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第1章 第2節 生産と地域における産業集積

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次に、最近の地域別の製造業生産やサービス業の活動状況、設備投資といった企業活動の姿をみていく。その後、少し長めの時間軸における地域の産業構造の動きを振り返ることで、地域の経済が持っている特徴を概観する。

1)生産の動向

(供給側の一時的な要因もあり、九州や東海で下落したが、鉱工業生産は総じておおむね横ばい)

2016年前半は、例年になく事故や自然災害による生産の停止が生じた。2月には製鉄メーカーの火災、また、4月には熊本地震の発生によるサプライチェーンの寸断等の供給制約により、輸送機械等の生産に大きな影響がみられた。輸送機械は、製造業の中でも多種多様の中間投入財を利用するため、サプライチェーンを通じた影響が生じる結果となった。特に、東海の鉱工業生産は、こうした影響により、2016年1-3月期、4-5月期には、大きく下落した。

他方、高品質帯の電子部品・デバイスや医薬品が生産の主力品目となっている北陸では、生産水準は引き続き高いものの、海外経済の成長鈍化、特に中国向けスマートフォン部品の生産低迷により、このところ弱含んでいる(第1-2-1図)。

(非製造業の景況感は総じて慎重さがみられ、サービス業の景況感はばらつき)

非製造業の業況について、支店別の日銀短観を用いて概観すると、北海道(札幌)は北海道新幹線の開業効果、神奈川県(横浜)は都市部の開発等で建設業が好調なこともあり、「良い」超幅が拡大している。しかし、その他多くの地域で「良い」超幅が縮小あるいはマイナスに転じており、総じて慎重さがみられる。対個人サービスの業況については、北海道(札幌)は、北海道新幹線の開業効果もあり、「良い」超幅が大きく拡大しているが、九州(福岡)は、熊本地震とそれに伴う観光客の減少等の影響もあり、マイナスに転じている。対個人サービスの景況感は地域によるばらつきが大きい(第1-2-2図)。

(中小企業は一部に弱い動きがみられるものの多くの地域で持ち直し基調)

製造業、非製造業ともに、地方経済の担い手は中小企業である。2016年1-3月期から4-6月期の中小企業の景況感の動きは、製造業が関東と中国を除く地域で改善、非製造業が九州を除く全ての地域で改善した。中国地域の製造業の景況感が悪化した背景には、自動車メーカーの燃費不正問題による軽自動車の生産停止があると考えられる。また、九州の非製造業の景況感が悪化した背景には、熊本地震により飲食・宿泊業で来客減、売上減が景況感に影響したと考えられる(第1-2-3(1)図)。特に、輸送機械等は多くの部品・具材等を投入することから、下請け企業に加え、複数の大手企業への主要サプライヤーである関連企業が多数存在することから、影響に留意する必要がある(第1-2-3(2)表)。

(企業利益は高水準ながらも改善に足踏み)

製造業の生産動向も非製造業の業況感も力強さを欠いているが、企業利益の動向をみると、2015年は原油価格の低下もあり、製造業のみならず、非製造業においても、利益額は高水準で推移した。特に、運送業や電力会社等、地域経済への影響が大きい非製造業の利益は堅調であった。ただし、四半期の動きをみると、利益水準は高いものの、前年同期と比べると、年度後半にかけて、地域によっては減少がみられる(第1-2-4図)。

(設備投資は多くの地域で増加)

設備投資実績について、地域別(本社所在地別)の寄与度をみると、関東が7四半期連続、東海が5四半期連続、九州も4四半期連続で増加している(第1-2-5図)。関東は、非製造業については、不動産の開発投資により、製造業は、自動車の能力増強等により増加している。東海は、製造業の幅広い業種で能力増強及び新製品・省力化対応投資が行われ、増勢が続いている。九州では、非鉄金属の能力増強投資等を中心に増加している。

2)地域別産業構造の変化と輸出

これまでみたように、生産は全体として伸び悩んでいるが、地域別には産業構造によって差がある。ここでは、地域別の産業構造はどのように変化してきたのかを振り返る。

(地域の産業特化は過去30年で大きく変化)

各地域の産業構造はこの30年間で大きく変容している。まず、出荷額を用いて我が国全体の変化をみると、輸送機械のシェアが拡大する一方、電気機械のシェアは、2000年以降、急激に縮小している。その他の業種は、多少の増減はあるものの、おおむね出荷額に占めるシェアは安定的であり、業種間の相対的な位置は輸送機械と電気機械ほどの変化はみられない(第1-2-6図)。

グローバルな競争環境にあり、イノベーションの動きも早い輸送機械や電気機械のシェアが一国全体のレベルでは大きく動いているが、地域別の出荷額シェアの変化をみていくと、輸送機械の生産ウェイトが高い東海の出荷額シェアが継続的に拡大し、2014年は南関東を上回り、全国の四分の一弱を占めている。南関東は、輸送機械の生産拠点ではないこともあり、出荷額シェアは年々縮小している(第1-2-7図)。

地域別の製造業における業種構造の変化について、2つの指標(特化係数、拡大係数)を用いて詳しくみていこう。特化係数とは、ある地域におけるある業種の出荷シェアが全国での平均出荷シェアより大きいかどうか、を示している。1であれば全国並み、2は2倍のシェアがあるということになる。今回は2000年時点と2014年時点の特化程度を計算している。もう一つの拡大係数とは、特化係数の変化であり、特化がより進んでいるかどうかを示している。拡大係数が1であれば、2時点間で変化していないことを意味し、1を超えると特化が進んでいることを意味する。今回は2000年時点の特化程度が1985年から進んだかどうか、また2014年の特化程度が2000年時点から進んだかどうか、の2時点の拡大係数を比べている(第1-2-8図)。

