昭和43年

年次世界経済報告

再編成に直面する世界経済 

昭和43年12月20日

経済企画庁


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第1章 1967~68年世界経済

1967年から1968年にかけての世界経済は,近年まれにみる激動の1年であったといえる。まず67年11月のポンド切下げにはじまり,68年3月には金投機が頂点に達して,現行通貨体制の危機すら思わせる状況が現出した。この事態は金ブール制の廃止と金の二重価格制の採用によって次第におさまりつつあったが,突然5月中旬にフランスで社会・政治的危機が勃発し,その結果,新たにフランが投機の対象となり,フランは年末までかなり長期にわたって動揺を続け,11月になってフランス経済は大幅な引締める政策をとってこれに対処することになった。そのうえ,8月末からマルク切上げの噂がひろまって,マルクをめぐる思惑が新たに発生するという事態も現れ,ついに11月19日に至って,西ドイツ政府は付加価値税の調整によって,実質的なマルク切上げに近い措置をとらざるを得なくなった。

このように通貨・金融面では68年はまことに激動の年であったが,経済実態面についてみると,67年秋頃からみられた欧米の景気回復基調が678年にはさらに一段と高揚し,景気停滞期であった67年とは打って変って68年は景気上昇の年となった。国によって若干の相違があるとはいえ,概して欧米諸国の成長率が高まり,世界貿易も再び拡大軌道にのりつつある。また,こうした先進国の景気上昇は低開発国にも次第に波及し,低開発の先進国向け輸出が大幅に増加し,それに伴い低開発国の外貨準備の増大,生産の上昇がみられた。

68年の世界景気が再上昇示したのは基本的には,①アメリカの景気状勢が政府の引締め政策にもかかわらず,ごく最近まで強い上昇基調をつづけてその輸出が大幅に伸びたこと,②イギリスの経済活動も政府のきびしいデフレ政策を尻目に高水準を維持し,政府の積極的な成長促進政策にたすけられたこともあって,回復軌道にのってきたことなどが,原因となってたとみることができる。

しかし,このこととは裏からいえば,国際通貨不安の基本的原因である基軸通貨国の国際収支の改善がおくれているということであり,始めに述べたように,68年中を通じて国際通貨の動揺が折にふれて表面化する背景にもなったのである。


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