昭和41年

年次世界経済報告

昭和41年12月16日

経済企画庁


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年次世界経済報告の発表にあたって

この世界経済報告は,過去1年間の海外諸国の経済動向を明らかにするとともに,やや長期的にみた世界経済の主要な諸問題を分析しております。

昭和41年の世界経済は,アメリカの持続的な高成長,イギリス,西ドイツの景気停滞,フランス,イタリア,日本の景気上昇など,各国の景気局面にはかなりの相違がみられましたが,全体としてみれば工業国を中心として順調な拡大を続けました。また世界貿易は,先進国間貿易を中心として大幅に伸長し,それに伴って低開発国の輸出もかなり増大しました。わが国の輸出も,このような国際環境に恵まれて好調を続け,景気回復の促進に大きな役割を果たしました。

しかしその半面,欧米工業国では金利水準が相ついで上昇し,従来にない世界的高金利現象がみられました。また,物価の上昇テンポは一段と高まり,物価安定の重要性が先進国共通の課題としていっそう強まっております。

また世界経済は,当面拡大基調を持続すると考えられますが,その拡大テンポは鈍化することが見込まれます。

今後,世界経済の持続的な成長のためには,成長政策と安定化政策の調和,国際通貨制度と貿易体制の改善,国際経済協力の推進などがいっそう重要となりましょう。

日本経済をとりまく国際環境は,国際競争の激化,資本自由化の進展,低開発国に対する経済援助の増大など,いっそうきびしくなると予想されますが,わが国はこれらの問題を着実かつ賢明に解決していくことが必要であると考えます。

この報告が,日本をとりまく世界経済の諸問題について,国民各位の認識を深めるうえに役立つことを期待します。

昭和41年12月16日

宮沢 喜一

経済企画庁長官


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