新した。

国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、11月は短期は 0.096%低下し、長期 は 0.061%低下したことから、総合では前月比で 0.089%低下し 1.819%となった。

マネーサプライ(M2+CD)の月中平均残高を前年同月比でみると、11月(速報)は 3.2%増となった。また、広義流動性でみると、11月(速報)は 3.2%増となった。

企業金融の動向をみると、金融機関の貸出平残(全国銀行)は、11月(速報)は前年同月比 0.1%減と前年水準を下回った。12月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債がゼロとなった。また、12月の国内公募事業債の起債実績は 9,370億円となった。

前記「企業短期経済観測調査」(主要企業、12月調査)によると、資金繰り判断の「楽である」超幅は縮小し、手元流動性は横ばいで推移している。また、金融機関の貸出態度の「緩い」超幅は大幅に縮小している。中小企業については、「厳しい」超に転じた。

民間金融機関において貸出態度に慎重さがみられる。

株式市場をみると、日経平均株価は、12月は大幅に下落した。

6.海外経済:韓国、IMF支援の受入れを決定

主要国の経済動向をみると、アメリカでは、景気は拡大している。実質GDPは、4~6月期前期比年率 3.3%増の後、7~9月期は同 3.1%増となった。個人消費、設備投資、住宅投資は増加している。鉱工業生産(総合)は増加している。雇用は拡大している。雇用者数(非農業事業所)は10月前月差28.7万人増の後、11月は同40.4万人増となった。失業率は11月 4.6%となった。物価は安定している。11月の消費者物価は前月比 0.1%の上昇、11月の生産者物価(完成財総合)は同 0.2%の下落となった。10月の財の貿易収支赤字(国際収支ベース)は、前月から縮小した。12月の長期金利(30年物国債)は、上旬に上昇したが、その後は総じて低下した。12月の株価(ダウ平均)は、下旬にかけ下落したが、月末持ち直した。

西ヨーロッパをみると、ドイツ、フランスでは、景気は回復している。イギリスでは、景気は拡大している。7~9月期の実質GDPは、ドイツ前期比年率 3.2%増、フランス同 3.6%増、イギリス同 3.4%増となった。鉱工業生産は、ドイツ、フランスでは回復しているが、イギリスでは回復テンポは緩慢である(鉱工業生産は、ドイツ11月前月比 0.3%増、フランス10月同 3.3%増、イギリス10月同 0.2%減)。失業率は、ドイツ、フランスでは高水準で推移しているが、イギリスでは低下している(11月の失業率は、ドイツ11.8%、フランス12.4%、イギリス 5.1%)。物価は、ドイツ、フランスでは安定しており、イギリスでは安定しているものの上昇率がやや高まっている(11月の消費者物価上昇率は、ドイツ前年同月比 1.9%、フランス同 1.3%、イギリス同 3.7%)。

東アジアをみると、中国では、景気は拡大している。物価上昇率は、低下している。貿易収支は、大幅な黒字が続いている。韓国では、景気は減速している。失業率は、横ばいとなっている。物価上昇率は、高まっている。貿易収支は、改善している。なお、韓国ウォンは、12月に完全変動相場制に移行した後、一時1ドル 2,000ウォン台に減価した。

国際金融市場の12月の動きをみると、米ドル(実効相場)は、やや増価した(モルガン銀行発表の米ドル名目実効相場指数(1990年=100)12月31日110.0 、11月末比 1.8%の増価)。内訳をみると、12月31日現在、対円では11月末比 2.1%増価、対マルクでは同 1.8%増価した。アジアの通貨は、総じて減価した。

国際商品市況の12月の動きをみると、全体では上旬横ばいで推移した後、中旬から下旬にかけて弱含みで推移した。12月の原油スポット価格(北海ブレント)は、初旬横ばいで推移した後、中旬から下旬にかけては弱含み、おおむね16ドル台後半から17ドル台前半での推移となった。