平成元年
年次世界経済報告 各国編
経済企画庁
I 1988~89年の主要国経済
第3章 イギリス:景気拡大の減速
1989年のイギリス経済は,前年の過熱傾向が徐々に緩和されて,2%台の緩やかな成長に転じている。設備投資は依然堅調であるが,これまで急拡大を続けてきた個人消費が鎮静化し,住宅投資も低迷しているため,内需の伸びは前年の7%台から3%台に鈍化が見込まれている。一方,外需は引き続きマイナスとなっている。
鉱工業生産は拡大を続けているが,89年に入って,製造業の伸びは鈍化し,製造業稼働率も緩やかに低下している。雇用者数も全体としては引き続き増加しているが,製造業では減少している。失業者数は3年以上にわたって減少を続けており,失業率も89年12月現在5.8%と80年代初の水準まで低下している。
こうした労働市場の引き締まりを背景に,賃金上昇率は9%前後に高どまりしている。消費者物価上昇率も,88年春以降,住宅金利の上昇も加わり急上昇を続け,89年に入って更に高まっていたが,年央までに峠を越し,その後緩やかに低下している。
貿易収支は,89年には石油輸出が回復し,消費ブームが鎮静したにもかかわらず,輸入の高水準から赤字幅が更に拡大しており,89年の経常収支赤字幅は約200億ポンド(対GDP比約4%)に達すると見込まれている。
経済政策は,引き続きインフレ抑制を最優先としており,メージャー新蔵相による11月央のオータム・ステートメントは,引き締め基調の維持を確認するとともに,90年の実質成長率を1/4%とみるなど,厳しいものとなっている。