平成4年

年次世界経済報告

世界経済の新たな協調と秩序に向けて

経済企画庁


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平成4年度年次世界経済報告(世界経済白書)の公表に当たって

世界経済は現在,冷戦後の新しい協調と秩序を模索する中で,解決を図るべきいくつかの課題を抱えています。先進国の景気回復に向けての動きは弱い状態が続いていますが,その背景には構造的な問題が存在しているといえます。

アメリカ経済は,80年代の債務依存体質からの脱却,巨額の財政赤字の是正と競争力の回復等が求められています。経済・通貨統合を目指すEC諸国では,今秋,通貨危機に直面し,統合を安定的に達成するための条件を模索しています。他方,ロシア,中・東欧等では,市場経済化に向けた改革に取り組むなかで経済の悪化が続いており,これらの国をいかに世界経済にスムーズに融合させるかが大きな課題となっています。

このような状況の下で,世界経済が全体として着実に発展・拡大していくことがこれまで以上に重要となっており,このため,インフレなき持続的成長を目指した安定したマクロ経済政策の運営と構造調整の推進が一層求められています。また,世界の各地域で国境を越えた経済関係の強まりがみられ,アジア太平洋地域でも様々な地域協力への取組みが進んでいます。こうした動きは,より大きな市場の中で経済成長の果実を大きくし,世界経済が抱える幾多の課題の解決を促進するものと期待されます。その際,こうした動きを閉鎖的な地域主義にすることなく,戦後の世界経済の成長を支えてきたグローバリズムの精神に基づいた外に開かれたものとしていくことが,世界経済の発展にとって重要と考えられます。

こうした中で,「地球社会との共存」を目指す我が国は,現在の景気調整過程から抜け出し持続的な成長軌道に移行するとともに,新たな世界経済の秩序づくりに積極的に参画していくことが求められています。第30回目の世界経済報告は,以上のような認識の下に,世界経済の現状と課題について記述しています。本報告が,世界及び日本の経済の今後の進路を考えていく上で,参考となることができれば幸いです。

平成4年12月1日

野田 毅

経済企画庁長官


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