(過去30年に大きく構造が変化したのは、特に東北や四国)

結果を地域別にみていくと、北海道は、2000年頃は飲食料品・たばこ、パルプ・紙・紙加工品に特化した業種構造の地域であったが、2014年までの間、化学工業・石油石炭と鉄鋼の出荷が伸び、シェアが拡大している。輸送機械は2000年以前には大きく伸びていたが、その後は拡大が止まっている。同様の評価を東北について行うと、パルプ・紙・紙加工品、非鉄金属・金属及び一般機械の出荷が伸びており、特に一般機械は全国平均よりもシェアが高まっている。北関東では、飲食料品・たばこ、南関東は化学工業・石油石炭への特化が進んだ。また、北陸では、非鉄金属・金属の特化が弱まる一方で、一般機械、電気機械、プラスチック製品の出荷が拡大した。東海のプラスチック製品は特化が弱まり、2014年になると全国平均以下のシェアまで縮小した。近畿は全体として小動きであるが、一般機械と鉄鋼業が相対的に拡大し、石油化学等が縮小した。中国は、2000年まで拡大してきた鉄鋼と化学工業・石油石炭が縮小に転じた。四国では、非鉄金属・金属への特化が進み、出荷シェアは全国平均の2倍となっている。九州では、鉄鋼の縮小が進み、輸送機械のシェアが拡大した。

(産業特化の変化は貿易における品目シェアの変化に顕著)

産業特化が変化する理由は、内外の需要変化やイノベーションの動向、各企業の立地計画、各地域の計画等によるだろう。技術、生産要素賦存、交易条件等が変化し、我が国全体でみた場合の比較優位構造も変化を遂げている。ここでは、産業の変化と貿易の変化の関連性に着目し、特徴的な産業構造の変化を遂げた地域として、北海道、南関東、九州の産業と貿易の関係についてみていく。

北海道では、化学・石油石炭、鉄鋼の出荷シェアが拡大してきた。これを裏付けるように函館税関からの輸出総額に占めるこれらの財輸出のシェアも拡大している。化学・石油石炭は2000年の4.3%から2014年には10.5%、鉄鋼は14.2%あら23.1%へと拡大している。南関東では、化学・石油石炭の出荷シェアが拡大しているが、横浜税関の輸出総額に占めるこれらの財輸出のシェアは、同期において11.5%から26.9%へと拡大している。また、九州では、電気機械への特化が弱まり、輸送機械の出荷シェアが拡大しているが、門司・長崎税関の輸出総額に占めるこれらの輸出のシェアは、それぞれ23.8%から14.4%に縮小、25.7%から30.5%に拡大している。地域の産業特化の変化は、地域別の貿易額に占める品目変化に顕著に表われている(第1-2-9図)。

(海外の変化に影響を受けやすいのは北陸の一般機械や北海道の電気機械生産)

各地域の生産が海外需要に連動して特化していることは、海外景気との関係にも地域差があることにつながる。そこで、地域別の鉱工業生産指数のうち、各地域においてウェイトが高い上位3品目の生産指数(季節調整済)とOECD景気先行指数(CLI)の関係を調べると、総じて、中国よりも米国の景気変動と相関していることがわかる。地域別・品目別にみると、全体の中では、北海道の電気機械が中国や米国経済の景気変動との相関が高い。続いて北陸の一般機械や四国の電気機械も相関が高い。その後に続くのは、近畿の化学、九州の輸送機械、といった地域・業種である(第1-2-10図)。

(地域における産業集積の類型は大きく分けて5パターン)

こうした産業特化は特定業種の集積を伴うことが多い。製造業だけではなく、物流・卸売業、特定サービスの拠点等の場合もあるが、集積の生成過程は、5パターン存在するといわれている。具体的には、〔1〕自然環境・資源に恵まれた地域に立地・集積(素材型製造業、観光業等)、〔2〕一定の人口、事業所等の基盤集積による需要密度を前提とした立地・集積(知識情報集約型サービス等)、〔3〕特定大企業の量産工場を中心に、下請企業群が多数立地することで集積(輸送機械等)、〔4〕空港、港湾等のアクセスのよい地域に立地・集積(石油化学工業、造船業、卸・小売業等)、〔5〕国や地方政府の企業誘致政策等により、人為的に集積(製造業、サービス業等)に類型化できる。なお、〔5〕の人為的集積は、かつては工業再配置政策などにより、国が主導して新規に産業集積を形成しようとするケースが主流であったが、近年では、地域における産学官、産学官金連携や地方自治体を軸としたフォーラム等により、地域の強みや特徴を活かし、地域の自立的な発展を促進する施策に変化している(第1-2-11表)。

3)地域経済と企業・産業立地

(集積の背景を探ると、企業誘致には自治体主導の取組も重要)

上記〔5〕の類型における自治体等の企業誘致の取組事例としては、例えば、岩手県北上市や栃木県足利市が挙げられる。これらの都市では、[1]自治体による積極的な誘致活動を行い、広報活動や税制優遇措置等を実施したことに加え、[2]自治体主導で、周辺の都市・大学などとの広域連携・企業間連携の支援を行った。政策評価を実施するためには細かな費用対効果分析を行う必要があるが、取組開始頃から最近までの累積誘致企業数をみると、過去10年程度の間に、北上市は62事業所の増加、足利市も64事業所の増加となっている。其々の県全体の事業所数変化と比べても、これらの市における増加数が大きいことが分かる(第1-2-12表)。

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