昭和58年

年次世界経済報告

世界に広がる景気回復の輪

昭和58年12月20日

経済企画庁


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第4章 国際的資本の流れの変化と国際金融の諸問題

1980年代に入って,世界経済は国際金融面でも様々な構造的変化に直面している。国際通貨体制は70年代に固定相場制から変動相場制へ移行したが,それ以来下落傾向をたどっていた米ドルが80年央以降上昇基調に転じた。一方,国際的な資本移動をみると,ドル高を背景としたアメリカへの資本流入に加え,第1次石油危機以降,国際金融市場で重要な資金供給源となっていた石油輸出諸国の余剰資金が石油需要の減少と石油価格の低下に伴い急速に消失するという事態がみられた。更に発展途上国の累積債務問題は,円滑な国際的資金循環に支障をきたすことによって,途上国経済のみならず,世界経済の順調な成長にとって大きな阻害要因となることが懸念された。

本章では,これら国際金融上の諸変化について,まずドル高の要因とその影響を変動相場制10年の経験を踏まえて検討し,次にいわゆるオイル・マネーの動向を含めて,最近の国際的資金循環構造を概観する。最後に累積債務問題の現状を整理し,特に昨年,リスケジュール問題に陥った大口債務国であるメキシコ,ブラジルに加えて,やはり大口債務国でありながら,比較的良好なパフォーマンスを示している韓国を取り上げて,今後に残された課題を明らかにする。


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