補論 東日本大震災の被災3県の復興の現状

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ここでは、東日本大震災の被災3県1別ウィンドウで開きますの復興の状況について、人口、住宅、経済活動の面から概観する。

1.人口移動、住宅再建の状況

(人口流出幅は縮小)

震災発生以降、2011年4月には被災3県合計で、季節的な変動も含めて約1万4千人もの人口流出がみられたが、足元では季節的な変動はみられるものの、被災3県の人口流出は縮小してきており、2014年1~11月でみると、被災3県合計で2013年同時期と比べて転出超過は更に縮小している(第1−5−1(1)図)。

各県ごとの転出入数をみると、岩手県では震災前と比べても大きな変化はなく、東日本大震災による人口移動への影響は比較的少なかったといえる。宮城県では震災直後に大幅な転出超過となった。その後は3月を除いて人口の転入超過が続く傾向にある。福島県では転出超過幅が年々縮小し、2013年にはほぼ東日本大震災前の水準に戻り、2014年はさらに転出超過が縮小している(第1−5−1(2)図)。この傾向は25歳未満の若年者にも同様にみられる(第1−5−1(3)図)。

(住宅再建は進展)

住宅再建の状況を確認するために防災集団移転促進事業の進捗状況をみると、岩手県、宮城県では、2013年下半期以降着工ペースが加速し、2014年9月末現在でそれぞれ100.0%、99.5%が着工済みとなった。一方で福島県では、2013年下半期以降、着工増加ペースが鈍化しており、70.7%の着工済みとなっている(第1−5−2図)。

被災3県の住宅着工戸数をみると、以上のような防災集団移転促進事業の進捗等により全国と比べて底堅く推移し、全国に占める割合も上昇傾向となっており、被災地における住宅再建が進展していることがうかがえる(第1−5−3図)。

2.経済活動の状況

(産業関連の復旧は福島県で遅れ)

産業関連の復旧状況をみると、総じて福島県で遅れがみられる。

農地の復旧状況をみると、岩手県と福島県において復旧が遅れている。しかしながら、岩手県においては2015年度以降に生産性向上のための大区画化が予定されていることから復旧が加速する見込みである。

水揚量をみると、2014年1~9月に岩手県では震災前の9割程度、宮城県では震災前の8割弱まで戻ったものの、福島県は震災前の4割程度にとどまっている。なお、水揚量は好不漁による変動が大きいことに留意が必要である。

鉱工業生産指数をみると、足元では3県ともに引き続き震災前の水準を下回っている。

観光客宿泊者数をみると、福島県が震災前と比較して2割強の減となるなど、被災3県全体でも未だに震災前の水準に達していない(第1−5−4図)。

(公共工事は伸びが落ち着く)

被災3県の公共工事請負金額の推移をみると、震災後は着実に増加し、福島県の除染作業等、復興に向けた公共工事が高水準で推移していることから2014年初めにかけて被災3県の公共工事請負金額の伸びは総じて全国を上回り、全国に占める被災3県の割合も上昇傾向で推移したが、足元では伸び率も全国とほぼ同程度となり、全国に占める割合もやや低下傾向となっており、公共工事の伸びには落ち着きがみられる(第1−5−5図)。

(有効求人倍率は高水準で横ばい)

有効求人倍率の推移をみると、震災前までは全国を下回っていた有効求人倍率は、震災後、一旦低下したのちに、復興需要等により全国を上回るペースで改善を続け、2012年半ばには宮城県と福島県で1倍を超え、2013年前半に岩手県でも1倍を超えるなど、全国に先駆けて求人が求職を上回ることとなった。

しかしながら、足元では、有効求人数の増勢が一服したことなどから、福島県を除いてはおおむね横ばいとなっている(第1−5−6(1)図)。

また新規求人倍率をみると、震災直後は一旦低下したのちに、復興需要等により全国を上回るペースで改善を続け、福島県では一貫して上昇し続けており足元では2倍程度まで上昇しているが、宮城県では2012年には2倍近傍まで上昇したのち横ばい傾向で推移し、2014年に入りやや低下したものの、足元では再び上昇している。また岩手県では2013年半ば以降は全国と同水準で推移したのちに、2014年に入り全国を下回る水準でほぼ横ばいの動きとなった(第1−5−6(2)図)。

この3県の業種別新規求人数の寄与度をみると、岩手県と宮城県においては2013年は建設業が前年比横ばい程度の寄与となったのち、2014年にはマイナスの寄与を示しており、復興関連の求人に頭打ち感がみられる。また福島県においても建設業の寄与が低下している。一方、3県においてはいずれも医療・福祉や製造業での求人が増加してきており、これまでの復興需要を背景とした雇用増からの移行がうかがえる(第1−5−6(3)図)。

(雇用者所得は全国平均より高い伸び)

このように震災発生後は労働需給が引き締まる傾向にあったことから、雇用者所得(定期給与)の推移をみると、総じて全国平均よりも高い伸びを続けており、給与水準の全国平均との差は縮小傾向にある(第1−5−7(1)(2)図2別ウィンドウで開きます。また景気ウォッチャーのコメントをみると、被災3県では、復興関連工事が堅調に推移する一方、建設業者等からは人手不足や資材価格上昇への懸念がみられるところである(第1−5−8表)。

(コラム4 新設法人件数の推移)

民間における復興の取組みをみるために、グロスの新設法人件数の推移をみると、被災3県ともに件数は引き続き上昇傾向で推移しており、全国と比べても高い伸び率を示している。内訳をみると各県とも飲食や派遣等を含むサービスの寄与が大きくなっている。一方、建設業の寄与は、岩手県、宮城県では2013年には低下ないしはマイナスとなっており、福島県においても3.8%と寄与度は大きく低下しており、これまでの建設業を中心とした新設法人件数の増加傾向から変化がみられる(第1−5−9(1)(2)図)。

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