昭和54年

年次世界経済報告

エネルギー制約とスタグフレーションに挑む世界経済

経済企画庁


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はじめに

1979年の世界経済には,二つの重要な出来事が起こった。一つは第一次石油危機以後6年目にして再び石油価格が大幅に引き上げられたことであり,他の一つは基軸通貨国アメリカがインフレの一段と高進する中で景気後退に向いつつあることである。いずれの出来事も世界の物価上昇を加速させる一方で景気にはマイナスの影響を与え,スタグフレーションを深刻化させるものである。

事実,アメリカのインフレ悪化に加えて,78年までゆるやかながら鎮静化の方向にあったその他多くの国の物価も78年末頃から再加速に向い出した。また,79年に入るとアメリカの経常収支改善テンポが鈍るとともに,日,欧主要国の経常収支黒字縮小,赤字転落が加速された。こうした中で欧米諸国では金融引締めに転ずる国が多くなり,拡大過程に入っていた日,欧諸国の景気も当面鈍化が懸念されるに至っている。途上国もインフレ悪化と国際収支赤字幅拡大に見舞われている。

そこで本年の年次世界経済報告では,次の三点に焦点を合わせて検討を進めることとする。

第一に,79年の世界経済の動向を概観するとともに,アメリカと西ヨーロッパの景気の現状を分析することによってその行方を占う(第1章)。

第二に,今回の石油危機が世界経済に及ぼす影響を前回のそれと対比しつつ分析し,今後の対応の方向を明らかにする(第2章)。

第三に,アメリカのインフレ悪化の原因を探るとともに,前回の石油危機以降一段と深刻化しつつある主要国のスタグフレーション体質を長期的・構造的観点から分析する(第3章)。


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