昭和47年

年次世界経済報告

福祉志向強まる世界経済

昭和47年12月5日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

第2部 世界の福祉問題

第1章 「福祉志向を新たに」に関連して

社会の組織化の進展と参加

1. 組織化の進展

経済成長は消費生活の水準を大幅に向上させたが,その過程でインフレ,都市,公害等の弊害をもたらし,また精神面でも組織の巨大化による人間疎外をもたらした。経済の量的拡大に伴って政府部門の役割の拡大や,企業,労働組合等経済主体の大規模化がみられるが,これらは同時に各主体の組織化とその拡大を促すことによって支えられており,組織化の進展とその巨大化は,組織に属する個人,および,全体としての社会に大きな変化をもたらしている。

社会の組織化の指標として総労働力に占める雇傭労働力の比をみると(第1-1図)イギリスでは1931年にすでに総労働力の76%が雇傭労働力となっており,1960年には90%を越えている。アメリカ,カナダも1970年には85%を越え,ドイツ80%,フランス70%,イタリア65%,日本も1950年の38%から20年間に64%とほぼ倍になっており,先進国では,大多数の人が組織のなかで働らくようになっており,同時に,組織の大規模化から,現代はいわば,組織社会といえるようになっている。機械化社会,管理社会,大衆社会という言葉も組織の進展がもたらした社会の変革をそれぞれの視点からみたものにほかならない。企業のレベル,より抽象的な官僚組織レベル,さらには国家的レベルで原化子した個人が組織化され管理される面に重点をおいてみると,機械化社会,管理社会という面がでてくるし,原子化された個人をとらえると大衆社会という面がでてくる。組織化の進展,拡大は組織レベルにおいて合理性を追求する結果,いわゆる官僚化に導びかれることになり,組織社会は官僚制社会に転換されることになる。つまり組織化は一方において,マンモス組織と呼ばれる組織の巨大化,管理機構の膨張とその優勢化という面と,その社会,経済的な背景として社会の大衆化による身分的平等化と民主主義制度および,生産手段を自ら保有しなくなった雇傭者層の増大をその基盤にしている。

第1-1図 総労働力に占める労働者の割合

2. 組織と個人

組織の構造的特質を個人との関連でより詳細にみていくと,

といった特質をもつが,これらはそれぞれ,感情によるインフォーマルな集団,権利の大小による身分的階級:比,セクショナリズムといった非合理性を生みだす。また組織は,執行的執務に専念する同質的背景を特質にしているが,これは一部の政策決定機構者対大多数の個人といった分解を起こすことになり,一部の人間による組織の受配を許すことになりがちである。こうした組織においては,メンバーにとって機構は自らの上にあって命令し支配する力をもっようになる。メンバーは複雑な部品の一部として,機械と同様な正確さを要求されるようになり,単純な細分化された作業の反復を要求されるようになる。このような集団に属するものは,集団が自分のために存在するのではなく,集団が自分を束縛し,命令を受け,常に心理的な圧迫を受けているという圧迫感を持つようになる。

組織社会を分化された個人という観点からみれば大衆社会という像がでてくる。大衆社会の特質は ①合法的支配の確立,支配と管理としての形式合理的な官僚性組織と,②基本的民主化であり,大衆はマスコミュニケーション,大量生産による政治操作の受動的客体として登場してくる。大衆社会の構造的モデルとしては,第一次的関係の孤立化,家族や共同体の連帯の弱化による個人の原子化,経済,社会,政治,文化,あらゆる面における集中化,さらに,個人と国家を媒介する自発的結社の衰退等をあげることができるが,こうした構造の上に上記の大衆社会の特質が生じてくる。

すなわち大衆社会では,大衆は非人格的,没主観的な歯車としてしか存在しなくなる。合理性を人間そのものの目的とすれば,極めて非合理的な存在となる。労働は人間の自然からの解放者であり,労働の過程で人間は自らを形成するが,この個人の主体的自我形成で最も重要な社会的参加の領域である労働で疎外された存在になる。生産手段からの疎外と,生産過程における分業の進行の結果,労働の生活は自己表出をとざされたものとなる。労働は全人格的な充足感を稀薄にし,労働における歓びを減少させる。こうして価値実現は生産以外の領域に求められるようになる。余暇と娯楽がこの労働における疎外感覚を回復させる場としての意義をもつようになる。ウェーバーが近代資本主義のエトスとした内面的禁欲主義が崩壊し,労働倫理から,余暇倫理への移行がみられることになる。こうした労働における精神的充実感の喪失は,一方で,所得の増大と,労働時間の減少という量的な面での選択とあいまって,労働に対する意識の変化をもたらすようになる。我が国においてもこの意識の変化は,種々の調査で明らかにされているところである。第1-1表は,イギリスの労働者の意識を伝えるものである。イギリスでは最近の傾向としてクリスマスや新年の時期には,沢山の労働者の欠勤がみられるようになったが,この理由として最大のものは「所得税をとられすぎる」が目立っているが,この他に,「労働者の将来への失望「,「上司の無理解」,「欠勤ても生活に影響はない」という項目が重要な欠勤理由となっている。

第1-1表 イギリスの労働者のクリスマスや新年における欠勤増大の理由

3. 参  加

組織社会のもつ形式合理性,実質非合理性という矛盾を解決し,実質非合理性を軽減しようとする試みがなされるようになってきた。組織の管理の問題である。組織管理の最初に登場するのは,テイラーシステム,フオードシステムにみられる管理の合理化と,非人格化といわれるものであるが,形式合理性を追求しようとするこれらの試みは,個人の情趣的不安定,移動率,欠勤率の上昇,怠業といったマイナス面をもたらすことが明らかになった。

この物質的能率の増大の反面,社会的協力の減退という事態に対して,第一次集団を重視し,カウンセリング,表彰,懸賞論文,コミュニケーションの増大等,ヒューマンリレーションズによる管理の必要性がさけばれるようになり,管理政策は規律+モラールという形をとるようになった。モラールを高揚させ労働の主体性を回復させようとする試みはさらに組織内における個人の参加の形で現われている。いわゆる経営に対する参加の問題である。経営に対する参加は一つは従業員が自らの仕事を通じて行なう場合と,経営の意志決定の参加の2つの形をとる。

前者の従業員の経営参加は,主にアメリカで行動科学の面からの個人の組織への参加という形で重視されている。これは企業内の各レベルでの計画立案の執行に,そこで働らく従業員の創意工夫,意見,希望を反映させる制度である。企業内の各レベルにはつねに何らかの意志決定があり,このプロセスに従業員が参加するとき従業員の経営参加が成り立つ。具体的には職場懇談会,社内報,提案制度,自己申告制度,目標管理,利益配分制度をあげることができる。

経営の意志決定への参加は,労組と経営者との組織内の労使協議制で代表することができる。労使協議制は権力の何らかの統制という側面が強く,労使の他の話し合いの場である団体交渉との区別があいまいで,団体交渉と労務管理が旨くいっていない国程,これが旨くゆくという面をもっているが,最近この協議制を一歩進めて経営参加制度にまでしようとする動きがみられる。

