第1章第4節

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4.住宅建設、公共投資の動向

(住宅建設は下げ止まり)

最後に、地域経済を考える上でのその他の留意点についてまとめる。

住宅着工については、おおむね2013年7~9月期及び10~12月期にかけて駆け込み需要を受けた住宅着工の増加がみられた。一方、2014年1~3月期以降は、東北では復興需要の影響、全国的に貸家建設が底堅く推移するなかで7別ウィンドウで開きます特に近畿と沖縄では貸家の建設が引き続き好調であったことから、駆け込み需要の反動が比較的軽微となっていたが、足元にかけて各地域ともにおおむね前年比二桁減と大きな減少がみられる。ただし、4~6月期から7~9月期にかけての前年比マイナス幅の推移には、総じて落ち着きがみられる。(第1−4−1図)。

(公共投資の増加に伴う人手不足等には留意が必要)

また、地域の経済規模に対する公共投資のウエイトをみると、北陸は新幹線関連工事のはく落、九州は豪雨災害の復旧工事がはく落していることから足元で低下しているものの、それ以外の地域では上昇傾向にあり、公共投資はこれまで以上に地方経済を下支えしていると考えられる。また東北においては震災復興のためのインフラ整備、沖縄においては那覇空港の整備等の投資がなされていることから、他の地域よりも公共投資のウエイトが高まっている。しかしながら景気ウォッチャーからは公共工事の増加に伴う人手不足等が指摘されており(後掲第1−5−8表)、建設労務費の高まりもみられることから、地域における労働需給にも引き続き留意する必要がある(第1−4−2図)。

(コラム1 今回の景気回復局面と過去の回復局面の比較)

今回の景気回復局面と過去の回復局面を生産、所得、消費の面から比較する。

まず、鉱工業生産指数の推移を1999年1月以降の2つの景気回復局面(1999年1月、2002年1月のそれぞれを100とする)と比較してみる(第1−4−3図)。なお、2009年3月に始まる回復局面はリーマンショック後の急激な生産調整を経た後の急速な回復局面であったことから、今回は比較対象としない。

前述のとおり、今回の景気回復においては、生産の増加は2013年後半(13か月後頃)までは一部の地域にとどまり、その後2014年1~3月期(16か月後頃)にかけて全国的に生産は好調に推移した。しかし、この期間の動向を過去の局面の同時期と比べると、各地域ともに、おおむね同様の動きとなっている。

次に、現金給与総額の回復過程を2000年代に入ってからのそれぞれの景気回復局面と比較すると、今次回復局面では総じて前年比プラスに転じる時期が早く、特に大都市圏で先行し、地方へ波及していくことが分かる(第1−4−4図)。これは、昨年の春闘においては定期昇給とベースアップを含む賃金改定率は約2.1%となり(日本労働組合総連合会調査)、また、中小企業においても賃上げを行った企業の割合が昨年に比べて増加していることなどが背景にあるとみられる8別ウィンドウで開きます

最後に大型小売店販売額の回復過程を2000年代に入ってからのそれぞれの景気回復局面と比較すると、今次回復局面では、消費税率引上げに伴う駆け込み需要もあったことには留意が必要であるが、総じて対前年比マイナス幅の縮小が早く、特に大都市で回復が先行したことがわかる(第1−4−5図)。

(コラム2 消費税率引上げに景況感はどう反応したか)

景気ウォッチャー調査の先行き判断DIで「消費税」に言及するコメント数をみると、「今後の経済財政動向等についての集中点検会合」が実施された2013年8月から増加し、引上げの前月(2014年3月)にピークとなった。一方、税率引上げ後はコメント数が減少に転じ、関心が薄らいできた。

現状判断DIで「消費税」に言及するコメント数をみると、2014年に入った頃から増加し、引上げ直後(2014年4月)にピークとなった。総じて先行き判断DIよりも少ないコメント数となっており、先行き判断でみられた関心に比べより冷静な反応となっている。税率引上げ後はコメント数が減少に転じ、関心が薄らいできた(第1−4−6(1)図)。

先行き判断について、「消費税」に言及するコメントから作成したDIは、2013年の12月までは、駆け込み需要に対する期待から、全体のDIよりおおむね高くなっている。一方、2014年1月以降は、全体のDIより低くなり、4月の税率引上げ後の反動に対する懸念がうかがえる。税率引き上げ後については、ほぼ全体のDIと同じ推移となっていたが、10月には10%への税率引上げ判断を控えて慎重な見方が広がったために全体のDIよりも低下した。しかしながら11月は引上げが延期されたことを受けて再び全体のDIとほぼ同水準になった。

現状判断について、「消費税」に言及するコメントから作成したDIは、税率引上げ直前の3月までは、全体のDIよりもおおむね高くなっている。駆け込み需要が景況感を引き上げていたことがうかがえる。一方、税率引上げ後は、一転して全体のDIよりも低くなっており、駆け込み需要の反動が景況感を引き下げる形となった。7月以降は、全体のDIとのかい離は小幅となり、反動減の影響は薄れつつある(第1−4−6(2)図)。

(コラム3 三大都市(東京都、愛知県、大阪府)における景況感の改善)

三大都市とその他の地域の景況感の動向を景気ウォッチャー調査から確認すると、現状判断DIは、2012年12月以降、三大都市では他の地域に比べて早く改善し、その後も三大都市は他の地域よりも高い水準となっており、景気ウォッチャーの景況感は消費の回復が大都市で先行したことと整合的なものとなっている(第1−4−7図)。

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