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「読んだら理解できるアジア経済」を目指して~「アジア経済1995」刊行のねらいと特徴~

表紙
1.「アジア経済1995」刊行のねらい
 アジア地域は、目ざましい経済成長を遂げるなかで、世界経済における重要性をま すます増しており、世界的に高い注目を集めている。
(第1図)
 特に東アジア (中国、アジアNIEs、ASEAN諸国)は顕著な経済成長を持 続しており、93年のデータをみると、世界のGDPの9%,世界貿易額の17%を占め るに至っている。
(第2図)
日本においても、アジア各国との経済関係が一層深まる中で、アジア経済に対する関 心は非常に高まっている。
 「アジア経済1995」は、こうしたアジアの経済発展がますます世界経済へのプレゼ ンスを高める状況において、今年より新たに刊行した報告書である。世界の成長セン ターとしてアジアへの関心が大きく高まっている昨今、書店にいけば実にいろんな種 類のアジア経済を取り上げた書籍を目にする。しかし、アジア経済全体と各国毎の経 済状況をわかりやすく整理した書物というのは案外少なく、アジア経済の動向を総合 的に理解しようとする際に不便を感じた方も少なくないのではなかろうか。そこで、 「アジア経済1995」は、アジア経済の基礎的な知識を体系的に整理することで、「一 読すれば全体像が掴めると同時に、単なる読物でなく、情報源として何度でも活用で きる」ものを目指した。

2.「アジア経済1995」の特徴
 本書の特徴としては、第一に、アジア地域のマクロ経済の動向について、縦軸(中 期的展開、現状、今後の展望)と横軸(各国・地域経済を比較)の両面からとらえ、 体系的に分析・評価している点である。本書では、各国・地域の比較をしやすいよう に共通の様式でまとめており、読者がアジア経済の動向を総合的に理解できるように 工夫している。
 第二に、マクロ経済動向に加えて、貿易・投資、為替レート、財政金融についての 最近の動向を分析している点である。貿易・投資については、アジア各国と密接な結 びつきをもつ日本との関係も整理している。為替については最近の動向だけでなく、 各国の為替制度についても整理しており、各国の通貨の動きを理解する一助になると 考える。また、アジア各国では、財政金融の動向がその国の経済政策に様々な面から 影響を与えており、これを取り上げることで、アジア各国の順調な経済成長だけでな く、各国経済が抱える問題点を浮き彫りにしている。
 第三に、94年にスタンフォード大学のクルーグマン教授が問題提起し、その後メキ シコで発生した通貨危機のアジアへの波及により大きく話題となったアジアの経済成 長の持続性について、1章を割いて検討を行っていることである。
 第四に、アジア各国の経済パフォーマンスの長期的な動向を把握したり、各国横並 びでの比較を行えるように、巻末に主要経済指標についての参考統計を掲載したこと である。アジア諸国の経済統計は、先進国ほど整備されていないため、こうした統計 は、IMFやアジア開発銀行などの国際機関を除くと、公表されているものがほとん どなく、作成にはかなり苦労した。しかし、この統計には主なマクロ経済指標がほと んど網羅されており、仕事や研究でアジア経済に携わる人には有益な資料たりえると 考えている。この参考統計については、来年度以降もより内容を吟味してグレードア ップさせ、本書のセールスポイントにしたいと考えている。
 第五に、アジア問題や経済問題の専門家だけでなく、一般の読者にも分かりやすい 内容になるように記述している点である。具体的には、 1文章は簡潔な表現にするな どで全体の分量をなるべく抑えて、読み手の負担を軽減していること、 2各項目に副 題をつけて、その項目の内容がすぐ読者の目に入るようにすることで、全体の流れを つかみやすくしていること、 3主要なマクロ経済指標や、貿易・投資などでは、図表 を用いて、水準や変化の動向を比較しやすいようにしたこと、 4「アジアは先進国と 比較して何故高いインフレ率なのか」、「東アジアの高い貯蓄率には儒教思想が影響 しているのか」、「メキシコ通貨危機が何故起こったか」といった、アジア経済に関 心を持った読者が抱くであろういくつかの疑問を囲み記事で取り上げ、平易な解説を 行っていること、があげられる。

