昭和61年

年次世界経済報告

定着するディスインフレと世界経済の新たな課題

経済企画庁


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第2章 ディスインフレへの道

1960年代末から70年代にかけてインフレの高進に悩まされた世界の主要国では,80年代に入って金融面を中心として厳しいインフレ抑制政策が行われた。これらの政策は,一方で81年央~82年にはアメリカを中心として第2次世界大戦後最大とされる景気後退をもたらすなど,大きな副作用を伴ったほか,政策自体,当初の意図とはその内容・効果においてかなり異なったものとなった。しかし他方では,主要国の物価上昇率は大きく低下し(第2-1-1図),また,ここ数年の景気拡大にもかかわらず物価上昇率の安定は維持されてきた(ディスインフレの進展)。また80~85年のドル高及び85年3月以来のドル高修正,さらには最近の一次産品価格の長期低迷,原油価格の急落といった現象も,ディスインフレ政策もしくはディスインフレ現象との関連において捉えることが必要であろう。

本章では,第1節においてアメリカを中心に70年代末ないし80年代初から始まったディスインフレ政策・現象を回顧し,そこでの財政・金融政策の役割,経済動向と政策のタイミング,金利や為替レートの動向等を概括する。引き続き第2節では,こうしたディスインフレ過程の定着の進み具合を,賃金・物価の逆スパイラル化や,インフレ期待の鎮静化さらにはドル相場の上昇と一次産品価格の低落の累積過程を分析することにより明らかにする。また第3節ではこうしたディスインフレの流れの中で,OPECという強力なカルテルの下にあった原油価格でさえ,低下せざる得なかったことを示す。最後に第4節,第5節ではディスインフレの過程の中で発生した高金利やドル高といった現象が経済全体の中でそれ自体としては持続的なものではなく,ドル高の修正,高金利の是正という方向に向かわざるを得なかったことを示す。


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