平成2年
年次世界経済報告 本編
拡がる市場経済,深まる相互依存
平成2年11月27日
経済企画庁
第1章 世界経済の持続的成長と石油価格急騰
世界経済は,89年から90年にかけて減速局面にある。先進国,途上国共に,経済成長が鈍化する中で,物価上昇はおおむね抑制されてきたものの,労働コスト面等で物価上昇年力は根強い。8月初の石油価格急騰は,こうした物価上昇圧力をさらに高めている。また,ドイツ統一,ソ連・東欧諸国の経済改革の進展がもたらす将来の資金需要増大の期待の中で,世界的レベルでの貯蓄増強の必要性が唱えられている。その際,世界の貯蓄・投資バランスに大きな影響を及ぼすアメリカを初めとした先進国の財政赤字の削減が重要である。
本章では,まず世界経済の現局面を概観し(第1節),物価動向を国・地域別にとりあげて物価上昇圧力要因を分析する(第2節)。次に,8月初の石油価格急騰の影響を分析するとともに,その背後にある石油需給の中期的動向を調べ,今後の課題を提起する(第3節)。また,先進国の対外不均衡問題を世界の貯蓄・投資バランスの文脈の中に位置づける(第4節)。最後に,アメリカの財政赤字を採り上げ,その改善を困難にしている要因,特にその主因の一つである貯蓄金融機関問題に焦点を当てる(第5節)。