第2節 個人消費を巡る論点(17)

(17)高所得層ほど限界消費性向が低いことは、高所得層ほど所得の減少に対して消費を柔軟に調整できるという先に述べた事実と一見反するように感じられる。しかし、この二つは整合的である。消費Cと可処分所得Yの関係を単純化してC=a+bYと書くと、aが基礎的支出、bYが選択的支出におおむね該当する。このとき、限界消費性向はbであり、高所得層で低い。一方、消費の所得弾性値、すなわち可処分所得が1%変化したときの消費の増分は0.01×bY/Cになる。これは、消費に占める選択的支出の割合に比例し、高所得層で高い。高所得層ではbは低いが、それ以上に平均消費性向C/Yが低いため、こうしたことが生じている。