マルチステークホルダー・プロセスの導入方法

 マルチステークホルダー・プロセス(以下「MSP」)は、ステークホルダー間での利害関係によって前に進まない状況に陥っている問題解決のための場としても有用ですし、地域単位での協働のための場としても有用です。

 もし、解決したいと思う課題があれば、MSPで前に1歩踏み出してみませんか?

 〔導入までの流れ〕
 ※MSPに決まった手順はありませんが、以下を参考にしてみてください。

(1)問題の再認識
 解決したい問題や実現したい未来を課題として設定することが第一歩となります。個人や組織において、その問題意識を文章にしていく作業によって、他人や他の組織に問題意識を伝えられるようにしておきます。

 ただし、他の主体にも積極的に参加してもらえるよう、問題意識の設定の段階から他の主体を巻き込んでいく場合は、課題の範囲や設定が漠然としていてもかまいません。


(2)関係主体への相談
 課題に関係するいくつかの主体に問題意識を話してみます。その結果、問題を解決できていない理由が、相互理解の不足であったり、3者以上の間の複雑な利害関係であったりすれば、解決に向けてMSP手法を使ってみる価値があるといえます。

 そして、利害関係者で話し合う場を設けることを提案してみます。ざっくばらんに問題意識を議論していくためには、きっちりした打ち合わせというよりも、雑談や飲み会から始めても良いかもしれません。


(3)準備会合
 関係するステークホルダーを集めて、問題解決のためにMSP枠組みが設立できるか意見交換をします。この段階では、新しい発想や新しい協働の可能性が広がり、これまで解決できなかったことも解決できるようになる可能性があるため、少しでも課題に関係あり、参加の可能性のある主体に、広く声をかけておいた方が良いと考えられます。

 また、準備会合では、以下のような点を決めていく必要があります。もちろん、目指す課題解決の内容や速度によって異なってきますので、準備会合にて調整してください。



  • 目的
    どのような課題解決をどのように取り組んでいくのか、会議の位置付けも合わせ、会議の目的を決めます。

  • 成果イメージ
      会議による成果をある程度想定しておくことで、建設的かつ効率的な議論ができます。成果イメージとしては、報告書のみならず、原則やガイドライン、行動計画、協働プロジェクトの発足、仕組みづくりなど多様なものがあります。

  • 意思決定方法
     MSPでは、最高意思決定のための会議が設けられることになりますが、その会議おいては、意思決定方法(全会一致や多数決など)を明確に決めておく必要があります。特にステークホルダー間のバランスを取るために、各ステークホルダーから選出される委員の数を決めておくことも必要になってきます。

  • 参加団体
     目的を達成するために必要な、つまり、議論しようとしている課題に関係する主体に声をかけ、先ずは準備会合に参加してもらいます。最終的に会議に参加するかは、準備会合のなかで決められていく目的、成果イメージ、意思決定方法などの内容次第で、各主体が判断することになります。

  • 組織/事務局体制
     目的達成のための議論を円滑に、効率的に進めていくためには、最高意思決定会議の下に下部会議や分科会(ワーキング・グループ)などの体制を構築する必要があります。また、会議運営をしていくためには事務局が必要であり、どのような機能を誰が担うのか、どのように進めていくのかも決めておく必要があります。

  • 設立方法
     会議の設立には、特定の主体が主催するか、独立した会議として設立する方法があります。独立した会議として設立する場合、会議が存在する拠りどころとして、設立趣意書に参加主体の代表者が署名することによって発足させる手段があります。