昭和48年

年次世界経済報告

新たな試練に直面する世界経済(資源制約下の物価上昇)

昭和48年12月21日

経済企画庁


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昭和48年度年次世界経済報告の刊行にあたって

ここに第11回目の年次世界経済報告(世界経済白書)を発表します。

本年度の白書は「新たな試錬に直面する世界経済-資源制約下の物価上昇-」という副題のもとに,今日世界経済が当面している物価問題,食料問題,石油危機,及び変動相場制の問題について述べています。

白書の公表にあたり,私は次の諸点を強調いたしたいと存じます。

1. (物価上昇と闘う先進諸国)

先進諸国は,昨年後半から今年夏頃までの間に例外なく記録的な経済の拡大をとげましたが,その間に朝鮮動乱当時以来のはげしい物価上昇にみまわれました。

春以降,景気は鈍化し始めておりますが,物価の上昇はなおおさまる気配をみせず,さらに,アラブ産油国の石油供給の削減及び価格引上げは,物価問題に新たな困難を加えつつあります。この間にあって,世界各国が総需要管理政策や物価・賃金への直接規制など多様な物価対策を進めていることが注目されますが,今回の白書はその紹介に重点をおいております。

2. (資源制約に直面する世界経済)

73年春頃から緊急の課題として現われた世界的な食料不足問題や,さらに10月の第4次中東戦争勃発を機として生じた石油危機問題に端的に示されているように,資源の制約が物価を高騰させ,経済成長や国民生活の安定をおびやかすようになってきたことは,この1年の間にみられた大きな変化であります。当面,先進各国は石油消費規制などの緊急対策をとり,また長期の石油エネルギー対策を検討しつつありますが,各国の石油依存度や石油消費構成などの違いにより,その影響はかなり違ってくるものとみられ,今後の世界経済の動きについては,これを十分に見守って行かなければならないと考えます。

3. (わが国の立場)

以上のように,世界経済は現在,資源制約下の物価上昇という新たな試錬に直面しておりますが,これらの課題は,わが国にとってもまた緊急に解決をせまられている課題であります。わが国自身このような諸問題の解決に全力をあげて努力することが必要でありますが,これらの問題解決のための国際協調にあたっては,世界経済における有力な一員として,世界経済の均衡のとれた発展のために積極的な役割を果たすことが必要と考えます。

激動する世界経済のなかで,わが国が適切にこれに対処して行くにあたって,本白書がいささかでも役立つことができれば,まことに幸いであります。

昭和48年12月21日

内田 常雄

経済企画庁長官


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