平成2年

年次世界経済報告 各国編

経済企画庁


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I 1989~90年の主要国経済

第6章 イタリア:景気はやや減速へ

2. 需要動向

(増勢鈍化の個人消費)

実質個人消費をみると89年も前年に続き好調に推移し,実質GDPに対する寄与度もプラス2.4%となるなど成長の牽引役となった(前年比3.8%増)。乗用車販売台数も前年比8.2%増と堅調に伸び,小売売上金額も同10%増と大幅に伸びた。90年に入ると実質個人消費は1~3月期前期比1.1%増,4~6月期同0.5%増と増勢が鈍っている。また乗用車販売も1~3月期前年同期比5.6%減,4~6月期同2,0%減,7~9月期同4.1%減の後,10,11月前年同2か月比4.8%減と減少し,小売売上金額も1~3月期前年同期比12.1%増,4~6月期11.7%増の後,7,8月前年同2か月比9.8%増とこのところ伸びを低めている。特に乗用車販売はイタリア国内だけでなくヨーロッパ全体(ドイツを除く)で売れ行きが悪くなっている。乗用車販売の不振を理由に自動車メーカーではレイオフも行われ(フィアット),最近では大手事務機器メーカー(オリベッティ)の大量レイオフも発表される等,雇用情勢も悪化しはじめており,これは可処分所得の伸びの鈍化を通じ,消費にとって今後先行きマイナス要因となっている。

(投資も増勢鈍化)

実質固定投資をみると,機械設備投資は87,88年は2けたの伸びとなり,89年は前年比6.3%増と過去2年に比べ伸びを大幅に低めたものの,依然として高めの伸びとなった。これは89年初以降製造業の稼働率が高止まりしていることにみられるように,供給制約が存在したためと思われる。しかし90年に入ると国内景気の鈍化を受けて機械設備投資の増勢にも鈍化がみられ,90年1~3月期前期比1.0%増の後,4~6月期は横ばいとなった。稼働率も89年に80.1%と高まった後,90年1~3月期80.1%,4~6月期80.8%と全体としては上昇しているものの,資本財,消費財部門では横ばいからやや低下しているため90年の機械設備投資の伸びは前年に比べ鈍化するとみられる(第6-1図)。

建設投資をみると,89年には前年比3.6%増と80年代中最も高い伸びを示した。しかし90年に入ると機械設備投資と同じく減速がみられ,1~3月期前期比0.7%増,4~6月期には同0.4%減となっている。


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