平成4年

年次世界経済報告

世界経済の新たな協調と秩序に向けて

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

第1章 世界経済の現況とその特徴

世界経済にとって,92年は総じていえば前年に引き続き厳しい年であった。先進国では総じて景気の基調は弱く,景気の本格的回復をいかに図るかが大きな課題となっている。その中で,欧州においては,9月半ばには,通貨・金融面で混乱がみられ,欧州通貨情勢の先行きに対する不透明感が高まった。中・東欧諸国では,一部に明るい兆しがみられるものの,生産の低下が続いている。ロシア連邦では,急進的な改革を進める中で経済の混迷が続いている。一方,アジアについては,一時期の過熱状態を脱し,概ね堅調な拡大を続けている。また,ラテン・アメリカでは,全体として経済に明るさが見られ始めた。このような状況の中で,物価は総じて安定しており,一次産品価格や石油価格も比較的安定した推移となっている。また,世界貿易はこのところやや鈍化傾向がみられる(第1-1-1表)。

本章においては,このような世界経済の現状を概観するが,まず第1節においては,回復力の弱い先進国経済の現状を国別に概観するとともに,そのマクロ的特徴・要因,なかんずくマクロ政策の類似性と違い及びその有効性の低下の状況を横断的に明らかにする。第2節においては,その他地域の経済の現状を,ロシア,東欧,アジア,ラテン・アメリカについて概観する。第3節においては,最近における欧州通貨危機の背景とEC統合に向けての今後の課題を分析する。


[目次] [年次リスト]