平成2年
年次世界経済報告 本編
拡がる市場経済,深まる相互依存
平成2年11月27日
経済企画庁
1990年末の時点で世界経済を概観しますと,83年以来の息の長い拡大が続いているものの,アメリカを初め先進国,途上国とも総じて景気拡大が鈍化しており,物価上昇圧力にも根強いものがあります。8月初め以降の中東危機に伴う石油価格急騰は,このような傾向をさらに強めるものと懸念されております。
他方,昨年秋以降,東欧諸国の政治・経済改革の進展,ソ連のペレストロイカの加速化,ドイツ統一の実現など,欧州では,歴史的な大変革が起きつつあり,その中で,EC統合への動きも,経済・通貨統合,政治統合の各方面で新たな展開をみせつつあります。また,市場経済の拡大,貿易・直接投資の拡大により,世界経済の相互依存がますます強まるとともに,各国経済の構造調整も進展しています。このような状況の下,世界の資金需要の増大に応えるため,世界の貯蓄水準を高める必要性が高まっております。
こうした中で,我が国としても,内需と輸入の持続的拡大,構造調整の推進,債務国に対する資金還流等の面で積極的な役割を果たし,政策協調を推進するとともに,ウルグアイ・ラウンド交渉を進展させるなど,自由な貿易,投資活動を維持・発展させることが極めて重要と考えられます。
このような認識の下,第28回目の世界経済報告に当たる本報告は,世界経済の景気,物価,貯蓄・投資バランス等の現況を踏まえた上で,ドイツ統一とヨーロッパ統合の進展及び,ソ連・東欧経済の現状と経済改革を採り上げ,分析を加えるとともに,貿易・直接投資の進展等により,相互依存が深まる世界経済の課題について検討を行っております。
本報告が世界とともに生きる日本の経済の今後の針路を考えていく上で,参考となることができれば幸いです。
平成2年11月27日
相沢 英之
経済企画庁長官