「休眠預金等活用国際シンポジウム~社会課題の解決に向けて~」の開催について

1.背景・目的

  先進国であっても発展途上の経済社会であっても、SDGs(持続可能な開発目標)も含む社会的課題に対して、民間の様々なリソース(資金や人材等)を活用して課題を解決していくことは、ますます重要となっています。
  こうした中、日本では、2019年度から、社会的課題の解決に取り組む民間の団体に対して、休眠預金を活用して助成等を行う取組が本格的にスタートします。同様の仕組みについて海外では既に導入されている国や地域があります。
  日本における制度の本格運用開始を機に、社会的課題の解決に休眠預金等を活用する国や地域から関係者を招き、導入国・地域の経験や成功事例、今後の課題などを議論し共有することで、制度の理解をより深めることにつなげるための国際シンポジウムを以下のとおり開催しました。

2.開催概要

  開催日  :2019年5月13日(月)15:10~18:00
  開催場所:紀尾井カンファレンス

3.プログラム

15:10~15:15 ビデオメッセージ Ms. MIMS DAVIES/英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省スポーツ・市民社会担当大臣

15:15~15:25 基調講演 宮腰光寛/内閣府特命担当大臣

15:25~16:25 パネルディスカッション第1部

  • < 登壇者 >
  •   ・Ms. ALENA LEVITZ/Executive Director, British Columbia Unclaimed Property Society(カナダ)
  •   ・Mr. KENNETH JORDAN/Principal Officer for Finance and Dormant Accounts, Department of Rural and Community Development
        (アイルランド)
  •   ・Ms. CLAIRE ETCHES/Head of the Dormant Assets Team, Department for Digital, Culture, Media & Sport(イギリス)
  •   ・Mr. ALBERTO PADOVA/Chief, Strategic Engagement and Policy Integration Branch, Financing for Sustainable Development Office, DESA
        (国連)
  •   ・松下 美帆/内閣府 休眠預金等活用担当室 参事官

16:45~17:45 パネルディスカッション第2部

  • < 登壇者 >
  •   ・Mr. KEVIN McCORT/CEO, Vancouver Foundation(カナダ)
  •   ・Mr. TERENCE O’ROURKE/Chairman, Social Innovation Fund Ireland(アイルランド)
  •   ・Mr. DANIEL BREWER/CEO, Resonance Ltd.(イギリス)
  •   ・二宮 雅也/一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)理事長

17:45~18:00 クロージングセッション

  • < 登壇者 >
  •   ・Ms. CLAIRE ETCHES/Head of the Dormant Assets Team, Department for Digital, Culture, Media & Sport(イギリス)
  •   ・Mr. ALBERTO PADOVA/Chief, Strategic Engagement and Policy Integration Branch, Financing for Sustainable Development Office, DESA
        (国連)
  •   ・二宮 雅也/一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)理事長
  •   ・田和 宏/内閣府経済社会システム政策統括官

  宮腰光寛内閣府特命担当大臣 締めくくり発言

4.開催報告

国際シンポジウム議長 宮腰光寛内閣府特命担当大臣 基調講演

   内閣府特命担当大臣の宮腰光寛でございます。本日は、「休眠預金等活用国際シンポジウム」に、お集まりをいただき、大変ありがとうございます。今回のシンポジウムは、日本では全く初めての試みでございますが、パネリストとして海外から多くの皆様にお越しをいただき、また、多くの聴衆の皆様にご参加をいただきました。担当大臣として、厚く御礼を申し上げます。開会にあたり、私より、わが国の制度や問題意識などをお話をさせていただきたいと思います。