これを大きく分類すれば以下の3つになる。

4. 組織と社会

組織の発展は組織内部における個人の主体性の喪失現象をもたらしたが,同時に社会的にも種々の問題を提起している。現在では行政,司法,企業,教育の各分野では,すべて巨大な組織が支配するようになり,個人と巨大でかつ非人格的な制度の間に多くの摩擦が生じている。最近アメリカでは巨大組織と個人の問題が,青少年グループや,黒人によって,市民と政治権力,学生と大学という形で提起されており,消費者運働や,環境保護に対する運動も組織と個人の問題という一面をもっている。

こうした点から行政への参加の改善,組織と個人の接触の促進を計る必要が生じ,苦情処理機関や市民に政府機関との接触を助けるサービスセンター自治体機能の分散,学校内学生代表会議等の設置がみられるようになった。

また組織化によって個人の原子化の進展,コミュニティの崩壊といった事態に対して,再びコミュニティを形成しようとする動きもみられる。いわゆる小集団の再認識で,共同体の中に個人を再発見しようとする動きである。

社会の組織化をもたらした要因は同時に,都市化,社会の流動化を通して,家庭の核化,共同体の欠除をも招いたが,家族の核化,共同体の欠除は,個人の情趣的安定を満たす小集団の存在を危くするものであった。

社会の組織化は組織における個人の主体性の喪失の問題,巨大組織と外部の個人の問題,個人の原子化とコミュニティの崩壊といった。精神的環境の悪化をもたらしている。経済的発展と精神的環境をいかに調和させるが,残された重大課題である。

第2章 「先進国―生活の質の追求―」に関連して

第1節 「経済成長と福祉のかい離」

第2-1-1表 主要国の1人当り国民所得

第2-1-2表 主要国のGNPの長期成長率

第2-1-3表 主要国の個人消費支出構成比変化

第2-1-4表 両大戦間と戦後の成長,失業および物価

第2-1-5表 主要国の失業率

第2-1-6表 アメリカと日本の所得分布

第2-1-7表 主要国の高等教育機関在学者数

第2-1-8表 テレビの普及率

第2-1-9表 乗用車普及率

第2-1-10表 主要国の犯罪発生率

第2-1-11表 主要国の自殺率

第2-1-12表 主要国の離婚率

第2-1-13表 主要国の私生児出生率

第2-1-14表 アメリカ,スウェーデンの麻薬常用者

第2-1-15表 アメリカ,スウェーデン,フランスのアルコール中毒者

第2-1-16表 主要国の争議損失日数

第2-1-17表 GNPに占める政府部門の割合

第2-1-18表 経済政策の変遷

第2-1-19表 アメリカ大統領一般教書にみる政策意識の変化

第2節 「社会保障の拡充と急がれる老人対策」に関連して

I 社会保障の拡充

1. 先進国の社会保障制度の特徴

戦後の高成長持続のなかで先進国はいずれも社会保障制度の拡充,整備に努力しており,社会保障の向上にかなりの成果をあげてきた。しかし,GN Pに占める社会保障のシエアは著しい高まりを示しているものの,それが経済社会の変化にみあった改善をもたらしたかどうかについては疑問があり,各国とも社会保障をさらに充実するために制度の改革をすすめているのが実状である。また,一方では社会保障の規模が拡大するにしたがって,高負担に対する不満やその他の政策とのかね合いが問題とされるようになっている。

このように,先進国の社会保障制度はいま再びその真価を問われている。

そこで,ここでは,主要国が当面している制度上の問題点を明らかにし,その解決の方向をさぐるために,各国の社会保障についての考え方,アプローチの方法などの特質とその変化を比較検討する。

① 戦後における先進国の社会保障制度の発達

先進国の社会保障制度は,それぞれの歴史的,経済的,社会的多様性を反映して,独自の発展をとげてきた。そのため,各国の社会保障制度の内容はかなり異っており,社会保障の水準にも差がみられる。

しかし,戦後の先進国における社会保障制度の発展のあとをふりかえってみると,当初,そのアプローチの方法はそれぞれ異っていたが,その内容はしだいに類似しており,その問題も共通化しているのが特徴である。

第1に,イギリスの「ベバリッジ報告」(1942年)や国連「人権に関する世界宣言」(1948年)に典型的にみられるように,社会保障は人間の基本的権利であるという考え方が世界的に浸透しており,とくに,先進国では社会保障の対象を全国民とし,最低生活を平等に保障するという方向が強まっている(ナショナル・ミニマム)。

第2に,しかし,一方で,個人の所得や能力に応じた保障に対する要請も強まっており,そのための方策が強化されている(所得比例方式)。

第3に,社会保障のための国庫負担率が高まる傾向があるが,同時に,国庫負担の増大については制約も大きく,財源の確保がますます困難となっている。とくに,持続するインフレのなかで給付水準をおとさないようにするためには,それに応じた措置が必要である。

② 主要国の社会保障の水準

主要国の社会保障制度の発展の度合いを比較するために,国際機関による共通の「国際基準」が設定されてきた。その主要なものは,①工LO(国際労働機関),第102号条約(1952年),②ヨーロッパ社会憲章(1960年)やヨーロッパ社会保障法典(1964年)に示された,いわゆる社会保障のヨーロッパ基準(欧州会議,Counci10f Europe),③WFTU(世界労連)の「社会保障憲章」(1961年12月)の基準などである。

このなかで最も基本的なものは,ILO,第102号条約「社会保障の最低基準に関する条約」であり,各国の社会保障制度の世界的指針として影響力を与えてきた。これによると社会保険は,9項目(医療,疾病,失業,老令,災害,家族,出産,廃疾,遺族給付)に対する給付をカバーする必要があり,適用対象を3グループ(被用者,自営業主を含めた就業者,住民)にわけて,それぞれの最低給付率がきめられている(第2-2-2表)。第102条条約の批准には少くとも3部門についてこの基準を満す必要がある。

この国際基準を全部門について適用しているのは,現在,西ドイツおよびベネルックス3国だけにすぎず,第102号条約を批准しているのは(1970年現在発効のもの)全部で20カ国,先進国でも13カ国にとどまっている。このように主要先進国の社会保障制度は,戦後の早い時期に一応,体制の整備がすすんだものの,その給付水準はILOの最低基準さえ必ずしも保障していないのが実状である。

主要先進国の社会保障給付(ILOベース)は年々拡大を続けており,その伸び率はほとんどの国で国民総生産の伸びを上回っている。このため,国民総生産に占める社会保障給付のウエイトは一般に高まりを示し,60年代後半ではほとんどが10%を上回る規模となっている(第2-2-3表)。

とくに,ヨーロッパ大陸諸国では60年代後半では15~17%に達している。

北欧諸国のうち,スウェーデンの比率は過去10年間に急速に高まってヨーロッパ大陸なみとなったが,デンマーク,ノルウェーはやや低目である。イギリスは社会保障制度が早くから整えられてきたにもかかわらず,その比率は意外に低く,とくに,60年代には他国の伸びにおくれたために12%弱にとどまっている。アメリカ,日本の社会保障給付は最近大幅に伸びているものの,それぞれ,6.7%,5,3%にすぎない。

