平成5年

年次世界経済報告

構造変革に挑戦する世界経済

平成5年12月10日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

平成5年度年次世界経済報告(世界経済白書)の公表に当たって

1990年代は,冷戦の終結により将来への明るい期待に満ちて始まりました。

しかし,先進諸国の長引く景気調整,予想以上に困難なロシア等の市場経済への移行など,世界経済は多くの課題に直面しています。また,失業の増大等を背景に,保護主義的な動きがみられるなどの懸念材料もあります。

戦後の世界経済の発展をみると,自由な貿易,資本の移動に支えられた競争を通じ,経済効率を高め活力を与えられてきたといえます。今や経済活動は地球的規模で展開されるようになっています。こうした潮流の中で経済発展を実現し,世界の成長センターとして脚光を浴びている東アジアは,他の発展途上国や市場経済移行国に希望を抱かせるものです。世界経済が共存共栄の下で活力を発揮していくためには,自由貿易休制の維持強化が不可欠であり,一国の利益を追求した保護主義による縮小均衡を回避しなければなりません。

また,各国は,経済活力を阻害する構造的問題の解決を求められています。

財政赤字削減に着手したアメリカを始め,世界各国で構造変革への取組みが始まっています。このような取組みが,持続的な力強い成長をもたらす基礎となることが期待されます。

こうした中で,我が国としても構造変革に積極的に取り組むとともに,活力に富み調和のとれた世界経済の枠組みづくりに貢献していく必要があると考えます。

以上のような認識の下に,第31回目の世界経済報告は,世界各国の経済の現状と構造変革への取組みについて分析するとともに,世界貿易の構造変化と今後の新たな課題について検討しています。本報告が,世界及び日本の経済の今後の進路を考えていく上で,参考となることができれば幸いです。

平成5年12月10日

久保田 真苗

経済企画庁長官


[目次] [年次リスト]