原油や穀物、鉱産物の価格の動向をみると、1980年代、90年代は比較的安定的に推移していたものの、2000年代に入ると、それ以前のトレンドや消費者物価指数の動きから大きく上方にかい離する形で、急激に価格が上昇している(第1-1-1図)。08年半ばには多くの商品銘柄が史上最高値をつけた後、価格は大きく下落したが、09年夏以降再び上昇基調を強め、金、銅、綿花、砂糖等、商品銘柄によっては08年のピークの水準を超え、史上最高値を更新しているものもみられる。この点については、エネルギーや貴金属、穀物等28品目の商品の先物取引価格から算出されるCRB指数(4)や、穀物、砂糖、油脂等の国際価格を指数化したFAO食品価格指数の動きをみても、同様の動きがみてとれる(第1-1-2図)。
次に、個別商品の最近の価格動向をみる(第1-1-3図)。穀物価格については、小麦は、10年7月のロシアの干ばつ被害、同年12月のオーストラリアの洪水被害等を受けて価格上昇を続けた。トウモロコシや大豆も11年初にかけて価格が大幅に上昇した。
鉱産物価格をみると、金価格は、10年前半にギリシャ危機を発端とするヨーロッパの財政不安の高まり、ドルの主要通貨に対する減価傾向が進展したことなどを背景に上昇を続け、11年4月まで史上最高値を更新し続けている。また、銅価格は、08年にかけて、中国を中心とする新興国の実需の拡大を背景に上昇し、09年には大幅に下落したものの、10年前半以降は価格が再び上昇し、11年2月には史上最高値を更新した。銀価格も金融危機を受けて下落したが、09年には上昇に転じた。10年に入り、スマートフォン向け等工業用需要の拡大や、それを見越した投機資金の流入を背景に、騰勢を強めている(5)。
原油価格については、11年1月以降の中東・北アフリカ情勢の緊迫化を背景に、およそ2年半ぶりの高値を更新している。原油先物の主要指標銘柄とされるニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI(West Texas Intermediate)は、11年3月のリビアに対する多国籍軍の軍事行動開始を受けて、4月にはおよそ2年半ぶりに110ドル台にのせた。また同時に、ヨーロッパの主要原油指標銘柄である北海ブレントは120ドル台、アジア向け原油価格に影響の大きいドバイ原油は115ドル台にのせ、それぞれおよそ2年半ぶりの高値をつけている。通常は、より良質なWTI(6)の価格が北海ブレントやドバイ原油の価格を上回っていることが多いが、中東・北アフリカ情勢の緊迫化により、北海ブレントやドバイ原油の価格がWTIの価格を上回って推移している。
このような一次産品価格の高騰は、UNCTADの不安定化指数にも反映されている。この指数は、主要商品の価格動向がトレンドと比較してどの程度かい離しているかを測ることにより当該商品の価格の不安定性を示すもので、トウモロコシや大豆等の多くの穀物や、銅、原油等、主要商品の価格動向がこれまでのトレンドからかい離していることがみてとれる(第1-1-4表)。