③ 社会保障制度のパターン

主要国の社会保障制度を,その基本的思想,沿革,概念,アプローチなどのちがいから分類してみよう。

第1に,社会保障の基本的思想からみると,社会保障をナショナル・ミニマムの確保とする考え方と就業者に対する所得補償とする考え方に大きくわかれる。この考え方のちがいは社会保障によってカバーすべき対象の差,および政府介入の度合の差となってあらわれる。

全国民を対象とする制度は,イギリス,カナダ,アイスランド,ニュージ一ランド,オーストリア,スウェーデン,デンマーク,ノルウエーなどのアングロサクソン系諸国に多い(場合によっては,国内居住の外国人にも適用する)。

被用者を主として対象とするのは,フランス,西ドイツ,イタリア,オランダ,ベルギー,ルクセンブルク,スペイン,ポルトガルなどの欧大陸諸国である(場合によっては,その適用を自営業者へ拡大する)。

第1のグループについては,社会保障の運営に国が直接介入を行なう国営方式がとられることが多く,中央政府の出先機関または地方政府が実施する。これにに対して,第2のグループについては,国は全般的なコントロールを行なうにすぎず,独立の社会保障金庫,基金,公社などが実施主体となっている。

第2に,社会保障に対するアプローチの差は給付や拠出の方法などにあらわれ,これについては均一方式と所得比例方式に大別できる。

ここでも,アングロサクソン系諸国では原則として均一方式がとられているのに対して,欧州大陸諸国では所得比例方式がとられているという対照がみられる。

給付の内容についてさらに詳細にみると,国別にかなりばらつきがある。

すなわち,第1のタイプは,医療と年金が主要部門となっているもので,イギリス,スウェーデンなどがこのグループに入る。第2のタイプは,年金が中心となっているもので,西ドイツ,イタリア,フランス,アメリカがこれに属している。日本は60年代に入って国民皆年金・保健の制度が整えられ,一応,第1のタイプにちかい体制となっているが,国民年金は成熟度が低く,雇用者を対象とする制度が中心となっていることを考慮すると,実態はむしろ第2のタイプにちかく,混合型といえよう(第2-2-1表)。

第3に,第1の国家介入の度合の差とも関連しているが,社会保障の経費を誰がどのような形で負担しているかによる分類である。第2-2-6表にみるように,概して,ナショナル・ミニマムの考え方をとり,国家介入の度合が高い国では,社会保障の経費を国庫が負担する率が高くなっている(デンマーク・ニュージーランド,イギリス)。これに対して,欧大陸諸国では雇主の負担がきわ立って高い(ベルギー,フランス,西ドイツ,イタリア)。

2. イギリス・北欧の社会保障制度

イギリスをはじめとするアングロサクソン系ヨーロッパ諸国では,社会保障を基本的人権の確保とする考え方が強く,したがって,社会保障の対象は全国民であり,国家による直接的運営を基本とする,いわゆる福祉国家型の社会保障制度が支配的である。次に,イギリスに例をとって社会保障制度の発展と問題点を検討することにする。

福祉国家型のアプローチの典型とみなされているイギリスの社会保障制度は,先進国のなかでも最も早く着手整備されてきた。しかし,戦後における制度の発展のあとをふりかえってみると,その歩みは決して平担なものではなく,むしろ,福祉国家の追求はしばしば経済的,社会的制約のもとで現実的妥協を余儀なくされており,社会保障水準にしてもいまだに理想の実現にはほど遠く,多くの問題をかかえている。

戦後のイギリスの社会保障制度は,ベバリッシ報告(1942年)の理念と構想のもとに出発した。ベバリッシ報告は,これまで労働者災害補償法(1884年),老令年金法(1908年),国民健康保険法(1912),失業保険(1912年),失業法(1934年),寡婦孤児年金(1926年)など個別的に導入されて発達してきた社会保障に関連した制度を一元化し,より充実することを主要な目的としていた。

ベバリッジ報告の基本理念は,国民の基本的必要を充足するために,国と個人が協力するというものであった。この理念を実現するために,当初は均一負担,均一給付の原則がとられていたが,主として財政負担上の理由で,所得比例方式により補足されるようになった。これはアプローチの面での大きな変革であるが,ベバリッジの基本理念そのものは貫かれている。

所得比例方式は,長期給付(退職年金)については1961年より,短期給付(失業,疾病,傷害,廃疾)については66年より導入された。所得比例拠出が国民保険基金の歳入に占める割合は,61年度の12,8%から65年度には16.7%に高まっているが,給付面ではまだ成熟度が低いために,それほど給付水準の引上げには役立っていない。この方式の導入により保険基金の赤字の顕在化は一応回避されることとなった。同時に,保険基金の赤字は国庫だけでなく,被保険者,雇主,国庫の三者によって負担されるようになった。こうして,イギリスの財政負担方式は,比較的短期間(たとえば5年以内)において収支のバランスをとる,いわゆる賦課方式(payasyougo)に転換された。

このような制度的変革を通じてイギリスの社会保障は著しい拡充をみたが,依然として問題も多い。

第1は,社会保障のための財政支出がかなり高水準に達しているにもかかわらず,その給付水準は十分なものとはいえない点である。すなわち,国内総生産に占める政府予算の割合は68年度で36.4%にも達しており,社会保障給付費だけでも11.7%にのぼっている。このため,新規の社会保障計画の改善はとどこおりがちとなり,必要な給付水準の引上げも十分には行ないえないのが実状である。

第2は,医療・保健サービースが基本的に国庫負担となっているために,社会保険経費に占める比率が高く(50.7%,1966年),また,医療サービスの値上りが著しく,医者,看護婦などの不足もあって実質的な医療給付が低下しがちであること。

3. アメリカの社会保障制度

① 輪かく

アメリカの社会保障制度は大別すると,メデイケア(Medicare)老令保険,失業保険,労働災害保険がある。

イ. メディケア(老人医療)

1966年7月から65歳以上の老令者は入院保険(HospitalInsurance)を利用できるようになった。この保険加入者は71年初め2,045万人で,この年令層人口の大半に当たる。このほか任意加入できる医療保険(MedicalInsu-rance)がある。支払われる給付は90日末満の入院費であるが,最初の60日間については68ドルの自己負担があり,61~90日については1日17ドルが自己負担となり,残額が保険で支払われる。90日をすぎても,まだ,60日間は34ドルの自己負担で残余の費用を保険で支払われる。

なお,退院後の看護ホーム(nursinghome)の費用は100日まで保険の給付を受けられる。ただし最初の20日までは無料,残り80日については1日8.50ドルの自己負担が必要である。看護ホームにはいる前提条件として,それ以前に3日間院病に入院していなくてはならないし,また退院から看護ホームにはいるまでの期間は14日以内と定められている。

病院または看護ホームから出て365日以内であれば,看護婦または他の保健係の自宅訪問を100回無料で受けられる。

メデイケアの財源は労使,独立自営者などの掛金が入院保険信託基金(HospitalInsuranceTrustFund)に入れられて特別勘定となり,この基金から保険給付や管理費を支出する。

ロ. 医療保険(Medical Insurance)

老令者が任意に加入できる保険で,保険料は月額(5.60ドル),連邦政府が同額を負担する。

主な給付は毎年50ドルの自己負担を除いて必要費用の80%をカバーする。

ただし医療の範囲は次のように限定されている-

ハ. 医療補助(Medicaid)

