第1章 第2節 8.地価・物価をめぐる動向

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(1)地価は下げ止まり

バブル期に大きく上昇し、その後、長期にわたって下落が続いてきた地価(商業地)には近年底打ち・反転の兆しがうかがえる。

大都市圏では、92年から05年まで前年比で下落が続いていたが、06年、07年と2年連続で上昇し、上昇幅も拡大している。地方圏では93年以降前年比で下落が続いているが、05年以降、下落幅が縮小に転じている(第1-2-27図)。

第1-2-27図 商業地地価の推移

第1-2-27図

都道府県別にみると、06年には東京都、愛知県、京都府、大阪府の4都府県において前年比で上昇し、07年にはそれらに加えて、北海道、宮城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、滋賀県、兵庫県においても上昇に転じている。また、残りの全ての道県で下落幅が縮小しており、下げ止まりの兆しがみられる(第1-2-28図)。

第1-2-28図 都道府県別の商業地地価(06、07年)

第1-2-28図

(備考) 1. 国土交通省「地価公示」により作成。
2. 三大都市圏とは、東京圏、大阪圏、名古屋圏。東京圏は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県。 名古屋圏は、愛知県、三重県。大阪圏は大阪府、兵庫県、京都府、奈良県。

(2)消費者物価はおおむね横ばい

消費者物価(生鮮食品除く総合)をみると、01年、02年には全地域で、前年に比べ低下していた。03年から06年にかけては全国では前年比での下落が続く中、地域によっては前年比で上昇するところもでてきている。直近の06年では前年比で下落しているのは、近畿、九州、沖縄の3地域のみになっている。

なお、地域別の消費者物価指数は、「住居」、とりわけ「持ち家の帰属家賃」の変動によって数値が大きく振れることが多い。これを算出するには小売物価統計調査にある家賃が用いられているが、調査対象となる木造中規模住宅は市場にあまり存在していないため、調査対象が変更になると、指数自体が大きく変動するからである。

そこで、生鮮食品除く総合から、さらに「住居」を除いた指数を作成してみると、動きが多少滑らかになる。上昇に寄与しているのは、各地域ともに「光熱費・水道」であり、比較的寒い地域ではこの項目のウェイトが大きいこともあって、特に上昇幅が大きい。また、各地域ともに「教養娯楽」は低下に寄与しており、パソコン、薄型テレビといった教養娯楽用耐久財の価格低下が主因と考えられる(第1-2-29図)。

第1-2-29図 地域別 住居を除いた消費者物価指数 増減寄与度

第1-2-29図

(備考) 1. 総務省「消費者物価指数」により作成。
2. 平成17年基準。
3. 地域区分はC。

(3)依然として厳しい地方財政

地方財政は「3割自治」と言われて久しいが、実際はどうなのだろうか。

地方税や手数料といった、地方公共団体の自前財源(=自主財源額)の歳出総額に占める割合をみると、05年度では全国平均では52.2%となっている。しかし、50%を超えているのは関東の7都県、静岡県、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県の12都府県に過ぎず、それ以外の県では歳入の半分以上を地方交付税や国庫支出金といった、自主財源以外の財源に頼っている。圏域別にみると、3大都市圏平均は65.4%、地方圏平均は39.9%と、「3割自治」からは脱却したようにみえる。ただし、雇用情勢の厳しい8道県平均(北海道、青森県、秋田県、高知県、長崎県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県)は33.3%と、3割程度となっている。なお、自主財源比率を2000年度と05年度で比較すると、33の府県で高まっている。(第1-2-30図)。

第1-2-30図 自主財源比率

第1-2-30図

(備考) 1. 総務省「地方財政統計年報」「都道府県別決算状況調」により作成。
2. 自主財源比率=自主財源額/歳出決算総額
3. 自主財源とは、地方税、分担金及び負担金、使用料、手数料など地方公共団体の意思で、ある程度収入額を増減できる自前の財源をいう。

地方財政の余裕度を経常収支比率でみると、2000年度と05年度を比較して、東京都、愛知県、京都府、大阪府、岡山県を除いて上昇している。最も上昇幅が大きいのは鳥取県である。最も低い東京都ですら85.3%であり、経常的な経費に一般財源を取られてしまって、一般財源から政策経費を捻出することは極めて困難となっているのが現状である(第1-2-31図)。

第1-2-31図 経常収支比率

第1-2-31図

(備考) 1. 総務省「地方財政統計年報」「都道府県別決算状況調」により作成。
2. 経常収支比率=経常経費充当一般財源/経常一般財源総額×100

こうしたことから、同期間における住民1人当たりの地方債残高をみると、ほとんどの道府県で増加している10。1人当たりの残高が最も大きいのは島根県であり、141.7万円にも上る(第1-2-32図)。また、この間の伸び率をみると、20%を超えて増加しているのは13道県にのぼっている。地方債残高を減らすための抜本的な対策が取られない限り、今後の人口減少・高齢化と相まって、1人当たりの負担額はさらに増加することが見込まれる。

第1-2-32図 住民1人当たり地方債残高

第1-2-32図

(備考) 1. 総務省「地方財政統計年報」「都道府県別決算状況調」により作成。
2. 住民1人当たり債務残高=地方債残高/人口総数
3. 地方債残高とは、地方公共団体が前年度までに発行した額のうち、当該年度までに償還した分を差し引き、 それに該当年度の新規発行額を加えた年度末現在額。

10.
住民1人当たり地方債残高が減少しているのは、東京都、長野県の2都県。

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