 現在、高齢化や少子化、人口移動の変化、急速なデジタル化などの経済社会構造の変化などを経て、各国は、持続的な経済成長、格差の是正とともに、貧困の撲滅、社会的包摂、幸福度の高い社会の実現といった課題に直面をしています。これは、日本のような成熟経済においても、発展途上の経済においても、課題の内容や深度は様々ですが、全く同じであるというふうに思います。
 多様化・複雑化する社会的課題に対応するために、各国政府や自治体は独自の施策を展開し、また、民間でも非営利団体・慈善団体の地道な活動や、民間企業の様々な活動が展開されています。
 国際的な動きでは、2015年の国連持続可能な開発サミットにおきまして、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択をされ、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、17の目標からなる「持続可能な開発目標(SDGs)」が掲げられました。

 SDGsを含む社会的課題の解決は、多額の資金を必要とします。国連の関係機関の試算ではSDGsの実現には、2030年までに年間5~7兆ドル必要と言われています。社会的課題全体となれば、もっと多額の資金が必要でしょう。それらをすべて公的資金で賄うことは、どの経済や社会にとっても、現実的ではなく、また、適切とも限りません。社会的課題解決に、民間の資金、人材、能力、ノウハウをいかに活用するか、という視点が不可欠となっていると考えます。

 日本においては、2012年末から展開するアベノミクスの成果によりまして、長い景気回復を経験しておりますが、一方で、超高齢化の進展とともに、ニートや孤立、子どもの貧困や虐待等、社会的課題が複雑化・多様化してきております。政府や自治体も様々な施策を展開しています。こうした課題には、きめ細かな、個々のケースに応じた対応が必要ですが、一方で公平性や画一性も重視しなければならない行政のもとでは、個々の課題にすべて対応することは困難であります。

 このような中、日本では、10年間以上、取引のない休眠預金を活用し、課題解決にあたる民間の団体に助成する取組が2019年今年スタートいたしました。この仕組みは、3つの分野、子どもや若者の支援に関する活動、日常生活などでの困難を有する者の支援に関する活動、社会的に困難な状況に直面する地域の支援などの活動に、休眠預金を活用して助成や貸付などを行うというものであります。国民の財産である休眠預金を国や地方の行政ではなかなか対応できない支援に活用することで社会課題の解決を図り、もって国民一般の利益の増進に活用していくというものです。

 休眠預金などで取引が長期間ない、つまり休眠状態にある個人の資産を、活用する仕組みは、世界各国で導入されています。休眠資産を国庫や州の歳入に充てる国もあれば、数は多くないようですが本日パネリストとしてお越しいただいた国・地域のように、社会的課題の解決に活用する仕組みもあります。

 そうした仕組みを導入した諸外国の経験が、日本における制度実現に向けた議論をけん引したことは確かだと考えます。日本では、新たに法律を策定する際に、行政府が提案する場合が多いのでありますけれども、この仕組みは、党派を超えた国会議員の熱い想いが立法につながり、2016年末に成立をいたしました。
 その過程では、国庫の歳入に充てるべきではないか、との議論があったとも聞いています。超党派議連のメンバーの熱意と優れたリーダーシップ、社会的課題解決に携わる様々な方々の支持により、難しい議論を経ながらも成立を得たわけであります。同時にこの法律には、5年後には見直しをすることが盛り込まれています。それまでの間に、我々は、この制度を育て、定着させ、その良さを広く実感して頂けるよう、成果を出すことが求められています。

 そのような中、法成立から2年の準備期間を経て、いよいよ2019年度、日本の行政では、4月に年度が始まり3月に年度が終わりますが、今年度、休眠預金を使った助成等の取組が動き出します。今年1月には、休眠預金等を基に、現場の非営利団体等に助成等を行う団体を選び、監督する業務を担う唯一の団体として、JANPIAを指定をいたしました。本日のパネル2にJANPIAの二(ふた)宮(みや)理事長にご登壇いただくことになっております。国民の財産である休眠預金を取り扱うJANPIAには、高い志のもと、公正・中立に助成等を行っていくことが求められております。同時に、JANPIAは日本経団連をはじめ労働組合、金融界、ソーシャルセクター等オールジャパンでの参加・協力を通じて、取組を進めることとしておりまして、日本における社会的課題解決のすそ野を広げる意味で、非常に大きな可能性があると期待しています。

