昭和61年

年次世界経済報告

定着するディスインフレと世界経済の新たな課題

経済企画庁


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第4章  変わる国際収支不均衡の構図

世界の国際収支の構図,分布は,しばしば大きな変化を遂げてきたが,1980年代の変化も,70年代のそれに劣らず大きかった。70年代には産油国が大幅な経常収支黒字を示し,一次産品の価格も上昇するなど,資源に富む国々の経済力が高まったかに思われたが,こうした状況は80年代に入るとすぐに変化し始めた。一次産品の価格は低下に向かい,価格の低下が遅れた石油に対しては需要が減退した。これらによって国際収支が悪化に向かったにもかかわらず輸入にブレーキがかからない場合も多く,そうした国々では累積債務問題が深刻化することとなった。85年末からの原油価格低下はこうした事態を一部でさらに深刻化させている。

次に,アメリカの国際収支の悪化の問題がある。すでに1年半以上ドル高の修正が続いているが,その収支改善の効果は明白には現れていない。他方で,ドル高の修正と原油価格の低下の双方からの大きな好影響を受けているのが新興の工業国である。

本章では,まず第1節において,近年の地域別経常収支の変化を整理し,資源の賦存状況との関係を,第2節では最大の不均衡を示しているアメリカについて,ドル高の修正にもかかわらずこれまで赤字増加傾向是正が顕著でない理由を,第3節においてはNICsの国際収支の改善の背景として,これまでの発展の軌跡,貿易構造,最近におけるドル安,原油価格低下の影響の度合を,第4節では累積債務国の最近の状況とその問題点をみる。


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