平成9年
年次世界経済報告
金融制度改革が促進する世界経済の活性化
平成9年11月28日
経済企画庁
第1章 世界経済の現況
【世界経済の概観】
・世界経済は,96年には途上国を中心に景気の拡大テンポは高まった。97年も全体として引き続き拡大テンポが高まるものと見られている。
【南北アメリカ】
・アメリカ経済は,97年3月で景気拡大が7年目に入った。近年の情報化の進展に伴う設備投資の増加や,雇用の拡大に伴う消費の増加が景気拡大を支えている。アメリカ経済が新しい段階に入ったとする「ニュー・エコノミー論」を検討すると,生産性上昇のデータはないが伸縮的な労働市場により,失業率と物価上昇率は四半世紀ぶりの低水準にある。
・中南米では,メキシコ,ブラジルで景気が拡大している。
【ヨーロッパ】
・ 96年後半から緩やかに改善していたヨーロッパの景気は,97年にはイギリスを始め回復している。失業率は,ドイツ,フランス等において高水準で推移しているが,物価は全般的に安定している。
・中・東ヨーロッパは97年に成長率が加速するものとみられる。ロシアは下げ止まりの兆しがみられる。
【アジア】
・アジアは,総じて景気は鈍化している。ASEAN諸国では通貨が減価し,景気が大幅に減速している国がある。
・通貨減価の理由は,ドルにほぼ固定したことによる自国通貨の過大評価,経常収支赤字を支えていた外資が必ずしも生産的に用いられていなかったこと等である。
【国際金融】
・ 97年に入ってドルは増価し,アメリカ・欧州の株価は上昇した。国際商品と原油は96年後半下降に転じて以降調整局面にある。
本章では,第1節で世界経済の現況を概観した後,第2節で景気拡大が続くアメリカ,総じて好調な中南米など,南北アメリカの経済動向をみる。次に,第3節でイギリスを始め景気が回復している西ヨーロッパと,拡大傾向の中・東ヨーロッパ,下げ止まりの兆しがみられるロシアなど,ヨーロッパの経済動向をみる。また,第4節で総じて鈍化傾向のアジア・大洋州の経済動向をみる。最後に,第5節で国際金融・商品の動向をみる。
各国経済の動向に加えて,アメリカでは長期拡大の中で経済が新しい段階は入ったとする「ニュー・エコノミー」論を,アジアでは通貨の減価とその要因などを検討する。