 また、JANPIAが本制度を運用するに際しては、地域に根差して地道に活動に取り組む伝統的な非営利団体の活動に着目した助成事業や、ソーシャルイノベーションを促す助成事業を両立させる計画となっております。
 日本でスタートしたばかりのこの制度は、意欲あふれる社会起業家も、熱意をもって伝統的に地域で活動を展開する団体も、一方で、社会的貢献に関心がなかった企業人も労働者やボランティア活動の経験がない人たちでも、誰もが関係者として参加できる制度です。

 我が国のみならず、社会的課題解決に向けて民間の様々な資金や人材を活用し、社会的分野の活動を喚起することが世界的課題として認識されてきている今、休眠預金等の活用は、グローバルに取り組む価値のある取組であると考えます。

 本日、社会的課題の解決に休眠預金等を活用する国や地域からスピーカーをお招きをし、導入国・地域の経験として、導入の背景や仕組みの概要、成功事例や今後の課題などを議論し、共有したいと思います。これを通じて、相互の仕組みの更なる向上へのヒント、あるいは、いまは導入していない国や、歳入に充てている国などでも、その活用に向けたヒントがたくさん生まれるのではないかと期待しています。また、本日参加いただいております、様々な形で社会的課題の解決に携わっている方々にも、多くの示唆があるのではないかと考えます。

 本日は、イギリスのDavis(デイビス)大臣からビデオメッセージを頂いているほか、イギリス、アイルランド、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア州、国連から、政府関係者や休眠資産を分配する団体の代表者にこのシンポジウムに御参加いただくために来日いただきました。このシンポジウムの開催に、ご理解とご協力をいただいたことに、改めて感謝を申し上げます。SDGsの実現を含む社会的課題の解決に向けて、本日のシンポジウムが、お互いに多くの示唆をもたらし、新たなアクションにつながるきっかけとなれば、主催する議長として、大変に光栄に思います。

 ご清聴ありがとうございました。よろしくお願いをいたします。

国際シンポジウム議長 宮腰光寛内閣府特命担当大臣 締めくくり発言

   まず、主催者といたしまして、海外からの参加者の方々を含め、すべての参加者の方々に厚く御礼を申し上げたいというふうに思います。

   世界各国が、持続的な経済成長、格差の是正とともに、貧困の撲滅、社会的包摂、幸福度の高い社会の実現といった課題に直面をいたしております。
   国連が提唱し世界にその取組が広がりつつあるSDGsの実現を含め、社会的課題の解決に取り組むことは、世界共通の重要なアジェンダであると認識しています。
   G20をはじめとする各国政府及び地域、国際機関、企業や非営利団体など、様々な主体がお互いに協力をし、社会的課題の解決に向けて、多様な資金そして人材・ノウハウを活用して取り組んでいくことが真剣に求められております。

   日本では、新たな取組の一つとして、政府が対応できない、きめ細やかな課題解決に休眠預金を活用する取組が、多様な非営利団体等の参画を得て、いよいよ今年から始まります。
   日本も、この先駆的かつイノベーティブな制度の担い手の一員になるわけで、本日の国際シンポジウムは、先行する国・地域の知見や経験を共有する重要な機会となりました。本日得た示唆を踏まえ、この制度のもとで具体的な成果を出し、着実に制度が根付くよう、政府としてしっかりと環境整備につとめてまいります。

   私は、本日の国際シンポジウムに参加し、関係各国・地域で休眠預金等活用制度が普及し、グローバルにも展開していくことで、国際社会全体の安定的かつ持続的な発展に貢献できる、ということを確信をいたしました。ここにお集まりの皆様方ともども、休眠預金等活用制度の意義と可能性を再確認をいたしまして、国際シンポジウムを締めくくらせていただきたいと思います。