第1章 1979年の世界経済

1979年の先進国経済は,インフレ高進や金融引締めの影響等からアメリカの景気が頭打ちとなり,後退に向いつつあるのに対して,日・欧が個人消費・設備投資を中心に拡大過程に入ったという対照が見られた。こうした中で世界貿易も,テンポは鈍ったもののひきつづきゆるやかに拡大した。しかし一次産品価格の高騰と石油価格の大幅引上げが加わったことを主因に,世界的にインフレが再加速している。とくにアメリカのインフレは一段と悪化し,それを主因に79年夏には再びドル不安が再燃した。

本章では,まずこうした先進国の経済動向を概観するとともに,アメリカと西ヨーロッパの景気の現状をやや詳細に分析することによりその行方を占う。次に,発展途上国と共産圏諸国の最近の経済動向を概観する。