平成6年

年次世界経済報告

自由な貿易・投資がつなぐ先進国と新興経済

平成6年12月16日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

はじめに

94年に入って,北アメリカ経済や東アジア経済が引き続き拡大するなかで,西ヨーロッパや日本でも景気回復の動きが広がっており,世界経済は全体として拡大基調を強めている。昨年度の年次世界経済報告において,「やや上向いたものの,力強い成長の兆しがみられない」と評した状況と比べ,世界経済は様変わりしている。本年度の報告では,以下の三つのテーマをとりあげている。

第1章「世界経済の現況」では,海外各国の景気動向の分析を通じて,各国の景気回復に至る過程の特徴は何か,各国のマクロ経済政策上の課題は何か,財政赤字や失業などの構造的課題に各国がどのように取り組んでいるのかを検討する。また,国際金融市場において,世界的な長期金利の上昇やドル安が生じた要因を分析する。さらに,今回の景気循環局面において,主要国の景気変動にずれが生じた理由と,世界景気の同時性のゆくえについて考察する。

第2章「経済自由化で活性化する新興経済」では,新興経済(Emerging MarketsないしEmerging Economies)と呼ばれる東アジア,中南米,東ヨーロッパなどの好調に成長する国々に着目する。新興経済の経済パフォーマンスや経済政策の共通点を検討し,新興経済が先進国へのキャッチアップの軌道に乗ることができた政策的要因を考察する。特に,新興経済のマクロ経済政策,貿易,直接投資や金融面での経済自由化政策が,新興経済の成長の加速にどのように寄与じているのかを分析する。

第3章「先進国の雇用と途上国からの輸入拡大」では,新興経済を含めた途上国からキャッチアップを受ける先進国の雇用の問題をとりあげ,途上国からの輸入拡大が,先進国の比較優位,失業問題,賃金水準に与える影響を考察する。貿易と投資の自由化が進み,途上国からの輸入が増加するなかで,先進国の比較優位はどのように変化しているのか。途上国からの輸入の増加は,先進国の雇用を奪っているのか,また賃金を抑制しているのかといった問題について分析する。また,自由貿易を維持しつつ,雇用問題に対処するために,先進国がどのような政策対応を求められているのかを検討する。


[目次] [年次リスト]