平成元年

年次世界経済報告 本編

自由な経済・貿易が開く長期拡大の道

経済企画庁


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第3章 世界貿易の拡大と構造変化

世界貿易は1国の需要拡大を各国に伝播するチャネルとして,1983年以降の世界経済の長期拡大を支える重要な役割を果たしてきている。しかし世界貿易が自国に対して不利益となっているとして,このような世界貿易に縮小のリスクを生じるような保護主義の動きがアメリカで高まってきている。世界貿易に関する議論が混迷を深めていくことは,長期的な世界経済の発展にとっても大きな不確実性を生ずることになる。そこで本章では保護主義と自由貿易が交互に台頭してきた長期の世界貿易の流れのなかで現時点がどんな特徴をもつかを確認するとともに,1980年代の世界貿易が工業品を中心に大きな構造変化を示していることを見る。ついでこのような構造変化を引き起こす要因として技術革新の取り入れに関する企業行動が重要であり,これが国際競争力の強化・弱化につながっていることを示す。さらに,1980年代の世界貿易の拡大においてその核となっているアジア・太平洋地域の貿易,活気を取戻しつつあるEC,EFTAのヨーロッパ貿易の状況を見る。最後に自由貿易の維持・強化の必要性の根拠となる議論をまとめる。


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