貧困者,盲人,廃疾の老年者に対してはとくに医療補助がある。連邦所管であって,71年度34億ドル,72年度44億ドル,73年度41億ドル支出見込みで,73年には低所得層2,400万人の医療費を補助するはずである。

ニ. 老令,遺族,廃疾保険(OASDI)

退職者,労働災害を受けた労働者とその家族ならびに遺族は71年6月までの1年間に社会保障による現金支払340億ドルをを受け取った。このうち退職労働者の平均受取額は131ドル(71年6月),労働給付は平均145ドルであった。

保険料は労使それぞれ4.6%で1987年までに,5.15%まで引き上げる。保険料は給料より天引きして毎月税務署に支払い,連邦老令,遺族保険信託基金と連邦廃疾保険基金に積み立てられる。

被保険者が65歳を越えると,年金を受けるが,もし本人の年収が,1,680ドルを越えるときは年金が減額される。ただし72歳を越えたときには所得による給付制限はない。給付は65歳で退職する前の月収によって相違するが,現状では独身の場合月額74~310ドル,平均では133ドル,夫婦で111~465ドル,平均223ドルにすぎない。

労災によって労働に耐えられなくなったものには,老令年金と同額を与えられる。

老令,遺族,廃疾保険加入者が65歳で退職するか,あるいは労災で退職したとき,18歳未満の子女(在学中の子女は21歳を終わるまで)があれば,加入者の受ける給付の半額を与えられる。妻も同様である。ただし71年現在で歳になっていた労働者の場合,給付の総額が396ドルに制限されている。

遺族に対しては次に掲げる給付がある-

ホ. 失業保険

失業保険は労働者の失業中の所得を補償するもので,1970暦年の加入者は軍,公務員,商工業労働者5,951万人,このほか鉄道退職委員会(Railroad RetirementBoard)の管理する失業保険加入者が64万人あった。

連邦失業保険税率は1970年の改正法以来従業員1人当たり年額4,200ドルまでの給与に対し3.2%であるが,州の失業保険法によって支払った税金を最高2.7%まで控除できる(この場合には連邦税率は0.5%となる)。

保険給付はすべて使用者の税金でまかなわれるが,アラスカ,アラバマ,ニュージアジーでは労働者の掛金もある。

1971,72年度に支払われた失業保険給付は連邦支出だけでそれぞれ58億,72億ドル,73年度では57億ドルマ推定される。

② 給付と財源

給付は第2-2-8表に示したように平均収入に比べて著しく低い。年平均7,800ドルの収入といえば,低い方ではないが,退職後の年金は月278.80ドル,年間にして3,310ドル,退職前の年収に対し42.4%にすぎない。これでは過去の所得と較差がありすぎる。しかも72年末までこの所得階層に対する支払いは行なわれない。

財源は保険料や財政支出であって,被保険者の負担は1987年まで漸進的に増大する。

保険の信託基金別にみると,OASDIの社会保障信託基金の収入は71年6月までの累計で3,427億ドル,支出は給付2,834億ドル,管理費68億ドルで,71年6月末現在407億ドルの資産を残している。

補助的医療保険信託基金はOASDI信託基金に比べると規模が小さい。被保険者掛金と政府の補助金(原則として被保険者の掛金相当額)で医療費と管理費をまかなっている。

入院保険信託基金の収入は主として保険の掛金であり,これに連邦政府がOASDIの給付保険のついない人に対して支出する金額,利子収入を合わせたもので入院費や管理費をかなう。

③ 老令者

老令者については前述の医療保険のほか,所得を補助し,また交通費割引,低家賃住宅の供給,老人福祉センターの増設などが行なわれ,老令者扶助目的の連邦支出は1967年度の250億ドルから73年度500億ドルにふえ扶助対象は,1,800万人から2,100万人に増大する。それにしても,1人当たりにすれば,2,100ドルで,必ずしも十分ではない。

④ 住宅建築

低所得住宅建築は近年急速に増大したが,各種の補助,援助を加えても72財政年度で40億ドル,戸数にしても60万戸足らずであった。

⑤ 当面する諸問題

1971財政年度に支出された連邦の社会福祉関係費は約180億ドルでその主な内訳は次のとおりである。

しかし,その給付や恩恵にあずかる米人は1,500万人にも達する。内訳は子女770万,子女をもつ貧困な成人290万,65歳以上の男子200万,廃疾110万,一時的な援助を受けるもの100万人である。したがって,1人当たりでは年間1,000ドルにすぎない。

なお,議会は,72年7月社会保障支出の20%引上げを可決,10月から実施する。これに伴い社会保障税が73年1月から引上げられる。

しかも社会福祉の管理機構は複雑で,州,地方関係の機関は1,152,従業員は20万人に達する。その事務機構はほとんど自動化されておらず,書類が多く,間違いや遅延,二重払い,不正も少なくない。こうした機構改革のほか,給付の低さを改めるため,議会で各種の増額案が提出されているが,その反面では連邦負担が増大するので,受益者の負担引上げが問題となっている。

老人問題については別項でふれたが,医療保険が65歳以上の老人に限定され,一般には行なわれていないのも問題であるし,年金にしても給付が少なく,かつ,民間の企業年金は相互に振り替えられないため,労働移動性を低める結果になっている。

また住宅関係の連邦支出はとくに老人と低所得層に低い点が指摘されている。

第2-2-1図 主要先進国の1人当り社会保障給付

第2-2-1表 主要国の社会保障給付

第2-2-2表 IL○第102号条約に定める給付部門の概要

第2-2-3表 主要先進国における社会保障給付の規模

第2-2-4表 主要先進国における社会保障支出の構成

第2-2-5表 主要先進国の社会保険給付の部門別構成

第2-2-6表 主要先進国における社会保障費の負担者別構成

第2-2-7表 主要先進国の1人当たり社会保障費

第2-2-8表 アメリカOASDI現金払い例

第2-2-9表 アメリカの老令年金

第2-2-10表 アメリカの労使,自営者の保険掛金

第2-2-11表 社会保障信託基金

第2-2-12表 補助的医療保険

第2-2-13表 入院保険信託基金

第2-2-14表 低所得住宅建築(財政年度1,000戸)

II 急がれる老人対策

職業戦線から隠退したのちの老人層にとって最大の関必事が,所得確保の問題であることはいうまでもない。豊かな社会になったとはいえ,老後を賄いうるほどの貯蓄のある人々は少いし,また何ほどかの貯蓄があっても近年のような持続的インフレの時代には貯蓄の実質価値が急速に失われていく。

そこで老後の所得確保は,どうしても年金に頼らざるをえない。西欧諸国は,年金制度においては世界の先進国であり,とくに戦後は年金制度の充実に力をいれ,今日では一部の国を除いて,「食える年金」制度が確立されてい」るといえよう。

