昭和39年

年次世界経済報告

昭和40年1月19日

経済企画庁


[目次] [年次リスト]

第1部 総  論

第1章 世界経済の動向と日本

日本は,1964年4月にIMF8条国への移行とOECD加盟によって,いよいよ本格的な開放体制にはいった。開放体制とは,いうまでもなく商品およびサービス取引と資本取引が自由化された体制であり,しかも貿易為替制限の再導入が原則として許されない体制である。したがって,貿易と資本取引を通じて日本と外国との経済関係は,当然これまでよりはるかに密接になることになる。このことは一面において,国際分業の利益の享受,海外からの競争激化による国内産業の競争力強化への刺激,安い商品の輸入による国内物価安定への寄与,などのプラスの面をもっているが,反面では輸入や貿易外支払いの増加,短資移動の変動などによって国際収支が不安定となりがちであり,しかもその場合,原則として貿易為替制限の措置をとりえないというマイナスの面をももっている。

したがって,開放体制下の日本としては,産業の国際競争力の強化にいっそうの努力を必要とすると同時に,海外の経済動向についても従来以上に注目しなければならないであろう。

そこでまず本章においては,世界経済の諸問題に立ち入るまえに,世界経済と日本との交流の主要なパイプである貿易と資本取引に焦点をしぼり,過去1年間の世界経済の動きのなかで日本がどのような役割を果たし,どんな影響をうけ,また与えてきたかを概観するとともに,今日の世界経済の重要問題であると同時に,日本経済にとっても重要な課題である安定成長の問題をとりあげることにする。


[目次] [年次リスト]