昭和63年
世界経済白書 本編
変わる資金循環と進む構造調整
経済企画庁
昭和63年度年次世界経済報告(世界経済白書)の公表に当たって
1988年末の時点で世界経済を概観しますと,心配された87年10月の株価大幅下落の影響も軽微なものに止まり,アメリカでは,輸出・設備投資の堅調を背景に,6年を越える拡大が続き,西ヨーロッパ諸国の経済も設備投資など内需を中心に引き続き拡大しています。また,発展途上国をみても,アジアNIEsでは輸出を中心に目覚ましい経済の拡大が続いています。一方,物価上昇率も全体としては緩やかなものに止まっており,拡大を続けてきた主要国間の経常収支不均衡もこのところ縮小傾向にあります。
このように,世界経済はインフレなき持続的成長を維持しつつ,対外不均衡の縮小を図るという方向に歩みを進めていますが,なお残された問題が数多いことも事実です。累積債務問題の継続の一方で,主要国間の経常収支不均衡は,縮小傾向にあるとはいえ依然大幅であり,また,これらの根本には,各国の構造的な問題が深く関わっています。我が国としても,これらの問題を踏まえ,内需拡大,輸入拡大を持続させ,政策協調を続けていくとともに,世界経済全体の運営において,より政策的な貢献をしていく必要があると考えます。
第26回目の世界経済報告に当たる本報告は,世界経済の景気,物価,経常収支不均衡の現況を踏まえたうえで,世界的資金循環の変化,国際金融・資本市場の問題等の金融面と,各国の資本蓄積,労働市場の問題点,保護主義への対応等に関する実物・構造面の両面から,世界経済の問題を検討しています。
本報告が世界と日本の経済の進路を考えていく上で,参考となることができれば幸いです。
昭和63年12月9日
中尾 栄一
経済企画庁長官