欧米の年金制度は,国によってさまざまであるが,大きく分けて,(1)一律定額制を主とし,それに所得比例制を採用している国(イギリス,北欧諸国,カナダ),(2)社会保険方式による所得比例年金を建前としている国(その他の欧大陸諸国)とに分類できよう。一律定額制をとる国は,原則として国民皆年金であって,年金の恩恵に浴する層が広いが,年金水準はあまり高くない傾向がある。平等主義の限界というべきであろう。そのためこれらの国は1960年代に定額年金の補足として,所得比例制年金を発足させたが,まだ日が浅い関係もあって,今日の年金生活者に対してはあまり寄与していない。

社会保険方式による所得比例年金制を主とする欧大陸諸国では,所得比例制であるために年金水準が比較的高いが,半面では雇用者中心の制度であるので,対象範囲が限定される傾向がある。しかし近年はこれらの国でも,年金適用範囲が漸次拡大されてきたため,その差はあまりなくなった。たとえば年金年令人口に対する年金受給者の比率をみると,スウェーデン100%,イギリス84%(1968年),アメリカ83%(1967年),西ドイツ約77%(1970年)となっている。これに対して,日本では,60歳以上人口にしめる年金受給者の割合は44%,65歳以上では64%といわれているが,月に3,300円という低額の老令福祉年金受給者を除いて計算すると,60歳以上の21%,65歳以上人口の23%にすぎない。

このような制度の相違にもかかわらず,欧米諸国にほぼ共通していえることは,第1に自動的ないし半自動的スライド制を採用している国が多いので,インフレに比較的つよく,第2に1つにはスライド制のせいもあって年金水準が比較的高いということである。

1. スライド制

退職時に十分な年金が支給されていても,現代のように程度の差こそあれ物価上昇を伴う成長経済においては時間の経過とともにその年金の実質額が失われていくことは申すまでもない。ILOの102号条約(社会保障最低基準条約)においても,「物価または賃金への調整(スライド)」を義務づけている。ただし,スライドといっても物価ないし賃金の変動に応じて自動的ないし半自動的にスライドする方式と,日本のように一定期間をおいて政策的に年金額を調整する政策スライド方式とがあるが,欧米先進国では日本のような政策スライド方式をとっている国は,イギリスとアメリカしかなく,そのアメリカも75年から自動スライド制を採用することが1972年6月成立の法律できまった。その他の国は自動的ないし半自動的なスライド制をとっている。スライド制をさらに分類すると,物価スライドと賃金スライドとがある。

物価スライド制をとる国では,インフレの影響は相殺されるが,一般的な賃金上昇は考慮されないから,成長経済下においては年金所得が賃金所得に対して相対的に立遅れ,したがって年金受給者の生活水準が相対的に低下するという不利さがある。年金受給者の立場からいえば,賃金スライド制が最も望ましいといえる。

いま政策スライド制のイギリス,物価スライド制のスウェーデン,賃金スライド制の西ドイツについて,近年のインフレ期である1969~71年間の年金,物価,賃金の動きをみると,第2-2-2図のようになる。イギリスの場合,定額年金が週5ポンドに引上げられた1969年11月から,6ポンドヘ引上げられた1971年9月までの約2ヵ年間についてみると,年金上昇率(20%)はこの間の賃金上昇率(24%)を下回っているものの,消費者物価上昇率(17.5%)をやや上回っているので,一応インフレの影響を相殺したようにみえる。しかしこの物価高の時代に2年間も年金を据えおかれたままでは,ただでさえ苦しい年金受給者の生活が一層苦しくなったであろうことは想像にかたくない。

スウェーデンの場合は,消費者物価が3%上昇するたびに年金額が自動的に引上げられる。いま69年8月から72年7月までの3年間についてみると,年金上昇率は21%で,消費者物価の上昇率と完全に一致する。しかも,消費者物価に対する年金額調整のラグは,約4カ月であるから,年金生活者はインフレの被害を事実上殆んど受けないことになる。とはいえ,この3年間における賃金上昇率は40%に達し,実質賃金が約20%上昇したのに対して,年金の実質額は不変であるから,年金生活者の生活水準がそれだけ相対的に低下したことは否めない。

それでは,賃金スライド制により毎年年金を引上げる西ドイツはどうかといえば,1968~71年の3年間に年金額は21.5%引上げられており,この間の消費者物価の上昇率12.8%をかなり上回り,年金が実質で約9%増えたことになる。だが一般賃金の方は40%も上昇しており(実質では約27%増),ここでも年金額の相対的な立遅れは否めない。そのため平均賃金水準に対する年金の比率は,保険期間40年の平均所得者の場合68年の47.0%から71年の41.5%へ低下した(第2-2-3図)。

所得比例制をとっているにもかかわらず,年金がこのように賃金の動きに遅れた理由は,1つにはスライドの方法に原因がある。つまり,西ドイツのスライド制は,過去3~4年間の賃金の平均にスライドするという方法をとっているため,近年のようなはげしいインフレを伴う急速な賃金上昇期には,年金引上げ率が賃金上昇率に立遅れる結果となるのである。物価スライドが比較的機敏に実施できるのに対して,賃金スライドの方はどうしても遅れがちとなる。

2. 年金水準

次に,年金の水準はどうか。年金水準の国際比較に一つの有力な手掛りとなるものは,年金支給額のGNPに対する比率である。いまILOの資料でこの比率をみると,第2-2-16表のように,1966年の実績で西ドイツとオーストリア,オランダの6%強をトップとし,イタリア,スウェーデンなどが4~5%の線でつづいており,その他の西欧諸国は3%となっている。これに対し北米は2~3%台,日本は0.3%という後進国並みの低さであり,西ドイツの1/20にすぎない。1人あたりGNPとの比較から明らかなように,この比率は,先進国の間では1人あたり所得の大きさとは必らずしも関係がないく,老人層のシエアや年金受給者の範囲,年金制度の「相違」などに左右される。

次に,これらの年金は実際にどの程度老人層の生活を保証しているであろうか。老令年金の最低水準を国際的に示したものとしては,ILOの102号条約(1952年)があり,それによると資格期間30年の老夫婦2人で,従来の賃金の40%(定額制の場合は男子未熟練労働者の賃金の40%)となっていたが,その後1967年の128号条約で45%へ引上げられた。このILOの最低基準を一応念頭におきながら,西欧の代表例として,イギリス,スウェーデン,西ドイツの3ヵ国についてみよう。この3カ国をとりあげたのは,イギリスが,「ゆりかごから墓場まで」のキャッチ・フレーズで知られる名だたる福祉国家であり,スウェーデンも小国ながらイギリスに劣らぬ福祉国家であって,しばしば他国のモデルとみなされているからである。(「フランスはスウェーデンをモデルとして目標とすべきである。」ポンピドー仏首相)。西ドイツはヨーロッパ随一の「経済大国」であるが,同時に福祉面でも,とくに年金においては,「経済大国」にふさわしい水準をいくようである。

まずイギリスの年金であるが,71年9月から引上げられて独身者週6ポンド,夫婦9.7ポンドとなった。この水準は1971年の製造業労務者の平均賃金,31.37ポンドにくらべて,独身者19%,夫婦者30.9%にすぎない。ILOの基4準0~45%に及ばないのは勿論のこと,生活保護水準(現在独身者週約8ポンド)をすら,下回っている。食える年金とはいかねるようである。現に年金受給者の3割近くが生活保護手当をうけている。定額年金の水準がこのように低いために,それを補足するものとして,1961年以来,雇用者中心の所得比例制の付加年金制度を発足させたが,その金額は僅かであって,「本来の定額年金も,現在の定額プラス付加年金も,適当な年金の提供に失敗した……企業年金か,他に資産のある者でないかぎり,現在,老年期の生活を保障してくれるものは,国民年金制度ではなくて,生活保護手当である。」(労働党政府の年金白書1969年)。