3.「アジア経済1995」の概要
 本書は3章立ての構成となっている。第1章ではアジア地域全体の経済情勢と貿易 ・投資の動向について、過去10年間程度の概観を行っている。続く第2章では、アジ ア主要国・地域毎に経済や貿易・投資の動向と各国・地域経済が抱える課題について まとめている。
最後の第3章では、先程も触れたように、クルーグマン教授の指摘などで最近話題と なったアジア経済の成長持続性についての検討を行っている。ここでは、第1章と第 3章について、ポイントとなる点をいくつか御紹介したい。
(1) 第1章 経済情勢と貿易・投資の概観
【持続するアジアの成長】
・アジア全体の経済成長率は、70年代5%台から90年代7%台と、長期的に高まる傾 向にある。アジアでは、高成長を続ける東アジアに加え、南アジアでも成長の加速が みられ、他の地域の多くの途上国が停滞から抜け出せないなかで、成長の自己増殖的 広がりがみられる。
・アジア全体の消費者物価上昇率は、高成長が続くなかで、70年代以降7~8%台と 、途上国平均に比べて低い。しかし、中国やベトナムなどインフレ抑制が不十分な国 もある。
・東アジアの成長持続をもたらした政策的要因は、 1経済自由化などの市場メカニズ ムを活かす政策の採用、 2財政赤字の抑制などの比較的良好な財政金融政策の実施に ある。
【アジアの最近の経済情勢】
・アジア全体の経済成長率は、93年 7.9%、94年 8.2%となり、景気は好調に拡大し ている。
・94年は、中国では成長率がやや鈍化したが、二桁成長が続いた。アジアNIEs、 ASEAN4か国の成長率は7%台に高まり、南アジアの成長率も5%近くに高まっ た。
・アジアの消費者物価上昇率は、好景気を背景に、94年に二桁台へ高まった。しかし 、台湾、シンガポール、マレイシアなどでは3~4%台の低い上昇率を維持している 。
・95年に入ってからのドルに対する大幅な円高は、アジア通貨の為替レートにも影響 をもたらした。アジア諸国の通貨の多くは、事実上ドルとの連動が強いため、急速な 円高の進行に伴い、多くの国・地域ではドルに対しては若干の増価となった一方、円 に対しては、全ての国・地域で大幅な減価なった。
(第3図(1))
(第3図(2))
・95年末に発生したメキシコ通貨危機は、東アジア諸国の一部にも影響を及ぼしたが 、その影響は軽微であり、動揺は短期間で収束した。これは、東アジア諸国では概し て、 1インフレ率が低く、為替レートの割高化が回避されている、 2適正な為替レー トの維持や財政赤字の抑制によって、経常収支赤字が抑制されている、 3高い国内貯 蓄率を背景に高投資を維持しており、外国資金への依存度が低い、 4流入資本に占め る短期証券投資の比率が低く、直接投資や借款の比率が高い、 5高い経済成長を持続 しており、対外的な支払能力が高い、など良好なファンダメンタルズを維持してきた ためであると考えられる。
【アジア経済の見通し】
・95~96年のアジア全体の経済成長率は、中国やアジアNIEsの成長鈍化から、や や鈍化すると見込まれる。ASEANは現状の高い成長テンポを維持し、南アジアは 引き続き加速する。
・アジアの物価は、95~96年と一桁台の上昇にとどまる見通しである。経常収支は、 アジア全体で年 200億ドル程度の赤字が続く見通しである。しかし、シンガポール、 台湾、香港などは黒字となる見込みで、特にシンガポールでは、GDP比8~9%程 度の黒字と見込まれている。
【アジアの貿易・直接投資】
・アジアは外向きの経済政策の導入により、輸出・外資導入を拡大させた。特に、世 界のGDPの 2.8%にすぎないアジアNIEsは、製品輸出では世界全体の11.4%( 92年)を占めている。
・東アジアへの直接投資は、85年のプラザ合意を契機に80年代後半に急増した後、90 年代初めに鈍化した。しかし、94年に入り再び増勢を強めている。
【強まるアジア域内の相互依存関係】
・アジアでは、域内分業の進展を背景に、貿易、投資の相互依存が強まりつつある。 アジアNIEsの域内輸出比率は、83年25.5%から93年38.6%へと高まった。
(2) 第3章 東アジアの成長力の検討
【東アジア経済の将来への懸念】
・スタンフォード大学のクルーグマン教授は、最近、東アジアの成長力について次の ような疑問を投げかけ、注目を集めた。 1近年の東アジアの成長は、50年代のソ連と 同様、生産効率の改善ではなく、資本と労働という資源の総動員によっている。 2生 産効率の向上を伴わない高成長は持続しえず、東アジアの高成長が今後も持続すると いう予測は誤りである。本章では、同教授の以上の問題提起の考察を通じて、東アジ アの成長力を検証している。
【資源動員をもたらしたメカニズム】
・東アジアが資源の急速な動員と、その効率的な配分を実現できたのは、市場の働き を活用した政策環境の下で、貯蓄、投資、教育などの収益率が十分高く、資源の動員 を行う自発的なインセンティブが働いたからである。
(第4図)
・ソ連経済が停滞したのは、資源が政府によって強制的に動員・配分されていたため 、資源の効率的な活用が図れなかったからである。東アジア経済の今後の成長力を検 討するに当たっては、資源の動員と配分のメカニズムが、東アジアとソ連とでは、基 本的に異なっている点に着目する必要がある。
【東アジアの成長ポテンシャル】
・東アジアの経済成長に、生産効率(全要素生産性)の上昇がどの程度寄与したのか については、これまでの研究では一致した見解がない。仮にこれまで東アジアの生産 効率が改善していなかったとしても、先進国からのより進んだ技術の導入や、活発な 貿易や直接投資を通じた技術や経営ノウハウの移転、教育による労働の質の向上など により、今後とも成長を持続する可能性がある。
【東アジア経済の展望】
・東アジアは、今後、先進国の経済水準に近づくにつれて、次第に成長が鈍化するも のの、先進国との経済格差が大きい間は、これまでの成長パターンの下でも、高成長 を持続しうる。東アジアが、こうした成長持続の可能性を現実のものとするためには 、インフレを防止するとともに、市場指向の政策を一層推進することが重要である。

5.おわりに
 日本の景気の先行きに不透明さが高まる中、成長を続けるアジア経済への期待感は いよいよ高まっている。しかし、緊張感を増している中国と台湾との関係や中国返還 後の香港の将来など、アジアには政治経済両面で多くの不安定要素も抱えているのが 現実である。それだけに、アジア経済が今どのように動いているかを、分かりやすく 伝えることが重要になってきていると思われる。そうした観点からみて、本書の内容 については、第1回ということもあり、不十分な点も多々あると思われる。これにつ いては、読者の御意見、御批判をいただき、来年以降更に良いものを目指していきた いと考えている。

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