平成6年

年次世界経済報告

自由な貿易・投資がつなぐ先進国と新興経済

平成6年12月16日

経済企画庁


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平成6年度年次世界経済報告(世界経済白書)の公表に当たって

世界経済は,先進国を中心とした長い景気後退期を経て,全体として拡大基調を強めています。先進国では,アメリカに続き,西ヨーロッパ各国でも,景気回復の動きが拡がっています。また途上国経済も,総じて90年代に入って成長が加速しています。

東アジア,中南米,東ヨーロッパの一部などの新興経済は,先進国の輸出先,海外直接投資の投資先,あるいは証券投資の運用先といった新たなマーケットとして,その台頭が注目を集めています。これら新興経済は,マクロ経済の安定化に成功するとともに,市場メカニズムを重視した政策を採用したことによって目覚ましい成長を遂げてきており,今後,世界経済の牽引役としての役割が期待されています。

一方,先進国の一部では,こうした途上国からの安価な製品や安い労働力が,自国の失業増加や賃金抑制の原因となっているのではないか,との警戒感も拡がっています。しかし,途上国からの輸入を制限することは,先進国の雇用問題の根本的解決にとって適切な対処ではありません。先進国としては,保護主義に傾くことなく,国内の産業調整を積極的に進める必要があります。

我が国は,戦後一貫した自由貿易体制の下で成長を遂げてきました。我が国としては,今後とも,国内の経済活動への影響にもきめ細かく配慮しつつ,率先して自由貿易体制の維持,強化を推進することが重要です。そうした努力を通じて,世界経済の持続的成長に貢献していかなければなりません。

今年度の世界経済白書は,以上のような認識の下に,世界経済の現状と課題について分析しています。本白書が,世界経済及び日本経済の今後の進路を考える上で,参考となることができれば幸いです。

平成6年12月16日

高村 正彦

経済企画庁長官


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