福祉国家スタート後20数年たった今日,イギリスの年金制度の失敗が当のイギリス政府によって宣言されねばならなかった主たる理由は,労働党政府の説明によると,定額拠出制であるため拠出水準が低く,財政負担がふえたが,財政に余裕がないので,年金額を大幅にふやすことができなかったという点にあったようである。いずれにせよイギリスの年金制度は失敗例とみるべきであって,こと年金に関するかぎり,イギリスはわれわれのお手本とならぬとみるべきであろう。

現行年金制度の根本的改革のための方途として,前労働党政府は定額年金を廃止して社会保険方式による所得比例制度(賃金スライドを含む)への全面的切換えを提案したが(1969年),現保守党政府は定率拠出制へ切換えることで定額年金を維持するとともに,企業年金の充実をはかるという改革案を71年9月に打出した。その後72年10月から年金額を12.5%引上げ,さらに72年10月発表の逆所得税構想(実現は5年後)が,年金受給者の所得をふやすはずである。

スウェーデンの定額年金は72年7月現在で独身者年額6,570クローネ(月額547.5クローネ),夫婦者10,220クローネ(月額851.7クローネ)となっている。月換算で独身者約547.5クローネ夫婦約851.7クローネである。これがスウェーデンの平均賃金の何割に相当するかといえば,試算によると,第2-2-18表のように独身者23%,夫婦36%となる。イギリスの水準にくらべればまだかなり高い。だが前記のように物価スライド制であるため,平均賃金に対する比率は年々低下する傾向がある。1957年頃には独身者約45%,夫婦約70%近いという立派な水準であった。

スウェーデンの年金の近年の水準は,老人ホームにはいった場合,住宅手当をもらってホームの費用の払ったあと手許に若干の小使いが残る程度といわれているから,一応は食える年金といえよう。

しかし,定額年金だけでは不十分なことは明かで,そのためスウェーデンは1960年から所得比例制の付加年金制度を発足させたが,まだ受給者も少く支給額も少いため過渡的な措置として,付加年金を貰っていないかまだ少額である者に対して特別加給金を69年から支給するようになった。

いずれにせよ,スウェーデンの年金水準は現在のところイギリスよりは高く,一応食える年金ではあるが,年金だけでは豊かな老後を楽しむというところまではいかない。だが付加年金が完全支給される1980年以降になれば,定額年金を含めてかなりゆとりのある老後を送ることができよう。

それでは雇用者中心の所得比例制年金を採用している西ドイツの場合はどうか。既に述べたように,保険期間40年の平均所得者の年金は,現在の賃金の約42%であるが,これはインフレで低下したためで,68年には47%であった。(政府の目標は50%)。ただし,一般賃金の場合は税金や社会保険料として平均約24%控除されるから,税抜後の手取り貨金と比較すると約55.7%となる。このように,保険期間40年の平均所得者というモデルケースで計算すると,西ドイツの年金水準はスウェーデンより上だということになる。

このモデル・ケースで年金の絶対水準をみると,平均は548マルク(72年)だが,職員が約850マルクであるのに対して労働者は533マルクでかなりの開きがある。1971年4月の家計調査によると,低所得の年金生活者世帯(2人)の家計支出は月額約590マルクであったから,労務者の年金生活はやや苦しいが,職員の場合はややゆとりがあるといえる。ただしこれは保険期間40年の平均所得者というモデル・ケースの話である。実際に40年以上の保険期間をもつ者の割合は55%(労務者)ないし,57%(職員)にすぎず,男子の平均保険期間は37年である。

そこで,年金生活者の実際の収入はどうなっているかといえば(第2-2-20表),月額600マルク以上という多少ともゆとりのある年金をもらっている人々は全体の31%にすぎない。しかし,女子は一般に賃金も低く保険期間を短いから,男子のみについてみると,この割合は,42.6%となる。さらに職員と労務者とにわけると,職員男子の場合は600マルク以上の者の割合が67%と高率だが,労務者男子の場合は30%近くにすぎない。逆に300マルク未満の少額年金しかもらっていない男子が約8%いる。(労務者11%,職員3%)。

西ドイツの年金受給者のうち,生活扶助をうけている者の割合はわずか1.8%で,イギリスの30%とは比較にならぬほど低いが,それでも少額年金者がかなりいることは事実である。それと前述したインフレによる年金水準の相対的低下を相殺するために,年金改革が71~72年に大きな政治問題となり,与野党はげしい論争のすえ72年10月に次のような改革案が発効した。(1)年金引上げの繰上げ実施(73年1月予定の引上げを72年9月から遡及実施),(2)最低年金制の実施,(3)年金水準の保証(保険期間40年の平均所得者の場合,平均年金の水準を平均賃金の50%とすることを中期的目標とし,短期的にも45%以下にしない)等。

以上西欧諸国の公的年金制度やその水準について検討してきたが,それによって明かとなったことは,(1)イギリスのように年金水準が非常に不十分な国もないではないが,他の諸国の年金水準は或る程度高く,一応「食える年金」となっていること。(2)殆んどの国が自動的ないし,半自動的なスライド制をとっているので,比較的インフレにつよいこと,(3)他方,賃金比例制年金を採用している国では年金受給範囲が限られていたり,少額年金も少なくないといった欠点もあり,その是正のために努力されていること,などであろう。

なお,欧米の老令層の所得について考える場合に見逃しえないことは,公的年金の補足として企業年金が広く普及していることである。たとえば,アメリカでは民間雇用者の約半分が企業年金に加入し,現在企業年金を受給中の者は約500万人といわれている(公的年金の受給者は約2,800万人)。イギリスでは,雇用者の約半分,フランスでは約90%,西ドイツでは30~60%が企業年金の適用をうけているといわれている。企業年金の水準はフランスが最終賃金の20%,西ドイツが最終賃金の10~15%といったように比較的高い国もあるが,イギリスのように企業年金の約半分が月額10ポンド未満(69年)という低額のところもあって,さまざまである。企業年金にはスライド制が少く,また,中途退職のばあいに受給権を失うケースが多いとか,大企業やホワイトカラーが申心であるとかいった問題点があるが,ともかくも老年期の生活の支えに或る程度の寄与をしていることは疑いない。

