第2章 景気調整下の先進国の構造問題

第1章でみたように,今日の先進国の景気回復を遅らせている背景には,景気調整下においても財政・金融政策を十分に機能させることができないという構造的な問題がある。本章では,このような構造的要因の中から,米国において金融緩和の効果が低下している問題と各部門で進められているバランスシートの調整及び欧米諸国の財政赤字問題をとりあげ,その背景,現状,取り組み方と今後の見通しについて分析する。さらに,最近になって改善傾向に足踏みがみられる米国の対外経常不均衡と,景気の停滞に伴い再度悪化しつつあるヨーロッパの失業問題という80年代から引き継がれた構造的問題について分析を加える。