平成元年

年次世界経済報告 本編

自由な経済・貿易が開く長期拡大の道

経済企画庁


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平成元年度年次世界経済報告(世界経済白書)の公表に当たって

1989年末の時点で世界経済を概観しますと,アメリカの経済は,個人消費の伸びが緩やかとなる一方,設備投資と輸出の堅調を背景に,7年を越える拡大が続いています。西ヨーロッパ諸国の経済も,EC市場統合が現実性を強めていくなかで,設備投資など内需を中心に引き続き拡大しています。また,発展途上国をみても,アジアでは好調な輸出と内需により経済の拡大が続いています。一方,物価上昇率は年央にかけて高まりをみせましたが,このところ落ち着きを取戻しつつあり,日本及びアメリカの経常収支黒字・赤字も縮小傾向にあります。

このように,世界経済は総じて軟着陸の方向にありますが,なお残された問題が数多いことも事実です。アメリカの経常収支赤字は,対外債務累積による利払い増のため縮小が鈍化する傾向があります。また,ヨーロッパ経済には改善を要する硬直性が依然根強く残っております。途上国の累積債務問題には目立った進展がみられておりません。ソ連・東欧においては経済停滞が続くなかで,構造改革の気運が高まっています。

こうした中で,我が国としても,内需と輸入の持続的拡大,構造調整の推進,債務国に対する資金還流等の面で積極的な役割を果たし,政策協調を推進するとともにウルグアイ・ラウンドを実効あるものにしていく必要があると考えます。

このような認識の下,第27回目の世界経済報告に当たる本報告は,世界経済の景気,物価,経常収支不均衡,財政・金融政策の現況を踏まえた上で,世界経済の長期拡大を支えたミクロ要因を分析するとともに,世界貿易の構造変化とこれをもたらした競争力の変化,その背後にある企業行動の問題等について,歴史的視点も加えて検討を行っております。

本報告が世界と日本の経済の針路を考えていく上で,参考となることができれば幸いです。

平成元年11月28日

高原 須美子

経済企画庁長官


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