3. 年金負担の問題

最後に年金財政の問題についてふれねばならない。日本にくらべて年金水準の高い西欧諸国では,それを賄うための国民の負担も当然高くなっている。

欧米諸国の年金制度では,社会連滞の精神に基づいて現在働いている世代が隠退した世代を養うという賦課方式がとられている。年金受給者が過去に積立てた資金の連用益を財源とする積立金方式は,一部の国で補足的に使われているだけである。積立金方式は長い年月(20~30年)をかけて原資を蓄積するのであるから,被保険者の月々の負担が比較的軽くてすむが,インフレに弱いのと,いわゆる成熟するまでの長期間年金が支給されないという欠点がある。賦課方式は原則としてその年の年金支払をその年の保険料収入で賄う方式であるから,定率拠出方式をとるかぎり,賃金の上昇に比例して保険料収入もふえ,積立金方式にくらべて高い年金水準を賄うことが可能である。とはいえ短期間に原資を調達しなければならぬので,保険料が高くなることはやむをえない。しかも年金水準が高ければ高いだけ,また,働く世代にくらべて老人世代がふえればふえるだけ,それだけ負担も重くなる道理である。この点は,国民経済全体としての税負担率と家計所得に対する直接税(社会保障負担金を含む)の比率を示した第2-2-21表からも明かであろう。いずれの比率をとっても,西欧諸国の比率は格段に高く概ね日本の2倍ないしそれ以上となっている。こうした税負担の高さがたとえば国防負担の重さからくるのでないことは,GNPに対する国防費の比率との比較からも窺われる。とくにスウェーデンの税負担が重いようである。国民の多くは「税金は重くても,結局は自分達のために使われるのだから」といった割切り方をしているといわれているが,若い世代に重税に対する不満があることも事実のようであって,「高福祉,高負担」の実現のためには国民各層の理解と同意さとりつけることが先決といえる。

第2-2-15表 主要国のスライド制

第2-2-2図 年金・賃金・物価の上昇率

第2-2-3図 西ドイツの勤労者平均収入に対する平均年金の比率

第2-2-16表 主要国の社会保障費,年金支給額のGNPに対する比率1人あたりGNP

第2-2-17表 イギリスの年金水準

第2-2-18表 スウェーデンの年金水準

第2-2-19表 西ドイツの年金水準(月額)

第2-2-20表 西ドイツの年金生活者の月収内訳

第2-2-21表 税負担率の国際比較

III 本文関係バックデータ

第2-2-22表 老令人口のシェア

第2-2-23表 65才以上男子の労働力率

第2-2-24表 老人の世帯構成の国際比較

第2-2-25表 収入源別所得者比率

第2-2-26表 総所得における各収入源所得の比率

第2-2-27表 暮せない老人の扶養は誰がすべきか

第2-2-28表 「働けなくなった老人の扶養は誰がすべきか?」についての答

第3節 「インフレによる不利を小さく」に関連して

第2-3-1図 インフレの高進と景気の停滞

第2-3-1表 生計費エスカレーター条項の適用を受ける組合員の数

第2-3-2表 産業別の生計費条項による賃金調整の瀕度

第2-3-3表 製造業全雇用者1人・1時間当り生産高,時間当り報酬,単位労務費の変化

第2-3-4表 1968年1月からの法定最低賃金(SMIC)の動き

第2-3-2図 購買力の変化

第4節 「自然と協力して良い環境を」に関連して

第2-4-1表 世界のエネルギー鉄鋼生産の推移

第2-4-2表 イギリスのばい煙排出量

第2-4-3表 グリーンランド氷雪中の鉛濃度の推移

第2-4-4表 米国内の重要問題

第2-4-5表 カナダの国内重要問題

第2-4-1図 バルト海深部における酸素の減少

第2-4-2図 ライン河汚染の推移

第2-4-3図 ロンドンの冬期の日照時間の推移

第2-4-6表 各国の環境行政一覧

第2-4-7表 各国の投資に占める汚染防止投資の割合

第2-4-8表 各国の汚染因別汚染対策費の構成

第2-4-4図 各国の低平地面積当り諸指標

第2-4-9表 公害対策の米国経済に与える影響

第2-4-5図 世界の主要資源需要の動き

第2-4-10表 世界の主要資源の埋蔵量と可採年数

第5節 「強まる消費者の権利要求」に関連して

第2-5-1表 アメリカ1962~70年における消費者保護立法

第6節 「自由を育てる余暇」に関して

第2-6-1表 1人当り国民所得と製造業週当り労働時間

第2-6-2表 アメリカの民間労働者1人当り平均週労働時間

第2-6-3表 主要国の週当り労働時間

第2-6-4表 アメリカの有給休暇分布

第2-6-5表 イギリスの有給休暇分布

第2-6-6表 ドイツの有給休暇分布

第2-6-7表 フランスの有給休暇分布

第2-6-8表 フランス産業別事業所閉鎖の時期

第2-6-9表 アメリカの長期休暇

第3章 「発展途上国」に関連して

国際協力の現状と問題点

発展途上国が順調な経済開発を図ってゆくためには,発展途上国自体が適切な開発政策をとることが重要である。しかし,同時に発展途上国をとりまく先進国の対外政策が効果的にとられなければ経済開発の前進はありえない。昨年の国際通貨体制の混乱とアメリカ等の先進諸国の保護主義の拾頭は,「第次国連開発の10年」の初年度として希望をかけていた発展途上国の前途に大きな不安をなげかけた。国際通貨体制の混乱やアメリカの輸入課徴金の実施は発展途上国の貿易不振をまねくとともに,その後の国際通貨調整によっても輸入品価格の上昇や対外債務の負担増などの影響を受けた。

先進国と発展途上国との経済格差の拡大とこれにともなう社会的不公正の高まりは,経済開発の意欲に燃える発展途上国の不満を大きくしたが,その背景には発展途上国が制御できない先進国の通商,援助等の対外政策が必ずしも効果的でなかったからでもある。そこで以下では発展途上国をとりまく国際協力の動きについてみてみよう。

世界全体の輸出に占める発展途上国のシェアは50年代から60年代にかけて漸次低下をたどっている。50年には発展途上国の輸出が世界全体の輸出の28.4%を占めていたが,60年にはこのシェアが21.3%へ,70年には17.6%に低下した。発展途上国の世界貿易に占めるシェアが低下している大きな原因として2つあげられよう。第1に,発展途上国の輸出構成は一次産品が支配的であるが,一次産品に対する世界の需要は所得弾力性が低いために伸び悩んでいる。しかも,合成品の代替によってかなり悪影響をうけている。第2に,多くの先進国では発展途上国がコストの面で有利である場合でも一次産品に保護を与えてきた。工業製品の場合も関税,非関税障壁が設けられているものが多い。

発展途上国が比較優位ある労働集約的製造品に対して関税水準が高いのが通常である。関税のほかに,数量的制限などの非関税障壁をとっている工業製品もある。発展途上国の多くは先進国向け輸出であるだけに,先進国の保護措置は発展途上国の輸出の増進に大きく影響してきた。

発展途上国の輸出増進を阻害する関税,および非関税障壁の問題はUN CTAD(国連貿易開発会議)をはじめのいくつかの国際会議で取りあげられてきたが,その改善は緩慢である。世界貿易の拡大のために68年からはじまった関税引下げに関するケネディ・ラウンド交渉は先進国と発展途上国間の貿易よりも先進国間の相互貿易を増大させた。ケネディ・ラウンドの関税調整での重要な譲許は主要な貿易国がもっとも関心のある加工度の高い化学品,機械および輸送機器などの分野が中心であり,労働集約的工業製品の関税引下げは小幅なものであった。そのうえ,輸入割当量などの数量的制限が発展途上国の輸出増進の障害となっているような場合には,関税が引下げられても発展途上国の輸出増進にほとんど寄与しない。

