昭和56年

年次世界経済報告

世界経済の再活性化と拡大均衡を求めて

昭和56年12月15日

経済企画庁


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第1章 1981年の世界経済

第4節 縮小した世界貿易

1. 縮小した80年の世界貿易

共産圏を除く世界貿易(輸入,数量ベース)は,79年に前年比5.9%増加した後,80年は同0.4%減と減少した。このように数量ベースで前年を下回ったのは戦後では58年,75年に次いで3度目のことである。この急落の主因は石油輸入の急減である。ガット報告によれば,80年の石油貿易量(世界貿易に占めるシェアは24%)は前年比12%減少した。これに対し工業品(同55%)は同31/2%増と比較的堅調に推移した。

これを主要地域別にみると,輸入の減少は先進工業国で特に著しかった。先進工業国の輸入は79年の前年比7.8%増から80年には同2.4%減となっている。一方,その輸出は4.4%増加している(第1-4-1表)。

また産油国では,石油価格急騰に伴う石油収入の急増や開発計画の推進から輸入は前年比20%増加したが,輸出は逆に世界の石油需要の減少等から16%減少した。非産油途上国では輸出,輸入とも80年全体としては79年に対して各々3.8%,1.9%の増加となった。

世界貿易の輸入動向を四半期別にみると,80年1~3月期は発展途上国の増勢堅調から世界全体でも僅かながら拡大を続けたが,4~6月期以降は多くの先進国が同時に景気後退に入り,世界輸入も減少過程に入った。この減少過程は80年中続き,80年中の減少幅は4.9%に達した。

なお,80年の世界貿易金額(共産圏を含む)は,前年比では約20%増加し,10年前と比べて6.4倍のほぼ2兆ドルに達した。また世界貿易金額の世界GNPに対する比率は70年の9.6%から79年には15.2%に増加している。

80年の先進国GNPの伸びは12%強とみられることから,その比率は更に高まったとみられ,世界経済の貿易依存度はますます高まっている。

2. 81年に入って下げ止まった世界貿易

一方,81年に入っての世界貿易(共産圏を除く,輸入,数量ベース,季調済み)は,1~3月期に前期比ほぼ横這いとなった後,4~6月期はやや増加したとみられる。

先進工業国の輸入数量(季調済み)は81年1~3月期に前期比1.6%減少したが,4~6月期には同11.5%の増加に転じた。主要先進国の輸入数量(同)を各国ごとにみると(第1-4-1図),アメリカは80年夏を底に傾向としては増加しており,西ドイツでも81年初を底に下げ止まったとみられる。一方,フランスも81年央には下げ止まりをみせている。

80年央時点での主な国際機関による81年の世界貿易の伸びの見通しをみると,国連,IMFがそれぞれ3/4%,1/2%, OECDも先進国貿易か3/4%の伸びとみている。しかし,81年下期にかなりの回復がみられなければ,81年の世界貿易量は前年を下回る可能性もあろう。国連では世界貿易の回復が本格化するのは82年に持ち越されると見ている。


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