ガットにおけるこれらの措置も経済構造が異質である発展途上国に不利に作用したわけである。

発展途上国は,また一次産品の生産や市況の変動などによって,輸出所得が年々かなり変動してきている。先進国に比べて発展途上国の輸出価格は2倍半から3倍もの大幅な変動を示しており,この結果,輸出所得はU NCTAD(国連貿易開発会議)の推定によれば先進国に比べて2倍近い大幅な変動を記録している。大幅な輸出所得の変動は円滑な開発計画の実施の妨げになるし,この変動の影響を和げるのにかなりの外貨準備の維持が必要となってくる。IMFの一次産品の補償融資制度や国際商品協定などの措置がとられたが,もっと効果的な国際協力の措置がとられたならば発展途上国の経済開発の促進に役立ったことであろう。輸出所得の変動を安定させるためには国際商品協定の拡充や緩衡在庫制度の促進が望まれる。

発展途上国の輸出所得の増大は,先進国の通商政策によって大きく左右されるので今後とも広範囲にわたって可能なかぎり関税・非関税障壁の引下げが重要である。71年から発展途上国が輸出する製品,半製品等に対レて一般特恵が実施されたが,それ自体がガットの標ぼうする無差別原則の重大な修正であるが,先進国が輸出拡大の機会を発展途上国に与えて,産業構造の転換の契機となるという意味で評価されよう。しかし,現在のところ一般特恵は実施国においても,その内容においてもまだ不十分である。

貿易と並んで先進国の援助は,発展途上国の経済開発の促進にとって重要な役割をもっているが,60年代は量的にも,質的にも発展途上国の要求を満たすものでなかった。先進国から発展途上国への援助は50年代初期の年間40億ドルないし50億ドルから61年に92億ドルに増加した。これは当初のDAC(開発援助委員会)の加盟国全体のGNPのほぼ1%に相当するものであった。ところが61年以降の発展途上国に対する援助は先進国のGNPほどには増加せず,71年ではGNPの0.82%にすぎない。国連はGNPの1%の援助計画を目標にしているがこれに到達していない。しかも,60年代に入って民間投資と商業借款が急速に増加しているが,経済開発への寄与が大きいといわれる政府開発援助は緩慢にしか増加していない(第3-1図)。援助条件も,ひもつき援助の撤廃の動きや最近における借款金利の若干の低下などがあるが,政府開発援助に占める贈与と贈与に近い援助の割合が低下しており,概して援助条件がきびしくなってきている。対外債務の累積額は60年の200億ドルから69年には600億ドルへと急増を続けている。先進国の援助条件の緩和,ならびに条件のゆるやかな借款の援助量が不十分なことを主因にして発展途上国の対外債務の元利支払額は71年中で61億ドルにも達している。このため,債務返済比率(国際収支上の経常収入に対する元利払いの比率)は危機ラインといわれる20%を越える国やこれに近い国が続出している。70年代の目標である年率6%の経済成長率を達成するためには,UNCTADの推定によれば先進国全体のGNPの1%の資金が必要だとされている。

外国援助の量的な増大が望まれる一方,援助の質的な改善も重要である。発展途上国の債務返済問題を解決してゆくためには援助の供与条件を改善しなければならない。また,多角的援助機関を通じる援助はより客観的な援助供与が期待できるのでいっそう拡大されることが望まれる。これに関して,第3回UNCTADでその検討が決議されたIMFの特別引出権(SDR)と開発援助とのリンクは多角的援助の一環として注目される。

以上のように発展途上国をとりまく先進国の通商,援助等の対外政策が有効にとられることが発展途上国の経済開発の成果を大きく左右することになろう。それは,発展途上国にとって財政負担の増大をもたらすとともに,国内の産業調整をせまるものである。昨年のアメリカの輸入課徴金の実施や援助削減計画などにみられるように,先進国側の対外政策が国益本位になることもある。しかし,世界経済における相互依存関係がいっそう緊密化している今日では,世界の人口の約7割を占める発展途上国に対する国際協力はなおざりにできない。世界経済の調和ある発展,世界的な人類福祉の向上という国際的な視点から所得再配分を進めてゆくことがますます必要となってきている。

第3-1図 外国援助の推移

第3-1表 後発発展途上国の状況

第3-2表 発展途上国の成長率比較

第3-3表 先進国と発展途上国の出生率,死亡率,自然増加率

第3-4表 労働力人口の推移

第3-5表 基礎的生活水準指標のデータ

第3-6表 栄養指標のデータ

第4章 「共産主義国」に関連して

ソ連の社会保障制度

ソ連の社会保障制度は,国民の個人生活面での立遅れに比べると,比較的整備されている。それは,労働や教育関係の諸制度ど直接に結びついて,「社会主義国」としてのソ連の全社会制度の一環をなしている。この制度のうちにあって社会保障は,たんに各種の事故に対する物的保障に局限されないで,ひろく予防や福祉の増進という目的をも含んでいるのである。

これらの諸制度は,憲法で国民の基本的権利としてうたわれている。すなわち,労働の権利,休息の権利,教育を受ける権利と並んで各種の事故に対して物的保障を受ける権利,男女平等の権利がそれである。ソ連の社会保障制度の原則は,これらの諸権利,とくに最後の2項目の権利の規定に基づくものである。

このようなソ連の社会保障制度は,その対象と運営の主体からみて,次の4系統に区分することができる。

第4-1表 ソ連・東欧の生産財,消費財工業生産伸び率

第4-2表 ソ連・東欧の賃金上昇率

第4-3表 ソ連・東欧の1人1日当たり食料消費

中国の社会保障制度

中国の社会保障制度は,その対象と運営の主体からみて,労働者,職員を対象とするものと,農民を対象とするものとの2つの系統に分かれる。

一般に労働者,職員を対象とするものは,労働組合によって運営される「労働保険制度」であり,医療給付,年金給付,出産給付等が整備されている。また養老院,託児所,幼稚園等の福利施設を整備し,各企業では食堂を経営して,月間10~12元という安い価格で給食を行なっている。

医療給付については,各企業はすべて診療所施設をもち,重病人は病院で公費によって治療を行なう。罹病後6ヵ月間は賃金の全額を支給し,その後は40~60%相当額を支給する。

年金給付については,男子職員は満60才,男子労働者は満55才,女子労働者は満50才の定年に達した後,各人の勤労年限に応じて最終賃金の50~70%相当額を年金として支給する。

一方,農民に対しては,人民公社の生産大隊で生産収入の2~3%を共同基金として積み立て,社会保険と集団の福祉事業に充ててきたが,文化大革命以後,協同医療制度の普及がはかられ,医療保障面での充実が急がれている。人民公社はすべて診療所施設をもち,公費をもって医療給付に当るほか,老人,病弱者,孤児,身体障害者などの生活困窮者に対して,生活費の給付あるいは一部補填を行なっている(五保制度)。また「裸足の医者」と称される半農半医の保健要員を養成して,農村の巡回治療に当っている。

第4-5表 中国の38企業の賃金,俸給,奨励給支出状況


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